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  • 公開日:2025.08.04

薬剤師の調剤ミス・処方ミスへの対処法!ヒヤリ・ハット事例を原因と合わせて紹介

薬剤師の調剤ミス・処方ミスへの対処法!ヒヤリ・ハット事例を原因と合わせて紹介

薬剤師の調剤ミスは、患者さまの健康に大きな影響を与える重大な問題です。実際に、調剤ミスやヒヤリ・ハットを経験し、不安を感じたことのある方も多いのではないでしょうか。

本記事では、調剤ミスの実態や原因、具体的な事例を紹介します。調剤ミス防止には、個人の努力だけでなく、適切な職場環境も必要不可欠です。安全な医療提供とキャリア向上を目指す薬剤師の方はぜひ最後まで読んでみてください。

薬剤師は調剤ミスやヒヤリ・ハットが多い?

薬剤師は調剤ミスやヒヤリ・ハットが多い?

薬剤師は、調剤ミスやヒヤリ・ハットが発生しないよう意識を向ける必要があります。ここでは、調剤ミスやヒヤリ・ハットの定義と実態について詳しく解説します。

調剤ミスやヒヤリ・ハットという言葉の定義

調剤ミスとは、薬剤師の調剤時の過失や説明不足により、患者さまに健康被害が生じる可能性のある事態を指します。主に以下の3つのカテゴリーに分類されます。

  • 調剤事故:医療事故の一種であり、薬剤師の過失の有無に関わらず、患者さまに健康被害が生じた場合を指します。

  • 調剤過誤:調剤事故の中でも、薬剤師の過失によって発生したものを指します。調剤ミスだけでなく、服薬指導が不適切であったり、誤った情報提供により健康被害が生じた場合も含まれます。

  • ヒヤリ・ハット事例(インシデント事例とも言う):実際に患者さまに健康被害は発生していないものの、薬剤師が「ヒヤリとした」「ハッとした」と感じた出来事を指します。「調剤ミスなどにより患者さまの健康被害は起こっていないものの、ヒヤリとしたり、ハッとしたりした出来事」(インシデント)を指します。
  • 薬剤師による調剤ミスは多い?調剤ミスの実態

    日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の第31回報告書によると、2024年1月~6月におけるヒヤリ・ハット事例等の報告件数は49,794件でした。

    このうち「疑義照会や処方医への情報提供に関する事例」は41,166件、「調剤に関するヒヤリ・ハット事例」は8,565件、「特定保険医療材料等に関する事例」は30件、 「一般用医薬品等の販売に関する事例」は33件であり、ヒヤリ・ハット事例の多さがうかがえます。

    このような状況は、薬剤師にとってもストレスを感じる状況と言えるでしょう。

    薬剤師によるヒヤリ・ハットや調剤ミスの原因と事例

    薬局での薬剤師による調剤ミスはなぜ起こる?ヒヤリ・ハットや調剤ミスの主な原因と事例

    薬局で起こる調剤ミスやヒヤリ・ハットが生じる主な原因を3つ解説します。

  • 患者さまとのコミュニケーションエラー
  • 勤務経験の長さからくる業務への慣れ
  • 多忙な業務により精神的な余裕の無さ
  • 具体的な事例とともに、説明していきます。

    患者さまとのコミュニケーションエラー

    調剤ミスが発生する原因の多くは、患者さまとのコミュニケーション不足や認識の相違が挙げられます。

    前述した日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」の第31回報告書によると、対象患者さまの年齢層は71〜80歳が10,803件と全体の中で最も多い割合となっています。このことから、高齢の患者さまへの説明が不十分だったことがヒヤリ・ハットの要因と考えられます。

    また、調剤に関するヒヤリ・ハット事例では、全体の8,565件のうち6,912件が普段から薬局を利用している患者さまでした。薬剤師が「いつもの患者さまだから」と説明を省略してしまった可能性も考えられます。

    勤務経験の長さからくる業務への慣れ

    新人薬剤師よりも経験豊富な薬剤師の方が、意外と調剤ミスをする傾向にあります。

    報告があがった事例の薬剤師の経験年数をみると、最も多いのは経験年数20年の薬剤師でした。 長年の経験からくる業務の慣れが、調剤ミスにつながることもあるかもしれません。

    実際に、調剤ミスの発生要因として「慣れ・慢心」をあげているケースは多く、30,023件のうち3,733件でした。

    慣れや慢心を防ぐためにも、常に新しい刺激や学びの機会を持つことが重要です。 同じ環境で長年働いている場合は、異なるタイプの病院や薬局への転職を検討してみるのもいいでしょう。

    多忙な業務により精神的な余裕の無さ

    仕事の効率化を図るためICT化が進んでいますが、多くの薬剤師が多忙な業務に追われています。事例の発生要因のうち「繁忙であった」とあげられるのは、30,023件のうち3,897件であり、繁忙さがさまざまな調剤ミスの誘発につながっていると考えられます。

    繁忙な状況を改善するには、業務の効率化や人員を適切に配置する必要もあります。もし、現状の職場での改善が難しい場合は、転職も解決策の一つかもしれません。

    薬局で起こる調剤ミスやヒヤリ・ハットを防ぐためには、患者さまとのコミュニケーションを重視し、経験による慣れや慢心に気を配り、多忙な業務の中でも余裕を持って業務に取り組むことが重要です。

    実際のヒヤリ・ハット事例と対策

    実際の現場でよくあるヒヤリ・ハットの事例を3つ紹介します。

    服薬指導の指導間違いの事例

    薬剤師が吸入薬の服薬指導で、1回2吸入のところを誤って「1回1吸入」と患者さまに説明してしまいました。結果、本来より少ない量を使用し、1キットが余ってしまった事例です。

    原因は薬剤師の知識不足が挙げられます。対策として継続的な学習や、不確かな点の事前確認をしっかり行い、正確な情報提供を心がけましょう。

    疑義照会に関連するヒヤリ・ハット事例

    病院で医師より、薬を飲む回数を1日3回から4回に変更になると患者さまは言われました。しかし、服薬指導時の会話で患者さまが夕食後すぐ就寝することが判明します。薬剤師が服薬忘れの可能性を考慮し、疑義照会で元の3回処方に戻した事例です。

    患者さまの生活習慣を詳しく確認することで、適切な服薬サポートにつながりました。服薬指導時には、患者さまの状況確認を綿密に行いましょう。

    薬剤情報提供文書作成ミスによる事例

    薬剤情報提供文書を作成した際、1回1錠を誤って1回10錠と入力してしまいました。患者さまが指示通り服用し、健康被害が生じた事例です。ダブルチェックをすることで防げるミスとなりますので、ミス防止体制の強化が薬局に求められます。

    医療事故を未然に防ぐために、薬剤師に起こりうるヒヤリ・ハットの事例をより詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事も読んでみてください。

    薬剤師が調剤ミスに気づいた時の初期対応の手順

    薬局で薬剤師が調剤ミスに気づいた時の初期対応の手順

    調剤ミスに気づいた時に一番大切なのは、患者さまへの初期対応です。基本的な初期対応手順は以下のとおりです。

    1. 1.患者さまの状態の確認と記録:影響を受けた患者さまの健康状態を確認し、詳細に記録します。
    2. 2.患者さまとご家族への説明:誠実に状況を説明し、不安や疑問に丁寧に対応します。
    3. 3.関係機関への報告:医療機関や薬剤師会、必要に応じて行政機関にも報告します。

    調剤ミスが起こってしまったときの初期対応について、より詳しく知りたい方は以下の記事も参照してみてください。

    薬剤師の調剤ミスやヒヤリ・ハットは発生する前に対策しよう

    薬剤師の調剤ミスやヒヤリ・ハットは発生する前に対策しよう

    本記事では、薬剤師の調剤ミスやヒヤリ・ハットの現状、原因、実際の事例、そして初期対応について紹介しました。

    調剤ミスやヒヤリ・ハットは、発生する前の阻止が最も重要です。そのためには、個人の努力だけでなく、適切な職場環境も必要不可欠です。適切な職場環境とは、例えば以下のような環境です。

  • 適切な人員配置と業務量のバランスがとれている。
  • 継続的な教育・研修制度が充実している。
  • 患者さまとのコミュニケーションを重視している。
  • ワークライフバランスを大切にする経営方針である。
  • 現在の職場に問題を感じる場合には、上司や同僚に環境改善の提案をするなど、自分なりに働きかけてみてもよいでしょう。

    しかし、現在の職場環境で改善が見込めない場合は、転職も選択肢の一つです。

    上記のような環境が整っている職場に転職することで、安全で質の高い医療サービスを提供しながら、自身のキャリア向上も目指せるかもしれません。

    転職サイトや求人票からは、人員配置や教育・研修制度の情報はある程度得られますが、実際の職場環境などは把握しづらい情報もあります。

    この場合には、転職コンサルタントを活用することで効率的に情報を得られることがあります。

    求人情報に詳しい転職コンサルタントから、求人票だけでは分からない情報を教えてもらうことができるでしょう。

    ぜひ、自身のキャリアと患者さまの安全を守るために、より良い環境での勤務を目指しましょう。

    ファルマラボ編集部

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    記事掲載日: 2025/08/04

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