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2019.02.28

「学校薬剤師」ってどんな仕事?役割や仕事内容、必須スキルなどまとめ【薬剤師のお仕事ガイド】

「学校薬剤師」ってどんな仕事?役割や仕事内容、必須スキルなどまとめ【薬剤師のお仕事ガイド】

さまざまな職場で活躍している薬剤師ですが、大学以外の学校で働く「学校薬剤師」も、子どもたちの快適な教育環境を守るために大きな役割を担っています。薬局や病院での薬剤師の経験を生かして、学校薬剤師として働きたいと考える方も多いものですが、学校薬剤師に関する情報は十分とはいえません。

そこでこの記事では、【学校薬剤師の仕事内容や役割、報酬、なるために必要なこと】を解説していきます。

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学校薬剤師の役割



学校薬剤師制度があるのは、世界中でも日本に限られることが知られています。1930(昭和5)年に、北海道のある小学校で風邪をひいて体調不良を訴えた児童に対して、「アスピリン」と誤って「塩化第二水銀(毒薬)」を服用させてしまい、児童は亡くなってしまうという事故がおこりました。

この事故を契機に、いろいろな薬を保管している学校において医薬品の専門家が必要であるという声が高まり、翌年にその自治体が学校薬剤師を委嘱しました。この流れは全国にひろがり、現在では大学以外の学校には学校薬剤師を置かなくてはならないことが、学校保健安全法 第23条によって規定されています。

学校薬剤師の役割は、薬品類の使用や保管等にとどまらず、健康相談や保健指導、学校環境衛生(採光、照明、換気など)の維持管理に関する指導・助言者としての職務などが義務づけられています。学校保健に携わり、子どもたちの快適な教育環境を守ることが主な役割です。

また、現代の社会において医薬品は身近なものになりつつありますが、正しい知識を持たずに医薬品を使用すると、薬物乱用による被害が起こってしまいかねません。薬物乱用防止などのくすり教育についても、学校薬剤師が力を発揮することが期待されています。

また、学校薬剤師の報酬についてはあまり知られていませんが、任命権者である学校の設置者により、予算の範囲内で定めることが通例となっています。非常勤の嘱託員として任命されることが多く、本業は別にあることから報酬は決して高いとはいえません。地域の子どもたちが心身ともに健やかに育つことを願う、ボランティアの精神によって支えられている仕事であると考えられているのです。

参考までに、平成4年度の「我が国の文教施策」中には、当時の学校薬剤師の平均報酬額が11万1千円であったことが示されています。

仕事内容は「学校における保健・安全管理」



学校薬剤師とは、医薬品の専門家である薬剤師が薬事衛生をつかさどる専門職としての立場から、学校における保健・安全管理について実践および指導、助言を行うために設けられた制度です。学校薬剤師の仕事内容は、「学校保健安全法執行規則」において示されています。

学校保健計画及び学校保健安全計画の立案への参与

学校保健安全委員会への参加することにより、立案を行っていきます。薬剤師としての専門的知識を発揮することが期待されています。

学校環境衛生基準に基づく環境衛生検査、学校環境衛生の維持及び改善に関する指導・助言

学校全体の環境衛生について検査を行い、問題がある場合において指導や助言を行います。

検査内容は幅広く、教室等の環境(採光及び照明、騒音、温度、湿度、換気など)、水質及び施設・設備(飲料水、水泳プールなど)、排水の管理(雨水の排水溝など)、備品の管理(黒板面の色彩、机・いすの高さなど)、学校の清潔(大掃除、便所の管理、ごみ処理など)、日常点検等の実施状況の確認、感染症・食中毒の予防などが挙げられます。

「健康相談」及び「保健指導」への従事、児童生徒等の健康教育 に関する協力

こちらは、医薬品の適正使用教育に関する啓発活動、薬物乱用防止活動、ドーピング防止活動、飲酒や喫煙、受動喫煙の影響に関する啓発活動、薬害を学ぶための教育に関する指導などが挙げられます。保健教師や学校医が担当することもありますが、薬剤師が直接指導を行うこともあります。

学校で保有する医薬品、薬品及び毒劇物等の管理

学校には、保健室の医薬品や理科室の薬品、プール水の消毒薬、園芸用薬品など、さまざまな薬品が保管されています。これらの使用上・保管上の指導や助言を行うことも、学校薬剤師の重要な業務です。

学校給食衛生管理基準に基づく給食衛生の検査と指導・助言

学校給食では一度に大量の食事を調理して提供が行われるため、万が一にも食中毒などをおこしてはなりません。給食における衛生管理体制をみきわめ、適切な措置を講じることも学校薬剤師の役割の一つです。

マネジメントや教育のスキルも必要



「学校薬剤師」と聞くと、特別な資格が必要であると思われがちですが、実は学校薬剤師になるための資格というものはありません。薬学部を卒業し、国家試験に合格して「薬剤師免許」を取得すれば、だれでも学校薬剤師となることが可能です。

しかし、学校薬剤師は、薬剤師としての職能をいかんなく発揮して学校保健活動に従事することが期待されているため、教育に対する正しい理解やふさわしい人間性を持つことが求められています。職務に必要な知識の研鑚のみならず、社会人としての研鑽を積まなければならないため、薬剤師免許を取得してすぐに学校薬剤師となることは現実的ではありません。

まずは薬剤師としての経験を積み、医薬品や疾患、公衆衛生の知識を身につけましょう。その上で、マネジメントのスキルや教育、育成のスキルを身につけていくことが、学校薬剤師として働くことの近道です。

保健教育への積極的な参画が求められる



学校薬剤師の現状にはまだまだ課題も多く、十分に職能を発揮できているとは言い切れません。

その原因の一つに、学校薬剤師という職種の役割の見えづらさや地域における格差、兼務による職務内容の希薄化が挙げられます。学校薬剤師個人レベルの活動では限界が生じてきているため、今後の改善が期待されています。また、学校薬剤師だけでなく、教育委員会や学校の設置者などの学校側の意識が低いことも問題点の一つです。

これからの学校薬剤師は、薬剤師会や地域保健活動の双方向での情報交換を通じて、積極的に保健教育に参画していかなくてはなりません。高齢化社会の到来に向けて、小学校・中学校・高等学校における医薬品教育は、全国民が受ける医薬品適正使用教育の第一歩です。薬剤師本来の職能を学校保健活動の中で発揮することによって、国民の健康な生活に貢献することが期待されているのです。

子どもたちの安全を守る、学校薬剤師

学校薬剤師の仕事内容や役割などについて解説していきました。

文部科学省が行った平成26年度「学校基本調査」によると、小学校・中学校・高等学校数は、それぞれ20,852校・10,557校・4,963校であり、学校薬剤師数はそれぞれ20,531名・10,128名・4,664名と報告されています。ほぼ全ての学校に薬剤師が置かれている一方で、その仕事内容はまだまだ知られていないのが現状です。

学校薬剤師として働くことに興味があれば、まずはまわりの学校薬剤師の活動に目を向けてみることがおすすめです。
記事掲載日: 2019/02/28

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