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  • 公開日:2021.10.13

『老年薬学認定薬剤師』とは?役割や資格の取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

『老年薬学認定薬剤師』とは?役割や資格の取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

高齢化が進む日本社会において、今後さらなる需要が見込まれる資格に「老年薬学認定薬剤師」があります。様々な疾患を抱える高齢者の日常生活を支えるため、薬学的管理や指導を行うのが目的です。

今回は老年薬学認定薬剤師について、詳しい資格の内容や役割、取得方法などを解説します。とくに高齢者医療に興味のある方はぜひご覧ください。

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高齢者に多い症状・兆候「老年症候群」とは

高齢者に多い症状・兆候「老年症候群」とは

老年薬学認定薬剤師は、老年症候群の症状を有する高齢者やほかの疾患を抱える高齢者のQOL(生活の質)向上を目指し、薬学的管理や指導を行う薬剤師のことです

老年症候群とは高齢者に多い症状・兆候の総称で、おもに以下のような項目があります。いくつかの症状を同時に発症する場合が多いため、複数の診療科を受診しなければならないのが特徴です。

  • 認知症
  • 転倒
  • 寝たきり
  • 誤嚥
  • せん妄
  • 排尿障害
  • 褥瘡
  • など50項目以上

    【参考】公益財団法人長寿科学振興財団 老年症候群とは

    また、老年症候群は「生理的老化」と「病的老化」とに分けられ、それぞれ以下のような状態を指しています。

    生理的老化

    加齢によって誰にでも起こりうる不可逆的な変化で、病気ではありません。たとえば目が見えにくくなったり耳が聞こえづらくなったりするなど、身体的な機能低下によって起きる心身の変化です。

    病的老化

    病気・けがなどが原因となって起きる症状で、たとえば高血圧や骨粗しょう症、認知症などは病的老化と言えます。誰にでも起きるとは限りませんが、加齢によって身体的な機能が低下するため、生理的老化と併せて発症する場合が多いでしょう。

    老年薬学認定薬剤師とは?

    老年薬学認定薬剤師とは?

    老年薬学認定薬剤師は、日本老年薬学会において認定される資格です。高齢者の薬物療法を支援するうえで必要な知識や経験、スキルを総合的に有する薬剤師を養成するために作られました。

    高齢者がより有効で安全な薬物療法を受けられるよう働きかけ、最終的には社会全体の保健・医療・福祉に寄与することを目的としています。

    老年薬学認定薬剤師に求められる役割

    老年薬学認定薬剤師に求められる役割

    老年薬学認定薬剤師には、高齢者に対する薬物療法の専門家としての活躍が期待されています。たとえば重複投薬や薬物有害事象など、薬物関連問題の抑制を目的とした処方の見直しや、必要に応じて医師に対する提言も求められるでしょう。さらに高齢者施設や在宅医療の場でも、高齢者が安心して医療を受けられる環境整備や医薬品の安全管理などにも携わります

    また、日本老年薬学会では、老年薬学認定薬剤師に必要な資質を要請するために必要な知識や経験を以下の通り定めています。後述する資格の認定審査において、以下の知識や経験を有しているか確認・審査されるため、取得を目指すうえで、自身の現状と照らし合わせてみましょう。

  • 加齢に伴う生理・身体機能の変化
  • 高齢者に多くみられる症候、障害
  • 高齢者に多くみられる疾病
  • 高齢者医療に関わる指針・ガイドライン
  • 薬物動態の変化と薬物治療
  • 高齢者の薬物治療に関わるガイドライン
  • 高齢者の処方見直しへのアプローチ
  • 高齢者の身体能力に合わせた服薬支援
  • 多職種との連携
  • 高齢者施設や在宅の環境整備
  • 高齢者に配慮した行動(救急救命、口腔ケア、認知症サポートなど)
  • 【参考】一般社団法人 日本老年薬学会 老年薬学認定薬剤師に求められる資質

    老年薬学認定薬剤師になるには?

    老年薬学認定薬剤師になるには?

    老年薬学認定薬剤師の資格取得に向けて、条件や方法などを確認しましょう。

    認定までの流れ

    後述する要件を満たしたうえで、まずは毎年3月に実施される認定試験に合格しなければなりません。合格した場合は、4/1~5/31の受付期間内に認定申請を行い、審査に通ると老年薬学認定薬剤師の資格が取得できます

    仮に認定審査にて不合格となった場合、次年度の申請までは認定試験合格の記録を保持可能です

    なお、認定証の交付までには受験料(税込5,500円)、審査料(税込11,000円)、審査合格後の登録料(税込11,000円)が必要となります。

    認定申請の要件

    認定申請を行うには、以下の要件を満たしておかなければなりません。認定試験を受ける段階ではすべて揃っていなくても問題ありませんが、準備が整う見込みがある場合のみ受験しましょう

    1 薬剤師免許を取得後、3 年以上が経過している

    2 3年度以上かつ現在も日本老年薬学会の一般会員である

    3 所属長(病院長や施設長など)、もしくは保険薬局の開設者の推薦がある

    4 業務を通じて高齢者の薬物療法の有効性、または安全性に直接寄与した10の症例を報告できる

    5 日本老年薬学会が指定する研修などを受講し、申請年度を除く4年度以内に30単位以上を取得する

    6 日本老年薬学会が指定する実技実習などを、申請年度を除く4 年度以内に3 項目以上受講する

    7 (2024年度の申請から施行)薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師、日本病院薬剤師会日病薬病院薬学認定薬剤師または日本医療薬学会認定薬剤師であること

    8 認定試験に合格している

    【参考】一般社団法人日本老年薬学会「2019 年度以降の認定申請要件」

    認定の更新について

    老年薬学認定薬剤師には、資格継続のために更新が必要です。認定を受けた翌年度を起点として5年度目に更新手続きが行われないと、資格認定が失効する点に注意しましょう。なお、更新には10例の症例報告と認定薬剤師の証明の写し、40単位の取得が必要です。また、更新申請には審査料(税込11,000円)、審査合格後の登録には登録料(税込11,000円)がかかります。

    老年薬学認定薬剤師の将来性

    老年薬学認定薬剤師の将来性

    総務省の発表では2008年をピークに総人口は減少に転じています。一方で高齢者の割合は増え続けており、2020年の総人口に占める高齢者の割合は28.7%です。これは世界で最も高い高齢化率であり、今後もさらに高まっていくことが予測されています。

    さらに地域連携薬局やかかりつけ薬剤師など地域包括ケアシステムが国をあげて推進されるなかで、薬剤師にはこれまで以上に高齢者との密接なかかわりが求められるでしょう

    このような状況のなか、老年薬学認定薬剤師は高齢者への適切な薬物治療を推進できる立場として、病院、薬局、ドラッグストアなど職場を選ばず重宝されることは間違いありません。また、介護施設や老健、近年の医療現場で重要視されている在宅医療などにおいても大いに力を発揮できるでしょう。自身のスキルアップはもちろん、キャリアの幅を広げる視点で見ても将来性の高い資格と言えます。

    ステップアップとなる「老年薬学指導薬剤師制度」

    ステップアップとなる老年薬学指導薬剤師制度

    2021年度から、老年薬学認定薬剤師を取得した方を対象に、より高度な資格となる「老年薬学指導薬剤師制度」が始まりました。顕著な実務経験と数多くの学術、学会活動の実績を有している必要があり、老年薬学認定薬剤師を養成するための指導や評価を行う立場です

    資格取得には、以下の要件を満たす必要があります。

  • 大学、医療提供施設などで老年薬学を研究、実践する薬剤師
  • 老年薬学認定薬剤師を取得している
  • 日本老年薬学会の会員歴が、申請年度を除き5年度以上継続している
  • 老年薬学に関する学会発表を10回以上行っている。そのうち、日本老年薬学会が主催する年会で、筆頭発表者として1回以上発表している
  • 老年薬学に関する学術論文が5報以上ある。そのうち、筆頭者としての論文が1報ある
  • 日本老年薬学会の役員(理事、監事、評議員)、所属長(病院長や施設庁など)または保険薬局の解説者の推薦がある
  • 【参考】一般社団法人日本老年薬学会「老年薬学指導薬剤師制度規則」

    老年薬学認定薬剤師を取得したうえで、さらなるスキルアップを目指す場合はぜひ取得を検討してみましょう。

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    超高齢社会で求められる薬剤師となるために

    高齢化が進む日本社会において将来性が高く、注目したい老年薬学認定薬剤師について詳しく解説しました。老年薬学認定薬剤師は老年症候群の症状を持つ高齢者のQOL(生活の質)向上のため、大きな役割を担う存在です。

    また、将来的にはステップアップの資格となる、老年薬学認定薬剤師を指導する立場の老年薬学指導薬剤師を検討してみるのもおすすめです。まずは最初のステップとなる老年薬学認定薬剤師を取得し、超高齢社会で必要とされる薬剤師を目指しましょう。

    ファルマラボ編集部

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    記事掲載日: 2021/10/13

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