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  • 公開日:2024.04.15

【向精神薬一覧あり】精神科や心療内科で処方される薬を薬剤師向けに解説

【向精神薬一覧あり】精神科や心療内科で処方される薬を薬剤師向けに解説

向精神薬は種類が多く、また投与制限なども設けられていることから、学び直したいと考えている薬剤師の方も多いのではないでしょうか。

今回は薬局薬剤師向けに、精神科で処方される主な向精神薬の種類を一覧表で紹介し、取り扱い上の注意点について整理します。さらに、向精神薬が処方されている患者さまに対する服薬指導のポイントも解説します。ぜひ参考にしてください。

向精神薬の基本と分類

まずは向精神薬の基本的な情報や分類などをおさらいしていきましょう。

向精神薬とは?向精神薬が持つ役割

「向精神薬」とは、中枢神経系に作用して精神活動に影響を与える薬物群全般のことを指す言葉です。

主に抗精神病薬、抗うつ薬、抗不安薬、気分安定薬などの総称であり、その取扱いは「麻薬及び向精神薬取締法」によって厳格に規制されています。

向精神薬の主な分類

向精神薬は第1種向精神薬第2種向精神薬第3種向精神薬の3種類に分類されます。

分類されている理由は治療上の有用性と乱用の危険性によるものです。

例えば、リタリンやコンサータといったメチルフェニデート塩酸塩製剤では、医薬品のリスクや治療の有効性の観点からも、流通管理の厳しい義務が設けられています。

分類ごとの一覧表は次の章でまとめているので、参考にしてください。

知っておきたい向精神薬一覧表

令和5年7月改訂の資料である『東京都保健医療局 向精神薬取扱いの手引』から向精神薬一覧表を作成しました。

ここでは日本で流通している主な向精神薬を、第1種向精神薬、第2種向精神薬、第3種向精神薬のそれぞれに分けて表を作成しています。

第1種向精神薬の一覧表

まずは第1種向精神薬の一覧表です。

一般名

商品名

投与制限

薬理作用

セコバルビタール

アイオナールNa注射用

30日

中枢抑制

メチルフェニデート

リタリン、コンサータ

30日

中枢興奮

モダフィニル

モディオダール

30日

中枢興奮

モダフィニルは麻酔前投与薬として用いられるのが一般的な注射薬で、処方箋による薬局での調剤が認められていません

第2種向精神薬の一覧表

次に下記が第2種向精神薬の一覧表です。

一般名

商品名

投与制限

薬理作用

アモバルビタール

イソミタール

14日

中枢抑制

ブプレノルフィン

レペタン、ザルバン、ノルスパン

坐薬、テープともに14日、注射の場合30日

鎮痛

フルニトラゼパム

サイレース、フルニトラゼパム(GE※)

30日

中枢抑制

ペンタゾシン

ソセゴン、ペルタゾン

14日

鎮痛

ペントバルビタール

ラボナ

14日

中枢抑制

※(GE)とはジェネリック製薬を指す

ノルスパンテープは、そもそも7日おきに張り替える必要があるため、14日の処方制限とされているものの、1回で2枚の処方のみとなっています。

第3種向精神薬の一覧表

最後に第3種向精神薬の一覧表です。

一般名商品名投与制限薬理作用
アルプラゾラムソラナックス、コンスタン、アルプラゾラム(GE)30日中枢抑制
エスタゾラムユーロジン、エスタゾラム(GE)30日中枢抑制
エチゾラムデパス、エチゾラム(GE)30日中枢抑制
クアゼパムドラール、クアゼパム(GE)30日中枢抑制
クロキサゾラムセパゾン30日中枢抑制
クロチアゼパムリーゼ、クロチアゼパム(GE)30日中枢抑制
クロナゼパムランドセン、リボトリール90日抗てんかん
クロバザムマイスタン90日抗てんかん
クロラゼプ酸メンドン14日中枢抑制
クロルジアゼポキシドバランス、クロルジアゼポキシド(GE)30日中枢抑制
ジアゼパムホリゾン、セルシン、ジアゼパム(GE)90日中枢抑制
ゾピクロンアモバン、ゾピクロン(GE)30日中枢抑制
ゾルピデムマイスリー、ゾルピデム(GE)30日中枢抑制
トリアゾラムハルシオン、トリアゾラム(GE)30日中枢抑制
ニトラゼパムベンザリン、ネルボン、ニトラゼパム(GE)90日中枢抑制
バルビタールバルビタール14日中枢抑制
ハロキサゾラムソメリン30日中枢抑制
フェノバルビタールフェノバール90日中枢抑制
フルジアゼパムエリスパン30日中枢抑制
フルラゼパムダルメート30日中枢抑制
ブロチゾラムレンドルミン、ブロチゾラム(GE)30日中枢抑制
ブロマゼパムレキソタン、ブロマゼパム(GE)30日中枢抑制
ペモリンベタナミン30日中枢興奮
マジンドールサノレックス14日食欲抑制
メダゼパムレスミット、メダゼパム(GE)30日中枢抑制
ロフラゼプ酸エチルメイラックス、ロフラゼプ酸エチル(GE)30日中枢抑制
ロラゼパムワイパックス、ロラゼパム(GE)30日中枢抑制
ロルメタゼパムエバミール、ロラメット30日中枢抑制

また上記表にあるフェノバルビタールには、ルピアールやワコビタールという小児用の坐剤も存在します。

【注意点】向精神薬の薬局での取り扱いや管理について

向精神薬の薬局での取り扱いや管理における注意点

前項では、向精神薬を第1種から第3種まで分け、一覧表として整理しました。

次に、薬局における向精神薬の取り扱いや管理に関する注意点について解説していきます。

一部の向精神薬には処方日数の制限がある

基本的に市場に登場して1年未満の新薬は、処方できる最大期間が14日間に限られています。しかし、麻薬や向精神薬の扱いについては、麻薬及び向精神薬取締法で別途ルールが定められています。

向精神薬を処方可能な最大期間は、医薬品の種類によって異なり、14日、30日、または90日の制限が課せられています。

前項の表からもわかる通り、30日の制限とする薬は最も多く、アルプラゾラム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ブロチゾラムなどがあります。また、90日とされているのはジアゼパム、ニトラゼパム、フェノバルビタールなどです。

また30日と90日どちらにも含まれない向精神薬は、14日までの処方となっています。

なお、ここで紹介した情報は2024年3月時点でのものであるため、将来的に変更となる薬もあるかもしれません。処方日数の制限については、厚生労働省など、医薬品規制当局が発信している最新の情報を確認するとよいでしょう。

向精神薬の中にもハイリスク薬が存在する

ハイリスク薬とは、投与量に注意が必要な医薬品、併用禁忌が多い医薬品、相互作用に注意が必要な医薬品など、とくに安全管理が必要な医薬品のことです。向精神薬の中にも、ハイリスク薬が存在します。

ハイリスク薬においては、有害事象の発生を防ぐためにも薬剤師による適切な服薬指導が非常に重要です。ハイリスク薬を扱う際には、一般的に下記の点に気をつける必要があります。

  • 患者さまへの処方内容(薬の名称、服用方法と量)の再確認
  • 飲み忘れ時の対応も含めて、患者さまの薬剤服用状況の確認
  • 副作用の確認と深刻な副作用が起きた場合の対応策
  • 治療効果の評価(適正な投与量の確認、可能であれば血液検査等の数値チェック)
  • 処方薬や市販の薬、サプリメントや食品との相互作用のチェック
  • 向精神薬の中でも薬物相互作用のリスクが高いなど、とくに安全管理が必要なハイリスク薬については、服薬指導時に網羅的な情報提供ができるよう、留意事項をあらかじめ整理しておくとよいでしょう。

    適切な管理をする必要がある

    薬局で向精神薬を取り扱う場合は、薬局の管理者自身が向精神薬取扱責任者であるか、もしくは営業所ごとに向精神薬取扱責任者を配置するなど、向精神薬取扱責任者の配置が必須です。

    また、向精神薬は法第50条の21に基づいて、薬局内の人目のつかない場所で保管すること、鍵をかけた設備内で保管することが定められています。

    さらに、第1種向精神薬及び第2種向精神薬の場合は、廃棄する際に記録を残すことも必要です。

    向精神薬は不正使用や盗難のリスクもある薬が多いため、適切に保管するよう心がけなければなりません。向精神薬は、厳重な管理を行う必要がある薬だと日頃から認識しておきましょう。

    【重要】向精神薬を内服される患者さまの服薬指導のポイント

    向精神薬を内服される患者さまの服薬指導のポイント

    ここまで基本の分類や一覧表など、向精神薬についての基本知識を解説しました。

    この章では、現場で患者さまへの対応に悩む薬剤師の方のために、向精神薬を内服される患者さまの服薬指導のポイントを解説していきます。

    漫然的な長期処方や多剤併用がないか確認する

    向精神薬は、依存や副作用のリスクが高く、近年では不適切使用の是正に対する関心が高まっていました。また、向精神薬の中でも睡眠薬や抗不安薬は、多剤併用することのメリットが小さく、併用投与は避けるべきだと考えられてきました。

    しかし、2017年に報告された健康保険組合連合会による調査では、528.3万件のレセプトデータのうち、3類以上の抗不安薬や睡眠薬を内服し続けているケースは4%に認められました。

    また、分析対象施設の約24%で、抗不安薬および睡眠薬を8週間以上にわたって処方していました。なお、この調査は2016年9月までの処方状況を調査したもので、現在における向精神薬の投与制限(14日、30日、90日)が適用される以前のデータです。

    向精神薬の漫然的な処方や多剤併用を未然に防ぐためにも、お薬手帳の活用を促すことは重要です。複数の医療機関から向精神薬が重複して処方されるケースもあるでしょう。この場合、必要に応じて処方医と連携することも必要です。

    残薬が家や手元に残っていないか処方歴も合わせてチェックする

    向精神薬は徐々に効果を感じにくくなったり、常用量でも依存が生じやすいことから、オーバードーズなどの乱用の恐れもある薬です。

    決まった用法を連日服用する定期処方ではなく、症状が出た時にのみ服用する頓服処方では、医薬品の服薬管理が患者さま主体となり、適切に服用されているかどうかの確認が難しくなります。薬剤師としては、患者さまの残薬状況などを評価することによって、不適切な仕方で医薬品が服用されていないかどうか、丁寧に確認する必要があります。

    また、医療機関を定期的に受診できない場合に備えて、向精神薬(とくに睡眠導入薬)をご自宅に残している患者さまも、いるのではないでしょうか。「予備の薬をもっておくことで安心する」という患者さまの心理は良く分かります。しかし、ご自宅に多くの薬を保管しておくことは、重複して薬を飲んでしまうなどの事故につながりかねません。その意味でも、患者さまの残薬状況を確認することは大切です。

    複数の医療機関や診療科からの処方内容も確認して飲み合わせをチェックする

    向精神薬を内服している方の中にはご高齢の方も多く、ほかの疾患で複数の病院に受診しているケースも少なくありません。このような場合、ほかの向精神薬を処方されていることもあるため、併用薬の状況には注意が必要です。診察時に併用薬の情報を医師に伝えていない患者さまもいるため、服薬指導の際には服薬している全ての医薬品を確認し、重複投与を防ぐように心がけましょう。

    ただし、向精神薬を併用することの是非については、薬剤師だけで判断することが難しいケースも多々あります。例えば、介護施設に入居している患者さまの薬において、精神科でフェノバルビタールが処方され、内科のクエチアピンが処方されていたとしましょう。

    クエチアピンとフェノバルビタールは、添付文書上の併用注意に該当する組み合わせであり、病状によっては併用することもあり得ます。しかし、クエチアピンはフェノバールのような中枢神経抑制剤の強い影響下にある患者さまには禁忌となっています。このようなケースでは併用の是非について薬剤師だけで判断することは難しく、処方医と連携することが求められます。

    向精神薬の情報を学んで知識をアップデートしよう

    本記事では、向精神薬の分類や役割などの基本情報、第1種から第3種までの向精神薬の一覧表、処方や管理における注意点と服薬指導のポイントを紹介していきました。

    本記事は2024年3月時点の情報を参考に掲載したものです。投与制限に関する法規制は社会情勢や新薬の登場によっても変化します。最新の情報に関心をもち、常に知識をアップデートしていくようにしましょう。

    向精神薬の調剤では、患者さまとの関わり方や、服薬に関わる注意点の伝え方に悩む薬剤師の方も多いでしょう。患者さまが安心・安全に使用できるように、ここで紹介した服薬指導のポイントも参考にしてみてください。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2024/04/15

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