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2018.12.28

【薬剤師向け】インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」とは? 効果や副作用、耐性、薬価を解説

【薬剤師向け】インフルエンザの新薬「ゾフルーザ」とは? 効果や副作用、耐性、薬価を解説

冬が近づくと、インフルエンザの流行が気になってきます。ワクチン接種や手洗いうがいなど、自身の感染対策も欠かしてはなりません。

薬剤師であれば、インフルエンザ治療薬の知識を身につけることも大切。特に2018年は、インフルエンザ治療薬として8年ぶりの新薬「ゾフルーザ」が発売され話題となりました。

この記事では、患者さまに適切な服薬指導を行えるように、【ゾフルーザの効果と副作用/従来の薬との違い/説明時の注意点】などをまとめて解説していきます。(記事更新日:2019年11月28日)

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ゾフルーザの効果

ゾフルーザ薬を調べる薬剤師のイメージ写真

ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)は、日本の塩野義製薬株式会社が創製した抗インフルエンザ薬です。

単回経口投与により優れた効果を発揮する抗インフルエンザ薬の開発を目的に、2015年から臨床試験を開始。有用性が高い薬剤であることから、先駆け審査指定制度の対象品目に指定され話題となりました。2017年10月に製造販売承認申請が行われ、2018年2月に製造販売承認を取得。販売は2018年3月でした。

ゾフルーザは、ほかの抗インフルエンザ薬と同様に、成人および小児のA型またはB型インフルエンザウイルス感染症患者に用います。既存薬は細胞内で増殖したウイルスが細胞外に広がるのを防ぐことで効果があらわれます。一方でゾフルーザは、細胞内でウイルス自体の増殖を抑制する仕組みをもつことから、より高い効果が期待できると考えられているのです。

臨床試験において体内からインフルエンザウイルスが排出されるまでの時間は、タミフルが72時間に対しゾフルーザは24時間でした。

ゾフルーザの副作用

添付文書によると、副作用は成人および12歳以上の小児を対象とした臨床試験の対象例910例中、49例(5.4%)に認められました

主なものは、下痢12例(1.3%)、ALT(GPT)増加8例(0.9%)でした。また、12歳未満の小児を対象とした臨床試験の対象例105例中、副作用は4例(3.8%)に認められ、主なものは下痢2例(1.9%)でした。臨床試験において、投与後に異常行動(急に走り出す、徘徊するなど)につながる有害事象は認められていませんが、市販直後調査では異常行動が報告されています。

市販後に報告された、ハイリスク因子(※)を有する成人および12歳以上の小児を対象とした臨床試験における安全性評価対象例730例中、臨床検査値の異常変動を含む副作用は41例(5.6%)に認められました。主なものは悪心16例(2.2%)、下痢9例(1.2%)でした。また、直近3年間の国内副作用症例として、25例(うち因果関係が否定できなかった症例13例)の出血関連症例の報告があった点にも注意が必要です

上記の報告を踏まえて、2019年3月には厚生労働省により、「重大な基本的注意」および「重大な副作用」の項に【出血】に関する文言を追記するよう指示がありました。

ちなみに、タミフルやリレンザのように複数回投与の場合は、初回投与の際に副作用と思われる症状が出ても中止が可能ですが、ゾフルーザの場合は1回の投与となるので副作用に対する対応が難しい点にも注意しましょう。

※:65歳以上の高齢者、慢性呼吸器疾患または慢性心疾患患者、糖尿病など代謝性疾患患者 等

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ゾフルーザの薬価と添付文書

インフルエンザ治療の新しい選択肢として注目されているゾフルーザですが、薬価や添付文書についても確認しておきましょう。

・ゾフルーザの薬価

ゾフルーザの薬価は、2019年11月現在で10mg錠が1錠あたり1535.4円、20mg錠が1錠あたり2438.8円です。薬価は発売当時、イナビル吸入粉末剤を類似薬として算定されましたが、有用性加算II(5%)および先駆け審査指定制度加算(10%)を取得していることが特徴です。新薬であるため、2019年10月の消費増税に伴う薬価改定においても実勢価を踏まえた引き下げは行われず、増税分の2%が引き上げられました。

新薬として注目されているゾフルーザですが、類似薬と比較すると薬剤費は高額です。1回の治療で必要とされる薬剤費を最安価であるタミフルのジェネリック医薬品と比較すると、タミフルジェネリックは1,297円(10カプセル)であるのに対し、ゾフルーザは4,877.6円(2錠)と、約4倍の金額となります(体重80kg以下の成人の場合)。

・ゾフルーザの添付文書

「ゾフルーザ(一般名:バロキサビルマルボキシル)」は、A型またはB型インフルエンザウイルス感染症を治療する薬として、2018年3月に登場しました。感染した宿主細胞内で新たなインフルエンザウイルスを作るために必要な酵素である、キャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害することにより、インフルエンザウイルスの増殖をおさえることが特徴です

ゾフルーザの添付文書は発売以来、3度にわたる改訂が行われています。2018年8月には重大な副作用として「異常行動」、2019年3月には同「出血」、2019年6月には同「ショック、アナフィラキシー」が追記されています。

▼添付文書はコチラ>添付文書「ゾフルーザ」

▼添付文書はコチラ>使用上の注意改定のお知らせ(シオノギ製薬)

ゾフルーザと従来のインフルエンザ薬との違い

ゾフルーザは、これまでの抗インフルエンザ薬とはまったく異なる、新規の作用機序を有していることが特徴です。従来の抗インフルエンザ薬との違いについて、見ていきましょう。

・従来の抗インフルエンザ薬

既存の抗インフルエンザ薬は、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ(点滴)の4剤があり、これらはすべて「ノイラミニダーゼ阻害剤」と呼ばれる作用機序を有しています。

インフルエンザウイルス表面に存在する酵素であるノイラミニダーゼは、新しく産生されたウイルスの感染細胞からの遊離や、ウイルスが気道の上皮細胞に接近するためにも必要だと知られています。このノイラミニダーゼにアプローチすることが、長らくインフルエンザ治療薬の仕組みとして用いられてきました。

また、これら4剤の特徴もおさえておきましょう。タミフルは経口投与が可能であり服用が簡便ですが、5日間連続で投与しなくてはならず、耐性を持つウイルスの出現も問題となっています。2018年8月より、10代への投与が再開されたこともポイントです。

リレンザやイナビルは吸入するタイプの薬剤のため、服用にコツが必要ですが、イナビルでは単回投与で治療が完了するため、飲み忘れを防ぐことが期待されます。

ラピアクタは点滴で用いる薬剤のため、調剤薬局で見かけることはほとんどなく、経口や吸入が困難な重症例にのみ使用されています。

・ゾフルーザが従来の薬と違うポイント

ゾフルーザは、インフルエンザウイルス特有の酵素であるキャップ依存性エンドヌクレアーゼ(cap-dependent endonuclease)に作用します。インフルエンザウイルス遺伝子からの転写反応を阻害することでインフルエンザウイルスの増殖を抑制。インフルエンザウイルスは細胞の中で増殖し、細胞膜を破って広がります。

従来のノイラミニダーゼ阻害剤は増殖したウイルスが細胞の中から出てくるのを抑えますが、ゾフルーザはウイルスの細胞内での増殖自体を抑制するのです。

既存薬に比べて、体内からより早くインフルエンザウイルスが排泄されることも特徴です。塩野義製薬が行った試験によると、ゾフルーザを服用した翌日には、鼻水の中に含まれる感染性のウイルスが10万分の1に減ったことがわかっています。

また、服用方法としても経口単回投与が可能であることから、錠剤(顆粒も発売予定)を1回飲むだけで治療が完了します。タミフルやリレンザのように服用忘れのリスクがなく、イナビルのように吸入の失敗リスクもないため、服用しやすいということも特徴です。

・抗インフルエンザ薬それぞれのシェア動向

抗インフルエンザ薬のシェアは、イナビル(第一三共株式会社)が長らく首位をキープしていました。2017年シーズンの売上高は、イナビルが253億円、タミフル(中外製薬株式会社)が169億円、ラピアクタ(塩野義製薬株式会社)が33億円となっています(リレンザは非開示)。ゾフルーザはシーズン終盤の3月に発売されたにも関わらず、わずか2週間で24億円を売り上げました。シェアも4月からの半年間で抗インフル薬マーケットの65%を占めました(各社の決算発表を参照)。

しかしながら、2018年シーズンはゾフルーザが本格的に処方されたことによりシェアが大きく変動しました。イナビルは182億円(前年度比28.0%減)、タミフルは101億円(同43.6%減)、ラピアクタは20億円(同39.4%減)と、軒並みシェアを落としている一方で、ゾフルーザは当初予定されていた130億円の約2倍となる、263億円(同995.8%増)を売り上げたと発表されています

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ゾフルーザを服用する患者さまへの服薬指導の仕方

ゾフルーザの服薬指導をする薬剤師のイメージ写真

薬剤師としてゾフルーザの服薬指導を行う際に、患者さまへの説明の仕方で気をつけるには、どのようなことがあるのでしょうか。

・体重の確認、服薬のタイミングに要注意

お薬を安心安全に服用していただくために、服用方法や期待される効果を伝えることは、普段の服薬指導と変わりありません。

しかし、インフルエンザに罹患した患者さまにお薬を渡す際は、発熱などインフルエンザの諸症状によって、体力や判断力が低下していることに注意しましょう。投薬口までお呼びたてするのではなく、患者さまのところまで薬をおもちしてお渡しするなど、できる限り簡潔に受け渡しをすませることがポイントです。

また、ゾフルーザは体重80kg以上の患者さまには投与量を増やす必要があります。そのため調剤時は、一般的な抗インフルエンザ薬の服薬指導に加えて、体重の確認を行うことが必要です。12歳以下の小児においても、体重ごとに投与量をこまかく変える必要があるため、体重の確認を行うようにしましょう。

ゾフルーザは単回投与で治療が完了するお薬であるため、1回分のお薬を確実に服用していただくことが重要です。食前・食後に関わらず服用できるので、服薬指導時に目の前で服用していただくことをおすすめします。

・小児患者には異常行動の説明を

小児に対して抗インフルエンザ薬が処方された場合は、保護者の方に異常行動のリスクを説明するようにしましょう。しかし、異常行動を恐れるあまり、お薬を服用しないことがあっては期待される治療効果は発揮されません。

抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無やその種類にかかわらず、インフルエンザにかかったときには異常行動のリスクがある」ということを理解していただくことが大切です。

さらに、小学生以上の小児・未成年者の男性で報告が多いこと(女性でもあらわれる)、異常行動は発熱から2日間以内にあらわれる場合が多いことを説明して、万が一の事故が起こらないように注意を促しましょう。

よく質問される内容の一つとして、"学校や園への出席が可能となる日数"があります。学校保健安全法施行規則第19条によると、インフルエンザに罹患した場合、学校や園への出席停止の期間は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日 (幼児にあっては3日)を経過するまで」と規定されています。ただし、病状により学校医やそのほかの医師が感染の恐れがないと認めたときはこの限りではありません。

・高齢者は合併症にも気を配るように

ゾフルーザの添付文書によると、高齢者における減量の記載はありません。しかし、生理機能が低下していることに留意して、万が一異常があった際には、即座に対応できるよう指示を行うようにしましょう。

また、高齢者のインフルエンザにおける注意点として、合併症があらわれやすいということがあります。発症で体力が失われたときに、細菌に感染して気管支炎や肺炎を引き起こし、死に至ることもあります。予後が悪いと感じたら再度の受診を促すなど、二次的な疾患につながらないように指導しましょう。

・耐性ウイルスの出現にも目を向けよう

ゾフルーザの発売後、その利便性や画期性から、多くの医師が意欲的に処方しました。しかし、2019年には耐性をもつウイルスが検出されたと報道され、医療従事者はもちろん患者さまにも動揺を与える事態となってしまいました。

塩野義製薬株式会社による発売前の臨床試験では、12歳から64歳の370人中9.7%/36人から耐性ウイルスが検出されたと報告されています。2019年3月12日には、ゾフルーザ未投与例からも耐性菌が検出されたと報道がありました。患者さまから耐性ウイルスについて質問を受けることもあるので、最新情報を収集し適切な説明ができるようにしましょう。

塩野義製薬株式会社が予防投与申請

2019年10月16日、塩野義製薬株式会社はゾフルーザについて、インフルエンザウイルス感染症の予防に関する効能追加申請を行ったことを発表しました。インフルエンザウイルス感染症患者の同居家族・共同生活者750例を対象に日本で実施した「BLOCKSTONE試験」の結果によると、症状が発現した被験者の割合は、ゾフルーザ投与群が1.9%、プラセボ投与群が13.6%で、ゾフルーザの投与によりインフルエンザウイルス感染症の発症割合は86%減少したことがわかります。

申請時期から、2019~20シーズン中の承認取得は難しいと考えられていますが、承認が行われればインフルエンザ予防に新たな選択肢が加わることとなります。ただし、ほかの抗インフルエンザ薬と同様に、基本的に自費診療になると予想されているので、注意が必要です。

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自衛をしながら、正しい調剤を

ゾフルーザは既存の抗インフルエンザ薬とは異なる、新規の作用機序をもった医薬品です。「タミフルのように経口投与ができて、イナビルのように単回投与ができる医薬品が欲しい」という医療従事者の希望を叶えた製品でもあるので、しっかりと違いを理解して適切な服薬指導ができるように準備しましょう。

インフルエンザは例年11月下旬頃から増加して、2月頃にピークを迎えます。インフルエンザの患者さまの来局が多い調剤薬局や病院では、医療従事者の感染も問題となっています。

予防接種だけでは感染を100%防ぐことはできないので、外出後のうがい手洗いを忘れないように気をつけ、マスクなどで自衛するように心がけましょう。

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記事掲載日: 2018/12/28

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