服薬指導に活かす医薬品情報

ベシケア錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

適応症は「過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁」で、抗コリン作用により膀胱平滑筋を弛緩(蓄尿傾向)させて過活動性膀胱(OAB)による尿意切迫感、頻尿、切迫性尿失禁を改善します。

類似薬のデトルシトールと同時発売されました。本剤発売前のポラキスやバップフォーに比べ、膀胱収縮に関係するM3ムスカリン受容体に対して親和性が高く、抗コリン作用の便秘や口渇、かすみ目、尿の出が悪いといった副作用が少なくなっています。前立腺肥大症に合併する過活動膀胱の場合は、α1遮断薬で前立腺肥大の治療を優先し、尿閉に注意しながらベシケアを併用します。最高投与量は10mgまでです。


Q

病状のモニターは?

A

治療目的は症状を緩和させQOLを改善することです。トイレを気にせず生活できているか、夜間のトイレの回数や睡眠が妨げられることでの昼間の眠気などについて具体的に聞き取りましょう。


Q

併用注意の薬剤は?

A

主な代謝酵素はCYP3A4です。酵素阻害剤のアゾール系抗真菌薬、酵素誘導剤のリファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピンとの併用は作用の増強・減弱に注意が必要です。

抗コリン作用を持つ薬剤とも併用注意です。ベシケア単独で効果不十分な場合に夜尿症の適応があるトリプタノール等の抗うつ薬を併用することもあります。OTC薬でも酔い止め、総合感冒薬、咳止め、胃腸薬など数多くに抗コリン作用のある薬剤が配合されており、併用すると抗コリン作用が増強されます。夏風邪で感冒薬を併用すると口渇、尿閉以外に発汗抑制作用が解熱効果を弱め、熱中症のリスクを高めます。唾液分泌抑制により口腔衛生状態が悪化するので、虫歯・口内炎予防の服薬指導も考慮します。


Q

注意すべき疾患は?

A

ベシケアは抗コリン作用のほかに、QT延長作用(30mg/日服用の場合)の報告があり、心疾患治療中の患者さまの病状を悪化させる可能性があります。息切れ・胸痛・めまい症状をモニターしましょう。脱水や下痢がひどい時や利尿剤・下剤の乱用、甘草服用など低K血症の状態はリスクが高まりますので要注意です。


Q

日常生活で気をつけること

A

服薬とともに次のことを実行していただくことで治療効果が高まります。

水分の摂りすぎや、利尿作用のあるアルコール・カフェイン摂取は尿量が増加するので、特に寝る前は控えるようにします。しかし、極端に水分を取らないと老廃物を排出するのに必要な尿量を確保できずに膀胱炎や脱水症状を引き起してしまうので、尿量を計り1日最低700mLは確保します。

刺激物は膀胱を刺激して尿意を感じやすくなるので控えるように指導します。

尿意は強弱がありますが、強い時にトイレを我慢することで膀胱に溜める尿量を増やしていきます。最初は15分を目安にがんばり、トイレの間隔が2~3時間となるように膀胱を鍛えます。

体を冷やさないようにしたり、便秘を改善します。便秘と頻尿は相互に影響しています。

膀胱や子宮、直腸をハンモックのように支えている骨盤底筋を鍛える運動を行うことで、特に女性の尿失禁に効果があります。


Q

服用上の注意

A

半減期が長いため1日1回服用で24時間効果が持続します。食事の影響を受けないので、食事に関係なく時間を決めて服用していただきます。

コハク酸ソリフェナシンは強い収斂作用による強い苦みがあり、また局所刺激性や眼粘膜刺激性があるのでフィルムコーティングされています。噛み砕かずに服用するよう指導します。錠剤粉砕も眼・鼻粘膜を刺激するので不可であり、OD錠も半錠加工はできません。



夜間頻尿と不眠・転倒の関係

高齢者にありがちな病態です。加齢に伴い眠りが浅くなると中途覚醒や早朝覚醒が起こり、夜中に目覚めた時に「後でトイレに起きてしまうのでは」と思いトイレに行きますが、布団に戻ってもなかなか眠れず、眠れないという不安と焦りからますます不眠を助長してしまいます。睡眠が浅いので少しの尿意で目が覚めてしまう、夜間頻尿があるから不眠になるのか、不眠があるから夜間頻 尿になるのかは明確ではありませんが、悪循環をきたすことは間違いありません。転倒のリスクもトイレの回数分だけ高まります。


掲載日: 2024/01/25
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