キャリア&スキルアップ
  • 公開日:2023.12.11

漢方薬剤師になる方法とは?必要な資格やキャリアパスについても解説

漢方薬剤師になる方法とは?必要な資格やキャリアパスについても解説

薬剤師として働く方のなかには、漢方の専門家である「漢方薬剤師」に興味をもっている方も多いのではないでしょうか。

セルフメディケーションの考えが人々に浸透してきていることや、高齢化社会における健康寿命の延伸が重要視されていることなどを背景に、漢方薬の需要が高まっています。

それに伴い、漢方に関する専門知識を有する漢方薬剤師は今後さらに必要とされるでしょう。

この記事では、漢方薬剤師になる方法や業務内容、必要な資格などについて解説します。漢方薬の服薬指導をする際のポイントについても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

漢方薬剤師とは?役割と重要性

まずは、漢方薬剤師の概要や仕事内容、漢方薬剤師の重要性について解説します。

漢方薬剤師の特徴と活動領域

漢方薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)とは、漢方薬や生薬に関する専門的知識をもち、能力と適性を備えた薬剤師のことをいいます。この資格は、民間資格である漢方アドバイザーとは異なり、薬剤師しか取得することができません

漢方薬剤師になることで、他剤との飲み合わせに関してより正確に判断できたり、漢方や生薬の専門知識を活かして医師に処方提案できたりするでしょう。

現代医療における漢方薬の位置づけ

現代の日本では、西洋医学による治療が一般的です。しかし、西洋医学のみでは対応できない症状を改善するため、漢方薬が処方されることもあります。

病気の前段階の状態である「未病」の改善が期待できることや、からだへの作用が穏やかであることから、漢方薬の使用を望む患者さまも少なくありません。

漢方薬剤師になるためのステップ

漢方薬剤師になるためのステップ

ここでは、漢方薬剤師になるために必要な資格や研修、試験について解説します。

必要な基本資格とその取得方法

漢方薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)になるためには、日本生薬学会と日本薬剤師研修センターが実施する研修を受け、試験に合格する必要があります。

漢方薬・生薬認定薬剤師の資格を取得するためには、9回の講義研修と1回の薬用植物園実習の修了が必要です。

薬用植物園実習に関しては、全国各地の薬用植物園約50か所において、春期と秋期のいずれか1回を受講します。

漢方薬・生薬認定薬剤師の取得要件には、論文や学会発表、一定の勤務歴などは必要とされていないため、個人薬局やドラッグストアなどに勤務する薬剤師でも目指しやすい認定資格だといえるでしょう。

漢方薬剤師を目指すための研修や試験

漢方薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)を目指すために必要な研修と試験の内容は以下の通りです。

【 研修 】

研修では、9回の講義(全45講演)と1回の薬用植物園実習(漢方薬・生薬研修会)に参加する必要があります。

漢方薬・生薬研修会を修了するには、出席率が80%以上(講義研修7回以上出席)かつ薬用植物園実習レポートの提出が必要です。

【 試問 】

研修会の修了後は「試問」と呼ばれる認定試験を受験し、合格する必要があります。試問は選択問題で構成されており、内容は漢方薬や生薬に関する基礎的な知識です。

研修会修了後、試問を受けられる機会は2回です(修了証発行日から2年間)。1回目の試問を受けられなかった場合や合格できなかった場合でも、次年度にもう一度受けられます。

漢方薬・生薬認定薬剤師は3年毎の更新が必要な資格であり、更新には所定の研修への参加や、定められた単位の取得が必要です。

漢方の知識・スキル習得の方法

漢方の知識・スキル習得の方法

ここでは、漢方薬・生薬認定薬剤師の資格を取得する以外にもできる、漢方に関する知識やスキル習得の方法を解説します。

漢方の基本的な知識や理論を学ぶ

はじめから難しい理論書を読む必要はなく、まずは参考書や書籍を読んで、漢方に関する基本的な知識や理論を学ぶことがおすすめです。

「漢方アドバイザー認定資格」をはじめとする民間資格の取得や、参考書を読んでみるだけでも漢方の基礎知識について効率的に学べるでしょう。また、漢方薬の添付文書や外箱に記載されている適応症や配合生薬を意識して見るようにするだけでも、知識の定着に役立ちます。

服薬指導の技術やノウハウを実践から学ぶ

漢方に関する座学は大切ですが、実践を重ねることで知識の定着や自身の課題発見にもつながりやすいでしょう。

漢方薬局に勤めて、実際に多くの生薬を扱う現場で、技術やノウハウを直接学ぶこともおすすめです。

漢方の服薬指導のポイント

ここでは、漢方の服薬指導のポイントを3つ解説します。

  • 複数の漢方薬の併用に注意する
  • 効果の判定時期は漢方によって差があると伝える
  • 重大な副作用の兆候について説明する
  • 漢方の服薬指導時のスキルアップのために、ぜひ参考にしてみてください。

    複数の漢方薬の併用に注意する

    複数の漢方薬を併用すると、一部の生薬が重複することによって副作用の発現リスクが高まります。

    甘草や麻黄、大黄などが含まれているものを併用する際は注意する必要があるため、服薬指導時には、ほかの漢方を飲んでいないか必ず確認しましょう。

    効果の判定時期は漢方によって差があると伝える

    漢方薬の効果を実感するまでには、基本的には長期的な服用が必要です。しかし、風邪をはじめとする急性疾患では、数時間以内の効果発現が期待できる場合もあります。

    一方、慢性疾患の治療には時間を要することが多いため、長期的に経過を見る必要があります。そのため患者さまには、効果の判定時期は漢方薬によって差があることを伝えましょう。

    漢方によって間質性肺炎や偽アルドステロン症のリスクがあるため兆候について説明する

    漢方薬は一般的に安全性が高いものの、医薬品である以上、副作用は起こりえます。漢方薬の服用における重篤な副作用には間質性肺炎偽アルドステロン症などがあげられます。

    からだのだるさ、違和感などの症状が見られる場合は、服用を中止して医師や薬剤師に相談するように伝えましょう。

    漢方薬剤師としてのキャリアパス

    漢方薬剤師としてのキャリアパス

    漢方薬剤師になると、どのようなキャリアが見えてくるのでしょうか。ここでは、漢方薬剤師としてのキャリアパスについて解説します。

    漢方薬局に勤める

    漢方薬・生薬認定薬剤師の資格をもっていると、一般的な薬局のみならず、漢方のカウンセリングや処方などをおこなう漢方薬局でも活躍しやすいでしょう。自らの判断で漢方薬を処方することには責任が伴いますが、その分やりがいも大きいといえます。

    漢方に関する研究者や技術者、薬剤師の人材育成に携わる

    漢方薬剤師になると、漢方メーカーなどで漢方に関する研究をしたり、漢方専門薬局で勤務したりする道も見えてきます。薬局や病院、ドラッグストア以外の場所で勤務してみたいという方にも、漢方薬・生薬認定薬剤師の資格が有利にはたらくかもしれません。

    漢方に詳しい薬剤師になるために学びを深めよう

    この記事では、漢方薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)の基本情報から資格取得のステップ、服薬指導のポイント、そしてキャリアパスに関する情報を紹介しました。漢方薬剤師になれば、これまでよりも自信をもって患者さまや処方医に対して漢方に関する情報提供ができるようになるでしょう。

    漢方薬剤師は、患者さまの健康増進やQOLの向上に大きく貢献できる仕事です。漢方薬剤師に興味がある方は、本記事の内容を参考にして学びを深めてください。

    ファルマラボ編集部

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    記事掲載日: 2023/12/11

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