キャリア&スキルアップ
  • 公開日:2021.08.30

『緩和薬物療法認定薬剤師』とは?役割や資格の取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

『緩和薬物療法認定薬剤師』とは?役割や資格の取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

薬剤師としてより専門性を磨くため、特定領域における資格取得を目指す方も多いのではないでしょうか。そのなかで緩和ケアに興味がある方は、「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格を取得すると、新たなキャリアが拓けるかもしれません。

ここでは「緩和薬物療法認定薬剤師」について、資格の詳細から取得方法まで詳しく解説します。ご自身のキャリアに悩まれている方も、1つの選択肢としてご覧ください。

緩和ケアとは?

緩和ケアとは?

緩和ケアとは、がんによる身体的・精神的な負担や苦痛を和らげるためのケアをいい、WHO(世界保健機構)では、2002年に以下の通り定義しています。

「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疾患の早期より痛み、身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題に関して、きちんとした評価を行い、それが障害とならないように予防したり、対処したりすることで、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を改善するためのアプローチである。」

厚生労働省は2012年6月に閣議決定した「がん対策推進基本計画」において、終末期に限らず、がんと診断されたときからの緩和ケア推進を重点的に取り組むべき課題として位置付けました。がん患者さまと家族が、できるだけ質の高い治療と療養生活を受けられるよう、症状の緩和や精神面などでのサポートが必要とされています

昨今は在宅医療が増加傾向にあり、これを背景として在宅緩和ケアも重要性が高まってきました。同様に、緩和薬物療法について専門知識を持ち、適切な緩和薬物療法に関する指導等の行える薬剤師の存在が求められています。このことを受け、「緩和薬物療法認定薬剤師」の認定制度が2010年に誕生しました。

「緩和薬物療法認定薬剤師」とは?

緩和薬物療法認定薬剤師とは?

「緩和薬物療法認定薬剤師」とは、薬物療法によって緩和ケアを行ううえで専門的な知識を有すると認定された薬剤師です。がん治療において医薬品が担う役割はとても大きく、高度な専門技術と知識が必要となります。

たとえば使用する医薬品で起きやすい副作用や、患者さまの症状に合った医薬品の組み合わせ、服用する患者さまの状態など様々な情報を考慮しなければなりません。そのうえで、最適な処方のサポートや適切な服薬指導が求められます。

「緩和薬物療法認定薬剤師」になるには?

緩和薬物療法認定薬剤師になるには?

「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格取得について、認定機関である日本緩和医療薬学会の公開している情報を参考に確認していきます。

申請資格

「緩和薬物療法認定薬剤師」認定試験を受験するには、以下すべての条件を満たさなくてはいけません。

1.日本国内の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。

2.申請時点で実務歴が5年以上ある日本緩和医療薬学会の会員であり、締め切り期日までに本年度までの年会費を完納していること。

3.申請時点で、下記のいずれか1つ以上の資格を有していること

  • 日病薬病院薬学認定薬剤師
  • 日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
  • 日本医療薬学会医療薬学専門薬剤師
  • 薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師
  • 4.申請時点で3年以上、現在も緩和ケアチームまたは緩和ケア病棟のある病院、診療所などの施設で緩和医療に従事していること(所属長の証明が必要)。あるいは申請時点で3年以上、現在も麻薬小売業者免許を取得し、かつ、がん診療を行っている在宅療養支援診療所などの医療機関と連携する保険薬局等に勤務し、緩和医療に従事していること(依頼する医師および薬局開設者の証明が必要)。

    5.申請時5年以内(2021年度申請は特例で6年以内)で、かつ学会会員として認定対象となる講習などを所定の単位(計100単位、毎年20単位)以上履修していること。申請時5年以内(2021年度申請は特例で6年以内)に、疼痛緩和のための医療用麻薬適正使用推進講習会(厚生労働省、麻薬・覚せい剤乱用防止センター等主催)に1回以上参加していること。

    6.実務に従事している期間中に、本学会年会や別に規定する学術集会において緩和医療領域に関する学会発表(一般演題)を、少なくとも1回は発表者として2回以上行っていること。

    7.病院などに勤務する薬剤師は、緩和医療領域の薬剤管理指導の実績について学会所定の様式に従い30症例提示できること。保険薬局に勤務する薬剤師は、緩和医療領域の服薬指導などの実績について学会所定の様式に従い15症例提示できること。ただし、いずれも過去6年以内のものが対象。

    8.所属長(病院長あるいは施設長など)または保険薬局においては開設者の推薦があること。

    必要書類

  • 緩和薬物療法認定薬剤師認定申請書※Web申請システムへ入力
  • 緩和医療従事の証明書
  • 講習会・教育セミナー・学会等の参加履修証明
  • 緩和医療薬剤管理指導症例報告書 ※Web申請システムへ入力
  • 所属施設長の推薦書
  • 学会発表リスト
  • 申請条件③の資格を証明する認定書類(写し)
  • 審査料振込票の控え(写し)
  • 申請期間

    2021年10月1日(金)10:00~10月31日(日)17:00

    審査料

    申請期間中、10,000円を指定先へ郵便振替にて入金。

    備考欄には下記情報の記入が必要です。

  • 振込理由として「緩和薬物療法認定薬剤師新規申請」
  • 会員番号
  • 氏名
  • 所属
  • 住所
  • 電話番号
  • 試験料・受験票

    書類審査を通過した場合は、12月中旬に書類通過通知、試験料振り込みのご案内、受験票が届きます。

    試験料は2022年1月12日(水)までに20,000円を振込んでください。 受験票には、5×5cmの写真を2枚貼り、2022年1月14日(金)までに必着で「事務局保管用」のみを返送します。「本人用」は試験当日の受験票となります。

    認定の更新について

    認定試験に合格後は、5年ごとの更新が必要です。認定期間満期の約1年前に、事務局から送付される更新案内に従って手続きを行ってください。なお、住所変更等で更新案内を受け取れず更新申請が行えなかった場合も、資格が失効してしまう点に注意しましょう。住所など登録情報に変更が生じた際は、できるだけ早く会員専用ホームページから情報を更新しておくと安心です。

    「緩和薬物療法認定薬剤師」が活躍できる場

    緩和薬物療法認定薬剤師が活躍できる場

    高齢化が進む現代社会においては、がん患者さまのQOL向上において「緩和薬物療法認定薬剤師」の需要がより高まることが予測されます。さらに医療の場が医療機関から在宅へとシフトしつつあるなか、在宅での緩和ケアにおいて適切な薬物療法が行えるよう指導することも大切です。この点において、「緩和薬物療法認定薬剤師」のもつ専門的な知識・技能は大きく貢献できるでしょう。

    今後も高齢化は進み、在宅医療も増えていくと予想されます。そのなかで「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格を取得しておくことは、薬剤師としてのキャリアを考えるうえで有効な手段の一つといえるでしょう。

    「緩和薬物療法認定薬剤師」の上位資格

    緩和薬物療法認定薬剤師の上位資格

    「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格を取得後、さらに緩和医療の分野で活かせる知識・技能を高めたいのであれば、「緩和医療専門薬剤師」や「緩和医療暫定指導薬剤師」の資格取得を目指してみてください。これら上位資格について概要を解説します。

    緩和医療専門薬剤師

    2021年に新しく誕生した資格制度で、受験には「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格取得から5年以上経過している必要があります。「緩和医療専門薬剤師」は、緩和医療領域について専門的かつ実践的な知識や技能をもち、研究または教育に関わる能力の保有を認定するものです。将来的には、認定実務実習指導薬剤師へのキャリアアップも目指せるでしょう。

    緩和医療暫定指導薬剤師

    緩和医療暫定指導薬剤師は、研修施設で緩和医療専門薬剤師を目指す「緩和薬物療法認定薬剤師」を指導する役割を果たします

    直近5年間における指導的役割の経験、そして同期間において「緩和薬物療法認定薬剤師」として計3年間以上、緩和医療領域の臨床業務に従事していることなどが申請条件です。

    今後ますます重要性が高まる「緩和薬物療法認定薬剤師」

    高齢化や在宅医療の増加などを背景に、ニーズが高まりつつある「緩和薬物療法認定薬剤師」について解説しました。薬剤師としてのキャリアを考えたとき、将来性のある資格の1つと言えるでしょう。

    さらに緩和薬物療法認定薬剤師の上位資格として、より専門的な知識を持つ緩和医療専門薬剤師、そして「緩和薬物療法認定薬剤師」の指導に当たる「緩和医療暫定指導薬剤師」があります。緩和ケアの領域で専門性を磨き、活躍を目指すのであれば、まず「緩和薬物療法認定薬剤師」の資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

    ファルマラボ編集部

    「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

    記事掲載日: 2021/08/30

    あわせて読まれている記事