業界動向
  • 公開日:2019.04.17

薬局アワード主催・竹中孝行さんが語る、薬剤師がより活躍していくためにできること

薬局アワード主催・竹中孝行さんが語る、薬剤師がより活躍していくためにできること

全国には、市民向けの健康ワークショップの開催、簡易的な血液検査の実施など、独自の取り組みをしている薬局が多くあります。そういった工夫を世の中の多くの方に広めたいという思いから生まれたイベントが「みんなで選ぶ薬局アワード」です。

今後AIの発展や高齢化が進むにつれて、薬局・そして薬剤師は地域医療を支えるなどさらに幅広い役割を求められます。そういった流れがある中で、すでに薬局の様々な取り組みにスポットを当てて世の中に広めようと行動している方の考えを知ることは、今後のキャリアを考える上で新しい気づきがあるのではないでしょうか?

今回は「みんなで選ぶ薬局アワード」の主催者である【一般社団法人薬局支援協会の代表・竹中孝行さん】に、薬剤師がより活躍していくためにできることについてお話をお聞きしました。

新着の薬剤師求人特

集

「薬局の良さを多くの人に広めたい」という思いから開催された薬局アワード

「みんなで選ぶ薬局アワード」は具体的にどのような内容のイベントでしょうか?

事前に独自の取り組みをしている薬局を全国から募集し、2回の選考を突破した6組の薬局が当日会場にて発表を行います。当日は、審査員と会場に足を運んでくださった一般の方々に行きたいと思った薬局に投票をしていただき、票が集まった薬局の表彰を行います。

第1回では、患者さまとドリームマップを作成するというワークショップを行うヒルマ薬局さんが最優秀賞を獲得しました。自分の夢をイメージで表すことで、治療の目的が明確になり、健康になりたいという意識が患者さまに芽生えるんです。治療の成果も上がれば患者さまにも喜んでもらえますし、薬剤師としても嬉しいですよね。

患者さまだけでなくヒルマ薬局のスタッフの皆さんのドリームマップも薬局内の壁に貼ってあり、薬剤師も一緒になって夢を掲げるという素敵な取り組みが表彰されました。

患者さまの夢と向き合うあたたかい取り組みが第1回の最優秀賞に選ばれたのですね。イベントに一般の方も参加できるのはなぜでしょうか?

薬局を利用するのは薬剤師ではなく患者さまです。現状、「どこの薬局も一緒なのでは?」と思われている方が多いですね。一般の方に薬局の様々な取り組みをもっと知っていただき、幅広く利用していただくことを第一に考えています。

薬局や薬剤師の方に対しては、他の薬局の良い取り組みを知ることで刺激を受け、積極的に取り入れていって欲しいです。薬局同士お互いに高め合っていくことで、薬剤師一人ひとりの意識も向上しますよね。

今後も薬局アワードを通して、薬局や薬剤師の様々な役割をもっと世間に広めて行きたいですし、それが薬剤師の輝ける場所を作ることに繋がると考えています。

薬局アワードは薬剤師の意識向上だけでなく、薬局と一般の方を繋げる働きもしているのですね。2019年5月に開催される第3回は、どのような思いで企画されたのでしょうか?

第3回では、薬剤師や一般の方はもちろん、より多くの薬学生にも参加して欲しいと思っており、日本薬学生連盟の代表の方を審査員として招いたり、大学内にポスターを置いたりという取り組みをしているところです。

自分自身、学生時代に進路に悩み、「なんで薬剤師になるんだろう」と思いながら、いつの間にか就職活動をしていました。その経験もあり、薬学生の方々には「先入観にとらわれない自分の生き方」を見つけて欲しいんです。

頑張っている薬局の素晴らしい取り組みを発信することで、将来に不安を抱える学生に対しても夢を提供できればと思っています。

変化する薬剤師の仕事。より幅広い領域での活躍が求められるように

薬剤師の将来について、AIの発展によって仕事がなくなるのではないか?と考える方も多いようですが、どのようにお考えでしょうか?

AIの技術が発展していく一方で、今後は薬剤師の活躍の場も増え、働き方も多様性が求められていくと思います。薬剤師がなくならない理由としては大きく2つありますね。

1つ目は、AIが進化したとしても人間を超えられるものではないからです。そのため誰でもできる単純作業はAIを大いに活用し、ヒアリングや薬の説明など共感を必要とする人間にしかできない仕事は薬剤師が今後も行うことになるでしょう。会話はもちろん、話し方や身振り手振りなどから患者さまの状況を理解することは、人と人のコミュニケーションによってできるものであり、現状のAIにはできません。

2つ目は、急激に高齢化が進み、高齢者数が増えて人口減少に転ずる社会の中で、薬剤師が地域医療を支えることが求められるからです。今後は75歳以上の方が圧倒的に増加するなどさらなる高齢化の進展によって、今それに対応する医療機関・医師の数、介護事業者数が確実に不足します。薬局や薬剤師が知恵を振り絞り、地域における医療・介護を支えなければならない状況ができ上がっていくことから、薬剤師の仕事はなくならないでしょう。

今後はより幅広い領域で活躍することが薬剤師に求められるんですね。普段の業務スキルに加えて、資格の取得や副業などによって今から持っておいた方が良いスキルはありますか?

専門薬剤師などの資格はスペシャリストになることやキャリアアップに繋がるという点で、取得しておいた方が良いと言えます。重要なのは資格をどう活用していくかまで考えること。ただ持っているだけでは活躍することができません。

また副業で得たことは、多様化する薬剤師の仕事に活かせると思います。例えば私が務める薬局では、スタンプカードを活用するなどの集客の考え方やお客さんを喜ばせる工夫を他業種の視点を取り入れています。

今後の薬局においては、オールマイティな薬剤師が求められてきます。調剤の仕事だけではなく、OTCの相談や在宅業務、地域イベントの参加など、様々な人とコミュニケーションを通して仕事をするようになる機会が多くなるでしょう。

もちろん資格や副業などで直接的に得られるスキルも大事ですが、特に必要となるのはやはりコミュニケーション能力ではないでしょうか。

薬剤師としてより活躍していくためには、そういった視野の広さも必要なのでしょうか?

そうですね。今の日本の高齢化、人口減少のスピードは世界でも類がなく、今までのやり方では通用しない社会になっていきます。そのため、固定観念にとらわれずにイノベーションを生み出せる柔らかい頭が必要になります。変化に対応する力を身につけるには、視野を広げていくことが必要だと思います。

例えば、様々な活動をしている薬剤師に会ったり、薬剤師会が開催するイベントなどに参加してみたりすると、新しい発見があるかもしれませんね。

若手の方だからこそできる柔軟な考え方を薬剤師の仕事にどんどん取り入れていって欲しいですし、そのためにも主体的に行動して欲しいです。

とにかく主体的に行動し、視野を広げていくことが大切!

最後に、今後のキャリアを悩む薬剤師に向けて一言お願いします。

薬剤師としての活躍の場がさらに増え、働き方も多様性が求められるようになると、ご自身のキャリアに迷う方も多くいらっしゃると思います。

やりたいことがわからないという方は、「こうでなければいけない」という固定概念があることも多いので、一旦白紙に戻して自分のやりたいことを全部書き出してみてください。子供の頃から振り返ると、自分の本質が見えて、自分の進みたい方向にたどり着けるのではないでしょうか。

そして何より主体的に行動し、視野を広げることが大事です。少しでも何かをしてみたいという気持ちがあるのなら、自分が目指したい人や同世代で活躍している人と会うと、良い刺激を受けると思います。

夢を持って活躍している薬剤師に話を聞きたいという方はぜひ「みんなで選ぶ薬局アワード」にいらしてくださいね。

  • 竹中孝行(たけなかたかゆき)さん

一般社団法人薬局支援協会・代表理事。株式会社バンブー代表取締役。外資系製薬会社にMRとして勤務後、調剤薬局勤務を経て、2012年に株式会社バンブー設立。2016年には一般社団法人薬局支援協会を設立し、2017年4月に第1回「みんなで選ぶ薬局アワード」開催。薬局や美容などのメディア事業を運営する他、WEB制作やコラム執筆なども行う。

記事掲載日: 2019/04/17

あわせて読まれている記事

認知症の新薬「レカネマブ」承認!効果効能、副作用についても解説

認知症の新薬「レカネマブ」承認!効果効能、副作用についても解説

業界研究
2023.12.20

日本のエーザイ株式会社と、米国のバイオジェン社が共同で開発した認知症の新薬である「レカネマブ」。以前から認知症の治療に有効性が期待できる薬として注目を浴びていました。2023年9月25日に厚生労働省に承認されました。「レカネマブ」は、認知症の中でも最も患者さまが多い、アルツハイマー病の原因物質に直接作用する効果に関心が集まる一方、薬価の面では社会保険料の負担が増える点も危惧されています。今回は「レカネマブ」について効果効能や副作用、また導入に向けた取り扱いのポイントも合わせて解説していきます。

認知症の新薬「レカネマブ」承認!効果効能、副作用についても解説

認知症の新薬「レカネマブ」承認!効果効能、副作用についても解説

業界研究
2023.12.20

日本のエーザイ株式会社と、米国のバイオジェン社が共同で開発した認知症の新薬である「レカネマブ」。以前から認知症の治療に有効性が期待できる薬として注目を浴びていました。2023年9月25日に厚生労働省に承認されました。「レカネマブ」は、認知症の中でも最も患者さまが多い、アルツハイマー病の原因物質に直接作用する効果に関心が集まる一方、薬価の面では社会保険料の負担が増える点も危惧されています。今回は「レカネマブ」について効果効能や副作用、また導入に向けた取り扱いのポイントも合わせて解説していきます。