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  • 公開日:2021.06.21

『プライマリ・ケア認定薬剤師』とは?役割と資格の取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

『プライマリ・ケア認定薬剤師』とは?役割と資格の取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

薬剤師は資格を取って終わりではなく、患者さまに対して職務を全うするために日々自己研鑽に励まなければなりません。自身のスキルアップを図る方法の一つが、認定薬剤師制度です。

今回は、患者さまの日々の生活に密着し、健康増進や病気の早期発見をサポートする資格『プライマリ・ケア認定薬剤師』について紹介します。求められている役割や具体的な取得方法を説明するので、ぜひ参考にしてください。

『プライマリ・ケア認定薬剤師』とは?

プライマリ・ケア認定薬剤師とは?

そもそもプライマリ・ケアとは

プライマリ・ケアは、一言でいうと患者さまに寄り添い、総合的なヘルスケアを提供しようという考え方です。米国国立科学アカデミーでは、プライマリ・ケアを以下のように定義しています。

"プライマリ・ケアとは、患者の抱える問題の大部分に対処でき、 かつ継続的なパートナーシップを築き、家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療する臨床医によって提供される、総合性と受診のしやすさを特徴とするヘルスケアサービスである"

また一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会では、「身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療」としています。

日本では、進む高齢化を鑑み2011年から地域包括ケアの整備が始まりました。その一環として、医師や看護師、薬剤師などが訪問して患者さまの自宅で治療を行う在宅医療が注目されています。プライマリ・ケアには薬剤師だけでなく医師、看護師、ケアマネージャー、介護士など様々な職種が参加し、患者さまの身近な立場で健康をサポートしています

▼参考記事はコチラ
プライマリ・ケアとは?(医療者向け)一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会

『プライマリ・ケア認定薬剤師』とは

『プライマリ・ケア認定薬剤師』はプライマリ・ケアの視点に立ち、患者さまに寄り添い、必要な健康サポートを提供する役割があります。そのために周辺の医療機関や医師、看護師など多職種との連携を積極的に行い、地域医療を支える立場として活動することが必要不可欠です

また、プライマリ・ケア認定薬剤師制度は、「特定領域認定制度」の認証を受けています。これは、一般の薬剤師研修認定制度と比較して領域性や専門性が高い認定薬剤師制度を意味し、よりハイレベルな働きが期待されているといえるでしょう。

『プライマリ・ケア認定薬剤師』の役割

プライマリ・ケア認定薬剤師の役割

『プライマリ・ケア認定薬剤師』が担っている役割について詳しく解説します。

患者さまの総合的な健康サポート

『プライマリ・ケア認定薬剤師』に求められている最大の役割は、患者さまの健康に関して身近な立場で相談にのり、総合的な状態を知ったうえで適切なサポートを提供することです。そのため患者さまが服用している薬だけでなく、普段の患者さまの生活、嗜好品、食生活、運動習慣なども把握しておく必要があります。

患者さまと普段からしっかりとコミュニケーションが取れていると異変にも気づきやすく、病気の早期発見につながる場合も。『プライマリ・ケア認定薬剤師』は、町の身近な相談相手として、医師や看護師には行えない重要な役割を担っています

医師、看護師などとの多職種連携

『プライマリ・ケア認定薬剤師』として活動するうえで多職種連携は不可欠です。たとえば患者さまの入退院時には、医師や看護師との間でこまめな情報共有が必要になります。薬剤師からは患者さまの生活スタイルや服薬状況を提供し、退院時には入院中の症状の進行具合や服薬状況、継続する薬の注意事項などを確認しましょう。

患者さまが治療の場を、医療機関から自宅へとスムーズに切り替えられるよう、地域の専門家でチームとなり治療にあたることが求められるのです

『プライマリ・ケア認定薬剤師』の取得方法

プライマリ・ケア認定薬剤師の取得方法

『プライマリ・ケア認定薬剤師』は日本プライマリ・ケア連合学会が認定している資格です。 ここでは、概要や取得方法について説明していきます。

①研修開始届書を提出

最初のステップは研修開始届書の提出です。所定の届出書に必要事項を記入のうえ、日本プライマリ・ケア連合学会に郵送します。受付期間が指定されているため、提出の際は注意しましょう。

②講習会に参加し必要単位を取得

研修開始届書の提出後は、定められた単位を取得しなければなりません。

【新規認定申請の場合】

■必要な習得単位:50単位以上

そのうち学会関連の単位が30単位以上必要です。また、見学実習で8単位、下記に示す必須領域A~Jで20単位を取得しなければなりません。

■必須領域

A:プライマリ・ケアに関する知識とプライマリ・ケア認定薬剤師の役割

B:コミュニケーションスキル

C:服薬指導・支援

D:プライマリ・ケアにおける薬物治療(EBM,ガイドライン,緩和ケアなどを含む)

E:生活習慣指導

F:メンタルケア(自殺予防も含む)

G:在宅ケア

H:セルフメディケーションに必要な OTC・健康食品・漢方薬などの知識と活用

I:地域活動(薬物乱用防止,学校薬剤師,健康教育などを含む)

J:地域連携・チーム医療

■研修期間:4年

最初の単位を取得してから4年以内に申請を行い、試験に合格する必要があります。

【更新申請の場合】

必要な習得単位:30単位以上

そのうち学会関連の単位が20単位以上、上述の必須領域のD,E,F,G,Iから10単位の取得が必要です。

■研修期間:3年

更新の認定には事例報告が求められます。

③書類審査と試験に合格

必要単位を取得した後は、認定審査と試験を受けます。前述した研修期間内に試験と審査を通過する必要があるため、計画的に進めましょう。

認定審査について

認定制度委員会により、研修期間内の研修記録内容と受講証明、認定単位の審査が行われます。下記を日本プライマリ・ケア連合学会に提出しましょう。

・認定申請書

・認定審査料(振込証明書のコピー。(審査料は、本会員の場合10,000円、非会員の場合15,000円)

・薬剤師免許証のコピー(裏に記載のあるものは裏面のコピーも含む)

・ 研修期間内の研修記録内容と受講証明、認定単位

・事例報告(活動報告を含む)

試験について

認定審査とあわせて、記述式の試験も実施されます。試験日時に合わせて指定の会場(基本的に東京都内で実施)に出向いての受験が必要です。なお、日本プライマリ・ケア連合学会のWebサイトで例題が公開されています。必要に応じて試験前の実力チェックに役立てましょう。

▼詳細はコチラ
プライマリ・ケア認定薬剤師制度2021年度の新規申請について
プライマリ・ケア認定薬剤師要綱 細則
事前提示例題
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会 

④日本プライマリ・ケア連合学会によって認定

審査と試験を通過すると、登録料10,000円を支払うことで認定薬剤師として登録されます。登録後は、認定証の発行や氏名と都道府県の学会機関紙掲載なども行われます。

薬剤師として活躍の場を広げましょう

今回は『プライマリ・ケア認定薬剤師』についてまとめました。『プライマリ・ケア認定薬剤師』には患者さまに寄り添い積極的に生活をサポートする姿勢が必要です。薬の服薬状況だけでなく、食事や生活習慣を把握し、総合的な提案が求められます。

さらに、医師や看護師などと連携しながら地域全体での適切な医療の提供が重要です。 ほかの認定薬剤師に比べ領域が広く専門性が高い『プライマリ・ケア認定薬剤師』。取得は簡単ではありませんが、地域医療で活躍の場を広げるために役立つ資格といえるでしょう。ぜひ、資格取得を目指し患者さまに求められる薬剤師を目指してください。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/06/21

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