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  • 公開日:2022.02.16

電子処方箋はいつから導入される?薬剤師への影響も説明

電子処方箋はいつから導入される?薬剤師への影響も説明

紙の処方箋を電子化してオンラインでの情報管理や共有を可能にした「電子処方箋」。2022年9月に運用開始予定でしたが、システム開発業者の選定が遅れたことなどを理由にスケジュールが再調整され、2023年1月の実現を目指すことが発表されています。

今回の記事では、電子処方箋の概要や導入時期、最新の動向、薬剤師への影響について詳しくみていきましょう。

電子処方箋とは?

電子処方箋とは?

電子処方箋とは、これまで紙でやりとりしていた処方箋を電子的に運用する仕組みです。オンラインでの診療や薬剤師による服薬指導での活用で組み合わせることにより、業務の効率化が図られることが期待できるのです。医師が管理システムに処方箋のデータを登録し、薬剤師は患者さまの同意を得たうえで調剤に必要なデータを取得するといった運用が想定されています。

処方箋の電子化によって複数の医療機関や薬局で処方・調剤された薬剤情報の閲覧が可能となると、それらを活用して重複投薬がないかなどのチェックが行えるようになります。また、処方箋の内容をシステムに入力する作業や紙の処方箋の保管が不要になるため、そのぶんの時間を患者さまへの対応や医療機関と薬局間のコミュニケーションに充てられるようになったのです。

電子処方箋はいつから導入される?

電子処方箋はいつから導入される?

2020年6月に開催された「2020年第9回経済財政諮問会議」において、2022年夏をめどに電子処方箋の運用を開始することが発表されていました。

しかし、厚生労働省は2021年7月に開催された「健康・医療・介護情報利活用検討会及び医療等情報利活用ワーキンググループ」において、電子処方箋の運用開始時期を2020年9月から2023年1月に変更することを明らかにしました。

運用開始が延期になった原因の一つとして、運営主体である社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会において、2021年7月の期日までにシステム開発業者の応札がなく、再調達が必要になったことがあげられています。その後の再入札で、2021年11月に業者が決定されました。

電子処方箋の動向

電子処方箋の動向

厚生労働省は、通常国会に提出する方向で調整している医薬品医療機器等法(薬機法)などの改正案において、電子処方箋システムの活用を促すための仕組みを創設し、制度面での整備を進めています

また、医薬・生活衛生局の2022年度予算案には、電子処方箋の運用開始に向けた薬局などの整備を補助するために383億2,500万円を計上。運用開始までに様々な取り組みを実施する予定です。

2022年度から必要な準備やそのスケジュールについては、順次ポータルサイトなどで案内される予定です。「オンライン資格確認」を導入している必要があるため、未導入の施設においては『オンライン資格確認導入に向けた準備作業の手引き』を参照して、早急に環境を整えることが求められています。

電子処方箋導入による薬剤師への影響

電子処方箋導入による薬剤師への影響

電子処方箋が導入されることで、薬剤師の役割や働き方にも大きな影響がもたらされるでしょう。ここでは、具体的な例をあげながら解説していきます。

服薬管理の方法が変わる

これまでは既往歴や併用薬のチェックにおいて、お薬手帳や患者さまアンケートが主な役割を担ってきました。今後は電子処方箋のサーバーにアクセスすることにより、リアルタイムで服薬情報の確認が可能になります。

お薬手帳を持参する必要がなくなるうえ、患者さま自身が服用情報を把握・管理しやすくなるため、アドヒアランスの向上も期待されています。

医療機関との情報共有が進む

現状、基本的に薬局薬剤師は処方箋に記載された内容しか情報を取得できません。それ以外の情報については、患者さまからの聞き取りが必要ですが、すべての患者さまに実施できるわけではなく、その精度にも課題があります。

電子処方箋の仕組みが構築されると、医療機関と薬局との間で、病名や検査値などを含めた医療情報を共有しやすくなるでしょう。

処方箋業務の効率化が期待できる

電子処方箋を利用することで、薬局の窓口でレセコン(レセプトコンピュータ)に処方情報を入力する業務の省力化や誤入力の防止が可能になります。

さらに、オンライン資格確認システムとの連携により、資格情報の入力が容易になったり、リアルタイムで資格情報を確認できるようになったりします。

そのため、請求ミスを減少させる効果も期待されているのです。また、処方箋の保管スペースの削減や偽造処方箋への対策になる点もメリットでしょう。

在宅医療や遠隔地医療の効率化が進められる

現状、在宅医療や遠隔地医療で処方箋が発行される場合には、一般的にFAXや郵送などが用いられており、必要な薬が届くまでに時差が発生するという問題点がありました。

電子処方箋の利用により、診療から処方までの時差を短縮できます。また、医師や訪問看護師との連携や患者さま情報の共有についても、今まで以上に円滑になるでしょう。

DX化がさらに加速し、ITリテラシーの習得が求められる

近年では、多くの業種でDX(デジタルトランスフォーメーション)化※が注目されています。医薬品業界でも電子薬歴やオンライン服薬指導などがすでに導入されており、電子処方箋の導入を機にDX化はさらに加速すると考えられています。

そうした変化に対応していくために、薬剤師にもITリテラシーの習得が求められていくでしょう。

※DX化:デジタル技術を用いることで、生活やビジネスが変容していくこと

▼「電子処方箋」に関する参考資料はコチラ
電子処方箋の運用ガイドライン 第2版 厚生労働省

電子処方箋の導入は医療サービスの質を高める

今回の記事では、電子処方箋の概要や導入時期、最新の動向、薬剤師への影響について解説しました。

すべての医療機関や薬局に電子処方箋が普及するには、まだまだ時間がかかると考えられますが、電子処方箋の利用により、複数の医療機関や薬局が持つデータをうまく活用して、より質の高い医療サービスを提供できるようになるでしょう。

導入時期やサービス内容はまだ変わる可能性もあるため、引き続き今後の動向に注目していく必要があります。

執筆者:ヤス(薬剤師ライター)

新卒時に製薬会社にMRとして入社し、循環器や精神科からオンコロジーまで、多領域の製品を扱う。

現在は患者さまと直に接するために調剤薬局チェーンに勤務しながら、後進の育成のために医薬品のコラムや医療論文の翻訳など、多方面で活躍中。

記事掲載日: 2022/02/16

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