- 公開日:2024.02.08
【薬剤師向け】小児の抗アレルギー薬一覧!小児の薬は体重と年齢に注意しよう

近年、花粉症は成人だけでなく、小児にも発症しやすくなっています。小児と成人では、アレルギーに対する治療法や薬の選び方は基本的に変わりません。しかし、小児の薬を扱う際には、体重や年齢を考慮する必要があります。
この記事では、小児のアレルギー薬一覧や、調剤・服薬指導のポイントなどについて解説します。
- 小児に使う抗アレルギー薬は成人と異なるのか
- 小児に使用される主な抗アレルギー薬一覧
- 年齢や体重を考慮した小児投薬量計算の例
- 小児の薬における服薬指導時のポイント
- 小児の抗アレルギー薬に関してよくある質問
小児に使う抗アレルギー薬は成人と異なるのか
小児と成人において、アレルギーに対する治療法や薬の選び方は基本的に変わりません。アレルギー症状も同様で、くしゃみや鼻水、鼻づまり、目や肌のかゆみなどが出ます。
ただし、小児と成人では薬の代謝のスピードが異なるため、服用方法が異なったり、低年齢の小児の適応がない薬があったりします。
小児に使用される主な抗アレルギー薬一覧
ここでは小児に使用される主な抗アレルギー薬について、剤形が複数あるもの、よく使用されるものをピックアップして紹介します。
<小児に使用される主な抗アレルギー薬一覧>
| 薬効分類 | 商品名 | |
| 内服薬 | 抗ヒスタミン薬 | アレグラ・ザイザル・クラリチン・ジルテック・アレロック・アレジオン |
| 抗ロイコトリエン薬 | オノン・シングレア・キプレス | |
| 点鼻薬 | ステロイド点鼻薬 | ナゾネックス・フルナーゼ・アラミスト(フルチカゾンフランカルボン酸エステル) |
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンの働きを抑えることで、くしゃみや鼻水などのアレルギー症状を抑える薬です。
| 商品名 | 一般名 | 剤形 | 用法・用量(小児) |
| アレグラ | フェキソフェナジン | 錠・DS | [錠]・7歳以上[DS]・6ヶ月以上 |
| ザイザル | レボセチリジン | 錠・シロップ・DS※DSは後発品のレボセチリジン塩酸塩ドライシロップのみ | [錠]7歳以上[シロップ]6ヶ月以上[DS]6ヶ月以上 |
| クラリチン | ロラタジン | 錠・レディタブ錠・DS | [錠]7歳以上[レディタブ錠]7歳以上[DS]3歳以上 |
| ジルテック | セチリジン | 錠・DS | [錠]7歳以上[DS]2歳以上 |
| アレロック | オロパタジン | 錠・OD錠・顆粒 | [錠、OD錠]7歳以上[顆粒]2歳以上 |
| アレジオン | エピナスチン | DS | 3歳以上 |
第一世代の抗ヒスタミン薬には眠気や口渇などの副作用がありますが、新しいものほど副作用が軽減されている傾向にあります。
抗ロイコトリエン薬
抗ロイコトリエン薬は、アレルギーを起こす物質であるマスト細胞や好酸球、マクロファージなどのロイコトリエンの働きを抑える薬です。
| 商品名 | 一般名 | 剤形 | 用法・用量(小児) |
| オノン | プランルカスト | DS | ※体重換算:1日量7mg/kg(ドライシロップとして70mg/kg)1日2回朝食後および夕食後 |
| シングレア | モンテルカスト | チュアブル錠・細粒 | [チュアブル錠] 6歳以上 5mg 1日1回就寝前 [細粒]1歳以上6歳未満 4mg 1日1回就寝前 |
| キプレス |
鼻づまりを改善する効果は第2世代抗ヒスタミン薬よりも効果を発揮しており、くしゃみや鼻水にも有効です。
ステロイド点鼻薬
ステロイド点鼻薬は抗炎症作用をもち、アレルギー性鼻炎の薬のなかでも症状改善効果が強い傾向にあります。
| 商品名 | 一般名 | 対象年齢(小児) |
| ナゾネックス | モメタゾン | 12歳未満 |
| 小児用フルナーゼ | フルチカゾン | 低出生体重児、新生児、乳児又は5歳未満の幼児を対象とした臨床試験は実施していない |
ステロイド点鼻薬はステロイド薬の一種ですが、局所的に作用するため、全身に影響を及ぼす可能性は低いと考えられています。
年齢や体重を考慮した小児投薬量計算の例

医薬品の約7割は、添付文書に小児用量が記載されていません。そのため、小児投薬量の算出には主にAugsberger-Ⅱ式やVon Harnackの換算表を利用します。
ここでは、年齢や体重を考慮した小児投薬量計算の具体例について確認します。
アレジオンDSの例
抗ヒスタミン薬であるアレジオンDS(一般名:エピナスチン)は、アレルギー性鼻炎の場合、通常、小児には1日1回0.025~0.05g/kg(エピナスチン塩酸塩として0.25~0.5mg/kg)を用時溶解して経口投与します。なお、年齢・症状により適宜増減します。
オノンDSの例
ロイコトリエン受容体拮抗薬であるオノン(一般名:プランルカスト)は、小児にはプランルカスト水和物として1日量7mg/kg投与します。
ただし、体重別の標準服用量は通常、下記の用量を1回量とし、1日2回、朝食後及び夕食後に経口投与します。
1)体重12kg以上18kg未満:0.5g(プランルカスト水和物として50mg)
2)体重18kg以上25kg未満:0.7g(プランルカスト水和物として70mg)
3)体重25kg以上35kg未満:1.0g(プランルカスト水和物として100mg)
4)体重35kg以上45kg未満:1.4g(プランルカスト水和物として140mg)
オノンDSは瓶製剤に加えて、0.5g・0.7g・1.0g単位の分包品も販売されています。
ザイザルシロップの例
第2世代の抗ヒスタミン薬であるザイザルシロップは以下のように、小児の年齢ごとに服用する量が定められています。
7歳以上15歳未満の小児はシロップではなく、ザイザルの錠剤を服用することも可能です。錠剤の場合、7歳以上15歳未満の小児には1回2.5mgを1日2回、朝食後及び就寝前に経口投与します。
ナゾネックスの例
ステロイド点鼻薬であるナゾネックスは以下のように、年齢によって噴霧回数が異なります。
12歳以上の小児は成人と同様の用法用量ですが、12歳未満の小児では各鼻腔に1噴霧ずつになるので注意しましょう。
小児の薬における服薬指導時のポイント
ここでは、小児の薬における服薬指導時のポイントをそれぞれ解説します。
年齢と体重を確認する
服用する小児の患者さまに薬を渡す前に、適切な用法用量で薬が処方されているか、用意された薬の用法用量が合っているかを確認しましょう。
とくに、体重は増減している場合があるため注意が必要です。
これまで薬を服用したことがあるかを確認する
おくすり手帳や薬歴を確認し、過去に薬物治療を行ったことがあるかどうかを確認しましょう。服用歴がある場合には、服用が困難だった薬の有無などの確認が大切です。
苦手な剤形があるかを確認する
「錠剤が飲めない」「粉薬を飲むのが苦手」などの情報を聞き取り、問題なく服用ができるかを確認しましょう。服用が難しい場合は、薬剤や剤形の変更が必要になる場合もあります。
小児への飲ませ方のポイントを伝える
小児の患者さまでは薬をうまく服用できないことも多いため、投薬時に飲ませ方のポイントを伝えることも大切です。
粉薬はペースト状に練る、味が苦手な薬はオブラートや服薬ゼリーなどを活用するなど、患者さまが無理なく服用できるような工夫を伝えましょう。
【薬剤師必見】小児の服薬指導でおさえておくべきポイントは?
小児の抗アレルギー薬に関してよくある質問

ここでは、小児の抗アレルギー薬に関してよくある質問に対する回答を記載します。
アレルギー性鼻炎の薬を長く飲み続けても大丈夫ですか?
アレルギー性鼻炎の治療に用いられる薬は、通常、長期間の使用を前提として安全性が確認されています。
そのため、小児が服用し続けても体に与える影響は一般的に少ないと考えられます。
ただし、長期間服用している場合には、副作用の早期発見のため、定期的な血液検査や健康チェックを行うことを推奨します。
小児の食物アレルギーに対する薬はありますか?
アレルギー反応がすぐに現れる「即時型」の場合、症状を抑えるために、抗ヒスタミン薬や気管支拡張薬、ステロイド薬などが使われます。
緊急時には、アドレナリン自己注射製剤(エピペン® )を使用します。
また、食物アレルギーを完全に治す薬はまだありません。そのため、基本的にはアレルギー症状や血液検査の結果に基づいて、原因となる食品を避けることが重要です。
アタラックス-Pは小児のアレルギーに使用できますか?
アタラックス-Pに小児用量はありません。ただし、体重や年齢などを考慮することで小児用の剤形に変更できる場合があります。
アタラックス-Pは第一世代の抗ヒスタミン薬であるため、眠気の副作用が出やすい特徴があります。
眠気の副作用が学業に影響する可能性がある場合には、第二世代の抗ヒスタミン薬といった、ほかのアレルギー薬の服用を検討するのがよいでしょう。
小児に禁忌のアレルギー薬はありますか?
小児におけるアレルギー薬の使用については、年齢や体重、症状の重さ、薬の種類によって慎重に検討する必要があります。
また、一部の抗ヒスタミン薬やその他のアレルギー薬は、小児に対して注意が必要とされる場合があります。
抗アレルギー薬の小児への副作用はありますか?
抗アレルギー薬を服用することで、眠気や口の乾きなどの副作用が生じる場合があります。ただし、これらの副作用は小児だけに出現するわけではなく、成人でも生じることがあります。
小児の薬を扱う際は体重と年齢に注意しよう
小児と成人では、アレルギーに対する治療法や薬の選び方は原則変わりません。
小児に使用する医薬品では、添付文書に用量が明記されていないことが多いため、年齢や体重をもとに計算する必要があります。
小児の薬を扱う際は体重と年齢に注意し、正しく服薬指導できるようになりましょう。
監修者:藤原 智沙恵(ふじわら ちさえ)さん
メーカーでヘルスケア用品の研究に従事し、商品開発から薬事申請、特許出願まで幅広く携わる。転職して5年間薬局薬剤師として勤務したのち、薬剤師ライターとして独立。
研究職の経験から徹底したリサーチが得意であり、エビデンスの高い記事を書くライターとして定評がある。
アトピー性皮膚炎の新規治療薬の探索に関する海外での学会発表や、化粧品成分をノロウイルス不活化製剤に応用した技術で特許を取得するなど、研究分野で幅広い実績を持つ。
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