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  • 公開日:2020.05.03

『小児薬物療法認定薬剤師』とは?概要と主な業務について解説【薬剤師の資格入門】

『小児薬物療法認定薬剤師』とは?概要と主な業務について解説【薬剤師の資格入門】

小児は体が小さく抵抗力も弱いため、薬物療法を行う際は専門的な知識が必要となります。投与量や投与間隔だけでなく、服薬方法や医薬品の取り扱いなどにおいても、細心の注意を払わなくてはなりません。こうした要請を受けて、小児薬物療法分野において一定レベル以上の能力と適性を持つ薬剤師を認定する制度として、小児薬物療法認定薬剤師制度が創設されました

この記事では、小児薬物療法認定薬剤師制度の概要や役割、認定方法についてご紹介していきます。あわせて認定者の年収についても触れてみましょう。

『小児薬物療法認定薬剤師』とは

小児薬物療法認定薬剤師とは

わが国では少子高齢化が急速に進んでおり、社会のあらゆる分野で構造や制度の構築が急がれています。医療・保健においても、小児における薬物療法を広く認識し、その役割の重要性を広め、実践できる医療者の一員としての薬剤師の養成が課題となっています。中でも、小児をとりまく医療・保健の実態や、日常的にみられる小児疾患についての知識を習得することが求められています

小児薬物療法認定薬剤師とは、小児科領域において医薬品に関わる専門的立場から、医療チームの一員として小児薬物療法に参画するための能力と適性を備え、さらに患児とその保護者等に対しても適切な助言および行動ができる薬剤師のことを表しています。2012年に日本小児臨床薬理学会と日本薬剤師研修センターによって創設された資格であり、比較的新しい認定薬剤師制度です。2020年3月1日の時点では、814名(病院・診療所:546名、薬局:260名、その他:8名)の薬剤師が認定を受けています。

『小児薬物療法認定薬剤師』の主な業務

小児薬物療法認定薬剤師の主な業務

小児薬物療法認定薬剤師に求められる役割は次の2つです。

医薬品に関わる専門的立場から医療チームの一員として小児科領域の薬物治療に参画する
患児とその保護者および学童に対して、医薬品に関する指導や助言、教育を行う

小児薬物療法においては専門知識が必要です。小児の特性や病態に配慮した、用量・剤形・投与経路を選択しなくてはなりません。小児薬物療法認定薬剤師の主な業務に、医療チームの中で必要な情報や知識を共有し、他の医療職種に対する助言や提案があります。

また、小児に用いる医薬品には使用方法に注意を要するものも多く、保護者に対して小児医薬品の適正使用に関する助言を行うことも重要な業務です。小児に対する「くすり教育」や「服薬指導」を通じて、医薬品の適正使用を啓蒙していくことも求められています

『小児薬物療法認定薬剤師』になるには

小児薬物療法認定薬剤師になるには

小児薬物療法認定薬剤師の資格を取得するためには、研修センターと日本小児臨床薬理学会が実施する「小児薬物療法研修会」を修了した上で、試験に合格しなくてはなりません。加えて、小児科病棟で薬剤管理指導業務が実施されている病院において、1日(原則6時間)の「小児関連実務研修」を修了することも求められています。

「小児薬物療法研修会」は概論や小児の特性、薬剤基礎知識などを含む36講義からなり、e-ラーニングによって受講を行います。e-ラーニングの受講後にテストもあるので、講義の内容をしっかりと身につけなくてはなりません。試験は1年に1回、集合形式による70問程度のマークシート形式で実施され、認定試験の中では比較的難易度が高いと言われています。

なお、「小児薬物療法研修会」の受講要件は、保険薬局または病院・診療所での実務経験が3年以上あり、現に保険薬局または病院・診療所に勤務している薬剤師とされているため、薬剤師としての経験年数にも注意が必要です。パートや非常勤で働いている場合は、勤務時間(実働)を1日8時間、週5日(週40時間)勤務として、3年以上に相当する時間数が満たされていれば問題ありません

また、認定は3年ごとの更新制※が取り入れられています。更新を希望する場合は、所定の更新要件を満たし、審査を受けなくてはなりません。最初の更新では、必須単位を含む30単位以上かつ各年5単位以上の取得、業務等実績報告なども必要とされています。

※妊娠や出産による産前産後休暇および育児休暇、病気療養、家族の介護、海外赴任などの特別な事由がある場合は、申請を行うことで認定期間の延長の対象となる場合もあります。

▼詳しくはコチラ>小児薬物療法認定薬剤師制度とは(公益財団法人日本薬剤師研修センター)

『小児薬物療法認定薬剤師』の年収はどのくらい?

小児薬物療法認定薬剤師は、2012年創設の比較的新しい制度であり、上記にある通り資格保有者は2020年3月1日の時点で814名とされています。薬剤師全体を考えればそれほど多くなく、年収に関するデータも公表されていないので、正確な年収は知られていません。

資格の性質上、小児病棟のある病院・診療所、小児科医院の門前薬局などで働く薬剤師が多いと推測されます。病院薬剤師や薬局薬剤師の年収は450万円~600万円が相場。この年収に資格手当が上乗せされるため、若干高い年収になると考えられるでしょう

しかしながら、現在の診療報酬においては、小児薬物療法認定薬剤師の配置要件や加算は定められていないため、医療機関の収益には直結しにくいという現状があります。上乗せされる手当はそれほど多い金額ではないため、今後のさらなる評価を期待したいところです。

 まとめ

この記事では、『小児薬物療法認定薬剤師』の役割や制度の概要、認定方法についてご紹介していきました。

小児薬物療法認定薬剤師の資格を取得するためには3年以上の実務経験に加え、講習会の受講や試験の合格が必要です。単位の取得や業務等実績報告など、更新におけるハードルも高く、認定資格の取得後も継続的に研鑽を積まなくてはなりません。

しかしながら、やりがいは大きく幅広い分野で応用できるため、日々の業務にも役立つ資格の一つです。この機会に、資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2020/05/03

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