業界動向
2021.03.12

第3回「薬剤師×Webエンジニア」加藤智之インタビュー

第3回「薬剤師×Webエンジニア」加藤智之インタビュー

薬剤師として働きながら、薬剤師以外のジャンルに活躍の場を広げる方は近年増え続けています。この企画では、薬剤師の仕事を軸にもちつつも、様々な領域に特化し自らのキャリアを描く先人たちをご紹介していきます。

第3回目は薬剤師免許を持ちながら、オンライン薬局を運営する株式会社YOJO TechnologiesでWebエンジニアとして活躍されている加藤智之さん

薬剤師、Webエンジニア、さらに英語力を活かして通訳案内士資格も取得。今回は、そうした精力的な活動を続ける加藤さんに、Webエンジニアとして働き始めた経緯や今後のキャリアについてお話を伺いました。

薬剤師からWebエンジニアへキャリアチェンジ

薬剤師、Webエンジニア、通訳案内士と様々な顔を持つ加藤さんですが、現在のご活動について教えてください。

通訳案内士に関しては資格をとってからとくに活動はしていません。というのも、プログラミングの方に興味が偏ってしまって(笑)。現在は株式会社YOJO TechnologiesでWebエンジニアとして働いています

現在は薬剤師としてのお仕事はされていないのですか?

そうですね。薬剤師の仕事も好きなので、時間があればやりたいのですが......。今はYOJO Technologiesで取り組んでいるプロジェクトが軌道に乗る直前なので、Webエンジニアの仕事に集中していきたいと思っています。

加藤さんが薬剤師になろうと思ったきっかけを教えてください。

最初から薬剤師を目指していたわけではなく、もともとは獣医を目指していました。でも第一志望の大学には落ちてしまって。滑り止めで受けていた大学がたまたま薬学部で、浪人もしたくないなと考え入学しました。学生時代もそのまま薬剤師になるか迷っていたんですが、薬局実習に行ったとき出会った先生に薬剤師の仕事の醍醐味を教えていただき、薬剤師として現場で働きたいと思ったのがきっかけです

フィリピン留学がキャリアのターニングポイント

フィリピン留学がキャリアのターニングポイント

薬剤師3年目のとき、フィリピンに留学されたとのことですがきっかけを教えてください。

小さい頃から、「英語はできるようになりなさい」と両親にずっと言われていました。加えて、このまま薬剤師としてずっと働くのも退屈かもな......という想いが漠然とあって。

働く時間ってすごく長いので、一つの職業で働き続けるのも死ぬ前に後悔しそうだなと思ったんですね。

英語のスキルがあれば色々な職業に役立ちます。実際、薬剤師として薬局に勤めていたときに、外国人の患者さまがいらっしゃって対応する機会もありましたね。もともと独学で英語は勉強していたのですが、スピーキング力と発音を鍛えたいと思いフィリピンに3ヶ月留学しました。その後、帰国して通訳案内士の資格を取得しました

社会人になってからまったく環境が違うところに身を置くことについて、不安や葛藤はありませんでしたか?

多少はありました。でも、こういう言い方が正しいかはわかりませんが、薬剤師免許のおかげで再就職の不安があまりなかったので冒険できたと思います。なんとかなるだろうという気持ちの方が大きかったですね。

薬剤師免許があったからこそ、新しいチャレンジもしやすいのですね。もうひとつの軸であるWebエンジニアには、もともとなろうと思っていたのでしょうか?

いえ、フィリピン留学中に出会ったシステムエンジニアがきっかけです。その方は色々な国を転々としながら開発をして、日本円を稼いで暮らしていて。「プログラミングの知識があるとそういう働き方もできるんだ!」と、すごく感動したんですよね。あまり薬剤師にはない働き方だなと。それでプログラミングに興味を抱き、帰国してから英語学習と同時にプログラミングも独学で始めました。

帰国されてからは薬剤師の仕事に戻られたのでしょうか?

はい。まずは薬剤師として再就職しました。そのとき在宅医療を経験したいと思って、帰国後は在宅医療ができる薬局に行きましたね。ただ正社員としてではなく、パラレルワークのような働き方をしたかったので週4のパートタイムでした。そして薬剤師の傍ら、プログラミングの勉強やWebサイト制作を始めましたね。当時は休む間もなく活動していました。

在宅医療に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

高齢化に伴って、在宅医療の需要も今後どんどん上がっていくだろうなと考えていました。そのなかで在宅医療を経験したことがないのは薬剤師としてのキャリアにマイナスかなと思ったんです。ただ私自身、在宅医療の経験もないですし、パートタイムで働きたいといっても職場がなかなかなくて。最終的には在宅医療を立ち上げようとしている個人薬局で働かせていただきました。

未経験からの立ち上げはすごいですね。昔からやりたいと思ったら即行動に移される性格なんですか?

やっぱりフィリピンに留学に行ってから変わった気がします。発展途上国ということもあり、当時は積極的に行きたがる人がそんなにいなかったんですよね。そのなかで留学に来ているから、リスクを恐れない性格の人が多かったんだと思います。

たとえば留学先で出会った男の子は、プロ野球選手を目指していたけどケガで断念せざるをえなくなって。それで就職しようとしたんですが、地元が田舎で仕事がないからと、家も決まらないまま上京したらしいんです。でも家がないから、1年くらい新宿で女の子をナンパして泊まらせてもらっていたらしくて。

その話を聞いたときに、「人間ってやろうと思えば結構なんとかなるんだ」と思ったんですよね。それからチャレンジへのハードルが下がって、考え方も変わった気がします。女の子に声をかけて家に泊めてもらうより、大抵のことはハードルが低いと思いますし(笑)。

「楽しい」と思えることがパワーの源

「楽しい」と思えることがパワーの源

薬学部時代からずっと勉強され続けていらっしゃいますが、その原動力はどこからわいてくるとお考えですか?

自分が楽しいと感じるかどうかは結構重視していますね。楽しいとあまり努力とは思わないです。

いま働いている株式会社YOJO Technologiesはオンライン薬局サービスを提供していて、たとえば『オーダーメイド漢方』は、LINEを介して患者さまと漢方専門薬剤師がやり取りできるサービスです。YOJOには「100万人のかかりつけ薬局になる」という大きな目標があって。私たちが提供するオンライン薬局が普及すれば、もっと医療が身近なものになると思います。また、多くの患者さまに良い体験を届けられるので、そういった世界に携われることに楽しさとやりがいを感じていますね。もちろん大変なときも多いですが、楽しみながら進められています。新しい機能を実装するとなると苦労も多いですが、終わった後は大きな達成感があります

あとは小さく始めてみることがすごく大事かなと思っています。たとえば英語の勉強だと毎日5分だけやるみたいにハードルを低く設定するんです。ハードルが低いことによって続けられるんですよね。それを積み重ねていくと、だんだん毎日できるようになっていくので楽しくなってきます

いままで磨かれてきたプログラミングスキルや英語スキルが、薬剤師の仕事にも役立っていると感じる場面はありましたか?

英語に関していうと、薬剤師をやっていたときは外国人の患者さまの対応に役立ちましたね。それから英語で書かれた論文も以前より読みやすくなりました。

Webエンジニアでいうと、経験の積み重ねによって非効率なことを効率化していく考えが身に付きます。そのため、当時働いていた薬局では業務フロー改善に取り組んでいましたね。たとえば在宅医療の報告書のフォーマットが書きにくい、読みにくいと感じたのでフォーマット自体を変更したこともあります。プログラミングの学習をきっかけに非効率だなという点を気にかけるようになりました。

また、自分でWebサービスを作っているうちに「ユーザーはどう思うだろう」とユーザー視点でものを見られるようになったのかなと感じています。薬の説明を正しく行いさえすれば、患者さまは満足するだろうと考えている薬剤師さんは意外と多いのですが、それだけでは足りないと思っていて。たとえば来局時のアンケートが書きやすいなど、本来はそういったところまでこだわらないといけないですよね。「ユーザー体験をよくする」ところにも意識が向くようになったのは、プログラミングを学んだおかげです

英語とWebエンジニアと薬剤師。それぞれが相乗効果を発揮してご活躍なさっているのですね。ほかにも薬剤師として働かれていた頃に仕事に影響を及ぼしたことはありますか?

複数の軸を持つようになって、変わった人がいると知っていただき雑誌の寄稿をお願いされるなど、新しい仕事につながることはありますね。それと薬剤師さんから相談を受ける機会は増えました。このままでいいのかなと悩んでいる方は結構いらっしゃるみたいで。

あとは、自分に自信がついたというのも大きいですね。小さな成功体験の積み重ねによって「やれば色々なことができるんだ」と思えるようになりました

Webエンジニアとしてスキルアップ。そして薬局の効率化をしていきたい

今後のご自身のキャリアについて、お考えを教えてください。

今はWebエンジニアとしてのスキルを磨いていきたいなと考えています。これまでは個人で開発をしてきましたが、YOJO Technologiesで開発業務に取り組んでいるとまだまだ必要な技術や知識があると感じます。まずはその差を埋めていきたいですね。将来的には、どの開発チームに入ってもそこそこやっていけるレベルにはなりたいです。そしてプログラミングの知識を深めて、薬局業界の業務効率化に携われたらと思っています

たとえばYOJO Technologiesでは、子育てや介護で働けない薬剤師さんのスキルを活用するためにリモートで働けるようになっています。そんなふうに薬剤師さんの働き方の選択肢を増やしたり、もっと楽に働けるような環境にしたり。それから患者さまのユーザー体験も良くしたいですね。効率化できる部分はたくさんあると思うので、ITの力で薬局業界を変えていきたいです

ありがとうございます。それでは最後に、薬剤師としてキャリアをどう歩んでいくか悩んでいる若手薬剤師の方にメッセージをお願いします。

自分の興味のあることには片っ端から挑戦してほしいですね。もう給料のほとんどを使ってでも、貯金なんか気にせずに。お金は後からでも稼げますが、だれにも縛られない自由な時間はごくわずかなので、その時間をいかに有効活用するのかが大事だと思います。

実際、私も留学したときはギリギリまで使っていましたし、参考書なども値段を気にせず買っていましたから(笑)。ぜひ惜しみなく自分へ投資して、たくさん経験してください

加藤智之さんの写真

    加藤智之(かとう・ともゆき)さん

薬剤師、Webエンジニア、通訳案内士。薬剤師免許を持ちながら、現在はオンライン薬局を運営する株式会社YOJO TechnologiesでWebエンジニアとして活躍中。

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記事掲載日: 2021/03/12

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