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  • 公開日:2019.03.18

認知症患者に対する接し方と服薬コミュニケーション<在宅医療にかかわる薬剤師必見>

認知症患者に対する接し方と服薬コミュニケーション<在宅医療にかかわる薬剤師必見>

地域包括ケアシステムにおける在宅医療への注目が高まる中、チーム医療の一員として薬剤師に求められる役割も重要性を増しています。

介護施設で過ごす高齢者も多いですが、気心の知れた家族と暮らしたいと考え、在宅医療を選択する患者さまも珍しくありません。そうした中で、薬剤師が認知症の患者さまに対して服薬指導をおこなう機会も増えつつあります。

超高齢社会を迎える日本では、認知症はだれもがなりうる病気です。この記事では、在宅訪問の際、【認知症の患者さまにどういった対応をすればいいのか、どういった服薬介助をおこなうべきなのか】などをお伝えしていきます。

在宅医療における薬剤師の役割とは?



在宅医療では、お一人で通院が困難な患者さまのもとに医師や看護師、薬剤師などの医療スタッフが定期的に訪問し、計画的に治療・看護・健康管理などをおこないます。薬剤師がチームに参加することにより、患者さま自身やその家族、他の医療職種の方のお薬に関する負担を減らし、患者さまのQOLや治療効果を高めることが期待されています。

薬剤師は医薬品の専門家として、在宅で療養中かつ通院が困難な方に対し、薬の正しい飲み方の説明や副作用・相互作用の確認、薬の相談などを行います。

錠剤が飲めなくなってきた患者さまに対して、医師に相談してOD錠や顆粒剤を提案したり、一包化やお薬カレンダーを用いて飲み忘れを防止するなど、患者さまの負担軽減に役立つことも。

血圧や脈拍などの簡単なバイタルチェックをおこなって、健康管理に役立つ取り組みをおこなう薬剤師も増えつつあります。

認知症の患者さまへの服薬時に起きやすい問題



認知症の患者さまに対する服薬管理は、認知症の特徴をきちんと理解した上でおこなわなくてはなりません。ここでは、認知症の患者さまを対応する際におこりやすい問題点について、ご紹介します。

1. 飲み忘れをおこしてしまう

認知症の患者さまの代表的な問題点として、認知機能の低下によって飲み忘れをおこしてしまうことが挙げられます。家族など周囲のサポートが得られる環境であれば、服薬の管理を依頼することができますが、そうでない場合には注意が必要です。

一包化やお薬カレンダーを利用して、飲み忘れの防止を目指しましょう。時間が来たら音声と動画で服用を促す、「服用支援ロボット」の活用もおすすめです。

2. 薬を嫌がって服用してくれない

認知症の患者さまの中には、薬を嫌がって服用してくれないというケースもみられます。理由はさまざまですが、「味を嫌がって服用してくれない」「自分は病気でないと考えている」などが考えらえます。

また、認知症の症状の一つとして被害妄想があり、「毒を盛られた」などと服用を拒む患者さまもみられます。服薬の理由をきちんと説明することも重要ですが、貼付剤などに剤形を変更する、食べ物に混ぜて味を変えるなどの工夫を行うこともおすすめです。医師に相談の上、必要な薬だけに絞ることも検討しましょう。

3. 薬を飲んだことを忘れてしまう

認知症による記憶障害のため、薬を服用したのに「まだ飲んでいない」と服薬を要求するケースもみられます。このような症例では、すでに服用したことを説明しても納得してもらえないことが多いため、整腸剤やサプリメントなどの薬を「よく効く薬を先生がくれたよ」と要求に応じることも必要です。

また、まとめて薬を渡してしまうと2重で服用してしまう可能性があるため、1回分以上の薬を手渡すことないように、周囲への注意喚起も必要です。

認知症の患者さまを対応する際のコミュニケーション


認知症の方とのかかわり方

認知症の症状には、『中核症状』と『BPSD(行動・心理症状)』の2つがあります。

『中核症状』は誰にでもあらわれ、症状は記憶障害や実行機能障害、見当識障害など。『BPSD』は患者さまのもともとの性格やおかれている環境、人間関係などが絡み合っておこることが知られています。

認知症には、さまざまな誤解がつきものです。患者さまの中には、時に攻撃的な反応を示すこともみられますが、病気の影響であると言うことを理解した上でかかわることが重要です。

服薬指導をする際に気をつけるべきコミュニケーション

認知症の中核症状のひとつに、『記憶障害』があります。時には直前におきたことを忘れることもあり、服薬においてもコンプライアンスに大きくかかわります。

記憶障害によって服薬したことを忘れてしまうこともありますが、頭ごなしに「もう飲んだから必要ない」と否定することは避けましょう。まずは一度、相手の訴えを受け入れることがポイントです。

同様に、「薬が足りなかった」「私は病気ではない」などと訴える患者さまに対しても、余裕を持った対応が必要です。薬物治療の専門家として、相手の目線に合わせた対応を心がけるようにしましょう

認知症の患者さまのご家族のケア

認知症の患者さまの治療や介護をおこなう上では、家族の理解と協力が不可欠です。患者さま本人だけでなく、家族の話にも耳を傾け、情報を共有することが重要です。特に発症した直後は、家族も困惑することが多いものですが、苦労を共感して悩みを理解してあげるようにしましょう

また、認知症の患者さまをケアしてもらえる施設などを提案・紹介してあげることも、薬剤師の役割のひとつといえます。デイケアやショートステイなど、各々の施設の特徴を理解して、適切な助言がおこなえるように知識を習得するようにしましょう。

ユマニチュードを活用したコミュニケーション

ユマニチュードとは、フランス語で「人間らしさ」という意味をあらわしており、もっとも注目されている認知症ケアの技法のひとつです。

言葉や身振り、目線などを用いた包括的なコミュニケーション方法を中心としており、ケアをする人とケアされる人の絆を中心にとらえていることが特徴です。「見つめること」「話しかけること」「触れること」「立つこと」の4つを基本として、これらを組み合わせて複合的なケアを目指します。

薬剤師の行う服薬指導にも応用が可能なので、ユマニチュードの技法を習得することもおすすめです。

適切なコミュニケーションで、患者さまをサポートできるように

今後の薬局薬剤師の役割のひとつに、在宅医療を受ける患者さまに対してお薬に関する全面的支援を行うということがあります。患者さま本人の薬物治療の効果を高めることはもちろんですが、その家族や他の医療・介護の職種の方の負担を減らすことも期待されています。

超高齢社会の到来により、高齢者や認知症の患者さまは急速に増えつつあります。薬剤師が地域包括ケアシステムを担う一員として欠かせない存在になるために、認知症の患者さまに対する接し方と服薬コミュニケーションを身につけてください。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/03/18

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