服薬指導に活かす医薬品情報

レンドルミンD錠

Q

何のお薬?処方目的は?

A

適応症は「不眠症、麻酔前投薬」で、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の各種不眠症に有効です。うつ病性不眠には抗うつ薬と併用することで睡眠の量・持続・質が改善され、うつ病症状やQOLも改善します。アルコール依存症に伴う不眠に対しては睡眠薬依存が高く副作用が起こりやすくなるので、急性期のアルコール離脱症状を予防する目的以外での服用は勧められません。なお、アルツハイマー病やレビー小体病などの認知症での不眠(二次性不眠)に有効かつ安全性の高い薬物療法は確立されていません。

また、睡眠薬は単剤使用が原則で、異なる半減期のBZP薬剤の併用は、より有効だというエビデンスはありません。


Q

服用するタイミングは?

A

効果は10~30分で現れます。服用後から入眠までの記憶がなくなる一過性前向性健忘の危険性があるため、就寝直前に服用するよう指導します。また、起床時までの時間が短いと翌日に作用を持ち越す危険が高まりますので、遅い時間に飲まないようにも指導します。特に夜中に起きた時に服用するときは注意が必要です。


Q

併用に注意が必要な薬剤は?

A

本剤の代謝酵素はCYP3A4です。酵素阻害剤のイトリコナゾール等、酵素誘導剤のリファンピシン等とは併用注意です。


Q

アルコールとの併用~「飲んだら飲むな」

A

アルコールの代謝は体質や体重などで異なりますが、体重60kgの成人男性が1時間に代謝する純アルコールは約4g。コップ1杯のビールでも約2時間が必要です。通常影響は感じない人(私は大丈夫!という人)でも、飲みすぎた時や、体調不良の日、薬を少し早く服用した時などはふらつき・物忘れ・おかしな行動をしてしまうなどの副作用を生じやすくなるので注意が必要です。翌日の車の運転、ふらつきにも気をつけましょう。


Q

効かない時は増やしてもいい?

A

自己判断での増量は厳禁です。翌日の眠気やふらつきなどのリスクが高まりますし、薬が有効な不眠症なのかどうかを判断する必要があるため、効かない場合は勝手に増量せず医師に相談するように指導します。睡眠薬は低用量では入眠障害にしか効かなくても、増量により中途覚醒が改善されることがわかっています。効果不十分な場合は保険適用内での増量を考慮しますが、本剤の不眠症の用量は1回0.25mg(適宜増減)です。高齢者の場合は増量による効果増強は期待できず、転倒などのリスクが増加します。


Q

夜勤明けの服用は?

A

夜勤明けの効果は個人差があります。効果がない時は増量や継続はせずに光療法や勤務中の仮眠など他の方法を検討しましょう。


Q

減量・中止は?

A

1~2週間ごとに服用量の25%ずつ、4~8週間かけて減量・中止するのが標準法です。睡眠薬(特にジアゼパム換算20mg/日以上)の減量・離脱には今のところカルバマゼピンに置き換えるのが最も有効だと考えられています。その他に離脱症状を軽減するためにプロプラノロール(60~120mg/日)やメラトニンを併用する場合もあります。減量後半から休薬の間で頓挫することが多く、また神経症傾向の方や苦悩を抱えている、不安が強い、女性、軽~中等度の飲酒の方は減量が難しく、カウンセリングを受ける【認知行動療法】(不眠症では保険適用外)など心理的なサポートや生活を見直す【睡眠衛生指導】を併用していくことが勧められます。【認知行動療法】は、特に入眠困難の改善に対して薬物療法よりも効果が高いと考えられています。


Q

不眠と生活習慣病の関係

A

不眠は交感神経を亢進させ血圧・血糖・中性脂肪の上昇や肥満に悪影響を及ぼし、生活習慣病発症率を上昇させ病状を増悪させます。また、摂食ホルモンを上昇させるので食事療法を阻害します。さらに昼間の眠気や判断力・集中力・反射能力などの低下が運動療法に悪影響を与えます。年齢とともに徐波睡眠が浅くなり、熟眠感が得られにくくなりますが、生活習慣病のコントロール不良や日中のQOLが低下している場合には「歳だから」とあきらめずに不眠治療に取り組んでいただきましょう。睡眠は「何時間寝た」ではなく、「ぐっすり眠れてスッキリ目覚める」ことができたか、質の良い睡眠を確保することが大事です。


掲載日: 2024/01/18
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