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  • 公開日:2021.03.29

薬剤師国家試験の合格基準は?難易度や概要について詳しく解説

薬剤師国家試験の合格基準は?難易度や概要について詳しく解説

薬剤師は安定した専門資格職として人気の職業です。就職先も調剤薬局や病院、ドラッグストアや製薬会社など様々。最近では、薬剤師の活躍をドラマや漫画に取り入れたものもあり、さらに注目を集めています。しかし、実際に薬剤師の資格を取得することは簡単ではありません。医薬品に関する膨大な知識と、実践能力を問われる国家試験に合格しなくてはならないのです。

今回は、薬剤師になるための最大の難関、「薬剤師国家試験」の受験資格や概要、難易度や合格率について詳しく解説します。

薬剤師国家試験とは

薬剤師は「薬剤師法」で定めたとおり、医薬品全般における豊富な知識を活かし、医師の処方箋にもとづく調剤や服薬指導、医薬品の管理・販売を行う職業です。

しかし、その資格を取得することは容易ではなく、6年制の薬学部を卒業したうえで国家試験に合格しなくてはなりません。難易度が高いとされる薬剤師の資格とはどのような流れで取得するのでしょうか。

ここでは国家試験の受験資格や開催日程についてみていきましょう。

薬剤師国家試験の受験資格は

薬剤師になるためには通常6年制の薬学部を卒業したうえで、厚生労働省が毎年施行している薬剤師国家試験に合格しなくてはなりません。さらに、薬剤師国家試験を受験するにあたっては、学生の知識・技能・態度が一定のレベルに到達していることを保証する必要があるため、事前に「CBT(客観試験)」と「OSCE(客観的臨床能力試験)」という2つの薬学共用試験に合格することが必須条件とされています。

知識を評価する「CBT」と、実技を通して技能や態度を評価する「OSCE」。この2つの共用試験は、全国の大学で統一されており、どちらの試験も4年次の12月から1月にかけて本試験、2月後半に追・再試験を行うスケジュールとなっています。

薬剤師国家試験の日程や会場は

薬剤師国家試験は年に一度、近年では2月の第3週目の土曜日、日曜日の二日間にわたって行われています。直近の第106回国家試験は、2021年2月20日(土)と21日(日)に行われました。

▼参考資料はこちら
第106回薬剤師国家試験 厚生労働省

試験地は以下の通りです。

試験地
北海道、宮城県、東京都、石川県、愛知県、大阪府、広島県、徳島県及び福岡県

また、新型コロナウイルス感染症の影響で内容の追加や一部変更を行う場合があります。受験生は急な変更に対応できるよう事前に確認しておきましょう。

▼新型コロナウイルス感染症対策についての確認はこちらから
令和2年度厚生労働省所管医療関係職種国家試験における新型コロナウイルス感染症対策について 厚生労働省

薬剤師国家試験の受験者数や合格率、足切り基準は?

2021年2月に行われた、第106回薬剤師国家試験の受験者数は14,031人、合格者数 9,634人、合格率68.66%でした。近年では受験者数や合格者数にどのような傾向がみられるのかここでみていきましょう。

国家試験の各科目と配点

試験問題数は「必須問題」が90問、「一般問題(薬学理論問題)」が105問、「一般問題(薬学実践問題)」が150問、計345問とし、その内訳と時間割は以下の通りです。なお、薬学実践問題は、「実務」20問に加え、「実務」とそれ以外の科目とを関連させた複合問題130問となっています。

薬学実務実習とは?

国家試験の合格基準と足切り

試験の合格基準は以下のように定められています。

① 問題の難易を補正して得た総得点について、平均点と標準偏差を用いた相対基準により設定した得点以上であること
② 必須問題について、全問題への配点の70%以上で、かつ、構成する各科目の得点がそれぞれ配点の30%以上であること

総合点は、相対基準なので毎年変動していますが、上記の点数配分で、足切りにかからないようにするためには必須問題で以下の点数を取らなければならないことになります。

足切りにならないための点数

・物理・化学・生物:5点以上
・衛生:3点以上
・薬理:5点以上
・薬剤:5点以上
・病態・薬物治療:5点以上
・法規・制度・倫理:3点以上
・実務:3点以上
・合計:63点以上
▼「新薬剤師国家試験について」の一部改正についてはこちらから
「新薬剤師国家試験について」の一部改正について 厚生労働省

受験者数や合格率の傾向

合格率グラフ

かつては4年制だった薬学部も2006年度から6年制に移行。薬学科を受講する期間が2年延びたことで、これまでの薬学生より専門的な内容を取得できるようになりました。移行後の卒業生が受験を開始した2012年以降は合格率が上昇傾向。しかし近年は臨床教育に重点を置いた「医療現場での実践能力」や「応用力」を問う出題が多く、試験内容もさらに難しくなってきたため合格率は減少傾向にあり、第105回の合格率は70%を下回り69.58%、直近の第106回では68.66%という結果でした。

近年の国家試験では、「応用力」や「思考力」が必要になる問題が多く、知識を丸暗記するだけでは合格基準を超えることが難しくなってきています。特に、実務・実践問題などを中心とした「臨床能力」や、実務実習の成果を意識した「実践能力」が問われる問題が多く出題されており、6年制を卒業した薬剤師に対しての期待が感じられます。

▼国家試験に関する参考記事はコチラ
難化する国試の概要と対策-第106回薬剤師国家試験-
「第106回薬剤師国家試験」結果発表について

薬剤師国家試験の大学別合格率は?

本イメージ

薬剤師国家試験の大学別合格ランキングは

薬剤師国家試験の合格率は大学によって異なり、厚生労働省では大学別の合格率を発表しています。第106回国家試験の合格率における上位大学は以下の通りです。

順位 大学名 合格率
1位 医療創生大学 95.92%
2位 金沢大学 94.74%
3位 名城大学 92.68%
4位 星薬科大学 88.85%
5位 北里大学 88.26%
6位 京都薬科大学 88.09%
7位 静岡県立大学 86.96%
8位 広島大学 86.84%
9位 北海道大学 86.11%
10位 昭和大学 86.10%

ここ数年の上位では、医療創生大学(95.92%)や金沢大学(94.74%)名城大学(92.68%)広島大学(86.84%)の名前が目立っています。

▼参考資料はこちらから
第106回薬剤師国家試験 大学別合格者数 厚生労働省

大学で合格率が異なる理由

全体を比較して、合格率が高い大学では7割~9割、合格率が低い大学では3~4割にとどまっています。これは、大学によって国家試験対策に注力する大学がある一方、高度な研究に力を入れる大学もあるためだと考えられます。薬学系の大学を目指すのであれば、各大学がどんな目標を掲げてどんなカリキュラムを組んでいるのかを事前に調べて、志望校を決めることが重要となるでしょう。

薬剤師国家試験の難易度は高い?低い?

薬学部は進級の難易度が高い

薬学部は定期試験が難しく、留年者数も多いといわれています。そのため国家試験までの6年間、きちんとしたスケジュールを組み、勉強に取り組むことが大切です。学習量も膨大なため、予備校などを検討していくこともひとつの方法。また、隙間時間を利用して学習支援アプリなどを利用するのもおすすめの勉強法です。

国家試験の前に卒業試験というハードルも

国家試験は言うまでもなく最大の難関ですが、その前にもう一つ忘れてはいけないのが大学の卒業試験です。この卒業試験に合格できないと大学を卒業することができず、国家試験を受験する資格は与えられないのです。 定期試験、CBT、OSCE、実務実習、卒業試験、そして国家試験。薬剤師になるまでの道のりは長く、身につけなければならない知識も膨大な量です。

しかし、薬剤師として医療に貢献したいという強い思いがあれば、それはきっと乗り越えられるでしょう。 勉強は毎日の積み重ねが大切です。行き詰ったときは少しリラックスして気分転換し、気持ちを切り替えながら取り組んでみることをおすすめします。

まとめ

今回は、薬剤師国家試験について、受験資格や概要、難易度、合格率などについて詳しく解説しました。

大学によって国家試験の受験者数や合格率は異なります。大学を選ぶ際には、その大学が国家試験対策を重視しているのかどうかや、留年者数などから定期試験、卒業試験の難易度などを事前に調べて知っておくことも大切です。 一つひとつの試験を確実にパスできるように、6年間のスケジュールを立て、計画的に勉強していきましょう

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/03/29