業界動向
  • 公開日:2019.02.01

『認定実務実習指導薬剤師』になる条件は?業務内容や申請要件、取得するメリットを徹底解説【薬剤師の資格入門】

『認定実務実習指導薬剤師』になる条件は?業務内容や申請要件、取得するメリットを徹底解説【薬剤師の資格入門】

以前の薬学部は4年制でしたが、平成18年の入学から薬学部は6年制となり、薬学生が学ぶ内容も大きく変わりました。病院や薬局における長期の実務実習が導入されるようになり、より臨床に則した教育が取り入れられるようになったことが特徴の一つです。

それにともなって、薬学生を指導することのできる薬剤師が必要となり、認定実務実習指導薬剤師制度が導入されました。

薬剤師としての経験がある程度身についてくると、マネジメントや後輩の育成に興味を持つ方も少なくありません。ここでは【薬学生の指導をおこなうことができる認定実務実習指導薬剤師】について、【業務内容や取得するための条件】を解説していきます。

認定実務実習指導薬剤師制度の概要

認定実務実習指導薬剤師と会話する薬剤師のイメージ

実務実習における薬学生の指導に必要な資格として、「認定実務実習指導薬剤師」というものがあります。ここでは、制度の概要や仕事内容について、ご紹介します。

・認定実務実習指導薬剤師(指導薬剤師)とは?

認定実務実習指導薬剤師とは、6年制薬学部でおこなわれる実務実習において指導を行う薬剤師のことをあらわします。特定の要件を満たしたうえで、公益財団法人日本薬剤師研修センター(JPEC)がおこなう研修を修了することにより、認定実務実習指導薬剤師として認定されます。

厚生労働省では、薬学生のレベルを高めるためにも、実務実習を行う研修機関ごとに1人以上の認定実務実習指導薬剤師を配置することが望ましいとしています。

・制度ができた背景

認定実務実習指導薬剤師制度は、6年制薬学部教育制度の下で薬学生に対して、医療の現場における実務実習の際に指導にあたることのできる薬剤師の認定をおこなっています。

地域における薬剤師の役割が変わりつつある中で、社会的要請に応えられる薬剤師の養成を目的としています。

薬学生の実務指導を行う指導薬剤師

・薬学生の実務指導を行うのが「指導薬剤師」

認定実務実習指導薬剤師(以下、指導薬剤師)とは、現場のことをよく知る先輩薬剤師として、薬学生が実務実習に来たときに指導をおこなう薬剤師のことです。

実際の職場での研修を通じて、指導カリキュラムの作成や評価を行い、薬剤師としての基盤となる能力を養います。また、単に現場で指導するだけでなく、カウンセリングなどを通じて精神的なサポートを行うことも、指導薬剤師の大切な仕事内容です。

指導薬剤師としての仕事以外にも、通常の薬剤師としての役割もこなさなくてはなりません。薬学生から質問されることも多く、わからないことがあれば業務時間外に調べる場合もあるため、実習期間中は負担が大きくなりがちです。しかし、将来を担う人材を育成することにより、業界の発展に貢献することが出来るので、非常にやりがいのある仕事といえます。

指導薬剤師になるメリット

指導薬剤師に指導される薬剤師のイメージ

将来を担う人材の育成に貢献することのできる指導薬剤師は、非常にやりがいのある仕事です。しかし、病院や薬局にとって指導薬剤師を配置することは義務ではないため、年収や待遇に直結するとは言い切れません。それでは、指導薬剤師になることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

・コミュニケーションスキルが身につく

指導薬剤師を経験することで、後輩に対する指導の方法を身につけることができます。また、カリキュラムの中で他職種と連携して薬学生の研修を行うこともあるので、まわりのスタッフとの折衝力も向上します。

認定実務実習指導薬剤師を取得するためのワークショップや講習会においても、薬剤師としての心構えやコミュニケーション術、育成をおこなうための技能について、幅広く学ぶことができます。

・最新の医療情報に触れることができる

薬学生を指導するためには、指導薬剤師自身も十分な知識を身に着けなくてはなりません。特に、薬学部では最新の情報にもとづいた教育がおこなわれているので、最新の医薬品やガイドラインや医療制度の情報をきちんと理解していることが求められます。

また、日々変わりつつある薬剤師教育の中で、後輩の指導を行いながら時代が求める薬剤師の姿を感じることもできるので、自身の薬剤師としての役割を見つめ直すことにも役立ちます。

・今後のキャリアに活かすことができる

認定実務実習指導薬剤師を取得することで、転職の際にPRポイントとなることもあります。実習生を受け入れている薬局や病院では、資格を持ち後輩指導に積極的な薬剤師に働いてほしいと考えるので、採用において有利になることもあるでしょう。

また、実習生の受け入れ予定がない場合でも、後輩育成やマネジメントを任せる際に、指導薬剤師の実績が認められることもあります。

指導薬剤師になるためには5年以上の実務経験が必須

学習を続ける指導薬剤師

認定実務実習指導薬剤師になるためには、どのような条件があるのでしょうか。

・指導薬剤師になるための条件

実施要項に定められる基本的素養を満たしており、病院や薬局の薬剤師として5年以上の実務経験(講習の受講時点で継続して3年以上、勤務時間が1週間あたり3日以上かつ20時間以上)がある場合に、所定の講習を受講して認定申請を行うことで、認定実務実習指導薬剤師となることができます。

求められる基本的素養としては、十分な実務経験を有していることや薬剤師を志す学生に対する実務指導に情熱を持っていること、実習の成果を適切に評価できること、実習生の受け入れ期間中に恒常的に指導できることなどが挙げられます。

・勤務先ごとの望ましい条件

病院の場合では、薬剤管理指導業務を実施していることや院内処方箋の発行を推進していること、病棟薬剤業務実施加算の届け出を行っていることなどが挙げられます。

また、薬局の場合では、薬学実務実習ガイドラインが求める地域保険、医療、福祉などに関する業務を積極的におこなっていることや、「健康サポート薬局」の基準と同等の体制を有していること、改訂・薬学教育モデル・コアカリキュラムに示された領域に関する症例を実習できる体制を整備していることなどが挙げられます。

・指導薬剤師に必要なワークショップ、講習会の概要

認定実務実習指導薬剤師となるためには、所定のワークショップと講習会を受講しなくてはなりません。ワークショップ形式の研修では、一般社団法人薬学教育協議会が認めるワークショップを受講します。

講習会形式の研修では「薬剤師の理念」「薬学教育モデル・コアカリキュラム及び薬学実務実習に関するガイドライン」「学生の指導(法的問題)、学生の指導(薬局関係)及び学生の指導(病院関係)」の3つの講座を修了している必要があります

指導薬剤師の申請・更新手続きの方法

指導薬剤師の申請準備をするイメージ図

認定実務実習指導薬剤師の申請および更新の手続きの方法について、解説していきます。

・認定実務実習指導薬剤師の新規申請

新規申請を行う場合には、所定の申請書類に必要事項を記入して、ワークショップの修了証、講習会の受講証、履歴書、薬剤師免許の写し、通常はがき1枚、認定申請料振り込み明細の写しを添えて、公益財団法人日本薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師認定係まで申請する必要があります。

・認定実務実習指導薬剤師の更新申請

更新申請を行う場合には、更新申請書、更新講習の受講証、履歴書、通常はがき1枚、更新申請料振り込み明細の写しを添えて、公益財団法人日本薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師認定係まで申請をおこなう必要があります。

認定期間中に実務実習生の指導実績が1例以上あること(実績が無い場合には、理由や勤務状況の説明、今後の指導見込みを記載した書類を提出)、現に薬剤師として勤務していること、認定期間中に3年以上(更新申請の直近1年以上)実務に従事していることなどが更新の条件とされています。

指導薬剤師は、薬剤師としてのスキルアップに有効

認定実務実習指導薬剤師は、かかりつけ薬剤師指導料の算定に必要な認定薬剤師薬剤師などと比較すると、職場から求められる優先度の低い資格として捉えられがちです。

しかし、薬剤師としてスキルアップを目指す上で、後輩を育成するスキルを養うことは非常に重要となってきます。身につけたスキルは、実務実習における薬学生の指導以外においても、さまざまな場面で生かしていくことが期待されるでしょう。

指導薬剤師は、自身の経験を薬学生や後輩に伝えることにより、将来を担う人材の育成に貢献することができる重要な役割です。研修さえ修了すれば、取得自体は難しくない資格でもあるので、興味がある方はぜひ一度挑戦することをおすすめします。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/02/01

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