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  • 公開日:2024.03.07

腎機能の基準値の見方!検査の数値によって疑われる病気とは?

腎機能の基準値の見方!検査の数値によって疑われる病気とは?

薬の中には腎機能に影響を与えるものが多くあり、薬剤師はその点を留意した服薬指導をしなくてはなりません。そのため、腎機能に関わる検査項目の意味や正常値を理解しておく必要があるでしょう。

今回は、腎機能の基準値の見方や、検査の数値によって疑われる病気について解説していきます。

腎機能を調べるにはどんな検査が必要?

腎機能の状態を知るためには、まず採血や採尿といった非侵襲的な検査を実施します。その結果が正常値を外れており、腎機能をより詳細に調べる必要があると医師が判断した場合に実施される検査が、画像診断や腎生検などです。

この記事では、上記のうち採血と採尿でわかるデータについて解説します。

腎機能の基準値とは?検査値の意味と疑われる病気を紹介

正常な腎機能の基準とはどのようなものなのでしょうか。検査値が示す意味と、正常値を外れた場合に疑われる病気についておさらいします。

腎機能の検査値において重要な4項目

採血や採尿の検査結果で主に着目したいのは、下記の4項目です。

  • 血清クレアチニン(Cr)値
  • eGFR(推算糸球体濾過量)
  • 血中尿素窒素(BUN)
  • 尿蛋白(たんぱく)
  • これらの詳細と正常値を、次でそれぞれ説明していきます。

    ●血清クレアチニン(Cr)値

    クレアチニンとは、筋肉へエネルギーを供給するクレアチンリン酸の代謝物です。エネルギー代謝によって生成された老廃物と言っても良いでしょう。腎機能が低下すると、本来は尿に排出されるはずのクレアチニンがうまく排出されず血中に増えていきます。

    血清クレアチニンの正常値は、男性で1.2mg/dl以下、女性で1.0mg/dl以下です。患者さまの病状や性別などによっても異なりますが、クレアチニン値が8.0mg/dl以上である場合、透析の導入が検討されることになります。

    ●eGFR(推算糸球体濾過量)

    腎臓のろ過機能を表す数値がeGFR(推算糸球体濾過量)です。

    eGFRは、前項の血清クレアチニン値、患者さまの年齢、性別を基に算出することが可能で、腎臓のろ過機能が正常に働いているかどうかを判断する指標となります。

    eGFRの正常値は60ml/分/1.73㎡以上とされています。ただし腎機能は、eGFRのみの数値では判断できません。後述する尿蛋白(たんぱく)や基礎疾患など、ほかの要素とあわせて評価します。

    ●血中尿素窒素(BUN)

    血中尿素窒素(BUN)も、採血で評価が可能な検査値の一つです。

    尿素は本来、腎臓でろ過されて尿中に排出されるものです。このろ過機能が衰えると、体外に尿素を排出できず、血中尿素窒素の数値が高くなります。

    血中尿素窒素の正常値は20mg/dl以下とされていますが、数値が低過ぎると、尿素を作る肝臓の機能低下が疑われます。

    ●尿蛋白(たんぱく)

    蛋白(たんぱく)質の多くは体に吸収され、尿に排出される量はごくわずかです。しかし、腎臓のろ過機能が低下すると、尿中に一定量以上の蛋白質が排出される場合もあります。

    尿蛋白は、尿検査でわかる検査値であり、その結果を示す指標は「-」「±」「1+」「2+」「3+」「4+」などのレベルで表すことが一般的です。継続的に「1+」以上の結果が出ると、腎機能の低下や高血圧が疑われます。

    こちらも、ほかの検査値とあわせて総合的に腎機能の状態を判断します。

    腎機能の検査値に異常があると疑われる病気

    前項では、腎機能に関連する検査値について解説しました。これらに異常があると、慢性腎臓病(CKD)が疑われるケースが多いです。

    ほかにもネフローゼ症候群や腎臓がんなどの腎臓の病気、慢性糸球体腎炎、間質性腎炎などの腎臓に炎症が起きている場合でも腎機能の検査値に異常が見られる場合があります。

    腎機能の低下により起こる慢性腎臓病(CKD)とは

    腎機能の低下により起こる慢性腎臓病(CKD)とは

    次は、腎機能の低下により発症する慢性腎臓病の定義や症状、診断における検査値の重要性を解説します。

    慢性腎臓病(CKD)の定義や症状

    慢性腎臓病の定義は、下記のどちらか、もしくは両方に当てはまる状態が3か月以上持続している場合とされています。

    1.尿異常、画像診断、血液検査、病理診断で腎障害の存在が明らか。特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要

    2.GFR<60mL/分/1.73m


    引用:一般社団法人 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023|第1章 CKD診断とその臨床的意義」

    初期は自覚症状が出にくく、発見が遅れるケースも多い病気です。進行すると、むくみや倦怠感、夜間の頻尿などの症状が見られるようになります。

    慢性腎臓病は腎機能によってステージが分けられる

    慢性腎臓病は、eGFRの値によって5つのステージに分けられます。軽い腎障害はあるものの、腎機能は正常な第一期から、腎不全の状態を指す第五期までに定められています。

    CKDのステージeGFRの値腎機能の状態
    第1期≧90腎障害はあるものの腎機能は正常
    第2期60〜89軽い機能低下
    第3期30~59半分程度の機能低下
    第4期15~29重度の機能低下
    第5期<15腎不全

    それぞれの段階で治療方法は異なり、第五期になると透析や移植が必須です。なお、『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023』に基づくCKD診療ガイドライン2023では、eGFRの値によるステージ区分に加え、尿蛋白や尿アルブミン量などの蛋白尿区分を合わせることで、慢性腎臓病の重症度を分類します。

    慢性腎臓病の診断における腎機能の検査値の重要性

    前述の通り、慢性腎臓病は初期症状がないケースが多く、受診を先送りにされやすい病気です。検査値に異常があった場合は早めに病院に行き、詳細な検査を受ける必要があります。

    腎臓の血管が傷つき、ろ過機能が低下しているということは、全身の脳や心臓などの血管が傷ついている可能性もあります。

    腎機能の低下を放置すると、脳梗塞や心臓病のようなほかの病気を発症するリスクが高まる恐れがあります。

    腎機能に影響を与える薬って?内服継続の指標とは

    ここでは腎機能に影響を与える薬と、内服継続の指標について解説していきます。

    腎機能と薬の関係

    化学物質や薬を濃縮させて排出する働きをもつ腎臓は、下記のような理由から、薬の影響を受けやすい器官と言えます。

  • 血液の量が多く多量の薬が到達しやすい
  • 薬が細胞内に取り込まれやすい
  • 薬の濃度が毒性の範囲に達しやすい
  • 薬によって溶解度の低下が起こり、閉塞性腎障害が誘発される場合がある など
  • また、新規の作用機序を有する薬剤が増加し続ける今日の臨床現場においては、薬物療法も多様化しており、未知の副作用として、薬剤性の腎障害のリスクがより高まっていると言えるかもしれません。

    腎機能に影響を与える薬とは

    それでは具体的に、腎機能に影響を与える薬の種類について見ていきましょう。下記に、一覧としてまとめています。

    腎機能へ与える影響薬の種類や名前
    尿細管細胞障害を引き起こす抗生物質(アミノグリコシド、バンコマイシン、イミペネムやセファロスポリン系)、抗真菌薬(アムホテリシンB)、抗悪性腫瘍薬(シスプラチン)など
    腎血流量の減少カルシニューリン阻害薬、造影剤、非ステロイド系抗炎症薬、RA系阻害薬、高張浸透圧液など
    急性間質性腎炎抗生物質(ペニシリン系、セフェム系など)、非ステロイド系抗炎症薬、利尿剤、H2受容体拮抗薬など
    尿細管内閉塞、後腹膜線維症高尿酸血症白血病の化学療法時、胆嚢造影剤、その他メトトレキサート、アシクロビル、メチセルガイドなど

    上記は一例であり、記載したもの以外にも腎臓に影響を及ぼす薬はあります。

    腎機能に影響を与える可能性のある薬の内服継続の可否

    慢性腎臓病や薬剤性の腎障害が疑われる症状(原因不明の熱・高血圧など)が出ている患者さまの場合、腎機能に影響を与える可能性がある薬の服用継続については、主治医の判断が必要です。

    患者さまから主治医へ相談してもらったり、薬剤師から主治医に確認したりするなどして、慎重に検討しましょう。

    慢性腎臓病の治療方法と薬剤師としての関わり方

    慢性腎臓病の治療では、糖尿病や高血圧など原疾患の治療を優先します。そのうえで、腎機能低下で生じやすいカリウム高値や高リン値などの改善や、慢性腎臓病が進行した際に出現する貧血など、症状の緩和を目的とした薬物療法を行っていきます。

    また、食生活や運動習慣の改善も、重要な治療の一環です。患者さまに対して薬剤師は、適切な内服の必要性や、生活習慣を改善することの重要性を伝えていく必要があるでしょう。

    腎機能の低下がみられる患者さまへ薬剤師としての服薬指導のポイント

    腎機能の低下がみられる患者さまへ薬剤師としての服薬指導のポイント

    それでは、薬剤師が腎機能の低下がみられる患者さまへ服薬指導を行う際には、どのような点に気をつければよいのでしょうか。

    次で4つのポイントを解説します。

    無症状であっても、慢性腎臓病に対する内服の必要性を理解してもらえるように伝えていく

    慢性腎臓病の治療方法としては原疾患の治療が優先のため、腎機能の低下に伴う症状の緩和というよりは、腎機能低下をもたらしている原疾患(糖尿病や循環器疾患、高血圧など)の治療をしている方もいます。

    また、初期の慢性腎臓病では無症状であるケースがほとんどのため、検査で異常値が出ても、腎機能に関してはあまり強く関心を持たない人も少なくありません。

    しかし、腎機能の低下が進まないよう、早い段階での治療が重要であると伝えていくことが肝心です。原疾患の治療のための内服や、腎機能の低下に対する内服の必要性を理解してもらえるでしょう。

    生活習慣の改善や食生活の改善を促す

    腎機能の改善には、食生活や運動量の見直しなどもあわせて行う必要があります。服薬指導の際に患者さまの生活習慣に関してもヒアリングし、改善点などを話し合えるとよいでしょう。

    喫煙や飲酒は控える、または止める

    喫煙や飲酒について明確なエビデンスはないものの、高血圧などほかの原疾患に悪影響を及ぼす可能性は十分にあるでしょう。喫煙や飲酒はなるべく控える、もしくはできるだけ止めるように伝えます。

    原因不明の発熱や貧血などがあれば、すぐに相談するように伝える

    原因不明の発熱や貧血を「疲れているから」「少し風邪を引いただけ」と、とらえ、主治医へ伝えなかったという患者さまも中にはいます。

    受診時に患者さまがこうした症状を主治医へ伝えていなくても、薬剤師の服薬指導で腎機能低下に気づけるかもしれません。注意深くヒアリングを行い、見逃さないようにしましょう。

    腎機能の検査値や慢性腎臓病を理解し適切な服薬指導を

    本記事内で、腎機能に関連する検査値の意味や正常値、慢性腎臓病の症状、腎機能の低下に影響を及ぼす薬などについて解説しました。

    これらを理解したうえで、腎機能の低下が疑われる患者さまへの服薬指導のポイントを押さえ、安心・安全に原疾患の治療に取り組めるようにしましょう。

    青島 周一さんの写真

      監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

    2004年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

    主な著書に『OTC医薬品どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』『薬の現象学:存在・認識・情動・生活をめぐる薬学との接点(丸善出版)』

    記事掲載日: 2024/03/07

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