- 公開日:2025.09.29
【薬剤師向け】主な抗アレルギー点眼薬一覧とコンタクトレンズ装用時の使用可否を解説

花粉の飛散する時期には、抗アレルギー成分を配合した点眼薬の処方箋が増えてきます。
中には最初に処方された点眼薬が効かず、数日後に異なる点眼薬を処方される患者さまもいらっしゃることでしょう。
本記事では、花粉症の治療に用いられる点眼薬の成分やコンタクトレンズを装用したままでも点眼できるか、さらには点眼薬を使用する際の注意点を解説します。
アレルギー症状に用いる点眼薬の知識を深めたい薬剤師の方は、ぜひ参考にしてください。
- 花粉症と抗アレルギー点眼薬
- コンタクトレンズを装用したままの点眼について
- 主な抗アレルギー点眼薬の一覧表<装用時の使用可否も>
- ステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬が処方されるケース
- 抗アレルギー点眼薬の服薬指導
- 抗アレルギー点眼薬の特徴を理解して、花粉シーズンに備えよう
花粉症と抗アレルギー点眼薬

アレルギー性結膜炎の症状と抗アレルギー点眼薬の役割
花粉症で目が痒くなる主な原因は、アレルギー性結膜炎です。
これは、花粉などのアレルゲンが目に入ることで、Ⅰ型アレルギー反応が起こり、結膜の局所でヒスタミンなどのケミカルメディエーターが放出されるためです。
これらの物質が血管や神経を刺激することで、目の痒みや充血、異物感、流涙といった症状が現れます。
このような症状の治療には、抗アレルギー点眼薬が第一選択として用いられます。抗アレルギー点眼薬は、ヒスタミンの働きを抑えたり、ヒスタミンなどのケミカルメディエーターの放出自体を防いだりすることで、アレルギー症状を緩和します。
抗アレルギー点眼薬の種類
抗アレルギー点眼薬には、抗ヒスタミン作用を有するものと、メディエーター遊離抑制作用を有するものがあります。
また、抗アレルギー点眼薬によって症状が抑えられない場合には、ステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬の使用が検討されるケースもあるでしょう。
ステロイドや免疫抑制薬を配合した点眼薬については後述します。
コンタクトレンズを装用したままの点眼について
抗アレルギー点眼薬に限らず、コンタクトレンズを装用したまま点眼薬を使用しても良いか、不安に思う患者さまも多いと思います。
一般的に、ソフトコンタクトレンズの装用中における点眼薬の使用可否は、防腐剤として添加されているベンザルコニウム塩化物の配合有無で判断することが多いです。
ベンザルコニウム塩化物はソフトコンタクトレンズに吸着されやすいことが知られており、レンズに吸着されたベンザルコニウム塩化物が長時間にわたり目の角膜に接触していると、角膜障害が引き起こされることがあります。
一方、ハードコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズと比べてベンザルコニウム塩化物の吸着量が少ないため、レンズを装用したまま点眼薬を使用しても良いとされることもあります。
ただし、レンズに吸着されるベンザルコニウム塩化物の量が製品ごとに異なる可能性もあり、ハードコンタクトレンズを装用したまま点眼薬を使用してもよいかどうかは、専門家でも意見が分かれているようです。
主な抗アレルギー点眼薬の一覧表<装用時の使用可否も>

主な抗アレルギー点眼薬の種類は下記の通りです。それぞれの特徴を解説します。
- エピナスチン塩酸塩
- オロパタジン塩酸塩
- レボカバスチン塩酸塩
- ケトチフェンフマル酸塩
- イブジラスト
- トラニラスト
- クロモグリク酸ナトリウム
- ペミロラストカリウム
エピナスチン塩酸塩
ヒスタミンH1受容体を選択的に遮断するとともに、肥満細胞からのケミカルメディエーターの遊離を抑制し、アレルギー症状を改善します。
また、エピナスチン塩酸塩を配合した点眼薬の多くは、ベンザルコニウム塩化物を配合していないため、医師の判断で装用中に使用が許可される場合もありますが、原則としてコンタクトレンズは、はずしてから点眼することが推奨されます。
エピナスチンを配合した主な点眼薬は下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| エピナスチン塩酸塩 | アレジオン®点眼液0.05% | アレルギー性結膜炎 | 眼痛、流涙、角膜炎、異物感、充血、眼脂など |
| エピナスチン塩酸塩 | エピナスチン塩酸塩点眼液0.05%「SEC」 | アレルギー性結膜炎 | 眼痛、流涙、角膜炎、異物感、充血、眼脂など |
オロパタジン塩酸塩
ヒスタミンH1受容体を選択的に遮断し、さらに肥満細胞からのケミカルメディエーターの産生・遊離や、神経伝達物質タキキニンの遊離も抑制します。
ただし、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれているため、ソフトコンタクトレンズを装用しながらの点眼は避ける必要があります。
オロパタジンを配合した主な点眼薬は下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| オロパタジン塩酸塩 | パタノール®点眼液0.1% | アレルギー性結膜炎 | そう痒症、眼痛、眼瞼浮腫、眼脂、角膜炎、結膜出血など |
| オロパタジン塩酸塩 | オロパタジン点眼液0.1%「TS」 | アレルギー性結膜炎 | そう痒症、眼痛、眼瞼浮腫、眼脂、角膜炎、結膜出血など |
添付文書には点眼時にはソフトコンタクトレンズをはずし、10分以上経過後、再装用するように記載されています。
患者さまが誤解しないよう、しっかりお伝えしましょう。
レボカバスチン塩酸塩
ヒスタミンH1受容体に特異的かつ強力・持続的に拮抗し、アレルギー性結膜炎に伴うそう痒感や充血、流涙などの症状を改善します。
レボカバスチンを配合した主な点眼薬は、下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| レボカバスチン塩酸塩 | リボスチン®点眼液0.025% | アレルギー性結膜炎 | 眼刺激感、眼瞼炎、眼脂、羞明、乾燥感、そう痒症など |
| レボカバスチン塩酸塩 | レボカバスチン塩酸塩点眼液0.025%「JG」 | アレルギー性結膜炎 | 眼刺激感、眼瞼炎、眼脂、羞明、乾燥感、そう痒症など |
防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれており、添付文書にはソフトコンタクトレンズ装用時の点眼は避けるように記載されています。
ケトチフェンフマル酸塩
肥満細胞からのケミカルメディエーター遊離を抑制し、さらにヒスタミンH1受容体への結合を遮断することで、抗アレルギー作用および抗ヒスタミン作用を発揮します。
ケトチフェンを配合した主な点眼薬は下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| ケトチフェンフマル酸塩 | ザジテン®点眼液0.05% | アレルギー性結膜炎 | 眼瞼炎、眼瞼皮膚炎、結膜充血、そう痒症、眼刺激感、眠気など |
| ケトチフェンフマル酸塩 | ケトチフェン点眼液0.05%「CH」 | アレルギー性結膜炎 | 眼瞼炎、眼瞼皮膚炎、結膜充血、そう痒症、眼刺激感、眠気など |
ケトチフェンを配合した点眼薬にも、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれています。
添付文書には、点眼時にはソフトコンタクトレンズをはずし、15分以上経過後、再装用するように記載されています。
イブジラスト
IgEやIgGが関与するⅠ型アレルギー反応を抑制し、炎症細胞からのロイコトリエン遊離やSRS-Aの作用を抑えることで、抗アレルギー作用を示します。
イブジラストを配合した主な点眼薬は下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| イブジラスト | ケタス®点眼液0.01% | アレルギー性結膜炎 | そう痒症、しみる、眼痛、異物感、眼瞼炎、結膜充血など |
イブジラストを配合した点眼薬にもベンザルコニウム塩化物が含まれています。
ソフトコンタクトレンズに関しての記載は無いものの、装用しながらの点眼は避けた方が良いでしょう。
トラニラスト
抗原刺激による肥満細胞や炎症細胞からのケミカルメディエーターの遊離を抑制し、アレルギー反応を抑えます。
トラニラストを配合した主な点眼薬は下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| トラニラスト | トラメラス®点眼液0.5% | アレルギー性結膜炎 | 眼瞼皮膚炎、眼瞼炎、眼刺激感、接触性皮膚炎、結膜充血、眼瞼腫脹、そう痒症など |
| トラニラスト | リザベン®点眼液0.5% | アレルギー性結膜炎 | 眼瞼皮膚炎、眼瞼炎、眼刺激感、接触性皮膚炎、結膜充血、眼瞼腫脹、そう痒症など |
| トラニラスト | トラニラスト点眼液0.5%「JG」 | アレルギー性結膜炎 | 眼瞼皮膚炎、眼瞼炎、眼刺激感、接触性皮膚炎、結膜充血、眼瞼腫脹、そう痒症など |
トラニラストを配合した点眼薬にも、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれています。
ソフトコンタクトレンズに関しての記載は無いものの、装用しながらの点眼は避けた方が良いでしょう。
クロモグリク酸ナトリウム
抗原抗体反応による肥満細胞からのケミカルメディエーターの遊離を抑制し、また炎症性細胞の活性化も抑えます。
クロモグリク酸ナトリウムを配合した主な点眼薬は下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| クロモグリク酸ナトリウム | クロモグリク酸Na点眼液2%「VTRS」 | アレルギー性結膜炎 | 眼瞼炎、結膜充血、一過性の眼刺激感、結膜炎など |
クロモグリク酸ナトリウムを配合した点眼薬にも、防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれています。
添付文書には、点眼時にはソフトコンタクトレンズをはずし、点眼後少なくとも5~10分の間隔をあけて再装用するように記載されています。
ペミロラストカリウム
肥満細胞膜のリン脂質代謝を阻害し、ケミカルメディエーターの遊離を抑制します。
さらに、ヒトや動物の白血球・肺からのヒスタミンやSRS-Aの遊離も抑制します。
ペミロラストカリウムの点眼薬は主に下記の表の通りです。
| 一般名 | 販売名 | 効能・効果 | 副作用 |
| ペミロラストカリウム | アレギサール®点眼液0.1% | アレルギー性結膜炎 | 結膜充血、眼脂、眼瞼炎、眼刺激、眼刺激感など |
| ペミロラストカリウム | ペミラストン®点眼液0.1% | アレルギー性結膜炎 | 結膜充血、眼脂、眼瞼炎、眼刺激感など |
| ペミロラストカリウム | ペミロラストK点眼液0.1%「杏林」 | アレルギー性結膜炎 | 結膜充血、眼脂、眼瞼炎、眼刺激感など |
こちらも防腐剤としてベンザルコニウム塩化物が含まれています。
ソフトコンタクトレンズに関しての記載は無いものの、装用しながらの点眼は避けた方が良いでしょう。
アレジオン®点眼液0.05% 添付文書 2023年5月改訂(第1版)
エピナスチン塩酸塩点眼液0.05%「SEC」 添付文書 2024年9月作成(第1版)
パタノール®点眼液0.1% 添付文書 2023年1月改訂(第1版)
オロパタジン点眼液0.1%「TS」 添付文書 2024年2月改訂(第1版)
リボスチン®点眼液0.025% 添付文書 2023年4月改訂(第2版)
レボカバスチン点眼液0.025%「JG」 添付文書 2024年9月改訂(第2版)
ザジテン®点眼液0.05% 添付文書 2022年12月改訂(第1版)
ケトチフェン点眼液0.05%「CH」 添付文書 2024年9月改訂(第2版)
ケタス®点眼液0.01% 添付文書 2024年5月改訂(第2版)
トラメラス®点眼液0.5% 添付文書 2023年5月改訂(第1版)
リザベン®点眼液0.5% 添付文書 2023年3月改訂(第1版)
トラニラスト点眼液0.5%「JG」 添付文書 2024年9月改訂(第2版)
クロモグリク酸Na点眼液2%「VTRS」 添付文書 2024年7月改訂(第3版)
アレギサール®点眼液0.1% 添付文書 2022年12月改訂(第1版)
ペミラストン®点眼液0.1% 添付文書 2023年3月改訂(第1版)
ペミロラストK点眼液0.1%「杏林」 添付文書 2024年8月改訂(第3版)
ステロイド点眼薬や免疫抑制点眼薬が処方されるケース
前述の通り、花粉症による目の痒みには、まず抗アレルギー点眼薬が第一選択として用いられます。これらの一部は市販もされており、医療機関を受診せずにドラッグストアなどで購入する方も少なくありません。
しかし、抗アレルギー点眼薬で十分な効果が得られない場合には、医師がステロイド点眼薬や、免疫抑制点眼薬を処方することがあります。
これらは重症例に対して使用され、医師の管理下での投与が必要です。
そのため、症状が改善しない、あるいは長引く場合には、自己判断で市販薬を使用し続けるのではなく、早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
抗アレルギー点眼薬の服薬指導

多くの患者さまは内服薬の副作用を気にされますが、実は点眼薬にも副作用があることはあまり知られていないのではないでしょうか。また、点眼薬の正しい使用方法をご存じない方もいらっしゃるかもしれません。
点眼薬は、正しい方法で使用しなければ十分な効果が得られないだけでなく、副作用が生じることもあります。
そのため、抗アレルギー点眼薬を安全かつ効果的に使用していただくために、患者さまへの服薬指導のポイントをご紹介します。
複数の目薬を使用していないか確認する
患者さまが複数の点眼薬を使用している場合、剤形ごとに適切な順番で点眼することが重要です。
一般的には、以下の順で使用することが推奨されています。
①水溶性点眼液
②懸濁性点眼液
③ゲル化点眼液
④油性点眼液
他院処方や市販薬を含め、使用中の点眼薬を確認し、適切な使用順について説明しましょう。
また、2種類以上の点眼薬を使用する場合は、先に点眼した薬液が後の薬液で洗い流されるのを防ぐため、5分以上間隔をあけて点眼するよう指導が必要です。
ソフトコンタクトレンズを装用するか確認する
前述の通り、防腐剤であるベンザルコニウム塩化物が含まれている点眼薬は、ソフトコンタクトレンズを装用したままの使用は推奨されていません。
そのため、患者さまにはソフトコンタクトレンズを普段から装用されるか確認し、もし装用されるようであれば、装用前もしくは、はずした後に点眼薬を使用するように説明します。
なお、薬剤ごとに対応が異なるため、必ず添付文書や処方医の指示を確認し、患者さまに正確に説明・指導しましょう。
懸濁性点眼液の場合はよく振ってから使用するように伝える
抗アレルギー点眼薬の中には、レボカバスチン点眼液のような懸濁性の点眼薬もあります。
また、強いアレルギー反応が見られる方に処方される場合が多いステロイド製剤である、フルメトロン点眼液0.1%なども懸濁性点眼液の1つです。
懸濁性点眼液は、水に溶けにくく吸収されにくい成分が含まれているため、成分が沈降しやすい特徴があります。
そのため、使用前には容器をよく振って成分を均一にしてから点眼するよう、患者さまに伝えましょう。
抗アレルギー点眼薬の特徴を理解して、花粉シーズンに備えよう
抗アレルギー点眼薬には多くの種類があり、それぞれ特徴があります。
本記事では、主な薬剤の特徴や服薬指導のポイント、コンタクトレンズ装用時の対応など、薬剤師として知っておきたい基礎知識を解説しました。
患者さまが安全に、そして効果的に点眼薬を使用できるよう、日々の指導にぜひお役立てください。
監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん
2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。
主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』
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