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  • 公開日:2024.03.22

薬局における個別指導とは?よくある指摘事項や注意点を解説

薬局における個別指導とは?よくある指摘事項や注意点を解説

現場でのキャリアは長い管理薬剤師であっても、個別指導は経験したことがない方は多いでしょう。厚生局による個別指導は、薬局運営向上の観点で非常に重要です。

そこで本記事では「個別指導の流れや必要書類」「個別指導での注意点と対策」について具体的に解説します。記事の後半では実際に指摘されやすいポイントや改善策をご紹介しているので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

薬局に対して実施される個別指導とは?

薬局に対して実施される個別指導とは?

薬局が受ける個別指導の概要を、3つのポイントで解説していきます。一つひとつ見ていきましょう。

薬局へ実施される個別指導とその目的

個別指導は、厚生局が薬局運営は適切かどうかを判断し、必要に応じて改善策の提案を目的としています。

基本的には厚生局の指導のもと改善が出されるため、しっかり対応していけば大きな問題とはなりません。ですが、架空請求や処方箋の付け替えなど明らかな不正請求がある場合は、保険薬局・保健薬剤師の取り消しが行われる場合もあります。

薬局は患者さまに対するより良い医療サービスの提供とともに、保険請求の正確性向上を目指します。

★具体的にチェックされるポイントを知りたい方は、以下の関連資料や参考資料も確認してみましょう。

4種類の個別指導と対象となる薬局

厚生労働省が発表した令和4年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況によると、令和4年に指導を受けた薬局の件数は、個別指導では427件、新規個別指導では2,589件、集団個別指導は4,504件となっています。保険医療機関等の指定取消となった薬局は0件です。

個別指導の実施形態は、大きく以下の4種類に大別されます。それぞれどのような指導か、解説していきます。

●集団指導

集団指導は新規に指定を受けた薬局が対象であり、複数の薬局が参加するセミナー形式で行われます。薬局運営の基本的な指針や法令の遵守、最新の業界情報の共有が主な内容です。

指導の目的は、業界全体レベルの底上げと標準的な運営基準の確立。同業他社からの学びを通じて、薬局の運営方法を見直す機会となります。

●集団的個別指導

集団的個別指導は、特定の問題を抱える薬局特定分野での改善を目指す薬局が対象です。複数の薬局が参加し、薬剤の適切な管理、特定の病態に対する服薬指導の強化などの指導がセミナー形式などで行われます。

●新規個別指導

新規個別指導は、開業したばかりの薬局が対象です。指導を通じて運営の基盤を固め、初期段階での問題発生を未然に防ぐ目的があります。開業初期は多くの薬局が直面する運営上の課題が多いため、基本的な運営指針や注意点、法令遵守に関する情報が主に提供されます。

●都道府県個別指導

都道府県個別指導は、都道府県が選ぶ特定の薬局が対象です。選定基準は、地域の医療ニーズや政策の方向性、過去の監査結果に基づきます。

薬局は、過去の監査で要指導となった項目が改善されているかどうかを評価されます。また、評価項目において新たな問題点が発生していないかも同時にチェックされ、薬局運営向上のための指導を受けます。

薬局への個別指導は拒否できない?

薬局の個別指導は、適切な医療や調剤報酬の請求を保証する重要な措置となっています。そのため、健康保険法や国民健康保険法によって義務付けられており、拒否することはできません。

薬局に対する個別指導の主な流れ

一般的に個別指導とは、都道府県個別指導をさします。個別指導の通知から実施までの流れを以下の4ステップで解説します。

1.書面による実施通知

指導が行われる予定日の1か月前までに、都道府県厚生局による書面通知がされます。書面通知事項として、以下の内容が明記されています。

  • 薬局への訪問日時
  • 指導ポイント
  • 指導対象患者一覧
  • 確認事項
  • 書面通知を受け取ったら、指導に向けた準備を開始しましょう。

    2.個別指導の実施日前日まで

    まずは、個別指導日までに必要な書類をあらかじめ準備します。薬局運営が適切に行われていると正確に示すため、漏れがないようにしましょう。具体的な必要書類の内容は以下のとおりです。

  • 薬局業務報告書
  • 処方箋
  • 薬歴記録
  • 保険請求書類
  • 医薬品管理記録
  • 法令遵守に関する文書
  • 教育研修の資料
  • 副作用報告書
  • 個別指導の改善計画と実施状況の報告書
  • 指導日が近づいても、薬歴の追記を行うのは禁止です。後から薬歴を記入してしまうと、薬歴改ざんと見なされ重大な問題に繋がりかねません。薬歴は日々の業務の中で、リアルタイムに正確かつ適切に記録する必要があります。個別指導対策は余裕をもって、計画的に進めましょう。

    3.個別指導の実施日

    個別指導当日は、各都道府県の厚生局が薬局を訪問します。薬局運営や患者さまへのサービスに関する具体的な質問に、薬剤師は口頭で回答します。

    回答する際のポイントは以下のとおりです。

  • 専門知識の提示:薬局業務に対する深い理解を示し、質問に対して明確かつ専門的な回答を提供できるか
  • 誠実さ:問題点を指摘された際に、素直に認めて改善する意思があるか
  • 改善策の提示:問題点に対してどのような改善策を考えているか
  • 緊張感漂う雰囲気のため戸惑うかもしれませんが、真摯に向き合う姿勢を心がけましょう。

    4.個別指導の実施後

    指導終了後、薬剤師は指導対象となったレセプトについて自主点検を行い、返還が必要なケースは適切に対応します。たとえば、用法用量が適切ではない処方箋、医師コメントなしに漫然投与されている薬が記載された処方箋に基づくレセプトが該当します。

    具体的な手順は以下の5ステップです。

    【1】レセプトの点検:誤りや不備の有無を再度確認します。

    【2】問題の分析:返還が必要となったレセプトの問題点を特定し、誤りが発生した理由を分析します。

    【3】返還実施:正しく請求し直します。

    【4】改善策の検討・実施:問題の原因を踏まえ、再発防止のための改善策を検討・実施します。業務プロセスの見直し、スタッフへの再教育、チェックシステムの強化などが含まれます。

    【5】文書化:実施した改善策とその結果を文書化し、将来的な指導や内部評価のための資料として保管します。

    追って薬局には指導の結果と措置に関する書類が送付されます。結果報告書に記載されている事項は、以下のとおりです。

  • 指導での指摘事項
  • 評価結果(「概ね妥当」「経過観察」「要監査」「再指導」)
  • 改善が必要とされる項目に対する推奨事項
  • 薬局はフィードバックを基に具体的な改善計画を策定し、運営とサービスの質を向上させるための措置を講じる必要があります。

    薬局に対する個別指導でとくに指摘されやすいポイント

    薬局に対する個別指導でとくに指摘されやすいポイント

    全ての指導項目に対して基準をクリアする必要があります。個別指導において指摘対象となりやすい箇所を具体的に4つ紹介します。

    処方箋の記載不備

    個別指導でとくに指摘されやすいポイントのひとつに、処方箋の記載不備があげられます。記載不備により、薬剤師が薬を調剤し、服薬指導するまでの過程において、患者さまの安全面に悪影響を与えるリスクがあります。

    記載不備の具体例は以下のとおりです。

  • 患者の氏名や年齢、性別の誤記
  • 薬の名称や用法用量の不明瞭な記載
  • 疑義紹介内容の未記載
  • 処方箋に監査印を押す際は、記載事項が正確で漏れがないと十分確認したうえで行うべきです。

    服薬指導が不十分

    服薬指導が十分かどうかは、個別指導で頻繁にチェックされるポイントです。不十分な服薬指導は、患者さまにとって薬の正しい使用方法・副作用の理解不足につながってしまいます。

    薬剤師は、患者さまが薬を安全に使用できるように十分な情報を提供しなければなりません。また、薬歴にも服薬指導内容を明記する必要があります。

    加算に関する記載不足

    加算に関する記載不足は、盲点になるケースが多いので注意が必要です。薬局は特定のサービスや条件に基づいて加算を請求できますが、適切に請求されていないケースがあります。

    たとえば、夜間や休日の調剤加算、特定慢性疾患患者さまへの服薬指導加算などが正しく記録されていない場合は、薬局は適切な報酬を受け取れません。また、不適切な記載は個別指導で不正請求と指摘されるリスクもあるため注意しましょう。

    届け出の内容が不適切

    必要書類の届け出内容が不適切な場合もチェックの対象です。たとえば、薬剤師や開局時間の変更があった場合、速やかに保健所や関連機関に届け出なければいけません。薬局が信頼性を維持してスムーズに運営を続けるためには、迅速で的確な対応が求められます。

    薬局の個別指導において薬剤師が知っておくべきこと

    薬局の個別指導において薬剤師が知っておくべきこと

    薬剤師が個別指導で受ける質問に対して、過不足なく回答できるよう事前に把握しておくべきことを5つ紹介します。薬学や保険に対する知識はもちろんですが、業務に対する日々の心構えも非常に重要です。

    薬学的知識に加えて保険請求に関する法的知識を身につけておく

    保険請求に関する知識は、薬学的知識と等しく重要です。健康保険法第73条や国民健康保険法第41条をはじめとする、保険診療に関する法令は頻繁に更新されます。そのため、最新の法令やガイドラインを常に把握したうえで日々の業務に励む必要があります。

    薬歴をすぐに記載する習慣を身につける

    個別指導では、薬歴の記載状況を再三チェックされます。薬歴は服薬指導をするたびに、もれなく記入しましょう。適正な医療の提供やほかの医療従事者との情報共有を滞りなくするためにも大切です。

    ハイリスク加算や長期処方の処方箋は個別指導の対象となりやすい

    ハイリスク加算や乳幼児服薬指導加算を算定する場合は、薬剤師による確認項目が多いため注意が必要です。加算する場合は、薬剤師による患者さまへの薬の丁寧な説明が遂行されたうえと常に念頭に置いておきましょう。また、胃薬やビタミン剤などの長期処方箋はレセプト請求時にコメント記載が必須です。

    普段から勉強会に参加するよう心がける

    薬剤師は普段から勉強会への参加を心がけ、自己研鑽に努める必要があります。

    医療業界は常に変化しているため、業務に支障をきたさないよう情報を常にキャッチアップしなければなりません。

    具体的に情報収集すべき内容は以下のとおりです。

  • 新薬の知識
  • 法改正の知識
  • 最新の治療ガイドラインの把握
  • 勉強会や研修会では、最新の医療情報や薬学知識だけでなく業界のトレンドや薬剤師同士の情報交換を通じた学びも得られるため、積極的に参加しましょう。

    業務の円滑化やマニュアル化を進めていく

    処方箋の誤記、誤調剤、薬歴の記入漏れなどのミスを防ぐためには、業務の流れを見直すことも有効です。どのような状況にミスが起こりやすいのか、どうすればミスを防げるのかを考え、必要であればマニュアルの更新をしましょう。

    薬局の個別指導について知っておきスムーズに対応できるようにしておこう

    本記事を読み、初めて個別指導を受ける薬剤師の方も、しっかり準備をして個別指導に臨めるようになったのではないでしょうか。

    改めて本記事では、以下の内容について解説しました。

  • 個別指導の流れや必要書類
  • 個別指導の注意点
  • 個別指導の対策
  • 個別指導は、医療機関として運営の質を向上させる機会であり、薬剤師自身のさらなる成長のチャンスでもあります。ぜひ、個別指導に対して万全な準備をし、指導当日は焦らず堂々と挑みましょう。

    ファルマラボ編集部

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    記事掲載日: 2024/03/22

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