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  • 公開日:2023.07.03

新人薬剤師に伝えたい「処方監査」の重要性!手順とポイントを解説

新人薬剤師に伝えたい「処方監査」の重要性!手順とポイントを解説

医師の処方箋、処方内容が適切かどうかを確認する処方監査。

薬剤師にとって、処方監査は患者さまの安全と医療の質を保つために欠かせない、非常に重要な責務の一つです。そのため、4月から新しく薬剤師になった方々にとっては、まず最初に知っておくべきことの1つです。

この記事では、新人薬剤師の方向けに、処方監査の手順や重要なポイントを詳しく解説していきます。

処方監査とは何か?

処方監査とは、医療機関や薬局において、処方薬や医療行為に問題がないかどうかを薬剤師が審査することです。

誤った薬剤や過剰な薬剤の処方、相互作用の可能性がある薬剤の併用などを薬剤師がチェックして未然に防ぐことで、患者さまの治療効果の向上と副作用の発現防止につなげることができます。

日本は2025年にはおよそ5人に1人が75歳以上になる超高齢社会へと変化するため、医療コストを抑えることは大きな課題となっています。薬剤師が適切な処方監査を行うことで、不要な薬剤の使用を防ぐことができると、医療費の削減につながるでしょう。

処方監査の手順とポイント

処方監査の手順とポイント?

では、処方監査はどのように行えばよいのでしょうか。その手順とポイントについて解説します。

処方箋の形式的監査

まず処方箋の受付時には、処方箋の記載事項に漏れ・間違いがないかを確認します。具体的には以下の5点を中心に確認していくと良いでしょう。

1.患者さまの氏名・年齢・性別に誤りがないか、処方医の押印があるかを確認する

処方箋がその患者さまに向けて正しく処方されているか確認するためにも、氏名・年齢・性別のチェックは必ず行いましょう。また、処方医の記名押印または署名があるかも必ず確認します。偽造処方箋でないかのチェックも大切です。

2.処方箋の発行が有効期限内であるかを確認する

処方箋の期限は、医師の記載がある場合を除いて、原則処方日を含めて4日以内となっています。注意すべき点は土日や祝日をはさんだとしても考慮されないことです。

たとえば、4月1日(金)に交付された処方箋は4月4日(月)までが処方箋の有効期間となります。4日を過ぎてしまった処方箋は原則無効となり、薬局で受付し薬を交付することはできません。

3.処方箋の末尾に「以下余白」があるかを確認する

処方箋の枚数が複数にわたる場合、患者さまが処方箋の一部を出し忘れている可能性があります。必ず、受付時に「以下余白」の記載があるかを確認し、処方が完結しているかを確認しましょう。

4.処方日数が問題ないかを確認する

麻薬、向精神薬、覚せい剤原料の場合は、14日、30日、90日など処方日数の制限が決められています。また新薬の場合は、薬価基準収載の翌月の初日から1年間は原則1回14日分が限度です。

5.処方箋内容に不備、不明瞭な点はないかを確認する

特に記入漏れが起こりやすい、薬剤の規格や用法用量、部位などがきちんと記載されているかをチェックします。また、処方箋が医師の手書きの場合で、内容が読み取れないなどの場合も、疑義照会し確認を取りましょう。

処方箋内容の監査

処方箋の形式的な内容に問題がなければ、次は薬学的観点からの内容チェックに移ります。具体的には以下の5点を中心に確認していくと良いでしょう。

1.処方されている薬剤が適切であるかを確認する

過去の薬歴やお薬手帳、問診表などから処方履歴や病状を確認し、処方内容をチェックします。また、その薬や同系統の薬剤で過去に副作用やアレルギー症状を起こしたことがないか、妊娠・授乳の有無なども確認し、処方内容がその患者さまにとって適切なものであるかを確認します。

さらに、ハイリスク薬と呼ばれる薬剤は副作用などの危険性も高いことから、特に安全性に注意を払わなければならず、投与方法・期間、用法用量、併用薬、副作用などの確認と説明が必要です。

2.患者さまに適した剤形・用法用量であるかを確認する

特に小児や高齢者の場合に注意が必要です。錠剤やカプセルの大きさによっては薬の服用ができない場合もあります。また、小児は年齢や体重によって、高齢者は腎機能や肝機能の値などによって薬の用法用量が異なります。必要があれば患者さまに体重や検査値の聞き取りを行い、処方が適正であるかを確認することが大切です。

3.併用薬の重複や相互作用がないかを確認する

患者さまが他の医療機関を受診している場合や、市販薬を服用している場合は、今回の処方薬と重複がないかを確認します。医療機関で処方された薬に関してはお薬手帳や過去の薬歴から確認が取りやすいですが、市販薬は患者さま本人に聴取しなければ分からない場合も多いです。また、相互作用が起こる薬剤や併用禁忌である薬剤を服用していると、重篤な副作用が起こる可能性もあるため、必ず確認しましょう。

4.投与間隔の妥当性を確認する

たとえば多くの抗がん剤や骨粗しょう症治療薬のビスフォスフォネート系製剤、抗リウマチ薬のメトトレキサートなど、薬によっては週に何回、月に何回、何週間服用して何週間休薬する、といったように、服用間隔が特殊な薬剤もあります。そのため、投与間隔が適正であるかや、定期的に必要な検査は行われているかなども確認することが必要です。

また、前回交付された処方日数から、服薬コンプライアンスに問題がないかも合わせて確認し、必要があれば残薬調整などの疑義照会を行いましょう。

5.混合による配合変化や医薬品の安定性に問題がないか確認する

2種類以上の塗り薬や注射薬を混合すると、着色、混濁、沈殿、分離などの外観変化や薬効成分の含量低下が起こる場合があります。また長期使用による安定性についても問題がないか、薬剤を混合するときにはチェックをすることが大切です。

医師への確認

形式的監査、処方箋内容の監査で不備や確認の必要がある場合は医師に疑義照会を行います。

疑義照会を行う場合は、以下のような3点に注意しましょう。なお、新人薬剤師の場合、知識不足、経験不足により、疑義照会で医師の信頼を損なわないよう注意が必要です。慣れないうちは、先輩薬剤師に相談するなどして、しっかり準備してから疑義照会するようにしましょう。

1.要点をまとめてから医師に連絡をする

まず新人薬剤師の場合は、疑義照会を行う前に必ず上司に相談します。

そして、何度も疑義照会をくり返すことのないように、処方監査に抜けや誤りがないかを再度確認し、要点をまとめて簡潔に伝えられるようにしましょう。

「処方箋の内容で間違いないですか?」といったようなあいまいな聞き方ではなく、たとえば「今回の処方の◯の用量が、最大常用量を超えて処方されていますが、よろしかったでしょうか?」といったように、「理由」を具体的に説明するようにしましょう。

2.あらかじめ代替案を用意してから連絡をする

処方監査の結果、医師の処方変更が必要であると考えられる場合は、あらかじめ変更後の薬剤や分量などの代替案を用意してから連絡を行うようにします。提案に不安がある場合は上司にあらかじめ確認するようにしましょう。

3.患者さまに疑義照会の時間をいただくことを伝える

疑義照会を行うタイミングによっては、医師が診察中などですぐに回答を得られず、疑義照会に時間がかかることがあります。長時間お待たせすることで患者さまとのトラブルになるケースもあるため、事前に伝えておくようにすると良いでしょう。

処方監査のヒヤリハット事例

処方監査のヒヤリハット事例

ここでは、処方監査のヒヤリハット事例をご紹介します。

事例1)特殊用法・用量の薬剤に関するヒヤリハット

Before(処方例A)

リウマトレックスカプセル 2mg 2cap朝夕食後 4日分

リウマトレックスカプセル 2mg 1cap朝食後 4日分

After(処方例B)

リウマトレックスカプセル 2mg 2cap朝夕食後(火曜日 朝1cap・夕1cap) 4日分

リウマトレックスカプセル 2mg 1cap朝食後(水曜日 朝1cap) 4日分

リウマトレックスカプセル 2mgは、1週間のうち 1~2日のみ服用し、残りの5~6日は休薬する特殊な用法・用量の薬剤です。適正に投与されない場合、重篤な副作用が発現する恐れがあり、服用による死亡例も出ています。調剤の際には、投与量、服用日、休薬期間について十分に確認する必要があります。

この事例は、上記例Aの処方を受け付け、監査後の服薬指導の際に患者さまから、「毎日服用すると4日で薬はなくなる。次回1ヶ月後の受診まで薬を飲まないで大丈夫でしょうか?」と相談されて判明した事例です。担当薬剤師は処方箋どおりに調剤し、用法用量の確認を怠り、そのまま投薬しようとしました。その後の疑義照会で、正しくは処方例Bの処方箋で、用法のコメントの記載が漏れていました。本来は用法・用量を処方箋監査の段階で、疑義照会しなければならない事例でした。

事例2)散剤の調剤に関するヒヤリハット

Before

(処方例1)テグレトール細粒50% 0.6g/日 朝夕食後 7日分

処方箋で「0.6g/日」が製剤量(細粒として0.6g/日)なのか原薬量(原薬[カルバマゼピン]として0.6g/日)なのかが明確でなく、薬剤師は処方医に疑義照会を行う必要があります。

この事例では、薬剤師は製剤量として0.6gを調剤しました。患者さまからいつもより量が少ないとの指摘を受けて疑義照会し、製剤量ではなく原薬量での記載であったことが判明した事例です。

After

(処方例1)・テグレトール細粒50% 0.8g(1回製剤量) 1日2回 朝夕食後 14日分

(処方例2)・カルバマゼピン0.4g(1回原薬量) 1日2回 朝夕食後 14日分

内服薬処方箋の記載方法については、2010年厚生労働省により、薬名を「製剤名」、分量を「製剤量」として「1回内服量」を記載することが基本とされました(処方例1)。例外的に「原薬量」で分量を記載する場合は、その旨を明示する必要があります(処方例2)。

製剤量または原薬量、1回量または1日量の違いを明確に特定できない場合は、必ず疑義照会を行ってから調剤をするようにしましょう。

ポイントを守って適切な処方監査を行おう

この記事では、処方監査の重要性や手順・ポイントについてお伝えしました。

処方監査は薬による健康被害のリスクを減らし、国の医療費削減にもつながる、薬剤師にとって極めて重要な責務の一つです。

正しく処方監査を行うためには、手順やポイントをおさえ、薬学的知識に基づいた対処が必要です。また、スムーズな処方監査や疑義照会には、医師や患者さまとの円滑なコミュニケーションも欠かせません。日頃から信頼関係を築いておく重要性も忘れないようにしましょう。

嶋本豊さんの写真

監修者:嶋本 豊(しまもと・ゆたか)さん

有限会社杉山薬局下関店(山口県下関市)管理薬剤師。主に臨床薬物相互作用を専門とし、書籍(服薬指導のツボ虎の巻、薬の相互作用としくみ[日経BP社])や連載雑誌(日経DIプレミアム)、「調剤と報酬」などの共同及び単独執筆に加え、学会シンポジウム発表など幅広く活動している。

記事掲載日: 2023/07/03

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