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2019.07.23

【薬剤師向け】1回3349万円の新薬「キムリア」。効果や副作用、従来の薬との違いとは?

【薬剤師向け】1回3349万円の新薬「キムリア」。効果や副作用、従来の薬との違いとは?

3349万3470円と高額であるものの、白血病などの血液がん治療に効果が期待されている新規再生医療等製品「キムリア」。高額薬価の製品でありながら、2019年5月22日に保険適用となったことで大きな話題を呼んでいます。

しかし、一般的な病院や調剤薬局では用いられることのない製品であるため、詳しく知らないという薬剤師も珍しくありません。

そこでこの記事では、【キムリアの効果/薬価が高い理由/副作用や従来の薬剤との違いなど】について解説します。

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「キムリア」の効果とは?臨床試験の奏効率は8割

患者様とお話しする薬剤師のイメージ

『キムリア点滴静注』(成分名:チサゲンレクルユーセル)は、再発または難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および、再発または難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に用いられる再生医療等製品です。

キムリアによる治療は、CAR-T療法と呼ばれ、遺伝子改変の技術を用いた、まったく新しいがん免疫細胞療法です。

患者さまの血液からT細胞を採取し、遺伝子導入によってCAR-T細胞と呼ばれる細胞につくり変えます。CAR-T細胞は、特定の抗原を発現するがん細胞を攻撃するよう設計されたもの。患者さまの体内に戻すと、「CD19」と呼ばれる抗原を発現する、B細胞性の腫瘍(B-ALLとDLBCL)を認識して攻撃します。

CAR-T細胞は体内で増えることができるため一回で治療完了。継続的な投与は必要としない点が大きな特徴です

アメリカでの臨床試験では、"奏効率8割"という驚異的な成績を収めており、臨床試験においても高い有効性が確認されています。これまで治療が難しかった症例においても完全寛解が認められることもあり、今後期待されている治療方法です。

薬価は3349万3470円。『キムリア』はなぜ高い?

悩む薬剤師のイメージ

2019年5月22日に薬価収載されたキムリアの価格は、【1患者当たり3349万3407円】に設定されました。これは、過去最高額の薬として話題を呼んでいます。

キムリアは個々の患者さまの細胞をもとに製造する製品です。治療には極めて大きなコストがかかることから、原価計算方式により高額な薬価が設定されました。

アメリカでは、日本円に換算して約6270万円。ドイツでは、約4128万円の償還価格が設定されており、世界的にみても高額な製品として知られています。

しかし、費用対効果評価の対象に選定されたことから、「効果に比べて高額」と判断されれば価格は下がり、「価格以上の効果」と判断されればさらに高価になる可能性もあります。

費用や効果などに関するデータをメーカーが用意し、"価格の妥当性"の検証が進められていくようです。今後の動向に注目しましょう。

キムリアによる治療は高額医療費制度が適応できる

自由な薬剤師のイメージ

キムリアによる治療は、「高額療養費制度」の適応が認められています

高額療養費制度は、治療による患者さまの経済的負担を減らすことを目的とした制度です。医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の自己負担額が所定の限度額を超えた場合、公的医療保険から払い戻しを受けられます。自己負担限度額は年齢や所得等によって区分されていますが、高額療養費制度が適用されることで、経済的負担を減らすことが可能です。

「キムリア」の主な副作用は?聞き慣れない症状も

様々な副作用があらわれる可能性が報告されています。一般的な医薬品ではあまり耳にすることのない副作用もあるため、いくつか例を挙げて見ていきましょう。

サイトカイン放出症候群(CRS)

キムリアの投与によって、CAR-T細胞や他の免疫細胞が活発になると、『サイトカイン』と呼ばれる物質が放出されます。サイトカインが大量に放出されると、腫瘍細胞だけでなく正常細胞まで攻撃されてしまうことがあります。

その結果、様々な部位で炎症反応が起こり、微熱・発疹・意識障害などの症状があらわれるのです。これらは、キムリアの投与後、数時間~数日以内の発症が報告されています。

重篤な神経系事象

投与後、幻覚・錯覚・錯乱・意識障害などの症状があらわれることがあります。これらは、脳や精神、神経の不調によるものです。

精神神経症状は、サイトカイン放出症候群(CRS)の症状と同時、または治まったときにあらわれることがあります。ほかにも、意識がはっきりしない状態で発症することが多いです。キムリアの投与後、1週間程度の間にあらわれ、1週間ほどで治まりますが、検査や治療は欠かさず行いましょう。

腫瘍崩壊症候群

キムリアを投与すると、腫瘍が急速に死滅して、腫瘍細胞の成分が血液中に流れます。これによって、血液の酸性化、尿酸値の上昇、電解質のバランス崩壊、腎臓からの尿の産生減少などの異常が報告されることがあります。主な症状は、むくみや尿の減少、呼吸困難、けいれん、意識障害、不整脈、吐き気などです。

その他の副作用

キムリアの投与後、赤血球などの血球成分が減少したり、低または無ガンマグロブリン血症があらわれたりします。これにより、感染症にかかりやすくなるだけでなく、脳浮腫や二次性悪性腫瘍、新たな血液の病気といった重篤な副作用があらわれることがあるでしょう。筋肉痛や黄疸、動悸、息切れ、めまい、立ちくらみなどの一般的な副作用も考えられます。

詳しくは製品情報を確認してください。

▼『キムリア』の製品情報はこちら

治療対象となる患者さま、医療機関の条件

患者様と話す薬剤師、医師のイメージ

キムリアによる治療を受けられる条件は、以下の通りです。

CD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の場合

治療を受ける際の年齢が25歳以下かつ、以下のいずれかに該当する方

  • 初発の場合、化学療法を2回以上受けたが、寛解に至らなかった
  • 再発の場合、化学療法を1回以上受けたが、寛解に至らなかった
  • 同種造血幹細胞移植を受けられない。または、同種造血幹細胞移植後に再発した

CD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の場合

自家造血幹細胞移植を受けられない、または自家造血幹細胞移植後に再発し、かつ以下のいずれかに該当する方

  • 初発の場合、化学療法を2回以上受けたが、完全奏効が確かめられなかった。または、完全奏効のあと再発した
  • 再発の場合、再発後に化学療法を1回以上受けたが、完全奏効が確かめられなかった。または、完全奏効のあと再発した
  • 濾胞性リンパ腫が形質転換し、化学療法を通算2回以上/形質転換後に1回以上受けたが、完全奏効が確かめられなかった。または、完全奏効のあと再発した

また、「妊娠中や授乳中の方」「感染症を合併している方」をはじめ、「キムリアの成分に対して過敏症を示したことがある方」においては、キムリアによる治療を慎重に検討する必要があります。その他にも、有効性に関して様々な事項が設けられており、治療を受けるにはすべての項目をクリアする必要があります

キムリアの治療が可能な医療機関は、「白血球アフェレーシス」による患者さまの細胞の採取ができること。また、細胞の調製・凍結、投与後に起こる副作用の管理など、2019年5月21日付で厚生労働省より発行された『最適使用推進ガイドライン」の項目を満たすことが条件となります。厚生労働省によると、対象は170施設程度になる見込みです。

現在、キムリアを製造するノバルティス社は、治療対象となる医療機関と連携して、提供体制を整備。患者さまに対して安全な治療を提供できるよう尽力しています。

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医薬品の専門家として日々の情報収集を

「キムリア」は患者さまの細胞をもとに製造する製品であるため、極めて高額の薬価が設定されています。多くのニュースでは薬価ばかりが取り沙汰されていますが、その効果は多くの患者さまが待ち望んでいたものだと思います。

日本でも保険診療においてこのような高度な治療を選択できるようになったことは歓迎されるべき変化だと言えるのではないでしょうか。

予想される対象症例は年間250例程度と極めて少なく、直接的に関わることがないかもしれません。医薬品の専門家として今後の情報にも注目していきましょう。

記事掲載日: 2019/07/23

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