業界動向
  • 公開日:2021.06.17

薬剤師が知っておくべき消毒薬の基礎知識

薬剤師が知っておくべき消毒薬の基礎知識

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、手指や使用した備品類などの消毒は日常になりました。薬剤師も職場での細やかな消毒が求められたり、患者さまから消毒薬について聞かれたりする機会も増えていることでしょう。

しかし、一口に消毒薬といっても、実は様々な種類があります。種類によって特徴が異なり、なかには手指など体への使用に適さないものもあり、適切に使用しなければかえって悪影響を与えてしまうこともあるのです。

この記事では消毒薬について、その重要性や種類、またリスクなどを詳しく解説します。自分自身の感染対策などにも役立つ知識なので、ぜひ参考にしてください。

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消毒の重要性とは?

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細菌やウイルスから身を守るためには、日々の消毒が重要だといわれています。とくに手指などへの消毒に有効とされているのが、消毒用エタノール(アルコール)です。流水や石鹸などを用いた手洗いがすぐにできないときなど、アルコール消毒を用いることで安全性を高められます。ただしアルコールに過敏な方は皮膚などに何らかの影響が出る可能性があるので、利用を控えるように指導しましょう。

また、基本となる手指消毒だけでなく、ドアノブやスイッチなど複数名が触れる部分の消毒も大切です。いくら手指を消毒していても、こうした箇所に触れたことで細菌やウイルスが体内に入り込んでしまう危険性があります。なお、備品などに対してはアルコール以外に、次亜塩素酸水などの利用も有効です。

消毒薬の分類と選び方

消毒薬の分類と選び方

消毒薬には大きく3つの分類があり、それぞれの特徴や適した用途が異なります。正しく消毒を行うため、あらかじめ覚えておきましょう。

高水準消毒薬

高水準消毒薬は、多数の芽胞がある場合以外、ほぼすべての微生物を死滅させられます。人体への使用は危険ですので、絶対に避けてください。使用する場合はゴム手袋やマスク、ゴーグルなどの着用が必要です。なお、高水準消毒薬はさらに以下のように分類されます。おもに医療現場において、器具類の消毒などのために用いられる消毒薬です。

  • アルデヒド系(グルタラール、フタラールなど)
  • 酸化剤系(過酢酸 など)
  • 中水準消毒薬

    中水準消毒薬は、結核菌や栄養型細胞など多くのウイルスを殺滅します。以下のように細かく分類され、人体や複数の人が触れる場所、共有する備品類まで幅広い消毒に用いられる消毒薬です

  • アルデヒド系(ホルマリンなど)
  • 塩素系(次亜塩素酸ナトリウムなど)
  • ヨウ素系(ポビドンヨード、ヨードチンキなど)
  • アルコール系(エタノール、イソプロパノールなど)
  • フェノール系(フェノール、クレゾールなど)
  • 酸化剤系(オキシドールなど)
  • エタノールやヨードチンキ、オキシドールなどは、一般にも良く聞かれる消毒薬名でしょう。中水準消毒薬は手指消毒にも用いられ、とくにエタノールなどは有効とされています。

    低水準消毒薬

    低水準消毒薬は、一般細菌の消毒に有効です。肌への刺激や金属などの腐食作用は少ないため様々な場面で使用できますが、消毒効果は高水準消毒薬や中水準消毒薬と比較すると低くなります。

  • 第四級アンモニウム塩系(ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物など)
  • 両性界面活性剤(アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩など)
  • ビグアナイド系(クロルヘキシジングルコン酸塩など)
  • 色素系(アクリノール水和物など)
  • 手指消毒に適した消毒薬は?

    手指消毒に適した消毒薬は?

    前述した消毒薬の分類から、手指消毒には「中水準消毒薬」が適しているといえるでしょう。なかでも一般に広く用いられているのが「アルコール(消毒用エタノール)」。厚生労働省でも手指の消毒・除菌に向いたものとして、水や石鹸での洗浄と並んでアルコール消毒薬をあげています。

    なお、店舗などで「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」を消毒用に設置しているのを目にしたことがあるかもしれません。こちらも、確かに消毒薬として殺菌効果は期待できます。しかし、手指消毒には向いておらず備品などの消毒に適したものです。そのため、手指消毒にはできるだけアルコールの利用が推奨されます。

    消毒薬の使用方法と注意点

    消毒薬の使用方法と注意点

    消毒薬は細菌やウイルスから体を守ってくれる一方、使用方法を誤ると大きな危険が伴います。適切な使用方法、そして考えられるリスクについても確認しておきましょう。

    まずは有機物を取り除く

    消毒したい面に消毒薬が触れるよう、あらかじめ不着している有機物を除去しましょう。器具等なら洗剤で洗ってから消毒します。手指消毒であれば、その場で石鹸やハンドソープを使った丁寧な手洗いができるのであれば、さらに消毒薬を使う必要はないとされています。

    用途に応じた消毒薬の選択

    人によっては、低水準・中水準の消毒薬でも肌が荒れてしまうことがあります。何らかの症状がみられる場合には、使用を避けるようにしてください。また、高水準消毒薬は皮膚炎等を引き起こすこともあるため、絶対に人体に使用してはいけません。消毒する対象や素材、肌の特性に応じた消毒薬の選択が大切です

    誤飲等で起きる症状や対応

    消毒薬の種類によっても異なりますが、誤って飲んでしまうと嘔吐や腹痛、下痢、呼吸困難など様々な症状を起こす可能性があり非常に危険です

    たとえば手指消毒に適するとされるアルコールも、誤飲によって危険量が体内に入ると、急性アルコール中毒での運動失調や嘔吐、視力障害、昏睡などを起こすリスクがあります。また、備品などの消毒に用いられる次亜塩素酸ナトリウム水溶液でも、口腔・咽頭などへの灼熱感や疼痛、嘔吐などが考えられるため細心の注意が必要です。

    やってはいけない消毒薬の使用・保管方法

    誤飲のほか、噴霧したり目に入れたり、アルコール系では火気の近くで使ったりすることも避けましょう。あるいは使用期限を過ぎたもの、複数種を混ぜて使うことも危険です。容器は消毒薬がこぼれないよう蓋が閉まる容器に入れ、直射日光の当たらない涼しい場所に保管してください

    患者さまへ消毒液に関する正しい情報提供を

    細菌やウイルスから体を守るのに有効な消毒ですが、消毒薬にも様々な種類があり、特徴に応じて適した使用対象などが異なります。とくに基本となる手指消毒であれば、アルコール(消毒用エタノール)の使用が推奨されるでしょう。

    また、手指だけでなく、日頃から触れる備品などの消毒にも意識を向けましょう。とくにドアノブなど頻繁に複数の人が触れる場所、共有する物なども、同様にこまめな消毒が必要です。

    なお、消毒薬を使用するにあたっては使用方法や適切に保管することが大切です。誤った使い方をしてしまうと、場合によっては命に関わるような危険を招きかねません。患者さまがご自身の用途や目的に合わせた消毒薬を選べるよう、正しい情報提供を心がけましょう。

    ファルマラボ編集部

    「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

    記事掲載日: 2021/06/17

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