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  • 公開日:2023.12.14

【薬剤師向け】鎮咳薬の一覧を解説!服薬指導のポイントも紹介

【薬剤師向け】鎮咳薬の一覧を解説!服薬指導のポイントも紹介

コロナ禍以降、薬の流通に異変が起きています。

入荷が遅れるどころか「次いつ入荷するかわからない」薬が増加していることで、対応に困っている方も多いでしょう。

とくに、今現場で問題になっているのは鎮咳薬の不足であり、薬局を数軒たずねる患者さまも出てきてしまっている状況です。

薬局では、医師に対して処方された鎮咳薬とは別の鎮咳薬に代替を依頼するケースも多いと思います。この記事では鎮咳薬の種類や特徴についてまとめます。

鎮咳薬を投薬する際のポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

鎮咳薬とは

まずは、鎮咳薬の役割や効果、主な成分とその特徴について解説します。

鎮咳薬の役割と効果

鎮咳薬とは、いわゆる咳止め薬のことです。咳は異物を体外に排出する防御反応ですが、長期化すると体力の消耗や睡眠障害などにつながるため、鎮咳薬を処方されることがあります。

鎮咳薬には、咳を鎮めたり喘息による呼吸苦の症状を和らげたりする効果が期待できます。

鎮咳薬の種類によっては、延髄にある咳中枢を抑制したり、咳を引き起こす刺激を末梢で止めたりする作用をもつものがあります。

鎮咳薬の主な成分とその特性

鎮咳薬の主な成分は、中枢神経系に作用する麻薬性の「コデイン」や「ジヒドロコデイン」非麻薬性の「チペピジン」や「デキストロメトルファン」などです。

コデインやジヒドロコデインについては、モルヒネと化学構造が類似しており、「麻薬性鎮咳薬」と呼ばれています。過量に摂取し続けると、依存を引き起こすこともあります。また、デキストロメトルファンは「非麻薬性鎮咳薬」に分類されるものの、依存の可能性がある薬剤とされています。チペピジンは、依存性に関する事象は起きていません。

入手が困難なアスベリン散とその特徴

現在、医療用医薬品の流通は、後発医薬品を中心に悪化しており、特に鎮咳薬や去痰薬の入手が困難な状態が続いています。「アスベリン散(一般名:クエン酸チペピジン)」もまた、入手が困難な鎮咳薬の一つです。ここでは、アスベリン散を含め鎮咳薬が入手困難となっている理由や、アスベリン散の概要について解説します。

アスベリン散が入手困難になっている理由

アスベリン散が入手困難になっている主な原因の一つは、新型コロナウイルス感染症の流行以降、さまざまな感染症の減少により鎮咳薬の需要が減ったことです。

需要が減ることで原薬の生産・供給体制が縮小し、新型コロナウイルス感染症が流行する前の生産・供給体制に戻るには年単位の時間がかかるとされているのです。また薬価の安い鎮咳薬は、製薬企業にとってみれば収益性が悪く、安易に増産に踏み切れないという経営上の判断も影響しているかもしれません。

アスベリン散の効果と注意点

ここでは、アスベリン散の適応症や効果、使用上の注意点などについて解説します。アスベリン散が手に入らないことで別の咳止めに変更するケースも増えると予測されるため、アスベリン散の特徴についてあらためて押さえておきましょう。

適応症と効果

アスベリン散は、次の疾患に伴う咳や痰の排出困難に対して適応があります。

  • 感冒(風邪)
  • 急性・慢性気管支炎
  • 肺炎
  • 肺結核
  • 上気道炎(咽喉頭炎、鼻カタル)
  • 気管支拡張症
  • アスベリン散は非麻薬性の鎮咳薬であり、延髄の咳中枢を抑制して咳を抑えるとともに、気道粘膜の線毛運動を促すことで痰を出しやすくする効果があります。

    使用上の注意点

    アスベリン製剤によって過敏症を起こした経験がある方は、アスべリン散を使用できません。

    また、妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳中の方は、使用に関して医師に相談する必要があります。

    鎮咳薬の種類とそれぞれの特性

    鎮咳薬の種類とそれぞれの特性

    ここでは、鎮咳薬の種類とそれぞれの特性について確認します。

    鎮咳薬は、作用する部位により「中枢性鎮咳薬」と「末梢性鎮咳薬」に分けられ、中枢性鎮咳薬はさらに「麻薬性鎮咳薬」と「非麻薬性鎮咳薬」に分けられます。

    また、中枢ではなく、気道や肺などに存在する末梢受容体に作用する鎮咳薬は「末梢性鎮咳薬」と呼ばれています。

    <鎮咳薬の種類とそれぞれの特性>

      特性 副作用の例
    中枢性鎮咳薬   麻薬性 ・コデイン ・ジヒドロコデイン ・延髄の咳中枢を抑える ・依存性がある ・気管支喘息発作中は使えない ・眠気 ・便秘 ・だるさ ・呼吸抑制
          非麻薬性 ・ノスカピン ・デキストロメトルファン(メジコン) ・チペピジン(アスベリン) ・ジメモルファン(アストミン) ・クロペラスチン(フスタゾール) ・延髄の咳中枢を抑える ・依存性が少ない ・鎮咳効果は麻薬性鎮咳薬よりは弱い ・眠気 ・頭痛 ・食欲不振
    末梢性鎮咳薬 ・気管支拡張薬 ・去痰薬 ・漢方薬など ・気道や肺などに存在する末梢受容体への刺激を抑える ・血清カリウム値の低下(気管支拡張薬:β2刺激薬) ・偽アルドステロン症(甘草を含む漢方薬)

    鎮咳薬の種類ごとの特性について、さらに詳しくみていきましょう。

    中枢性鎮咳薬の特性

    中枢性鎮咳薬は、延髄の中枢神経系に作用することで咳を抑える薬です。

    また、麻薬性鎮咳薬非麻薬性鎮咳薬に分けられます。

    麻薬性鎮咳薬の代表的な薬には「コデイン」や「ジヒドロコデイン」などがあげられます。これらの成分はモルヒネと同じ基本構造をもつため、依存性があり、長期連用や大量摂取に関してとくに注意が必要とされています。

    また、気管支喘息の発作中は麻薬性鎮咳薬を使用できません。

    麻薬性鎮咳薬には気道分泌をさまたげる作用があるため、気道が狭くなりがちな喘息の方が使用すると、痰の排出困難により呼吸が苦しくなる恐れがあります。

    一方で非麻薬性鎮咳薬には「チペピジン」や「デキストロメトルファン」などがあげられます。これらの成分は麻薬性鎮咳薬と比較すると副作用が少ない傾向にあります。

    末梢性鎮咳薬の特性

    末梢性鎮咳薬は咳中枢ではなく、気管や気管支、肺などの末梢に作用して咳を抑える薬です。

    主な末梢性鎮咳薬には気管支拡張薬(メチルエフェドリンやテオフィリンなど)や去痰薬(グアイフェネシンやブロムヘキシンなど)、漢方薬があげられます。

    末梢性鎮咳薬に分類される漢方薬には、麦門冬湯や桔梗湯、柴朴湯、半夏厚朴湯などがあります。


    <鎮咳薬として用いる漢方薬とその特徴>

      特徴
    麦門冬湯 痰の切れにくい咳や気管支炎、気管支喘息などに使用される。
    桔梗湯 咳に加えて喉が腫れて痛む方に向いている。扁桃炎や扁桃周囲炎などの治療に使われる。
    柴朴湯 小児喘息や気管支喘息、気管支炎などの治療に用いられ、体力があまりない方には不向きとされている。
    半夏厚朴湯 気分が塞いで喉につかえ感があり、めまいや嘔吐などにともなう咳が出ている方に向いている。

    上記で紹介した半夏厚朴湯以外の漢方薬には、いずれも甘草が含まれるため、長期服用による偽アルドステロン症の発症に注意が必要です。

    鎮咳薬の服薬指導のポイント

    鎮咳薬の服薬指導のポイント

    鎮咳薬の服薬指導をする際は、主に次のポイントに注意しましょう。

  • 喫煙の有無を確認する
  • 必ず用法用量を守る
  • ほかに内服している薬がないか確認する
  • 長引く咳の場合は病院受診をすすめる
  • 患者さまの健康を守るために、ぜひ参考にしてみてください。

    喫煙の有無を確認する

    喫煙をしている患者さまに対しては、まずは禁煙からアプローチしてみたり、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の可能性を考えたりすることが大切です。

    喫煙は咳や痰などの症状を慢性化させ、COPDを引き起こす原因のひとつとして考えられています。

    喫煙している方に咳症状が出ている場合は、薬の使用よりもまずは禁煙からのアプローチを考えてみましょう。

    必ず用法用量を守る

    麻薬性鎮咳薬の長期連用や大量摂取により、だるさや、からだに力が入らないといった症状が出る場合があります。

    薬物依存を防ぐためにも、用法用量は必ず守りましょう。

    また、甘草を含む漢方薬を長期使用する場合は、偽アルドステロン症によるむくみや筋肉のつっぱりなどの症状が出ていないか定期的にフォローすることが大切です。

    ほかに内服している薬がないか確認する

    処方された鎮咳薬のほかに内服薬がある場合、薬の成分が重なって効き目が強く出過ぎたり、副作用が生じやすくなったりする恐れがあります。

    複数の有効成分が配合されている一般用医薬品も含め、患者さまが併用している薬がないか必ず確認しましょう。

    長引く咳の場合は病院受診を

    咳や痰、息切れなどの症状が長期化している場合は、マイコプラズマをはじめとする感染症や、COPDなどの可能性があります。

    長引く咳に対して一般用医薬品の鎮咳薬を使用している患者さまには、医療機関の受診をすすめたほうがよいでしょう。

    鎮咳薬の代替処方に対応できるようになろう

    今回の記事では鎮咳薬についての一覧の情報や、鎮咳薬が入手困難である理由、効能効果や作用機序、副作用などについて紹介しました。

    特定の鎮咳薬が手に入らない場合、鎮咳薬の種類や特性、副作用などを考慮して代替処方を提案することが大切です。

    服薬指導のポイントを参考に、患者さまが鎮咳薬を安心・安全に使用できるようにしましょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2023/12/14

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