- 公開日:2025.06.05
薬剤師の手取りはどれくらい?額面との差と増やす方法を解説
給与明細を見たとき、額面(総支給額)と手取りの金額差に驚いた経験はありませんか?薬剤師として働く中で、自分の収入が適切なのか疑問に思うこともあるかもしれません。本記事では薬剤師の手取りの実態や手取りを増やすための具体策について解説します。
手取りとは?額面との違い
手取りとは、給与の額面(総支給額)から、税金や社会保険料などの控除額を差し引いた、実際に手元に残る金額のことです。給与明細上では「差引支給額」などと記載されています。
額面と手取りの関係を正確に理解することで、自分の収入をよりしっかり把握できるようになります。
額面とは?
額面とは、会社から支払われる金額の合計を指し、一般的に「基本給」と「手当」で構成されています。給与明細上では「総支給額」などと記載されています。
基本給は給与のベースとなる賃金で、職務や経験年数などをもとに毎月決まった金額が支払われます。手当は薬剤師手当、資格手当、残業手当などが該当します。
額面から差し引かれる税金や社会保険料は?
手取りは、額面から以下の税金や社会保険料が差し引かれた金額です。
所得税
所得税は、個人の所得に対して課される国税です。1年間のすべての収入から必要経費や所得控除額(医療費控除や生命保険料控除など)を差し引いた「課税所得」に税率が適用され、税額が計算されます。
税率は、5〜45%の範囲で、課税所得が多いほど高くなる累進税率が適用されています。
基本的に給与所得者の所得税は、毎月の給与と賞与から源泉徴収され、その年の最後の給与が支払われる際に「年末調整」として過不足額が精算されます。
住民税
住民税は、都道府県と市町村が課す地方税です。所得に応じて負担する「所得割」と所得に関わらず定額を負担する「均等割」があります。所得割の税率と均等割の税額は以下の通りで、実際はこれらの基準をもとに、都道府県や市町村が税率を定め、納税額を決定します。
所得割の税率と均等割りの税額
所得割の税率 | 均等割の税額(年額) | |
---|---|---|
道府県民税 | 前年所得の4% | 1,000円 |
市町村民税 | 前年所得の6% | 3,000円 | 森林環境税(国税)※ | - | 1,000円 |
合計 | 前年所得の10% | 5,000円 |
※2024年度から徴収
住民税は、前年の所得が一定以上ある方が課税対象となり、給与所得者の場合、6月から翌年5月までの毎月の給与から天引きされます。
そのため、新卒1年目は住民税が課税されず、2年目の6月から課税が始まるため、手取りが減ってしまうケースも少なくありません。
社会保険料
社会保険料は、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険に対する保険料を指します。
種類 | 概要 | 保険料の負担割合 |
---|---|---|
健康保険 | 病気やけがなどの医療費の補償、傷病手当金・出産手当金の支給などを行う制度 | 従業員と会社が折半 |
介護保険 | 介護が必要になった際のサービス費用を補助する制度。40歳になると加入 | 原則従業員と会社が折半 |
厚生年金保険 | 老後の年金や障害年金、遺族年金を支給する制度 | 従業員と会社が折半 |
雇用保険 | 失業した際の給付などを行う制度 | 従業員と会社の双方が負担 |
労災保険 | 仕事中や通勤途中のケガや病気に対して保険給付を行う制度 | 会社が全額負担 |
その他
その他には、財形貯蓄、労働組合費などが額面から差し引かれることがあります。これらは任意加入の場合が多く、加入状況によって金額が変わります。
また、企業によっては社宅費や食堂の食事代なども額面から天引きされる場合があります。
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▼参考資料はこちら
所得税のしくみ|国税庁
No.2260 所得税の税率|国税庁
給与所得者と税|国税庁
個人住民税|総務省
知っておきたい健康保険の話|全国健康保険協会
介護保険とは|厚生労働省
日本の公的年金は2階建て|厚生労働省
雇用保険制度|厚生労働省
労災補償|厚生労働省
薬剤師の手取りはどれくらい?
薬剤師の手取りは勤務形態や経験年数、勤務地域などによって大きく異なります。全国平均と比較することで、自分の給与水準を客観的に評価することができるでしょう。
薬剤師の平均的な手取り
一般的に額面の約75~85%が手取りになると考えられています。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師の平均月給は43.1万円であり、その75~85%と考えると、おおよその手取りは32.3~36.6万円と推定されます。また年収でみると、平均年収は599.3万円であり、おおよその手取りは449.5~509万円と算出できます。
年齢別の平均月給・年収とおおよその手取りは以下の通りです。
平均月給と手取り(年齢別)※
年齢 | 平均月給 | おおよその手取り |
---|---|---|
25~29歳 | 36.8万円 | 27.6~31.3万円 |
30~34歳 | 40.9万円 | 30.7~34.8万円 | 35~39歳 | 42.7万円 | 32.0~36.3万円 |
40~44歳 | 44.9万円 | 33.7~38.2万円 |
45~49歳 | 47.2万円 | 35.4~40.1万円 |
50~54歳 | 52.6万円 | 39.4~44.7万円 |
55~59歳 | 52.4万円 | 39.3~44.6万円 |
60~64歳 | 50.1万円 | 37.6~42.6万円 |
65~69歳 | 41.4万円 | 31.0~35.2万円 |
70歳~ | 36.2万円 | 27.2~30.8万円 |
平均年収と手取り(年齢別)※
年齢 | 平均年収 | おおよその手取り |
---|---|---|
25~29歳 | 501.0万円 | 375.7~425.8万円 |
30~34歳 | 564.4万円 | 423.3~479.7万円 |
35~39歳 | 614.1万円 | 460.6~522.0万円 |
40~44歳 | 646.1万円 | 484.6~549.2万円 |
45~49歳 | 667.3万円 | 500.4~567.2万円 |
50~54歳 | 744.7万円 | 558.5~633.0万円 |
55~59歳 | 709.3万円 | 531.9~602.9万円 |
60~64歳 | 685.3万円 | 514.0~582.5万円 |
65~69歳 | 559.4万円 | 419.6~475.5万円 |
70歳~ | 466.0万円 | 349.5~396.1万円 |
※平均月給は『令和6年賃金構造基本統計調査』の「きまって支給する現金給与額」、平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12ヶ月+「年間賞与その他特別給与額」によって算出。手取りは平均月給・年収の75~85%で算出。
業種による手取りの違い
薬剤師の業種別の手取りを紹介します。
調剤薬局
規模や地域などで差がありますが、平均月給は37万円、おおよその手取りは28~31万円です。管理薬剤師手当や地域手当、資格手当など手当が豊富な会社もあります。
調剤薬局の平均月給・年収と手取り※
平均月給 | おおよその手取り/月 | 平均年収 | おおよその手取り/年 |
---|---|---|---|
37万円 | 28~31万円 | 530万円 | 398~451万円 |
ドラッグストア
ドラッグストアの平均月給・年収とおおよその手取りは以下の通りです。調剤業務も担える薬剤師の需要が高まっており、OTC販売のみのドラッグストアよりも調剤併設型ドラッグストアのほうが、給与が高い傾向にあります。
ドラッグストアの平均月給・年収と手取り※
平均月給 | おおよその手取り/月 | 平均年収 | おおよその手取り/年 | |
---|---|---|---|---|
ドラッグストア(調剤併設) | 38万円 | 28~32万円 | 560万円 | 420~476万円 |
ドラッグストア(OTCのみ) | 36万円 | 27~31万円 | 537万円 | 403~456万円 |
病院・クリニック
病院とクリニックの平均月給・年収とおおよその手取りは以下の通りです。給与は、クリニックが高く一般病院が低い傾向にあるものの、業態別に大きな差はありません。夜勤や当直がある場合は、手当が支給されます。
病院・クリニックの平均月給・年収と手取り※
平均月給 | おおよその手取り/月 | 平均年収 | おおよその手取り/年 | |
---|---|---|---|---|
一般病院 | 32万円 | 24~27万円 | 476万円 | 357~405万円 |
療養型病院 | 33万円 | 25~28万円 | 485万円 | 364~412万円 |
精神科病院 | 34万円 | 26~29万円 | 496万円 | 372~422万円 |
クリニック | 36万円 | 27~31万円 | 500万円 | 398~451万円 |
企業
業務内容や経験、能力などによって差がありますが、企業の平均月給は33万円、おおよその手取りは25~28万円です。
企業の平均月給・年収と手取り※
平均月給 | おおよその手取り/月 | 平均年収 | おおよその手取り/年 |
---|---|---|---|
33万円 | 25~28万円 | 497万円 | 373~422万円 |
※平均月給・平均年収は、2024年度のファルマスタッフの各求人の月給・年収の下限と上限の中間の値をもとに算出。手取りは平均月給・年収の75~85%で算出。
薬剤師が手取りを増やすための方法
薬剤師として働く中で、手取りを増やしたいと考える人は多いでしょう。手取りが増えると、生活をより豊かにできるだけでなく、将来のための貯蓄や、スキルアップのための資格取得などにもお金を費やしやすくなります。ここでは、薬剤師が手取りを増やすための具体的な方法をご紹介します。
所得控除制度を活用する
所得控除制度を活用すると、節税により手取りが増える可能性があります。所得控除は15種類あり、主なものをご紹介します。
医療費控除
その年の1月1日から12月31日までに、医療費が10万円以上※かかった場合、所得控除が受けられるため、確定申告すると所得税の一部が還付されます。風邪薬や通院費、医療用器具の費用なども医療費控除の対象となるため、思った以上の控除が受けられるケースもあるでしょう。
※年間の所得が200万円未満の場合は所得の5%
ふるさと納税(寄附金控除)
ふるさと納税は、寄附額から2,000円を超える金額が所得税および住民税から控除される制度です。寄附した自治体からは地域の名産品などの返礼品ももらえます。
生命保険料控除
生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に、一定額の所得控除を受けることができます。
節税しながら収入アップを目指す
手取りを増やすために収入アップを目指すのも一つの方法ですが、収入が高いほど差し引かれる税金や社会保険料の割合も高くなります。所得控除制度などで節税しながら収入アップを目指すと、効率的に手取りを増やせるでしょう。
転職する
転職をして手取りアップを目指すのも有効な手段です。ただし、基本的に求人票には手取りではなく、額面が記載されています。おおよその手取りが知りたい場合は、額面の75~85%を計算してみましょう。
また、手当や福利厚生などの充実度も手取りに影響しますので、求人票を見る際に確認しておくとよいでしょう。
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▼参考資料はこちら
No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
医療費を支払ったとき|国税庁
よくわかる!ふるさと納税|総務省
No.1100 所得控除のあらまし|国税庁
No.1140 生命保険料控除|国税庁
薬剤師の手取りアップを実現するために
本記事では薬剤師の手取りの実態、所得控除や転職などの手取りを増やすための具体策について解説しました。
転職して手取りアップを目指す場合、実際の手取りなど求人票だけではわかりづらい情報もあるため、職場選びに迷う方もいるかもしれません。転職コンサルタントに相談いただければ、ご希望を伺い求人を提案することもできますので、お気軽にご相談ください。
ファルマラボ編集部
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