「その人らしい生活が送れるよう」チームで支援をすることが在宅ケア

「その人らしい生活が送れるよう」チームで支援をすることが在宅ケア

ナースステーション東京所長
訪問看護認定看護師 名畑目 明美

「その人らしい生活が送れるよう」チームで支援をすることが在宅ケア

在宅ケア医療で活躍する 訪問看護師が語る薬剤師の必要性

「自宅で最期を迎えたい」と希望する患者さまは多いです。しかし、「最後は緩和ケアで」と考える患者さまやご家族もいらっしゃいます。在宅では看取りにかかわらず、患者さまやご家族の考えを尊重し、その人らしい生活が送れるようにチームで支援していく事が、在宅ケアの要と言えるでしょう。 ナースステーション東京 新宿事業所 文京サテライトの所長 名畑目 明美氏は、薬剤師も在宅ケアのチームメンバーとして加わる事とで、より利用者さんに安全な薬剤管理ができるようになると話します。今回は訪問看護師の目線で在宅ケアにおける薬剤師の役割についてお伺いしました。


病院と異なる、在宅ケアならではの看護のあり方とは


どのような経緯で訪問看護をされているのですか。

名畑目氏:私は看護師の資格を取得してから17年ほど臨床で看護をしていました。その後一旦家庭に入るため退職しました。復職を考えた頃は、介護保険がスタートしたばかりで、また新しくケアマネージャーという職種も誕生しましたし、今まで臨床しか経験がなかったので、「在宅での看護を学びたい」と思ったことがきっかけです。弊社に入職して、11年目を向かえます。弊社は代表取締役の内田恵美子が2000年に株式会社、日本在宅ケア教育研究所を設立し、研究や教育事業及び、現在は都内に7つの訪問看護事業所と6つの居宅介護支援事業所を持ち、122名体制で、訪問看護・訪問リハビリ・ケアマネージメント・教育・研究等事業を展開しています。

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臨床と在宅では求められる看護が違うように思いますがいかがでしょうか。

名畑目氏:臨床は治療が中心ですから、患者さまは安全に高度医療を求め、看護師には疾患や検査、治療に関する高い知識やスキル、治療に関する不安の緩和を求めることが多いと思います。病院が急性期医療だとすると、在宅は、慢性疾患をもち多病息才で「生活を送る場」での支援ですから、求められるものは、「自分らしい生活、自分らしい生き方を尊重し、自立を促しつつサポートする看護」だと考えます。また、家族看護も重要で、在宅基盤の経済や家族の健康が損なわれては、生活が破たんしてしまうので、家族の健康や介護を理解した上での支援も重要です。

多職種間での信頼関係の築き方とは


地域医療では多職種連携が求められますが、具体的にはどのようなことなのでしょうか。

名畑目氏:お互いによく顔の見える関係を築き、信頼関係を構築していくことが一番大事かなと思います。その為には、サービス担当者会議、退院時カンファレンス、クリニックや大学、地域で企画される勉強会には積極的に参加しています。そうすることで、お互い顔が見える関係になり、話す機会が重なると、更に相互の互換関係が見える関係となり、理念、仕事のやり方、人となりが理解できる連携となります。ご縁があって一緒にお仕事させて頂くと、お互いの仕事を評価しあうようになり、責任のある対応に心がけることにより「この先生、このケアマネージャー、このヘルパーさんだったら信頼できる」と確信に変わり、親近感がわき、リピートし合うことも増えていきますね。

薬剤師には何が望まれるのでしょうか。

名畑目氏:先ほどもお話ししましたが、在宅は「生活を継続する事を前提にしたケアの場」ですので、病状の視点だけではなく、食事や睡眠、排泄、精神状態、介護者の介護や健康状態、家庭での役割や生活ニーズを薬剤師の視点でしっかりアセスメントしてほしいです。また、認知症の向精神薬や眠剤、抗がん剤、麻薬、抗パーキンソン病薬等の服薬指導や副作用のモニタリング、在宅担当医への処方支援(患者に適切な処方や剤型、服薬時期等の支援)、残薬の管理、医療福祉職への薬剤に関する教育等もあげられます。現在も服薬管理は訪問看護師が携わっている事が多いのですが、やはり在宅ケアでは情報、問題を共有し、役割分担が明確である方が、より質の高いサービス提供に繋がると考えます。患者さまごとに相談したいことは変わってきますので、薬剤師さんの活躍を期待しています。

薬剤師さんが地域医療に入ってもらいたい


訪問看護では再梗塞や心不全、糖尿病等、病状が進行しない様に「予防的なケアをすることが重要」と考えます。その為には、日々の食事、睡眠、排泄、症状等生活全体のお話を丁寧に聞き取り、食事や生活指導が必要です。しかし訪問中、薬のセットや残薬確認、内服指導に費やす時間が少なくありません。そこで、薬剤師さんがチームにいればお任せできますし、患者さまやご家族にも適切な指導が可能となります。もっと薬剤師さんが地域医療に入ってもらいたいです。

在宅医療で直面する処方箋の問題とは


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退院、在宅移行、在宅医療の流れの中で薬剤師に何を求められますか。

名畑目氏:癌末期患者さまの退院時カンファレンスには、是非、在宅で関わる薬剤師さんにも出席してほしいですね。オピオイドに関して、入院中から「麻薬中毒になる」とか「寿命を縮める」と誤解していたり、「依存性に対する懸念」「副作用への不安」をもっている方には特に、薬剤師さんの出番ですと感じます。在宅移行時は内服に限らず、医療はシンプルにすることが介護者の負担を減らし、スムーズに移行できると考えます。老々介護においては、胃瘻の半固形化栄養剤、インスリンの週1回投与(ビデュリオン)等がよい例です。内服に関しては「一包化」をお願いしています。訪問看護の開始時は、複数の医療機関にかかり、処方や残薬の多い方が少なくありません。その残薬に対して無駄なく使う為の工夫を相談させていただきたいですね。 以前、スーパー一袋分の残薬を持ち帰ることもありました。その時はすぐに薬局に相談に行きましたね。残薬はとても大きな問題です。

MR経験のある薬剤師は特にコミュニケーション能力が高い


その中で薬の専門家としてどんな提案が求められるのでしょうか。

名畑目氏:MR経験のある薬剤師は、患者さまと家族のニーズをきちんと引き出して適切な薬剤指導ができるのではないかと思います。薬剤師の中でも特にコミュニケーション能力が高く、患者さまやご家族も安心されると思います。

最後に薬剤師にアドバイスをお願いします。

名畑目氏:在宅は患者さまやご家族、また他職種の方々から「人としても、多くの学びが得られます。」また、チームメンバーとして、是非、今後どんどん在宅ケアの現場に薬剤師さんが増えていってくれること願っていますが、先日、弊社の他ステーションで薬剤処方量が児には過多のまま調剤され、ご家庭に届いたことがありました。訪問看護師が以前の薬剤量を覚えていて、すぐ服薬中止を伝え再調剤されましたが、二重・三重のチェックと連携の必要性を痛感しました。このため、リスクマネジメントの連携にも配慮が必要だということを改めて考えさせられていますので、チームとして機能することを期待しております。

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