- 公開日:2020.08.18
- 更新日:2023-11-10
ハイリスク薬とは?算定要件などの基礎知識と薬歴の書き方を解説
ハイリスク薬とは、使い方を誤ると患者さまに大きな被害をもたらす場合もある「とくに安全管理が必要な医薬品」のこと。重篤な患者さまに用いられる医薬品だけでなく、血液凝固阻止薬や糖尿病用薬など、薬局で日常的に扱う医薬品にもハイリスク薬は含まれています。
また、ハイリスク薬を調剤した際に「特定薬剤管理指導加算」を算定することもありますが、その要件や求められる指導内容についても詳しく知っておかなくてはなりません。
この記事では、ハイリスク薬について知りたいと考える薬剤師に向けて、【ハイリスク薬の概要/薬学的管理指導/薬歴の記入方法】について解説していきます。
ハイリスク薬とは?
「ハイリスク薬」とは、副作用や事故にとくに注意が必要で、安全管理の専門家による薬学的管理が必要な医薬品のことです。医療提供施設によりその定義が異なる場合がありますが、社団法人 日本薬剤師会の定めた「薬局における ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」によると、以下に示す3つに分類されます。
※ただし、調剤報酬点数表における特定薬剤管理指導加算1(いわゆる、ハイリスク薬管理指導加算)の対象薬剤とは、必ずしも同一ではありません。
Ⅰ.厚生労働科学研究「『医薬品の安全使用のための業務手順書』作成マニュアル (令和2年改訂版)」において「ハイリスク薬」とされているもの
Ⅱ.平成28年度の診療報酬改定により見直された薬剤管理指導料1のハイリスク薬
Ⅲ.上記以外で、薬剤業務委員会において指定した「ハイリスク薬」
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▼参考資料はコチラ
「医薬品の安全使用のための業務手順証作成マニュアル(令和2年改定)」日本薬剤師会
「薬局における ハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」日本薬剤師会
「ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(ver.2.2)」日本病院薬剤師会
ハイリスク薬の薬学的管理指導
ハイリスク薬は文字どおりリスクの高い医薬品であるため、安心安全に薬物治療を行うためには、専門家による薬学的管理および指導が不可欠です。薬剤師が薬学的管理指導を行う場合には、患者さまが医師から受けた説明や指導内容を確認し、薬剤師の視点から患者さまの基本情報や心理状態、生活環境などの情報を収集し、副作用回避や有効性確認、医薬品適正使用などの薬学的管理に活用することが求められています。
<薬学的管理指導における必須項目>
薬学的管理指導では、上記の必須5項目に加え、疾患や薬剤の特性に応じた内容を確認することが求められています。
たとえば、抗悪性腫瘍剤では「最適な疼痛緩和のための情報収集、麻薬の使用確認、支持療法の処方・使用の確認」、血液凝固阻止剤では「服薬管理の徹底(検査・手術前・抜歯時の服薬休止)、出血傾向を考慮した過量投与の兆候(あざ、歯茎からの出血等)の確認とその対策」、テオフィリン製剤では「副作用モニタリングおよび重篤な副作用発生時の対処方法の指導、喫煙やカフェイン摂取等の嗜好歴」 など、薬剤や患者さまの背景ごとに確認・指導する内容は様々です。
また、ハイリスク薬(別に厚生労働大臣が定めるものに限る)が処方された患者さまに対して、調剤時に関連副作用の有無等を確認し、服用に際しての注意事項等について指導を行うことで、「特定薬剤管理指導加算1」として10点を算定することが認められています。
ただし、加算の算定のためには前述の「薬局におけるハイリスク薬の薬学的管理指導に関する業務ガイドライン(第2版)」を十分に理解した上で、適切な管理および指導を行い、薬剤服用歴(薬歴)管理簿に必要事項を記入する必要があります。
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▼日本薬剤師会のホームページから、「ハイリスク薬」の薬学的管理指導においてとくに注意すべき事項についてまとめたPDFファイルがダウンロード可能です。
「ハイリスク薬」の薬学的管理指導において特に注意すべき事項
特定薬剤管理指導加算1と2のちがい
令和2年度診療報酬改定より、がん患者に対する薬局での薬学的管理等の評価として「特定薬剤管理指導加算2」が新設されました。
特定薬剤管理指導加算1は特に安全管理が必要な医薬品(ハイリスク薬)を対象としているのに対し、特定薬剤管理指導加算2は化学療法(抗悪性腫瘍剤)が加算対象です。
要件に合致した指導を行えば、月1回まで100点の加算が可能です。
特定薬剤管理指導加算2の算定要件は以下のとおりです。
[算定要件]
②電話等により、抗悪性腫瘍剤及び制吐剤等の支持療法に係る薬剤に関し、服用状況や副作用の有無等を患者等に確認する
③上記の内容を踏まえて、保険医療機関に必要な情報を文書により提供する
ハイリスク薬の薬歴の書き方
一般的な医薬品と比べてよりきめ細かい薬学的管理が必要である「ハイリスク薬」では、薬歴の作成も非常に重要です。記載の原則は通常の薬歴と同じですが、「特定薬剤管理指導加算」算定の根拠でもあるため、必須記載事項及び患者さまへの指導内容を十分に記載するようにしましょう。
具体的には、前項でご紹介した必須5項目に加え、ハイリスク薬としての特別な管理・指導の内容を記入します。服薬状況や効果の発現状況、注意すべき副作用、併用薬の有無等に加えて、検査値やバイタルサインの些細な徴候も記入します。SOAP形式を用いて薬歴を記入している場合には、ハイリスク薬に対してプロブレムが想定された場合を除き、SOAPとは別に記入する必要があります。
また、ハイリスク薬が複数処方されている場合には、そのすべての薬剤について必要な薬学的管理及び指導を行うことが求められています。さらに、継続的に来局されている患者さまであっても、毎回すべての薬剤について指導することが必要です。服薬指導の時間が長くなってしまいがちであるため、「大切なお薬が出ているので、毎回のことになりますが、いくつか確認させてください」など、事前に断りを入れることもポイントです。
まとめ
この記事では、ハイリスク薬について知りたい薬剤師に向けて、ハイリスク薬の概要や薬学的管理指導、薬歴の記入方法について解説してきました。
ハイリスク薬における薬学的管理の評価は年々拡大傾向にありますが、確認すべき項目が困難、算定要件が不明確といった理由から、算定していない施設も少なくありません。また、薬歴の記載事項に不備があり、個別指導の際に指摘されるケースもあります。ハイリスク薬について理解を深め、服薬指導や薬歴を充実させることにより、患者さまによりよい薬物治療を提供できるようにしましょう。
ファルマラボ編集部
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