服薬指導に活かす医薬品情報

ゼチーア錠

Q

処方目的は?

A

適応症は「高コレステロール血症,家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症」です。近年、血中コレステロールを低下させることによる脳・心血管疾患などのイベント抑制効果が明らかになっており、服薬指導時には脳卒中や虚血性心疾患などの脳・心血管疾患の合併症の有無も情報収集すると良いでしょう。また、錠剤が小さいため飲みやすく、さらに1日1回服用で効果が持続することからアドヒアランスの低下も起こりにくい薬剤です。


Q

1日1回で効果が持続する理由は?

A

小腸で吸収された後、肝臓から胆汁中に移行し再び腸内に排泄される腸肝循環を繰り返します。食事のタイミングに合わせて胆汁とともに小腸管腔内に排泄されるため、長時間にわたり効果を発揮します。食事のタイミングとほぼ一致して血漿中濃度が食後に上昇することが確認されています。


Q

作用機序は?

A

世界初の小腸コレステロールトランスポーター阻害剤であり、HMG-CoA還元酵素阻害剤や陰イオン交換樹脂とは異なる新しい作用機序を有します。小腸壁に存在するコレステロールトランスポーターに作用することにより、選択的にコレステロールの吸収を阻害するため、脂溶性ビタミンなどの吸収には影響を与えません。また、生体内におけるコレステロールの流れには、肝臓で合成されるものと小腸から吸収されるものがありますが、ゼチーアは小腸からのコレステロールの吸収を54%阻害し、強力かつ選択的な効果を示します。


Q

コレステロール低下作用は?

A

ゼチーアの単独投与によりLDLコレステロールを約18%低下させます。また、HMG-CoA還元酵素阻害剤単独で十分な効果が得られない症例に併用することもあります。HMG-CoA還元酵素阻害剤はコレステロールの合成を阻害することで代償的にコレステロール吸収が亢進するため、ゼチーアを併用することでさらなるLDLコレステロール低下効果が期待できます。なお、どのHMG-CoA還元酵素阻害剤と併用しても単独投与時と比較してLDLコレステロールをさらに約25%低下させることが確認されています。



食後高脂血症は脳・心血管疾患のリスク

食後の高トリグリセリド血症が顕著でその状態が遷延する病態を食後高脂血症といい、食後高脂血症では、小腸由来のカイロミクロンレムナントが増加し、さらにsmall dense LDLの増加も見られます。これらリポ蛋白は動脈硬化惹起性が非常に強く、脳・心血管疾患リスクを高める因子として注目されており、特に肥満、メタボリックシンドローム、糖尿病に多く観察されます。

近年、日本では食生活の欧米化が進んでおり、コレステロール摂取量が増加していることなどから、現代の脂質異常症に対しては食後高脂血症を念頭に置いた治療が重要であると考えられています。ゼチーアは、small dense LDL、また、食後のトリグリセリド、カイロミクロンを有意に低下させることなどから、食後高脂血症に好影響を及ぼすとされています。ゼチーアは、高LDLコレステロール血症、そしてこの食後高脂血症に対して効果を示すことにより、虚血性心疾患や脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの脳・心血管イベントを予防するためにとても有用性のある薬剤として注目されています。


Q

相互作用は?

A

併用注意として陰イオン交換樹脂、シクロスポリン、クマリン系抗凝血剤が挙げられますが、ゼチーアは生体内でCYPが関与する代謝を受けない薬剤で、グルクロン酸抱合が主要代謝経路のため、CYPに関連する相互作用を考慮する必要がありません。HMG-CoA還元酵素阻害剤などと比較して薬物相互作用が少ないのもゼチーアの特徴の 一つです。


Q

副作用は?

A

承認時の臨床試験における副作用発現率は18.8%であり、主な副作用は、便秘(3.0%)、発疹(2.4%)、下痢(2.2%)、腹痛(2.0%)、腹部膨満及び悪心・嘔吐(1.6%)でした。

また、重大な副作用として、過敏症、横紋筋融解症、肝機能障害が報告されています。横紋筋融解症について因果関係は確立していませんが、筋肉痛や脱力感、尿が赤くなるなどの症状に注意すると共に、定期的に血液検査を受けるよう服薬指導しましょう。なお、HMG-CoA還元酵素阻害剤併用時は重篤な肝機能障害がある場合は投与禁忌となります。


掲載日: 2024/04/11
※医薬品情報は掲載日時点の情報となります