業界動向
  • 公開日:2023.02.14

HPKIカード(薬剤師資格証)とは?申請から交付まで

HPKIカード(薬剤師資格証)とは?申請から交付まで

HPKIカード(薬剤師資格証)とは、電子処方箋に必要な電子署名・認証機能を持つカードのこと。申請方法から交付までの流れを解説します。

HPKIカード(薬剤師資格証)について知ろう

2023年1月26日より、医療ICT化の一環として薬局での電子処方箋の運用が開始されました。この電子処方箋への署名に必要になるのが「HPKIカード(薬剤師資格証)」。HPKIカード(薬剤師資格証)の機能と導入の理由について確認しておきましょう。

HPKIカード(薬剤師資格証)とは

HPKIカードとは、医療分野の国家資格や管理者資格を証明するための電子認証機能を持ったカードのこと。薬剤師においては、日本薬剤師会認証局がHPKIカード(薬剤師資格証)を発行しており、すべての薬剤師が取得申請できます。

HPKIとは、Healthcare Public Key Infrastructure(保険医療福祉分野における公開鍵基盤)の頭文字を取ったもの。医療のICT化において医療情報を安全に取り扱うために必要な電子署名・認証の基盤で、厚生労働省が基盤設置要件を定めています。

HPKIカード(薬剤師資格証)の記載内容

HPKIカード(薬剤師資格証)に記載されるのは以下の内容です。


・氏名
・生年月日
・顔写真
・薬剤師名簿登録番号
・カードID
・資格証発行日
・資格証有効期限
・薬剤師であることを証明するという文言


HPKIカードには、薬剤師免許証の記載事項である氏名・生年月日・薬剤師名簿登録番号に加え、顔写真と資格証の発行日・有効期限が記載されます。HPKIカードの有効期限は発行日より5回目の誕生日までとなっており、期限前に更新手続きが必要です。

HPKIカード(薬剤師資格証)でできること

HPKIカード(薬剤師資格証)には、ICチップによる認証機能と券面による資格提示機能があります。

HPKIカードのICチップには電子証明書が格納されており、カードリーダーで読み取ることで認証および電子署名が可能です。薬剤師であれば、従来の処方箋に対する記名押印、または署名の代わりとして、電子処方箋に署名を行うことができます。現状、電子処方箋の署名はHPKIによる認証のみのため、HPKIカードを発行していないと署名ができません。

このほか、地域医療連携ネットワークへのログインやネットワーク内で利用する医療情報への電子署名、薬剤師として押印している書類の電子的発行なども可能になります。

HPKIカードは実券ではありますが、薬剤師免許と比べて携帯しやすく持ち歩きも可能。免許を持ち出せない時であっても薬剤師有資格者であることを提示できます。ただし、HPKIカードの発行元は国ではないため、現時点では公的な身分証明書としては使用できません。

なお、HPKIカードの利便性を高めるため「HPKIセカンド電子証明書」の提供も始まっています。HPKIカードと生体認証機能付きスマートフォンを紐づけておくことで、カードがなくても電子署名が可能な仕組みです。

HPKIカード(薬剤師資格証)導入の背景

HPKIカード(薬剤師資格証)は、医療ICT化のひとつである電子処方箋の運用に向けて導入が進められてきたものです。

当初は電子証明書のみのシステムを想定していましたが、医師が電子証明書と資格証を一体化した「医師資格証」を開始した流れを受けて、現在の資格証一体型となりました。

現在の薬局はICT化が進んでいるうえ、地域医療ネットワークとしてかかりつけ薬局・薬剤師の役割も期待されています。そして、かかりつけ薬局・薬剤師の役割のなかでも重要な位置を占めるのが、継続的な薬剤管理。電子処方箋や電子処方箋管理システムにより服薬情報が一元化できるようになれば、重複処方を防ぎより質の高い薬剤管理が可能になります。患者さま側からすると、医療機関や薬局からサービスを受けやすくなるというメリットもあるでしょう。

2023年4月より健康保険証の資格確認をオンラインで行う「オンライン資格確認」が原則義務化され、電子処方箋の導入はさらに進むでしょう。電子処方箋が広く利用されるようになるためには、薬局側の受け入れ体制も整えなくてはなりません。そのためにも、電子署名に必要なHPKIカードの全国普及が重要なポイントなのです。

HPKIカード(薬剤師資格証)の申請・発行について知ろう

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HPKIカード(薬剤師資格証)の申請・発行は、電子処方箋の運用開始・普及に向けて段階的に進められてきました。HPKIカード(薬剤師資格証)の発行計画や発行・交付までの流れ、申請方法について解説します。

HPKIカード(薬剤師資格証)の発行計画

日本薬剤師会では、HPKIカード(薬剤師資格証)について電子処方箋の運用開始時にできるだけ多くの薬局で受付ができるよう、計画的に発行を進めてきました。

現在は管理薬剤師への発行を最優先とし、2023年3月までにすべての薬局で管理薬剤師を含めた1~2名が資格証を利用できるようになる計画が立てられており、2023年度中には薬局に従事する多くの薬剤師が利用できることが目標とされています。

HPKIの補助金

HPKIカードの取得費用は、2022年10月28日の閣議決定「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」に基づく補助金の対象です。補助額は5,500円で、補助事業対象期間である2023年3月31日までの申請が必要になります。補助金は発行費用から差し引かれる形での支給です。

HPKI補助金の対象者は、電子処方箋の対応に必要なオンライン資格確認システムを導入済、または顔写真付きカードリーダーの申込が完了している薬局に勤務している薬剤師すべて。

日本薬剤師会認証局の発行計画では、まず管理薬剤師および薬局で2人目の薬剤師への発行が優先されていましたが、2022年12月27日より全ての薬剤師が発行申請対象となり、郵送申請の受付が開始されています。

申請~交付までの流れ

HPKIカード(薬剤師資格証)の申請先は、日本薬剤師会認証局になります。

まず、日本薬剤師会認証局のHPに設けられている「申請書作成支援サービス」にアクセス。申請書の入力・作成が終わったらPDFファイルをダウンロードして、署名したうえで必要書類とともに申請に記載されている書類送付窓口宛てに郵送します。重要な個人情報を含む書類のため、簡易書留などの追跡可能な手段で送付しましょう。

書類到着後は審査が行われ、申請内容に問題がなければ申請書作成時に使用したメールアドレスに発行費用の支払い案内が届きます。支払い方法は、クレジットカードもしくはコンビニエンスストア払いの2つから選べます。

発行されたHPKIカードは、申請時に受け取り場所として指定した薬剤師会宛てに送付されます。カードが受け取れるようになったら電話やメールなどで連絡が届くので、指定日時に顔写真付きの本人確認書類を持って受け取りに向かいましょう。なりすましなどが無いように対面による受け取りのみになるため、郵送での受け取りや代理人による受け取りは不可となっています。

発行に必要な書類と発行費用は以下のとおり


・発行申請書
・住民票(発行日から6ヶ月以内、マイナンバーが記載されていないもの)
・写真付き本人確認書類のコピー(有効期限内のもの)
・薬剤師免許証のコピー
・顔写真(パスポート写真の基準を満たすものを申請書に貼付)


「旧姓を併記したい」など、申請者の状況によっては追加で戸籍謄(抄)本などの書類が必要になることがあります。詳しくは申請書作成支援サービスおよび申請書に表示されるので、漏れがないように準備・確認をしてください。

HPKIカード(薬剤師資格証)の発行費用は26,400円(税込)。この金額には、有効期間中の運用費用と発行にかかる費用が含まれています。

なお、日本薬剤師会会員の場合は、割引価格の19,800円(税込)で発行可能。HPKI補助金対象者の申し込みの場合には、補助金分を差し引いた額が請求されます。

更新や紛失・記載内容の変更などで再発行が必要な際には、発行と同額の費用が必要です。

執筆者:石川 美和子さん(医療系ライター)

1985年に薬剤師資格取得後、約40年近くキャリアを重ねてきたベテラン薬剤師。

大学病院・調剤薬局・国立病院にそれぞれ約2年ずつ勤務したのち、配偶者の転勤に伴って各地の調剤薬局やドラッグストアで経験を積み、卸の管理薬剤師や在宅医療も経験している。現在はその経験と知識を活かして医療系ライターとしても活躍中。

記事掲載日: 2023/02/14

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