業界動向
2019.05.08

TDMって何?意味や薬剤師の仕事内容を徹底解説

TDMって何?意味や薬剤師の仕事内容を徹底解説

『TDM』は薬物血中濃度モニタリングのことを表しており、薬を安心安全に服用するために必要な医療技術の一つです。現在の薬学部教育においても、薬物動態学のカリキュラムが取り入れられており、添付文書にも「薬物動態」の項目が設けられています。

近年では、薬物治療においてTDMを取り入れる病院が増えており、TDMについての知識や実践経験があることは薬剤師のスキルにおいて重要性を増しつつあります。

そこで今回は、「そもそもTDMとは何か」「薬剤師としてどのように仕事に取り入れることができるのか」などを解説していきます。

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そもそも『TDM』とは何なのか?

点滴を受ける患者のイメージ

薬物投与後にあらわれる薬効には個人差があり、同じ用量の薬物であっても、血液中の薬物濃度は人によって異なることがわかっています。安全域や有効血中濃度域が狭い薬物においては、これらの個人差が致命的な副作用をもたらすこともあるので注意が必要です。

そこで、患者さま一人ひとりの薬物血中濃度を測定し、薬効や副作用を正確に把握した上で用法・用量を調整する方法が考案されました。これが、『TDM』と呼ばれる医療技術です。

TDMとはTherapeutic Drug Monitoringの略で、「薬物血中濃度モニタリング」のことを表しています。それぞれの薬物の有効治療濃度域を参考に、測定した薬物血中濃度(トラフ濃度やピーク濃度)を用いて薬効や副作用の評価を行い、患者さまごとの適切な投与量を求めます。

TDMを行うことが推奨される薬剤として、有効血中濃度域が狭い薬剤があります。また、半減期が短い薬剤においても血中濃度が大きく変動する可能性があるため、TDMが有用とされています。具体的には、ジゴキシン(強心配糖体製剤)やテオフィリン(気管支拡張剤)、バルプロ酸ナトリウム(抗てんかん剤)、炭酸リチウム(精神神経系用剤)、バンコマイシン(抗生物質)などです。

TDMにおける薬剤師の役割

TDMにおける薬剤師の役割のイメージ

薬剤師が職能を発揮できる業務の一つに、TDMがあげられます。治療効果と副作用発現が血中濃度と相関している薬剤では、TDMを行うことで治療効果を高めることが期待されています。

薬剤師はTDMにおける中心的な役割を担い、投与設計や検査のオーダー、検査値の報告を行います。検査値以外にも、状況に応じて発熱や尿量などの身体所見や投与状況の確認などをおこないながら、多職種が参加するカンファレンスで治療方針を共有し、総合的な薬物投与計画をサポートしていきます。

しかし、現在のところTDMが積極的に運用されている病院は限られており、運用されていたとしても一部の薬剤にとどまることも。その理由としては、人手不足の問題や保険診療上の問題があります。

病院薬剤師の業務は、調剤や院内製剤など基本的な業務に加えて、病棟での服薬指導や外来化学療法、無菌調剤、投与設計、医薬品管理、DI業務など。その範囲は拡大の一途をたどっています。TDMの重要性は認知されながらも、限られた人員ですべての医薬品をカバーすることは難しいといった現状があるのです。

また、薬剤師以外のコメディカルにおける、TDMに対する認知度や理解度がまだまだ低いことも理由の一つとして考えられます。

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TDMに必要なスキルや資格とは?

注射器のイメージ

TDM業務を行うにあたって、「薬剤師免許」以外に特別に必要とされる資格はありません。薬学部を卒業し国家資格に合格した方であれば、TDMを含めた薬剤師業務全般に従事することができます。

さらに、高度なTDMに携わりたいと考えるのならば、「抗菌化学療法認定薬剤師」や「感染制御認定薬剤師」などの資格を取得することをおすすめします。扱う薬物に対する知識を高めたり、必要となる技術を磨いたりすることで、医師や臨床検査技師などの周囲のコメディカルから信頼を獲得できるでしょう。

抗菌化学療法認定薬剤師」は、公益社団法人 日本化学療法学会によって認定される専門薬剤師資格です。抗菌化学療法において十分な知識と技能をもつ薬剤師として、チーム医療のなかで感染症の種類や病態に応じて、抗菌薬の選択や使用方法における提案を行います。単位の履修や試験の合格に加え、薬剤師として抗菌化学療法に5年以上携わり、TDM・薬剤管理指導・DIなどの業務を通じて感染症患者の治療に自ら参加した15例以上の症例を報告する必要があります。

感染制御認定薬剤師」は、一般社団法人 日本病院薬剤師会によって認定される専門薬剤師資格です。感染症治療において十分な知識と技能をもつ薬剤師として、医療現場の感染発生を早期発見し、院内の感染制御を通じて患者さまの安心・安全な治療に貢献します。

また、感染症患者に対して適切な抗生物質を選択し、副作用が最小限になるような管理を行うことも重要な業務です。単位の履修や試験の合格に加え、薬剤師として5年以上の経験や、施設内の感染対策委員会または院内感染対策チームの一員として3年以上の経験、感染制御に貢献した20例以上の症例を報告する必要があります。

TDMを使った事例

薬のイメージ

現在では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染症が問題となっており、MRSAの蔓延化および抗MRSA薬に対する耐性菌の出現が危惧されています。TDMが活用される事例の一つに、これらのMRSAを対象とした抗菌薬治療があります。

MRSA感染症の治療には、本邦では主にバンコマイシンやテイコプラニン、アルベカシンなどが用いられています。これらは薬物動態および薬力学的特性における個人差が大きいことから、治療用量の決定や副作用の発現を防止するために、TDMを実施することが推奨されています。

例えば、バンコマイシンではMRSAの最小発育阻止濃度(MIC)が考慮され、最低血中濃度を5μg/mL以上に保つことが求められています。その一方で、最低血中濃度が15~20μg/mL以上になると腎機能障害などの副作用が現れやすくなるため、一般的には5~15μg/mLが有効血中濃度とされています。患者さま個々における薬物の体内動態を考慮した投与設計に向けて、TDMを実施することで治療の個別化を行うことが求められています。

実際にTDMを実施することにより、未実施の症例と比べてバンコマイシンの投与日数が減少した例や、副作用が有意に減少した例が報告されています。投与初期に1回投与量や1日投与回数を増やす、負荷投与(ローディングドーズ)を実施することにより、早期に治療効果が得られることも期待されています。

そのほかにも、ジゴキシンやリドカイン、ジソピラミドなどの抗不整脈においては、血中濃度が低すぎると不整脈のコントロールが不十分になる一方で、血中濃度が高くなりすぎると致死的な不整脈や心停止を招くおそれがあることからTDMが実施され、高い効果が報告されています。タクロリムスやシクロスポリンなどの免疫抑制剤においても、治療域が狭いことから、TDMの実施により副作用を減少させたという結果が報告されています。

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複雑化する薬物療法

この記事では、今後よりいっそう需要が高まると考えられている、TDMについて解説していきました。

より高度な薬物が開発され、薬物療法が複雑化する中で、TDMは注目される医療技術の一つです。薬剤師がより積極的にTDMに関与する施設も増えており、病院薬剤師の重要な業務の一つとして認められるケースも増えています。

医療費抑制が国の最重要課題である中、TDMを評価する「特定薬剤治療管理料1」が拡充されていることも、ポイントですね。TDMの知識や技術を身につけて、患者さまのQOL向上にむけて積極的に取り組んでいきましょう。

記事掲載日: 2019/05/08

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