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  • 公開日:2020.09.07

【現役医師に聞く】「次亜塩素酸水」での消毒は感染対策に有効ってホント?正しい使用方法も解説!

【現役医師に聞く】「次亜塩素酸水」での消毒は感染対策に有効ってホント?正しい使用方法も解説!

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう昨今、感染対策の徹底にともなってマスクや消毒用アルコールなどの品薄が続いています。そんななか、消毒用アルコールの代用品として注目を集めたのが「次亜塩素酸水」です。しかし、その効果や使用方法については様々な議論がなされています。

そこで今回は、次亜塩素酸水の消毒効果や正しい使用方法について詳しく解説します。

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次亜塩素酸水とは?「偽物」にも注意が必要

厚生労働省の定めによれば、次亜塩素酸水とは次亜塩素酸を主成分とする酸性水溶液のことで、塩酸や食塩水を電気分解することによって生成されます。酸化作用を持つため殺菌効果があるとされており、食品添加物(殺菌料)のひとつでもあります。

一方、ハイター®などの塩素系漂白剤の主成分は、「次亜塩素酸ナトリウム」。名前が似ているため次亜塩素酸水と混同されがちですが、両者は全くの別物です。もちろん、塩素系漂白剤を水に溶かしても次亜塩素酸水にはなりません。

次亜塩素酸水にはいくつかの製法がありますが、より安全に使用できる次亜塩素酸水はあくまでも塩酸や食塩水を電気分解する製法でつくられたもの。販売されているもののなかには、次亜塩素酸ナトリウムに別の薬剤をプラスしたり、イオン交換したりすることで酸性度を調節したものを次亜塩素酸水としているケースがあるので要注意です。いずれも殺菌効果はあると考えられますが、次亜塩素酸水を購入する場合は、製法がはっきりわかっているものを選ぶようにしましょう

▼参考資料はコチラ
厚生労働省 新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について(厚生労働省・経済産業省・消費者庁特設ページ)

次亜塩素酸水には消毒効果があるの?

薬剤師のイメージ

上述した通り、次亜塩素酸水には酸化作用があるため、細菌やウイルスを破壊して無毒化する効果があります。新型コロナウイルス感染症に対する有効性も認められており、 厚生労働省は電気分解による正しい製法でつくられた次亜塩素酸はモノに付着した新型コロナウイルスの消毒・除菌に有用であるとの見解を示しています。

ただし、消毒効果があるほどの濃度の次亜塩素酸水は、人の肌や粘膜にダメージを与える可能性が否定できません。そのため、手指への消毒に使用することは推奨されていないのです。モノの消毒に用いる際にも手袋などを使用して直接触れないようにしましょう。

また、次亜塩素酸水は紫外線や熱に弱く、保存状態によっては十分な消毒効果を発揮しないことも少なくありません。国立感染症研究所の検証試験によれば、次亜塩素酸水のウイルス不活性化効果にはばらつきがあるとのこと。 次亜塩素酸水を購入したら、消毒効果をキープするためにも、光が当たらない涼しい場所で保管するようにしましょう。

▼参考資料はコチラ
第5回新型コロナウイルスに対する代替消毒手法の有効性評価に関する検討委員会 議事概要

次亜塩素酸水の正しい使い方は?

厚生労働省の見解によれば、次亜塩素酸水はモノに付着した細菌やウイルスの殺菌・消毒のみに使用できるとのこと。しかし、一般的な消毒液として使用されるアルコールや次亜塩素酸ナトリウム溶液のように、少量で広い範囲を消毒できるわけではありません。十分な消毒効果を得るには、モノに付着したたんぱく質などの汚れをきれいに洗い流し、そのうえで表面をヒタヒタに濡らす量の次亜塩素酸水を回しかけます。そして、20秒以上の時間を置いた後にタオルやキッチンペーパーで拭き取れば消毒が完了します。

次亜塩素酸水を消毒液として用いる場合、通常は一度に多量を用いるので他の消毒液と比べると消費は早まります。「もったいない...」と適切な量を使用しないと、当然ながら消毒効果は薄れるので注意しましょう。

次亜塩素酸水を使用するときの注意点は?

薬剤師のイメージ

次亜塩素酸水は誤った扱い方をすると、身体に害を及ぼすことがあります。使用する際には次のようなことに注意しましょう。

他の洗剤と混ぜない

次亜塩素酸水と次亜塩素酸ナトリウムを含む塩素系漂白剤は別物です。次亜塩素酸水の濃度を高めようとして塩素系漂白剤を混ぜると塩素が発生することがあるので注意しましょう。

正しい希釈を!

希釈用の次亜塩素酸水は必ず使用方法を守り、正しい濃度で使用することが大切です。拭き掃除に使用する場合は、有効塩素濃度80ppm以上で消毒効果を発揮します。元の汚れがひどいものは、200ppm以上になるように希釈しましょう。

換気の悪い場所での使用は要注意!

次亜塩素酸水は、吸い込むと人体にダメージを与えると考えられています。使用するときは、窓を開けたり、換気扇を回したりするなど室内の空気の入れ替えに気を配りましょう。

次亜塩素酸水の空間噴霧は効果があるの?

次亜塩素酸は食品添加物にも指定されている殺菌料でもあるため、人体に優しいと思われがちです。そのため、空気中の新型コロナウイルスを効率的に安全に除去することができるとして加湿器などを用いて次亜塩素酸水の空間噴霧を行う家庭や施設が増えました。

しかし、次亜塩素酸水は上述した通り、吸い込むと鼻やのどの粘膜にダメージを与えることも...。非常に危険ですので、人がいる場所で次亜塩素酸水の空間噴霧を行うのは避けましょう。

また、WHOは室内空間で消毒液の空間噴霧をすることは効果がなく、ヒトの健康に有害となりうるため推奨しないとの見解を示しています。日本国内においても消毒液の空間噴霧によって空気中の浮遊細菌やウイルスを除去できるという実験結果が出ていません。必ずしも次亜塩素酸水の空間噴霧を行ってはいけないわけではありませんが、行う場合は人がいない時間帯を選ぶようにしましょう。

▼参考資料はコチラ
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を考慮した清掃と消毒 暫定ガイダンス

まとめ

消毒効果について賛否が上がった次亜塩素酸水ですが、NITE(製品評価技術基盤機構)は一定の条件で使用した場合はモノに付着したウイルスを酸化作用によって破壊し、無毒化することができると発表しました。

「一定の条件」とは、適切な濃度に希釈した次亜塩素酸水をヒタヒタになるまでたっぷり振りかけること、20秒ほど時間をおいてから拭き取ること、消毒前に汚れをしっかり取っておくことの3つです。また、次亜塩素酸水は非常に不安定な構造であるため、保存状態によっては十分な消毒効果を得られないこともあります。保存場所には注意しましょう。

また、次亜塩素酸は吸い込んだり目に入ったりすると私たちの身体にダメージを与えることもあります。使用するときは換気に注意するなど慎重に扱いましょう。

成田亜希子先生の写真

成田 亜希子(医師ライター)

一般内科医として幅広い分野の診療を行っている。保健所勤務経験もあり、感染症や母子保健などにも精通している。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。

記事掲載日: 2020/09/07

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