業界動向
  • 公開日:2023.09.06

「在宅緩和ケア対応薬局認証システム」とは?

「在宅緩和ケア対応薬局認証システム」とは?

「在宅緩和ケア対応薬局認証システム」についてご存知ですか?「日本緩和医療薬学会認証 在宅緩和ケア対応薬局」の認証制度は、2022年12月に日本緩和医療薬学会が開始した制度です。

この制度の目的は、緩和ケアに必要な特定の機能をもつ薬局に認証を与えてわかりやすくすることで、患者さまが自ら薬局を選択し質の高い緩和ケア療法を受けられるようにすることです。

今回は、このような制度が必要とされている理由や、詳しい役割、今薬局に求められている機能などについて解説します。

在宅緩和ケア対応薬局認証システムとは

在宅緩和ケア対応薬局認証システムとは、2022年12月から一般社団法人 日本緩和医療薬学会によって開始された薬局認証システムのことです。

「在宅緩和ケア対応薬局」として認められるには、緩和ケアに必要とされる知識や技術を認められた薬剤師が従事し、かつ在宅緩和ケアを行ううえで求められる特定の機能や要件を満たす必要があります。

2023年4月時点では、全国24の在宅緩和ケア対応薬局が認証されています。

申請の末に在宅緩和ケア対応薬局として認められると、ホームページ上の在宅緩和ケア対応薬局名簿で、薬局の情報が公開されます。

緩和ケア薬局の詳しい情報が明らかになることで、地域で緩和ケアを受けたい患者さまや家族、ケアマネージャーらの最適な薬局選びに役立つでしょう。

そもそも在宅緩和ケアとは?

在宅緩和ケア対応薬局認証システムについての理解を深めるために、そもそも在宅緩和ケアとは何かについて解説します。

在宅緩和ケアとは、通院が難しい患者さまが自宅や居住施設において療養し、医療・福祉・介護機関が連携しながら、訪問による緩和ケアが提供されるシステムのことです。

少し前までは最期を病院で迎える患者さまが大半でしたが、医療環境が整ってきたこともあり、近年では住み慣れた自宅で終末期を迎えたい方が増えています。

従来の終末期の緩和ケアでは、死を目前とした恐怖や不安、耐え難いがん性疼痛の苦しみなどから精神的なストレスを抱えやすいことも問題視されてきました。

その点、家族がそばにいて、慣れた環境で過ごせる在宅医療では、患者さまの精神的なストレスを緩和する働きも期待できます。

また、通院の必要がないため、症状が重い患者さまへの負担をかけなくて済むことも大きなメリットです。

近年、このようなメリットのある在宅緩和ケアの需要が高まりつつあります。

認定薬局制度とは

認定薬局制度とは、患者さまが自身に適した薬局を選択できるように、都道府県知事が特定の機能を有する薬局を認定する制度です。

これまで認定があった薬局の例としては、「地域連携薬局」「専門医療機関連携薬局」があげられます。

地域連携薬局とは、入院先の病院や介護施設などの医療機関との情報連携に対応でき、在宅医療のサポート体制を有する薬局のことで、認定数は全国で2,916軒です(2022年7月末時点)。

また、専門医療機関連携薬局とは、がんなどの高度な薬学管理や高い専門性が求められる、特殊な調剤に対応できる体制を有する連携薬局のことをいいます。2022年7月末時点での認定数は全国で116軒です。

認定薬局制度では、患者さまがご自身に適した薬局を選んで質の高い医療を受けられるように、一定水準以上の機能をもつ薬局を定めて公開しています。

在宅緩和ケア対応薬局は、「地域連携薬局」や「専門医療機関連携薬局」に次ぐ認定薬局であり、在宅緩和ケア対応薬局認証システムによって在宅における緩和ケアが必要な患者さまが適切な薬局を選択できるように情報公開されています。

在宅緩和ケア対応薬局認証システムが生まれた背景

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近年在宅緩和ケアの需要が高まっているものの、在宅緩和ケアに関する機能がすぐれた薬局の情報が広く開示されていないことで、患者さまが自身に適した薬局を選択しづらい現状がありました。

このような背景を踏まえ、緩和ケアの知識と技術を備えた薬剤師が従事し、必要な要件が備えられた薬局を「在宅緩和ケア対応薬局」として認証する制度が生まれました。

また、超高齢社会における医療費削減の面からも、病床数を減らして在宅での緩和ケアを推進する流れになってきています。

在宅緩和ケア対応薬局に求められる役割

在宅緩和ケア対応薬局に求められる役割としては、以下のような項目があげられます。

  • 「地域連携薬局」に求められる薬局の機能
  • 医療用麻薬や注射薬、医療材料など提供体制
  • 医療用麻薬などの無菌製剤処理を行うことのできる体制
  • 緩和医療に従事している薬剤師の専門性および医療用麻薬の薬学的管理の実績
  • 入退院時などにおける病院薬剤師や多職種との連携体制
  • 患者さまが質の高い緩和ケア療法を受けられるように、在宅緩和ケア対応薬局には「地域連携薬局」に求められる薬局機能に加えて、医療用麻薬の管理や提供体制、無菌調剤ができる体制などが求められます。

    また、患者さまが安心して在宅療養できるように、患者さまの入院先や関連施設などとの連携機能も重要視されています。

    在宅緩和ケア対応薬局の認定を受ける方法

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    認定を受けるためには、認定を受ける薬局の設備面や、従事する薬剤師の資質などが評価されます。

    2022年度の新規申請は終了済みで、申請が受理された場合の認定期間は2023年4月1日~2026年3月31日までの3年間です。

    申請資格

    認定を受けるには、以下のすべての要件を満たしている必要があります。

    下記の1~3は薬局設備について、4~6は従事する薬剤師の資質について示しています。

    <在宅緩和ケア対応薬局の申請条件>※2023年9月現在

    1. 1.「地域連携薬局」を取得している、または1年以内に取得予定である
    2. 2.医療用麻薬を取り扱っている
    3. 3.無菌製剤処理を実施できる体制を整備している
    4. 4.当該保険薬局に所属の常勤薬剤師1名以上が、日本緩和医療薬学会の会員であり、かつ締め切り期日までに当該年度までの年会費を完納している
    5. 5.4で掲げる薬剤師が、申請時に次の要件をすべて満たしている
    6. (1)薬剤師としての実務歴を5年以上有する

      (2)「日本緩和医療薬学会認定緩和薬物療法認定薬剤師」の資格を取得している、または取得予定

      (3)日本緩和医療薬学会が開催する「在宅緩和ケア総論」を受講している

      (4)日本緩和医療薬学会が開催する「地域緩和ケアネットワーク研修」を修了している、または修了予定

    7. 6.当該薬局に所属する薬剤師が薬学的な介入を行った緩和医療領域の服薬指導などの実績について、3症例(最低1症例は在宅医療の症例)※を提示できる。

    上記1~6のすべての要件を満たすと、申請が可能です。

    ※2022年1~12月の過去1年以内のものに限る。

    ※(日本緩和医療薬学会『日本緩和医療薬学会認定 在宅緩和ケア対応薬局 2022年度新規申請要項』より引用)。

    申請方法

    申請は該当する様式をインターネット上でダウンロードし、LMS(Learning Management System)にてアップロードします。

    申請時には、地域連携薬局の認定書類や、直近の麻薬年間届、緩和薬物療法認定薬剤師の認定証などの証明書類の写しも必要です。

    今後需要の高まる在宅緩和ケア対応薬局

    在宅緩和ケア対応薬局認証システムとは、緩和ケアに必要な一定水準以上の能力をもつ薬剤師が緩和ケアに従事し、かつ必要な機能要件を満たす保険薬局を「在宅緩和ケア対応薬局」として認証するシステムです。

    このシステムが生まれたことで、緩和ケアを必要とする患者さまや家族などに対して認証を受けた薬局の情報が明示され、患者さまの適切な薬局選びに役立つでしょう。

    薬剤師として、在宅緩和ケア対応薬局認証システムの内容や生まれた背景、必要性などを理解しておくことが大切です。

    ファルマラボ編集部

    「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

    記事掲載日: 2023/09/06

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