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  • 公開日:2016.08.12

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」から考える高齢者医療

薬剤師として高齢者医療の現場で活用したい「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」について見ていきます。高齢の患者さまにお薬を渡すときの注意点をおさらいしましょう。

高齢者医療では副作用・取捨選択に気をつけよう

高齢者医療の現場で薬剤師が注意したいのは、お薬の安易な投与・過剰な処方の2点です。

安易な投与とは、高齢者に使用した時の副作用を正しく理解しないままにお薬を渡してしまうことです。 すでに飲んでいる薬との飲み合わせ持病によって、重大な副作用が出ることがあります。 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」に書かれている薬の種類を確認して、規定フローを通して判断する必要があります。

過剰な処方については、目に見えた効果がないのに薬を飲み続けている時に問題となります。 最小限の使用でいいようにお薬の種類を確認して、取捨選択を行うことが、薬剤師の仕事となります。

慎重な投与を要する薬を把握しよう

高齢者は、たくさんの持病を抱えて、複数のお薬を飲んでいることがあります。

内臓系臓器の機能低下が懸念される状況で、多剤併用・長期服用に際する副作用を考慮しておかないと危険です。 副作用が重くなり入院しなくてはいけない状況に陥ることもあり、お薬を出す前の確認作業が肝心と言えます。

とは言え、ただの数合わせのためにお薬を減らすのは論外であり、効能とリスクを考慮したうえで総合的な判断が必要となります。 そこで活用したいのが、高齢者の安全な薬物療法ガイドラインの「特に慎重な投与を必要とする薬物のリスト」です。 それぞれの薬で懸念される副作用対策について詳しく書いてあるので、今すぐに活用できます。

その他にも服薬管理能力の低下についてや処方の工夫も掲載されているので、どのようにお薬を渡せばいいのかが分かります。 お薬を朝・昼・晩に分けて一包化するなど飲み忘れを防ぐための工夫も満載で、日常業務に応用していくことができます。

特に慎重な投与を要する薬物を使用するには

特に慎重な投与を要する薬物としてあげられているものを見ると、これまで広く使用してきた薬がたくさんあります。

たとえば、抗精神病薬・睡眠薬・抗うつ薬・抗血栓薬・利尿薬の中にも、重大な副作用のリスクがあるとされる薬が含まれています。

該当する薬の指示が出ていたら、まずは薬物療法以外の選択肢を考えます。 代替案を試してみて効果が出なかった、もしくは代替案がない場合には、もう一度必要性と副作用を見直し、リスクをとってまで服用させる意味があるかを検討しましょう。

やはり必要と判断した場合は処方へと進みますが、患者さまや家族に対して有効性と副作用を説明し同意を得ます。 ここまでしてはじめてその薬を、推奨される使用法の範囲内で利用できるようになります。

詳しくは、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」内のフローチャートで確認しましょう。 リストとフローチャートを合わせて参照すると、より理解が深まります。 一通り目を通して、大まかな流れを把握しましょう。

取捨選択で最小限の投薬を意識しよう

高齢者医療の薬物療法を進めるにあたって大前提となるのが、最小限の投薬という考え方です。 思うような効果が見られないのに飲み続けている薬を整理して、本当に必要な薬だけでケアを進める方法です。

服薬管理の機会に薬の種類を確認して、取捨選択を進めることも薬剤師の仕事になってきます。 いくつものお薬を飲み続けるのは、患者さまにとっても辛いことで、お薬の量が減れば随分負担が軽くなります。 生活の質を向上させ、より快適な暮らしを応援する、高齢者医療のあるべき姿と言えるでしょう。

常に最小限の投薬を意識していれば、安全で効率的なケアに近づきます。 高齢者医療費の増加が懸念される状況が深刻になっている今、国家としても応援しているあり方です。 薬剤師が主体的に提案をし、より良い高齢者薬物療法を実現するために活用できるバイブルが「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」と言えるでしょう。

まとめ〜「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」から考える高齢者医療

1.高齢者医療では副作用・取捨選択に気をつけよう
高齢者医療の現場で薬剤師が注意すべきことは、お薬の安易な投与と過剰な処方です。 副作用や飲み合わせに注意して、最小限のお薬でケアが進むように調整しましょう。
2.慎重な投与を要する薬を把握しよう
「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」には、高齢者に使用したときに重大な副作用のリスクのある薬がまとめてあります。 随時リストを確認して、安全な処方を意識しましょう。
3.特に慎重な投与を要する薬物を使用するには
特に慎重な投与が必要とされるお薬を使う時は、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」内のフローチャートを活用して判断します。 ガイドラインのリストとフローチャートを合わせて確認し、理解を深めておきましょう。
4.取捨選択で最小限の投薬を意識しよう
高齢者医療を実践するにあたって最小限の投与を意識すると、患者さまの負担を軽減できます。 すでに飲んでいる薬で効果が見られないものに対しては、取捨選択を進めましょう。 常に最小限の投薬を意識していれば、安全で効率的なケアに近づきます。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2016/08/12

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