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  • 公開日:2021.09.13

【薬剤師向け】わかりづらい「ヤーズ」と「ヤーズフレックス」の違いは?

【薬剤師向け】わかりづらい「ヤーズ」と「ヤーズフレックス」の違いは?

国内では様々な種類のピルが使用されていますが、なかでも有名な第4世代の超低用量ピルに、「ヤーズ®配合錠(以下、ヤーズ)」と「ヤーズフレックス®配合錠(以下、ヤーズフレックス)」があります。これらは同一の有効成分が配合された医薬品のため、婦人科の門前薬局で働く薬剤師でなければ服薬指導の機会も少なく、違いを十分に理解していないケースもあるでしょう。

そこでこの記事では、ヤーズとヤーズフレックスの違いについて解説していきます。ピルの種類についても、あわせて確認していきましょう。

ピルの種類について

ピルの種類について

ピルとは、常用すると避妊効果が得られる女性ホルモン剤です。「経口避妊薬(OC:Oral Contraceptive)」とも呼ばれます。一般的には、女性の卵巣でつくられるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つが主成分として配合されており、避妊以外の効果も多い製品です

国内でも様々なピルが使用されていますが、ここでは6種類および4つの世代に分けて解説します。

高用量ピル

高用量ピルは、エストロゲンの量が1錠中50μgより多い製品です。ピルが使用され始めた1960~1970年代は高用量ピルが主流でしたが、静脈血栓塞栓症(VTE)や心筋梗塞などの深刻な副作用が起こりやすいといわれています。1970年にFDA(アメリカ食品医薬品局)は、EEの含有量を50μg未満にすべきという勧告を出し、現在ではほとんど使われていません。

中用量ピル

中用量ピルは、エストロゲンの量が1錠中50μgの製品です。おもに月経移動や月経のリセットなどの用途で用いられます。しかし、前述のFDAの勧告によってエストロゲンの低用量化が図られるようになり、現在では低用量あるいは超低用量ピルが主流です。

低用量ピル

低用量ピルは、エストロゲンの量が1錠中50μgより少ない(30μg~35μg)製品のことを指しています。海外では一般的に利用されており、日本国内でも月経困難症の症状改善や避妊を目的として使われる製品です。なお、月経困難症の使用では保険が適用されますが、避妊目的の場合は自費となります。

超低用量ピル

超低用量ピルは、エストロゲンの量が1錠中30μgより少ない製品です。低用量ピルよりもさらにエストロゲンの含有量が低く、血栓症などの重大な副作用、頭痛や吐き気などの副作用が出にくくなります。一方、不正出血が起きやすくなるなどのデメリットもあるため、注意が必要です。

ミニピル

ミニピルは、エストロゲンを一切含まないピルです。喫煙者や肥満気味の方、高齢の方はピルの服用による静脈血栓塞栓症の発症リスクが上昇すると言われています。その場合、エストロゲンが配合されている薬剤は使用しづらいため、ミニピルが使用されることがあります。

アフターピル

アフターピルはモーニングアフターピルとも呼ばれ、避妊に失敗してしまった場合など性交渉後に服用する緊急避妊薬のことです。プロゲステロンが主成分で、排卵後に内服すると、精子と受精した卵子の着床を妨げたり子宮内膜を剥離させたりする効果があります。また、排卵前に内服した場合、排卵を遅らせたり抑制したりする効果が期待できます

低用量ピル・超低用量ピルはさらに4世代に分かれる

前述の低用量ピルおよび超低用量ピルは、プロゲステロンの種類や開発順により、さらに4つの世代に分類されます。一般的に、世代が新しくなるとアンドロゲン作用が弱くなるといわれており、体重増加や多毛、ニキビなどの副作用軽減が期待されています

また、これらは低用量のEP配合剤であるため、LEP(Low dose Estrogen-Progestin)製剤と総称されることもあります。

第1世代

第1世代のプロゲステロンは、ノルエチステロン(NET)が配合されている、シンフェーズやルナベル(LD/ULD)、フリウェル(LD/ULD)などの製品が該当します。フリウェルはルナベルのオーソライズドジェネリック(AG)であり、原薬、添加物、製造方法が同等です。また、LDはLow Dose(低用量)、ULDはUltra Low Dose(超低用量)をあらわしています。

第2世代

第2世代のプロゲステロンは、レボノルゲストレル(LNG)が配合されている、トリキュラーやラベルフィーユ、ジェミーナなどの製品が該当します。トリキュラーおよびラベルフィールは3相性ピルと呼ばれ、女性の生理的なホルモン動態にあわせて、1周期内服する間にホルモンの量を3段階に増減させています。ジェミーナは月経困難症に用いられる1相性の超低用量ピルです。

第3世代

第3世代のプロゲステロンは、デソゲストレル(DSG)が配合されているマーベロンやファボワールなどの製品です。アンドロゲン作用が少ないため、大人ニキビや多毛症の改善が期待できるという特徴があります。ファボワールはマーベロンのジェネリック医薬品です。

第4世代

第4世代のプロゲステロンとしては、ドロスピレノン(DRSP)が配合されている、ヤーズおよびヤーズフレックスがあげられます。国内では2010年(ヤーズフレックスは2017年)から発売されている、比較的新しいピルです。月経困難症や子宮内膜症(ヤーズフレックスのみ)では保険適用されています。

ヤーズとヤーズフレックスの違いは?

ヤーズとヤーズフレックスの違いは?

ヤーズとヤーズフレックスは、いずれも同じ有効成分が配合された医薬品です。まずはそれぞれの概要について確認したうえで、相違点についてご説明します。

ヤーズとは?

ヤーズは、第4世代の超低用量ピルで、1錠中にドロスピレノン3mgおよびエチニルエストラジオール0.020mg(エチニルエストラジオールベータデクスとして)が配合されています。1シート28錠中24錠は実薬で、残りの4錠はプラセボです。実薬部分は淡赤色で「DS」の識別コードが、プラセボ部分は白色で「DP」の識別コードが刻印されています。

排卵を抑え、子宮内膜症が厚くならないようにして痛みの原因となる物質の産生を抑制し、月経困難症の症状を和らげる働きがあります。実薬が24錠タイプで、休薬期間が4日間と短く(他のピルは7日間)ホルモン変動が少ないため、副作用が少ないことが特徴です。

ヤーズフレックスとは?

ヤーズフレックスは、ヤーズと同様に第4世代の超低用量ピルで、1錠中にドロスピレノン3mgおよびエチニルエストラジオール0.020mg(エチニルエストラジオールベータデクスとして)が配合されています。1シート28錠中のすべてが実薬で、ヤーズの実薬部分と同じく、淡赤色で「DS」の識別コードが刻印されています。

ヤーズフレックスは、2017年4月から発売されたヤーズのラインナップの一つで、最長で120日間連続して服用できる点が特徴です。作用機序は基本的にヤーズと同じですが、月経困難症の症状の緩和に加えて、子宮内膜症の痛みに対して用いられる場合もあります。

ヤーズとヤーズフレックスは何が違うのか?

ここではヤーズとヤーズフレックスのおもな違いについて解説していきます。

■連続服用が可能な期間

ヤーズとヤーズフレックスは、いずれも同じ有効成分が配合された医薬品です。違いとしては、ヤーズでは1シート28錠中24錠に有効成分が配合され、残りの4錠はプラセボですが、ヤーズフレックスでは28錠すべてに有効成分が配合されています

これにより、ヤーズフレックスでは低用量ピル(超低用量ピルを含む)において、国内で初めて連続服用が可能となりました。定期的な休薬期間の回数を少なくし、休薬期間に多くみられるホルモン関連症状(頭痛、骨盤痛、腹部膨満感、乳房痛など)を軽減させる効果が期待されています

さらに、ヤーズフレックスでは服用中に起きる出血にあわせて休薬期間を設けるため、28日周期で服用する場合に比べて、出血の回数や痛みを伴う出血日数の減少も期待できます。

■保険適用の範囲

ヤーズでは月経困難症のみ保険適用されていますが、ヤーズフレックスは月経困難症に加えて、子宮内膜症に伴う疼痛の改善に対しても保険適用されています。薬価は、ヤーズでは234.80円であるのに対して、ヤーズフレックスでは280.10円となっています(いずれも2021年4月1日時点)。

それぞれの医薬品について正しく理解しよう

この記事では、ヤーズとヤーズフレックスの違い、ピルの種類について解説しました。

月経困難症や子宮内膜症は、月経がある女性であれば誰もが経験する可能性のある病気で、月経困難症で悩むの患者さまの数は800万人を超えるといわれています。しかし、治療を受けている方の数は少なく、病気への理解が得られていないのが現状です。

薬剤師においても、病院の婦人科やその門前薬局で働いた経験がなければ、関わる機会はそう多くありません。この記事を参考にして、ピルについての知識を再確認してみてはいかがでしょうか。

▼参考資料はコチラ
ヤーズ®配合錠 添付文章

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/09/13

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