業界動向
  • 公開日:2023.01.23

大手調剤薬局の売上と店舗数ランキング!【2022年12月時点】

大手調剤薬局の売上と店舗数ランキング!【2022年12月時点】

全国にある調剤薬局の数はこの15年で増加の一途をたどっており、20店舗以上を経営する薬局の割合も、年々増加傾向にあります。そのため、調剤薬局への転職を検討したり、業界動向を把握したりするうえで、大手薬局の売上高や店舗数はぜひ確認しておきたいポイントです

そこで、この記事では大手調剤薬局の売上高と店舗数をランキング形式でご紹介します。

調剤薬局の動向

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大手調剤薬局の減収が相次いだ2021年と比べ、売上ランキング上位10社中8社が増収する結果となり、業界全体が回復の兆しです。調剤医療費が2021年度比2.8%増の7兆7059億円であったことが厚労省より発表され、新型コロナウイルスの感染拡大による患者さまの受診控えが緩和して、処方せん受付枚数が増えていることが伺えます。

また、2025年までにすべての薬局をかかりつけ薬局にすることを目標に「患者のための薬局ビジョン」が施行されました。対物業務から対人業務へのシフトにあわせて報酬体系が刷新され、在宅業務の推進やICT(情報通信技術)の活用が求められています

大手調剤薬局の売上ランキング

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売上ランキングの上位10社をランキング形式でご紹介します。今回、2022年3月期の有価証券報告書を基本的に参考にしていますが、一部企業においては企業HPに掲載のお知らせなどを参考としております。最新数値については、各社HPをご覧いただけますと幸いです。

1位 株式会社アインHD

北海道札幌市に本社を構え、売上高は2,831億1,100万円(ファーマシー事業売上高)。全国に調剤薬局やドラッグストアのチェーン店を運営するアインファーマシーズなどを傘下に置く持株会社です。受診緩和による処方箋枚数の回復に加えて、2022年5月にはファーマシィホールディングスの子会社化を発表するなど積極的なM&A(合併・買収)や新規出店で増収し、売上高は2021年度比7.6%増の右肩上がりを続けています。アイン薬局公式アプリ「いつでもアイン薬局」の運用を開始し、薬剤師によるチャット・ビデオ相談やオンライン服薬指導などにも取り組んでいます。

2位 日本調剤株式会社

東京都千代田区に本社を置き、売上高は2,656億2,400万円(調剤薬局事業売上高)。調剤薬局チェーンを全国展開しているほか、医療従事者派遣・紹介事業も行っている企業です。2021年8月には子会社のハート調剤薬局を、2022年11月には子会社のヤジマメディカルブレーンとデュオンを吸収合併することを相次いで発表するなど積極的な店舗拡大を行い、2021年比8.8%の増収です。全国の調剤専業企業として初めて「DX認定取得事業者」に認定された実績もあり、2022年9月にはオンライン服薬指導サービス「NiCOMS(ニコムス)」の登録者数が5万人を突破したことを発表しています。

3位 クオールHD株式会社

東京都港区に本社を構え、売上高は1,531億400万円(保険薬局事業売上高)。調剤薬局や医薬品の販売事業を前身に、医療業界向けの人材派遣やCRO事業も展開しています。地方密着型の薬局を複数買収して店舗数を増やし、2021年比2.9%の増収です。今年4月にはLINEアプリ「クオールおくすり便」の運用を開始し、処方箋の事前予約や健康情報をLINEで提供するサービスを行っています。2022年6月には医薬品配送にドローンを活用する実証実験を行ったことをホームページで掲載、また2022年11月にはグループ会社の藤永製薬が新型コロナ抗原検査キットの製造販売承認を取得したことを発表しました。

4位 株式会社メディカルシステムネットワーク

北海道札幌市に本社を構え、売上高は1,014億5700万円(地域薬局ネットワーク事業売上高)。2021年比2.3%の増収です。「なの花薬局」を中心とした薬局運営の他、加盟登録をした一般の保険薬局に対して医薬品の調達・薬剤師研修といった支援サービスを提供しています。

5位 東邦HD株式会社(共創未来グループ)

東京都世田谷区に本社を構え、売上高は918億100万円(調剤薬局事業売上高)。2021年比0.8%の増収です。医薬品卸売会社の東邦薬品を核として、調剤薬局や治験施設の支援、医薬品製造なども行う会社です。

6位 株式会社スズケン

愛知県名古屋市に本社を置き、売上高は888億2100万円(保険薬局事業売上高)。2021年比1.4%の減収です。医療用医薬品の大手卸売会社で、自社システムを導入した医薬品在庫の最適化や廃棄ロスの削減に力を入れています。運営する主な薬局として「ファーコス薬局」があります。

7位 たんぽぽ薬局株式会社(株式会社トーカイ)

岐阜県岐阜市に本社を置き、売上高は465億6100万円(調剤サービス売上高)。2021年比5.6%の増収です。岐阜・愛知を中心とした中国地方に店舗が多いのが特徴です。親会社のトーカイは病院向けリネンサービスや介護用品レンタル事業などを行っています。

8位 ファーマライズHD株式会社

東京都中野区に本社を構え、売上高は420億3800万円(調剤薬局事業売上高)。2021年比1.2%の減収です。「ファーマライズ薬局」などを全国でチェーン展開しています。その他、化粧品等の物販事業やカルテ・レントゲン・病理標本などの医学資料を保管・管理事業なども手掛けている会社です。

9位 シップヘルスケアHD株式会社

大阪府吹田市に本社を構え、売上高は289億3000万円(調剤薬局事業売上高)。2021年比6.9%の増収です。「日星薬局」などの調剤薬局運営のほかに、医療機関向けコンサルや介護老人ホーム、給食事業、先進医療施設など幅広く展開しています。

10位 株式会社メディカル一光グループ

三重県津市に本社を構え、売上高は227億3100万円(調剤薬局事業売上高)。2021年比3.1%の増収です。「フラワー薬局」をはじめとする、三重県を地盤とした調剤薬局チェーンの運営を主軸とした企業です。

大手調剤薬局の店舗数ランキング

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続いて、店舗数の多い調剤薬局の上位10社(※2022年12月時点)をご紹介します。厚生労働省によると、全薬局総数は60,951店舗(※2022年12月時点)のうち、大手10社合計は全体のおよそ10%である6,030店。大手調剤薬局によるM&A(合併・買収)が加速しているものの、小規模から中規模薬局がまだ大部分を占めるのが現状です。

売上ランキングと同様、2022年3月期の有価証券報告書を基本的に参考にしていますが、一部企業においては企業HPに掲載のお知らせなどを参考としております。最新数値については、各社HPをご覧いただけますと幸いです。

1位 株式会社アインHD

店舗数は全国に1,099店を展開。業界トップを誇る店舗数です。全体の1.8%のシェアになります。

2位 クオールHD株式会社

店舗数は837店を展開。「街ナカ薬局」「駅チカ薬局」としてローソンや東急・小田急内などにも出店し、全体の1.4%を占めます。

3位 総合メディカル株式会社

店舗数は742店、全体の1.2%を占めます。「そうごう薬局」を中心としたグループ薬局を全国に展開しています。

4位 日本調剤株式会社

全国に697店を展開しています。全体のシェアの1.1%を占めます。

5位 株式会社スズケン

店舗数は593店、全体の1.0%を占めます。保険薬局事業を担う3つの子会社があり、北海道から四国地方にかけて店舗を展開しています。

6位 東邦HD株式会社(共創未来グループ)

店舗数は540店舗(連結子会社合計)、全体のシェアの0.9%を占めます。関東地方を中心に、全国に共創未来グループ薬局を展開しています。

7位 I&H株式会社

店舗数は516店、全体の0.8%を占めます。「阪神調剤薬局」や「コトブキ薬局」など関西圏を中心に全国に店舗を展開しています。

8位 株式会社メディカルシステムネットワーク

店舗数は425店、全体のシェアの0.70%を占めます。北海道・関東地方を中心に、全国に店舗を展開しています。

9位 株式会社アイセイ薬局

店舗数は397店、全体の0.70%を占めます。関東圏を中心に、東北から関西地方に店舗を展開しています。

10位 ファーマライズHD株式会社

全国に301店展開し、全体のシェアの0.5%を占めます。

今後の調剤薬局業界

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マイナンバーカードの健康保険証利用や電子お薬手帳の普及拡大に伴い、調剤薬局は患者さまの服薬・健康情報について、多くの電子データを取得できるようになります。オンライン服薬指導の利用者数は年々増加しており、2023年1月からは電子処方箋の本格運用が開始されることからも、今後は薬局業務のICT(情報通信技術)化は必要不可欠です

一方で積極的なICT化の導入は、一定規模の投資が必要となることから、資金調達や人員確保のためのM&A(合併・買収)の流れはこれからも続くと考えられます。

また、厚労省がかかげている『患者のための薬局ビジョン』からも分かるように、「かかりつけ薬局」として患者相談の24時間対応・在宅対応、医療機関をはじめとする関係機関との連携がさらに求められるようになるでしょう。

これから薬剤師に求められるもの

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調剤薬局では、今後ますますオンライン服薬指導の機会や、他機関と連携して患者さまの治療に参画する機会が増えていきます。対面だけでなくオンラインでも患者さまや他職種の方と信頼関係を築くことのできるコミュニケーション能力が必要となっていくでしょう。

また電子お薬手帳の普及やかかりつけ薬局の推進により、医療用医薬品だけでなく、市販薬やサプリメントなども含めた総合的なアドバイスができる能力や、「外来がん治療専門薬剤師」などの専門性をもった薬剤師の市場価値は高まると考えられます。

さらにかかりつけ薬剤師として24時間対応となるケースもあることから、勤務体系も柔軟に調整できるとより重宝される存在となりうるでしょう。

薬剤師の転職には、業界専門コンサルタントの活用がおすすめ

この記事では、薬剤師の最も多い就職先である大手調剤薬局の売上高や店舗数についてランキング形式でご紹介しました。

近年では新型コロナウイルス感染症の蔓延を皮切りに、薬剤師転職における企業の採用ハードルは上がりつつあります。とくに大手調剤薬局では、求職者と企業が描く薬剤師像がマッチしているかどうかが合否を分けるカギになるでしょう。

今回改めて比較することで、同じ調剤薬局を運営する企業でも展開数の多いエリアや経営方針、人材育成制度などの特色が異なるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。転職を検討する際は、業界専門のコンサルタントを上手に活用し、ご自身の希望条件やキャリアビジョンに合う素敵な職場を見つけてくださいね。

▼【ドラッグストア版】業界を知るためには幅広い情報収集がおすすめ
【2022年最新】ドラッグストア大手の店舗数と売上ランキング

ファルマラボ編集部

「業界ニュース」「薬剤師QUIZ」 「全国の薬局紹介」 「転職成功のノウハウ」「薬剤師あるあるマンガ」「管理栄養士監修レシピ」など多様な情報を発信することで、薬剤師・薬学生を応援しております。ぜひ、定期的にチェックして、情報収集にお役立てください。

記事掲載日: 2023/01/23

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