キャリア&スキルアップ
2020.08.18

ハイリスク薬とは?基礎知識と薬歴の書き方

ハイリスク薬とは?基礎知識と薬歴の書き方

ハイリスク薬とは、使い方を誤ると患者さまに大きな被害をもたらす場合もある「とくに安全管理が必要な医薬品」のこと。重篤な患者さまに用いられる医薬品だけでなく、血液凝固阻止薬や糖尿病用薬など、薬局で日常的に扱う医薬品にもハイリスク薬は含まれています。

また、ハイリスク薬を調剤した際に「特定薬剤管理指導加算」を算定することもありますが、その要件や求められる指導内容についても詳しく知っておかなくてはなりません。

この記事では、ハイリスク薬について知りたいと考える薬剤師に向けて、【ハイリスク薬の概要/薬学的管理指導/薬歴の記入方法】について解説していきます。

ハイリスク薬とは?

「ハイリスク薬」とは、副作用や事故にとくに注意が必要で、安全管理の専門家による薬学的管理が必要な医薬品のことです。医療提供施設によりその定義が異なる場合がありますが、社団法人 日本薬剤師会の定めた「薬局における ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」によると、以下に示す3つに分類されます。

※ただし、調剤報酬点数表における特定薬剤管理指導加算(いわゆる、ハイリスク薬管理指導加算)の対象薬剤とは、必ずしも同一ではありません。


Ⅰ.厚生労働科学研究「『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル (令和2年改訂版)」において「ハイリスク薬」とされているもの

①投与量等に注意が必要な医薬品
②休薬期間の設けられている医薬品や服薬期間の管理が必要な医薬品
③併用禁忌や多くの薬剤との相互作用に注意を要する医薬品
④特定の疾病や妊婦等に禁忌である医薬品
⑤重篤な副作用回避のために、定期的な検査が必要な医薬品
⑥心停止等に注意が必要な医薬品
⑦呼吸抑制に注意が必要な注射薬
⑧投与量が単位(Unit)で設定されている注射薬
⑨漏出により皮膚障害を起こす注射薬
※⑥~⑨は注射薬に関する特記事項

Ⅱ.平成28年度の診療報酬改定により見直された薬剤管理指導料1のハイリスク薬

①抗悪性腫瘍剤
②免疫抑制剤
③不整脈用剤
④抗てんかん剤
⑤血液凝固阻止剤
⑥ジギタリス製剤
⑦テオフィリン製剤
⑧カリウム製剤(注射薬に限る)
⑨精神神経用剤
⑩糖尿病用剤
⑪膵臓ホルモン剤
⑫抗HIV薬

Ⅲ.上記以外で、薬剤業務委員会において指定した「ハイリスク薬」

①治療有効域の狭い医薬品
②中毒域と有効域が接近し、投与方法・投与量の管理が難しい医薬品
③体内動態に個人差が大きい医薬品
④生理的要因(肝障害、腎障害、高齢者、小児等)で個人差が大きい医薬品
⑤不適切な使用によって患者に重大な害をもたらす可能性がある医薬品
⑥医療事故やインシデントが多数報告されている医薬品
⑦その他、適正使用が強く求められる医薬品
▼参考資料はコチラ
「医薬品の安全使用のための業務手順証作成マニュアル(令和2年改定)」日本薬剤師会
「薬局における ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」日本薬剤師会
「ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(ver.2.2)」日本病院薬剤師会

ハイリスク薬の薬学的管理指導

薬剤師イメージ

ハイリスク薬は文字どおりリスクの高い医薬品であるため、安心安全に薬物治療を行うためには、専門家による薬学的管理および指導が不可欠です。薬剤師が薬学的管理指導を行う場合には、患者さまが医師から受けた説明や指導内容を確認し、薬剤師の視点から患者さまの基本情報や心理状態、生活環境などの情報を収集し、副作用回避や有効性確認、医薬品適正使用などの薬学的管理に活用することが求められています。

<薬学的管理指導における必須項目>

1)患者に対する処方内容(薬剤名、用法・用量等)の確認
2)服用患者のアドヒアランスの確認(飲み忘れ時の対応を含む)
3)副作用モニタリング及び重篤な副作用発生時の対処方法の教育
4)効果の確認(適正な用量、可能な場合の検査値のモニター)
5)一般用医薬品やサプリメント等を含め、併用薬及び食事との相互作用の確認

薬学的管理指導では、上記の必須5項目に加え、疾患や薬剤の特性に応じた内容を確認することが求められています。

たとえば、抗悪性腫瘍剤では「最適な疼痛緩和のための情報収集、麻薬の使用確認、支持療法の処方・使用の確認」、血液凝固阻止剤では「服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休止)、出血傾向を考慮した過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策」、テオフィリン製剤では「副作用モニタリングおよび重篤な副作用発生時の対処方法の指導、喫煙やカフェイン摂取等の嗜好歴」 など、薬剤や患者さまの背景ごとに確認・指導する内容は様々です。

また、ハイリスク薬(別に厚生労働大臣が定めるものに限る)が処方された患者さまに対して、調剤時に関連副作用の有無等を確認し、服用に際しての注意事項等について指導を行うことで、「特定薬剤管理指導加算」として10点を算定することが認められています。

ただし、加算の算定のためには前述の「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」を十分に理解した上で、適切な管理および指導を行い、薬剤服用歴(薬歴)管理簿に必要事項を記入する必要があります。

▼日本薬剤師会のホームページから、「ハイリスク薬」の薬学的管理指導においてとくに注意すべき事項についてまとめたPDFファイルがダウンロード可能です。
「ハイリスク薬」の薬学的管理指導において特に注意すべき事項

ハイリスク薬の薬歴の書き方

薬剤師イメージ

一般的な医薬品と比べてよりきめ細かい薬学的管理が必要である「ハイリスク薬」では、薬歴の作成も非常に重要です。記載の原則は通常の薬歴と同じですが、「特定薬剤管理指導加算」算定の根拠でもあるため、必須記載事項及び患者さまへの指導内容を十分に記載するようにしましょう

具体的には、前項でご紹介した必須5項目に加え、ハイリスク薬としての特別な管理・指導の内容を記入します。服薬状況や効果の発現状況、注意すべき副作用、併用薬の有無等に加えて、検査値やバイタルサインの些細な徴候も記入します。SOAP形式を用いて薬歴を記入している場合には、ハイリスク薬に対してプロブレムが想定された場合を除き、SOAPとは別に記入する必要があります。

また、ハイリスク薬が複数処方されている場合には、そのすべての薬剤について必要な薬学的管理及び指導を行うことが求められています。さらに、継続的に来局されている患者さまであっても、毎回すべての薬剤について指導することが必要です。服薬指導の時間が長くなってしまいがちであるため、「大切なお薬が出ているので、毎回のことになりますが、いくつか確認させてください」など、事前に断りを入れることもポイントです。

▼関連記事はコチラ
【SOAP薬歴の記入事例】薬歴を速くわかりやすく書く方法を徹底解説
新着の薬剤師求人特集

まとめ

この記事では、ハイリスク薬について知りたい薬剤師に向けて、ハイリスク薬の概要や薬学的管理指導、薬歴の記入方法について解説してきました。

ハイリスク薬における薬学的管理の評価は年々拡大傾向にありますが、確認すべき項目が困難、算定要件が不明確といった理由から、算定していない施設も少なくありません。また、薬歴の記載事項に不備があり、個別指導の際に指摘されるケースもあります。ハイリスク薬について理解を深め、服薬指導や薬歴を充実させることにより、患者さまによりよい薬物治療を提供できるようにしましょう。

記事掲載日: 2020/08/18

あわせて読まれている記事