業界動向
  • 公開日:2023.10.16

【2024年度】医療・介護・障害のトリプル改定とは?

【2024年度】医療・介護・障害のトリプル改定とは?

診療報酬の改定は原則として2年に1回行われ、2024年度はこの改定の年にあたります。さらに2024年度は、診療報酬だけではなく、同時に介護報酬と障害福祉サービス等報酬の改定も行われます。これら3つが同時に改定されることは「トリプル改定」と呼ばれ、6年に1回の頻度であるため、注目度の高い改定となります。

この記事では、改定の方向性やポイント、改定に向けて取り組むべきことなどをわかりやすく解説します。

2024年度の「トリプル改定」とは何か

「医療・介護・障害福祉」診療報酬は定期的に改定が行われます。

診療報酬は2年に1回、介護報酬や障害福祉サービス等報酬は3年に1回、国の財政状況や医療進歩を加味して改定が行われます。

2024年度は「医療・介護・障害福祉」の診療報酬が同時に改定するので「トリプル改定」と呼ばれています。

【 2024年に同時に改定される報酬内容 】

診療報酬...医療行為(診察、治療、処方など)を行った医療機関への対価

介護報酬...要介護者・要支援者に対する介護サービスを提供した事業所への対価

障害福祉サービス等報酬...障害者(児)や難病疾患の対象者に対する障害福祉サービスを提供した事業所への対価


※「診療報酬」とは?

医療機関に、その対価として支払われる費用は「診療報酬」と呼ばれ、厚生労働大臣が定めた医療行為1つひとつの点数を足し合わせて算出した金額のこと

引用:なるほど!診療報酬|日本医師会

トリプル改定の課題となる2025年問題、2040年問題とは

トリプル改定にあたり喫緊の課題となっているのが2025年問題、2040年問題です。厚生労働省の資料によると、2025年度には『団塊の世代』がすべて75歳以上の後期高齢者となり、医療・介護のニーズが急速に増大していきます。

さらに、2025年を過ぎて2040年にかけては15~64歳の生産年齢人口が急激に減少し、2040年には『団塊ジュニア世代』が65歳以上となります。つまり、現役世代人口が減少して医療・介護保険制度の財政が厳しくなるだけでなく、医療・介護の支え手となる人材の確保がより一層難しくなることが予想されるのです。

2024年度トリプル改定の方向性

2024年度改定は、2025年を迎える「前年」にあたる重要な改定です。そのため、厚生労働省によりトリプル改定に向けた制度横断的な意見交換会が開かれました。2023年3~5月で計3回、医療側の「中央社会保険医療協議会総会(以下、中医協)」と介護側の「社会保障審議会介護給付費分科会(以下、介護給付費分科会)」で、主に以下の内容について審議が行われました。

  • 地域包括ケアシステムのさらなる推進のための医療・介護・障害サービスの連携
  • リハビリテーション・口腔・栄養
  • 要介護者等の高齢者に対応した急性期入院医療
  • 高齢者施設・障害者施設等における医療
  • 認知症
  • 人生の最終段階における医療・介護
  • 訪問介護
  • 2024年度「トリプル改定」のポイントとは

    2024年度「トリプル改定」のポイントとは

    中医協と介護給付費分科会の審議をふまえ、2024年度のトリプル改定は、以下の点が改定のポイントになると考えられます。

    医療・介護・障害サービスの連携

    厚生労働省は、高齢者の尊厳の保持および自立生活の支援を目的として、"住み慣れた地域で自分らしい暮らしを、可能な限り人生の最後まで続けることができる体制"を2025年を目途に構築したいとしています。

    この体制のことを「地域包括ケアシステム」と呼び、医療・介護・障害者への生活支援が包括的に確保される体制を指します。

    「地域包括ケアシステム」の実現とさらなる推進に向け、病院の入退院やリハビリ、通所介護(デイサービス)など患者さま・利用者さまの療養場所が移ることに伴う情報提供や連携に係る評価および、医療機関や居宅サービスといった各関係機関の"日頃から顔の見える"連携体制の構築に係る評価が行われています。

    医療・介護DXのさらなる推進

    質の高い医療提供体制および地域包括ケアシステムの構築において、情報通信機器(ICT)の活用は情報共有に有効な手段とされています。政府はICT活用に向けて医療・介護DX(デジタルフォーメーション)を今後もさらに推進していく方針です。

    たとえば、「全国医療情報プラットフォーム」を整備してオンライン資格確認等システムを拡充することで、電子カルテの情報だけでなく介護情報や検診・予防接種等の自治体が保有する情報など、さまざまな情報共有がスムーズになり、質の高い医療を効率的に提供することが可能となるでしょう。

    また、診療報酬改定でもDXを推進していく動きがあります。

    医療機関が医療費の計算などに使用できる「共通算定モジュール」を開発することで診療報酬改定に係る作業の効率化を進めようとする取り組みや、4月施行となっている診療報酬改定の施行日を後ろ倒しすることでシステム改修コストを低減する取り組みなどが明言されています。

    診療報酬や介護報酬は大幅改定の予想

    2023年5月26日に開催された政府の経済財政諮問会議では、加藤勝信厚生労働相が診療報酬や介護報酬の大幅な引き上げが必要との認識を示しています。

    物価高騰により、医療機関や介護事業所などが公的価格のもとで経営状況が悪化していることや、人材確保の観点からも、診療報酬や介護報酬等の大幅改定は避けられないと考えられるでしょう。

    トリプル改定に関連する改革

    2024年度は実はトリプル改定だけではなく、第8期医療計画のスタートや医師の働き方改革なども同時に行われる年にもあたります。

    第8次医療計画

    医療計画とは、医療法に基づき、効率的な医療提供体制の確保を図るための計画です。6年ごとに区切りがあり、2024年からは第8次医療計画がスタートします。

    第8次医療計画の対象期間である2024〜29年度中に2025年が訪れることからも、生産年齢人口の減少に対応する「マンパワーの確保」、情報技術(ICT)やデジタル化推進による「効率的な医療提供体制の構築」が重要な課題です。

    また、新型コロナウイルス感染拡大で浮き彫りとなった、地域医療機関の強化や連携の重要性を改めて認識し、今後はへき地医療へのオンライン診療の活用や、多様な病態への対応、ターミナルケアへの参画などへの取り組みがより評価されていくでしょう。

    医師の働き方改革

    2024年4月からは医師の働き方改革がスタートします。

    「働き方改革関連法」は2018年6月に国会で成立しましたが、医師については業務上の事情を考慮して2024年4月からの適応とされていました。

    各医療機関には医師の労務管理や労働時間の短縮の徹底、医師の業務移管(タスク・シフト/シェア)、連続勤務の制限、勤務間インターバルの確保などが厳しく求められます。また、2022年度診療報酬改定では「医療事務作業補助体制加算」の見直しが行われたことからも、2024年度改定ではさらなる働き方改革への推進が予想されるでしょう。

    これからの薬剤師に求められることとは

    これからの薬剤師に求められることとは

    では、トリプル改定や関連する2024年度の改革に伴い、私たち薬剤師には今後どのようなことが求められていくのでしょうか。

    医師から薬剤師へのタスクシフト

    医師の働き方改革の推進において、医師の負担軽減策の有効な手段の一つとして、以下のような業務の「薬剤師へのタスクシフト」があげられています。

  • 薬剤師による投薬に係る患者さまへの説明
  • 薬剤師による患者さまの服薬状況、副作用等に関する情報収集と医師への情報提供
  • 薬剤師による処方提案または服薬計画等の提案
  • これらのタスクシフトが進むことで、薬剤師の存在意義も一層高まることでしょう。これからの病院薬剤師には、薬物治療の中心的存在として、医師や他の医療従事者との積極的な連携が求められます。また、地域の薬局薬剤師との連携(薬薬連携)もさらに重要視されていくでしょう。

    地域包括ケアを支えるための多職種連携の強化

    これまで国は医療において、急性期→回復期→慢性期・在宅の垂直連携 (タテ連携)を推進してきました。しかし今後は、かかりつけ医、地域包括ケアを支える病院・有床診療所、 介護等との水平的連携(ヨコ連携)を推進していく方針を掲げています。

    私たち薬剤師は医療DXやICT(電子版お薬手帳など)を積極的に取り入れていくことで、医療機関や職種を問わずに情報を共有できる仕組み作りを強化していくことが求められます。

    とくに地域の薬局・ドラッグストアに勤める薬剤師は、医療と介護の橋渡しを行うことのできる重要なポジションです。地域医療の窓口として、地域住民の服薬および健康についての相談に対応することや在宅医療を支援する役割が求められています。

    トリプル改定で今後はますます薬剤師の存在意義が高まる!

    今後の日本が直面する2025年問題・2040年問題を視野に入れ、医療・介護・障害サービスの連携や医療DXがより一層推進されていくと考えられます。

    これからの薬剤師には、医師からのタスクシフトや地域包括ケアを支えるための多職種連携にも対応できる能力が今後ますます求められるようになるでしょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2023/10/16

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    日本のエーザイ株式会社と、米国のバイオジェン社が共同で開発した認知症の新薬である「レカネマブ」。以前から認知症の治療に有効性が期待できる薬として注目を浴びていました。2023年9月25日に厚生労働省に承認されました。「レカネマブ」は、認知症の中でも最も患者さまが多い、アルツハイマー病の原因物質に直接作用する効果に関心が集まる一方、薬価の面では社会保険料の負担が増える点も危惧されています。今回は「レカネマブ」について効果効能や副作用、また導入に向けた取り扱いのポイントも合わせて解説していきます。