キャリア&スキルアップ
  • 公開日:2021.08.19

薬剤師による栄養指導、どう取り組めば良い?実施のポイントや参考書を紹介

薬剤師による栄養指導、どう取り組めば良い?実施のポイントや参考書を紹介

栄養指導は管理栄養士が主体となって行う業務であり、薬剤師による栄養指導はピンとこない方も多いかもしれません。しかし、医薬品の専門家である薬剤師が患者さまの栄養改善において貢献できる幅はとても広く、欠かせない存在となっています。

今回は、薬剤師が栄養指導の領域で求められている役割や指導の際の注意点などについて説明していきます。

そもそも栄養指導とは?

栄養指導は、健康の維持や疾病予防などを目的に、食生活に不安のある方や病気によって食事制限のある患者さまへ食事療法を提案したり食事相談に応じたりすることです。医療現場においては、患者さまの栄養状態を把握したうえで、適切な食事療法や栄養管理が行われます。

様々な不調や病気の改善に正しい食事は欠かせません。栄養指導は治療の土台作りのためにとても重要な役割を果たします。

薬剤師が行う栄養指導の内容とポイント

薬剤師が行う栄養指導の内容とポイント

続いて栄養士が行う栄養指導の内容とそのポイントについて解説します。

栄養指導の内容

■栄養状態の把握

服薬指導などの際に、患者さまが日頃どのような食事をしているか、きちんと3食とれているか、間食はあるかなどを確認します。食生活に問題がないか把握しておくことで、患者さまが入院した際や在宅医療を受ける際などに、情報提供することができます

■食事についてのアドバイス

アドバイスといっても、栄養士が行う専門的なものではなく、改善のための助言程度にとどめておきます。たとえば脂質異常症の薬を服用している患者さまへ野菜を意識的に摂るよう促したり、貧血の患者さまへ鉄分の多い食事をすすめたりといった対応が良いでしょう。

栄養指導のポイント

薬剤師が栄養指導をする際のポイントを4つ紹介します。

■患者さまの状態や考えをぬけもれなく聞き取る

栄養指導において重要なのは、患者さまの現状をくまなくヒアリングすることです。患者さまが話す内容についてすぐに指摘するのではなく、必要に応じて質問しながら患者さまの食事に対する考え方など、多くの情報を集めていきましょう

■患者さまと伴走する

食生活の改善は薬剤師からの働きかけだけでは難しく、患者さま自ら意識を変えることで初めて効果を発揮します。薬剤師からの栄養指導が一方通行にならないよう、患者さまのモチベーションなどに配慮して行うことが大切です

■アドバイスは少しずつ行う

薬剤師から見れば間違っている食生活でも、一度にすべて改善しようとするのは栄養指導をするうえでマイナスに働く可能性があります。アドバイスする際はステップを小さく分け、患者さまが少しずつ改善していけるように工夫しましょう

■事実に基づいた指導を行う

薬剤師が行うアドバイスは、患者さまにとっては「医療従事者の意見」となり重く受け止められます。薬剤師の専門領域ではないからこそ、不確かな情報を伝えるのは避け、一次情報をもとに適切な指導を行うよう徹底しましょう

栄養指導における多職種連携の重要性

栄養指導における多職種連携の重要性

近年、病院や在宅医療において栄養サポートチーム(NST)の活動が活発になっています。NSTは医師、薬剤師、看護師、管理栄養士など様々な職種からなるチームで、患者さまの栄養スクリーニングをもとに適切な栄養管理を行うことがおもな役割です。

治療にNSTが積極的に介入することで、栄養状態の改善はもちろん、治療効果の向上や入院日数の減少、患者さまのQOL向上などを目指します。また、令和2年度の診療報酬改定では「栄養サポートチーム加算」の対象となる病棟が増えるなど、国をあげてNSTのさらなる活躍が期待されています。

栄養サポートチーム(NST)での薬剤師の役割

薬剤師は、患者さまの栄養状態をみて投与ルートの検討や薬剤の確認などを行います。薬学的な観点から、食事と薬剤の相互作用を確認するのも重要な役割です。医薬品の専門家として、栄養療法を実施する患者さまへの服薬指導と副作用モニタリングを継続的に行っていきます

【事例】糖尿病治療における薬剤師と管理栄養士の連携

【事例】糖尿病治療における薬剤師と管理栄養士の連携

糖尿病治療には、薬物療法だけでなく食事や運動習慣などの改善が必要不可欠です。ただ、患者さま自ら意識を変え、食事や運動のセルフケアを長期的に行ってもらうのは簡単ではありません。

課題解決のため、新潟大学では薬局薬剤師と管理栄養士の連携モデル構築を計画しました。3つのステップに分けて紹介します。

STEP1:服薬指導時に食生活についての聞き取りと改善への働きかけを行う

薬剤師は、服薬指導時に食事を含めた日常生活や血糖管理状況を把握したうえで、患者さま自身が食生活の改善に関心をもつような働きかけを行います

STEP2:食事改善の意欲が高い患者さまを管理栄養士につなぐ

食事を改善したいと考えている患者さまは、より専門的な指導が受けられるよう地域の管理栄養士につなぎます。一方で、意欲の低い患者さまに対しては薬剤師が継続的に関心を持てるような働きかけを行っていきましょう。

STEP3: 薬剤師と管理栄養士の間で定期的な情報共有を行う

管理栄養士による栄養指導の内容は薬剤師へ共有し、両職種が患者さまの状態をモニタリングできる状況を作ります。薬剤師と管理栄養士が共同で糖尿病治療を支援することで、薬と食事の両面からアプローチでき、より効果的な治療が可能になるのです。

薬剤師の栄養指導に役立つ本3選

ここでは、薬剤師が実際に栄養指導をする際に役立つ本をご紹介します。ぜひ、適切な指導の参考にしてください。

※(2023年6月更新)

プラスαの服薬指導に活かす!食事と栄養
疾患別132の疑問に答えます

shokuzitoeiyou.jpg

薬局ですぐに役立つ、食事と栄養に関わる132のQ&Aが厳選されています。知りたい情報をすぐに確認できるよう疾患別に解説しており、服薬指導の際の食事のアドバイスや患者さまからの相談への回答に役立ちます。食品別の栄養成分量など、すぐに役立つ資料も満載で、薬剤師におすすめの一冊です。

薬剤師・管理栄養士のための今日からはじめる薬局栄養指導

薬剤師・管理栄養士のための今日からはじめる薬局栄養指導

栄養指導の総論や疾病ごとの栄養・食事指導について書かれているこの本は、薬剤師が関与する栄養指導の現状や今後の課題、多職種連携などについて学べます。さらに、疾病ごとの栄養・食事指導についても詳細に書かれているため、経験の浅い方でも栄養指導に取り組みやすくなる内容です。

栄養指導に自信が持てるようになる本

栄養指導に自信が持てるようになる本

管理栄養士が執筆した本であり、筆者が栄養指導をするなかで感じた違和感や疑問を元に、新しい栄養指導の形を提案しています。著者は栄養指導の教育にも力を入れており、全国の管理栄養士・薬剤師・看護師などを対象に栄養指導講習会を開いてきた実績も。栄養指導を行うためのバイブルとして使える一冊です。

患者さまの栄養改善において薬剤師の存在は欠かせないものになっている

今回は薬剤師による栄養指導について、内容やポイントなどについてまとめました。薬剤師が担うべき栄養指導は、専門性の高い指導よりも患者さまが抱える食事・栄養に関する疑問を解決することです。

さらに、NSTでも薬剤師の活躍が期待されるなど、患者さまの栄養改善において薬剤師の存在は欠かせないものになっています。ご紹介した本も参考に、栄養指導に関するスキルアップを目指してください。

ファルマラボ編集部

「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

記事掲載日: 2021/08/19

あわせて読まれている記事