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  • 公開日:2024.05.30

プロトンポンプ阻害薬(PPI)による副作用とは?長期服用や効能効果について解説

プロトンポンプ阻害薬(PPI)による副作用とは?長期服用や効能効果について解説

2024年3月12日に開催された厚生労働省の「第27回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において、約6年ぶりにプロトンポンプ阻害薬(Proton pump inhibitor;以下PPI)のスイッチOTC化に向けた議論が再開されました。

この会議を踏まえて、薬剤師もPPIに関する知識をおさらいしておく必要があるでしょう。本記事では、PPIの基本的な情報はもちろん、副作用や長期服用の問題点について解説していきますので、ぜひ参考にしてください。

PPIに関する基本的な情報

まずはPPIの基本的な情報として、効能効果や作用機序をおさらいします。

PPIとは何か?その作用機序とは

PPIは、胃の壁細胞に存在するプロトンポンプに作用し、胃酸の分泌を抑制する薬です。胃酸の分泌が抑制されることで、胃酸による胃や食道の粘膜の損傷を防ぎ、胸やけや胃痛などの症状を緩和する効果が期待できます。

またPPIは、胃酸の分泌を長時間にわたって抑えられるとされており、一日一回の服用で胃酸の過剰分泌を抑制することができます。

PPIに含まれる主な成分と効能

第27回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議』で議論とされたPPIは、エソメプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾールです。どの成分も胃酸の過剰な分泌を抑制する効果があるとされているため、胸やけや胃痛、逆流性食道炎などの症状の緩和や予防が期待できます。

一方で、PPIの長期的な服用においては、鉄やビタミン類の吸収不良、下痢、腎障害、認識脳の低下などの副作用リスクが懸念されています。そのためPPIの使用は、患者さまの状態に応じて適切な期間と用量で行わなければなりません。詳細は後述しますが、長期服用に伴う潜在的な副作用リスクは、PPIのスイッチOTC化における大きな障壁となっています。

PPIのOTC化への動きとは

PPIのOTC化への動きとは

PPIのOTC化への動きや、これまでの背景について解説していきます。

PPIのOTC化に関するこれまでの議論

PPIのOTC化に関する議論は2018年に開始され、これまでに度重なる会議やパブリックコメントが実施されました。その結果、主に下記に示した理由から、PPIのOTC化には至りませんでした。

  • PPIの長期内服による重篤な副作用のリスクが懸念される
  • インターネット販売では短期使用が担保できない(長期にわたり使用される懸念)など
  • その後、内閣府による規制改革実施計画を踏まえ、2021年3月にPPIのOTC化に対する課題や、その解決策を整理する方針で検討会議の開催要綱が改正されました。

    この改正を受け、2022年にはエソメプラゾール、2023年にはオメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウムの計4成分について、OTC化にかかわる再検討の要望が受理され、再びPPIのOTC化について議論されることになったのです。

    評価検討会議で話題となった論点

    エソメプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウムの4成分についての議論では、前回の議論と同様にPPIの長期服用に関連した副作用リスクや、インターネット販売における不適切使用のリスクが論点となっています。

    ただし、今回の議論では『胃のお悩み症状 相談用ガイド』を用いて短期使用を促す指導をしていくことで、長期服用によって懸念される重篤な副作用を回避できるのではないか」という意見も挙がりました。

    しかし、インターネット販売におけるPPIの不適切使用に対する懸念は、まだ検討の余地があるとされています。適切な情報共有やリスク回避のために、他職種連携の必要性なども課題として上がっています。

    PPIの副作用

    今回の評価検討会議で取り上げられたエソメプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールナトリウムの4成分はいずれもPPIであり、基本的な作用機序や副作用は共通しています。

    以下に、PPIの主な副作用について、重篤な副作用と、その他の副作用に分けてご紹介します。薬剤ごとに副作用の種類や発現頻度に若干の相違があるため、詳細は製剤添付文書でご確認ください。

    重大な副作用その他の副作用
    ショック、アナフィラキシー
    汎血球減少症、無顆粒球症、溶血性貧血
    血小板減少
    劇症肝炎、肝機能障害、黄疸、肝不全
    中毒性表皮壊死融解症
    間質性肺炎
    間質性腎炎、急性腎障害
    横紋筋融解症
    低ナトリウム血症
    錯乱状態
    視力障害
    偽膜性大腸炎等の血便を伴う大腸炎
    発疹、皮膚炎、そう痒症、蕁麻疹
    腹痛、下痢、嘔吐、便秘、口内炎
    カンジダ症、口渇、貧血
    頭痛、錯感覚、傾眠、浮動性めまい
    不眠症、うつ病
    脱毛症、関節痛、筋痛、霧視
    倦怠感、多汗症、筋力低下
    低マグネシウム血症
    頻尿、味覚異常
    女性化乳房
    AST、ALT、Al-P、γ-GTPなどの上昇
    白血球減少、白血球増加、好酸球増多

    PPIの長期服用のリスクとは

    PPIのスイッチOTC化に対する議論において、最も懸念されている課題は、長期服用に関する副作用のリスクです。

    PPIの長期服用に関連した副作用のリスクについて、薬剤師が知っておくべき事項を解説します。

    PPIの長期投与で懸念される副作用のリスク

    PPIの長期服用に関連した副作用は、胃酸の分泌抑制に関連する副作用と、胃酸の分泌と関連しない副作用に分けることができます。前者の副作用として、感染性の胃腸炎や、ビタミン類の吸収阻害を挙げることができます。また、後者の副作用として、腎障害や認知機能の低下などを挙げることができます。

    がんのリスク

    米国の退役軍人の医療記録を用いて、中央値で10年間にわたる追跡調査を行ったコホート研究の結果によれば、PPIの長期服用は食道がんや胃がんなど、上部消化管におけるがん発生のリスク増加に関連していることが示されました。

    そのため、評価検討会議においては「PPIの内服によって上部消化管のがんの症状がマスキングされるため、がんの発見が遅れるリスクがある」との指摘もありました。

    一方で、「適切な用法用量通り使用するなど正しい使い方をすれば、OTC化は十分に可能である」という意見もありました。

    PPIの安全な服用のために薬剤師にできること

    PPIの安全な服用のために薬剤師にできること

    PPIのOTC化に関する議論が再開され、将来的にはPPIが市販でも購入できるようになるかもしれません。

    薬剤師は、PPIの効能効果はもちろん、潜在的な副作用リスクを理解したうえで、患者さまがPPIを適切に使用できるように指導していく役割を担っています。

    最後に、PPIの適正使用に関して薬剤師が留意おくべき事項を解説します。

    PPIの副作用や相互作用のリスクを熟知しておく

    前述したようなPPIの副作用はもちろん、他の薬剤との相互作用についても熟知しておく必要があります。

    薬剤師から患者さまに「今何か薬を飲まれていますか」と聞いても「飲んでいない」と答える方も中にはいるでしょう。相互作用についてあまり気にしていない患者さまもいるため、必ずリスクを伝えて、サプリメント類などを含めた内服薬や既往歴についての確認をするようにしましょう。

    他職種連携を強化する

    PPIのOTC化にあたっては、薬剤師と他の医療職が連携できるシステム構築が必要かもしれません。PPIの事例ではありませんが、患者さまが禁忌と知らずにOTC医薬品と医療機関からの処方薬を併用すると言ったケースは少なくないでしょう。医療機関や薬局等で服薬情報や医薬品購入履歴を共有するなど、多職種間の連携を強化することは、患者さまの安全を守ることにもつながります。

    使用目的や内服期間について確認する

    PPIのように、長期服用に伴う潜在的な副作用リスクがある薬については、患者さまの使用目的や内服期間について必ず確認しましょう。

    内服期間や中断のタイミングについて、患者さまと共に服薬計画を立てることで、長期服用や漫然的な服用を防ぐことができるように思います。

    PPIに限らず、市販されている一般用医薬品や要指導医薬品の中にも、長期服用や濫用のリスクを抱えている薬が存在します。長期にわたって服用しがちな薬剤については、患者さまとの関わりの中で、その使用目的や内服期間の確認をすることが大切です。

    PPIの服薬指導が正しくできるようになろう

    記事内ではPPIについて、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」における議論の詳細や、議論となっている4成分のPPIの効能効果や短期的な副作用、そして長期使用に伴う潜在的な副作用のリスク、PPIのOTC化にあたって薬剤師が留意すべき事項などを紹介しました。

    日頃の服薬指導や業界動向に関心をもちながら、患者さまが安心・安全にOTC化された医薬品を使用できるようにしていきましょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    ファルマラボ編集部

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    記事掲載日: 2024/05/30

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