業界動向
  • 公開日:2019.10.15

2019年 薬機法改正とは?<5つのポイントを解説>

2019年 薬機法改正とは?<5つのポイントを解説>

2019年3月19日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の一部を改正する案が国会に提出されました。これは、2013年に薬事法が薬機法へと改められた際、施行後5年を目途とする見直しの検討規定が設けられたためです。

薬剤師を取り巻く環境が変わる重要な出来事です。このタイミングで、改めて何が変わったのかポイントを押さえておくと良いでしょう。

そこで今回は、【2019年 薬機法改正<5つのポイント>】を解説していきます。

<5つのポイントを解説>2019年の薬機法改正まとめ

【1】「薬剤師・薬局のあり方」の見直し

医薬分業の現状を踏まえて、「薬剤師が本来の役割を果たし地域の患者を支援するための医薬分業の今後のあり方」がまとめられました。 地域包括ケアシステムが広がる程、 薬局や薬剤師は地域の実情に応じる必要が出てくるでしょう。そのために必要なことが3つあります。

1.服用期間を通じた継続的な薬学的管理

患者さまの服用期間中は、その状況を把握して継続的に薬学的管理を行います。また、情報提供や薬学的知見に基づき指導することも必要です。

2.医師や看護師などに対する情報の提供

把握した情報は、医師や看護師をはじめ医療機関などに共有します。情報を踏まえて連携することで、患者さまに対して一元的・継続的な薬物療法を提供します。

3.薬剤師が持つ知識・スキルの向上

在宅医療の重要が増加、がん治療に関する外来処方の増加など、専門性の高い薬学的管理が求められるようになることが見込まれます。これらの対応においては、専門性が高く実践経験のある薬剤師が中心的な役割を果たす必要があるでしょう。

【2】地域連携薬局・専門医療機関連携薬局の認定

『患者のための薬局ビジョン』を踏まえ、特定の機能を有する薬局の認定が盛り込まれました。これは患者さまが自身に適した薬局を選択できるようにするためです。

かかりつけ薬剤師・薬局の機能は【地域連携薬局】に。退院時の医療機関等との連携や、在宅医療等に地域の薬局と連携しながら一元的・継続的に対応できる薬局を指します。また、高度薬学管理機能は【専門医療機関連携薬局】に。こちらは、がん等の専門的な薬学管理に対して、他の医療期間と連携して対応できる薬局を指します。

これにより、患者さまは、外来・入院・在宅医療・介護施設など療養環境を移行する場合や、複数の疾患によって多くの薬剤を服用している場合であっても、自身に適した安全かつ有効な薬物療法を継続的に受けられるようになるでしょう。なお、現行の「健康サポート薬局」(薬機法施行規則上の制度)は、引き続き推進されます。

【3】テレビ電話等による服薬指導の一部解禁

従来、処方箋が必要となる薬剤は、薬剤師による対面での服薬指導が義務づけられていました。しかし、今回の改正により、テレビ電話等により適切な服薬指導ができる場合のみ、対面服薬指導義務の例外が認められることとなりました。今後、専門家によって適切なルールを検討し、厚生労働省令等において具体的な方法を定めることが予定されています。

薬機法9条の3に、遠隔服薬指導の内容が追記されるので確認しておきましょう。また、発表された遠隔服薬指導に関する規定は以下の通りです。

[ルールの基本的な考え方]

● 患者側の要請と患者・薬剤師の合意が必要となる

● 初回は原則対面で服薬指導を行う

● かかりつけ薬剤師により実施する

● 処方医や医療機関と緊急時の連絡体制を確保する

● テレビ電話等の画質や音質を確保する 等

【4】添付文書の同梱廃止に。情報提供方法は電子化に

製品納品時の添付文書の同封を廃止。医療現場に対する最新情報の提供は原則電子化することとなりました。これに伴い、スマートフォンやタブレットなど端末を活用し、医療機関や薬局等に情報を確実に届ける仕組みの構築が求められています。

また、同梱に代わる手段として、製造販売業者の責任下で、医薬品・医療機器等の初回納品時に紙媒体による添付文書の提供が求められています。ただし、製品の外箱にQRコードを設けるなど、最新情報へのアクセス手段も用意する必要があるようです。

ちなみに、一般用医薬品等の消費者が直接購入できるものは、使用時に添付文書を確認できるようにするため、現行のまま同梱による対応を行います。

※2019年4月より、医療用医薬品添付文書の記載要領が変更されました。2024年3月まで移行期間があるため、実際の添付文書は順次置き換わっていくこととなります。

【5】先駆け審査指定制度・条件付き早期承認制度の法制化

革新的な医薬品・医療機器等、小児用法用量設定など医療上充足されていない医薬品・医療機器等は、「先駆的医薬品」や「特定用途医薬品」に指定されることで早期承認できる『先駆け審査指定制度』が法令にて明確化されました。具体的には、「ラパリムスゲル」「ゾフルーザ錠」「ゾスパタ錠」が指定されています。

また、重篤で有効な治療方法が乏しい疾患が対象の医薬品で、患者数が少ない等の理由で検証的臨床試験の実施が困難なもの、あるいは検証的臨床試験に長期間を要するものに関しても早期承認ができる『条件付き早期承認制度』も法制化されました。具体的には、「ローブレナ」「キイトルーダ」が該当します。

薬剤師にとって、医薬品・医療機器の承認制度は直接的な関わりの少ない分野ですが、薬機法改正のポイントの一つなのでしっかり押さえておきましょう。

▼参考資料はコチラ>医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案の概要|厚生労働省

医薬分業が進む中で、薬機法改定の理解は必要不可欠

この記事では、2019年の薬機法改正における重要なポイントを解説しました。

厚生労働省は、『患者のための薬局ビジョン』を2015年に策定し、薬剤師が専門性を発揮できるように施策を進めてきました。取り巻く環境が大きく変わりつつあると感じる方もいらっしゃるでしょう。そうした中で、今回の薬機法改定により、国が目指す医薬分業の形がより明らかになりました。求められる薬剤師になるためにもしっかり理解しておきましょう。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/10/15

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