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  • 公開日:2019.04.20
  • 更新日:2020-02-04

ポリファーマシーの問題点と薬剤師の役割は?残薬問題を解決するためにできること

ポリファーマシーの問題点と薬剤師の役割は?残薬問題を解決するためにできること

患者さまが高齢になると、複数の疾患を合併するケースが増えてきます。そして、病気の数だけ処方される薬も多くなってしまいます。薬剤師として働いていると、複数の薬剤を併用している高齢者は珍しくないでしょう。だからと言って、「ポリファーマシー」と呼ばれる多剤併用における重複投薬や薬物間相互作用のリスクを楽観視してはいけません。

この記事では、薬剤師としてポリファーマシーにどのように向き合えば良いのか、ガイドラインなどを確認しながら【高齢者における医薬品の適正使用】について考えていきます。

ポリファーマシーの定義とガイドライン

「ポリファーマシー」とは「poly(複数)」+「pharmacy(調剤)」からなる言葉で、多剤併用の中でも害をもたらすものを表します。単に服用する薬剤の種類や量が多いというだけではポリファーマシーではありません。必要以上の薬剤が投与されている、または不必要な薬剤が処方されていることで、薬物有害事象のリスク増加や服薬過誤をはじめ、服薬アドヒアランス低下などの問題を引き起こす可能性がある状態のことを指します。明確な定義はありませんが、4~6種類以上の薬剤が併用されている状態を表すことが一般的です。

高齢化が深刻な日本では、高齢の患者さまが多いだけでなく、医薬品を多剤服用する患者さまが多いのが現状です。そのため、重篤な副作用などの有害事象が生じやすい状況(=ポリファーマシーが顕在化している状況)にあります。そこで厚生労働省は、2017年4月から「高齢者医薬品適正使用検討会」で安全性確保に必要な事項の調査・検討を進めています。

同検討会が2019年5月に発表した「高齢者の医薬品適正使用の指針」は、高齢者の特徴に配慮したより良い薬物療法を実践するための基本的留意事項をまとめたガイドラインです。ここでは、65歳以上の患者さまを対象としながら、平均的な服用薬剤の種類が増加する75歳以上の高齢者に重点を置いていることが特徴です。

ポリファーマシーが起きてしまう背景

ポリファーマシーが起きる背景の一つとして考えられるのは、急速な高齢化です。複数の疾患を抱え、様々な診療科を同時に受診することの多い高齢者は、足し算的に服用薬が積み重なる可能性があるのです。認知症を有する方も多く、服薬コンプライアンスの低下により、薬を正しく飲めていないというケースも珍しくありません。医師は薬を正しく服用していることを前提としているため、過剰に薬を処方してしまうことがあるのです。

それを裏付ける調査が、2015年に日本調剤株式会社により実施されています。「『シニア世代の服薬の実態と意識』に関する調査」では、慢性病により医療機関に定期的に通う65歳以上の男女1,046人のうち、<複数の医療機関を受診されている方は約52%><処方される薬剤の数が5剤以上の方は約25%>と報告されているのです。

また、使用している薬剤の副作用を抑えるために新たな薬剤を処方し続ける「処方カスケード」、さらには医療技術の進歩により使用される薬剤数が増えたことや、国民皆保険制度により医療機関へのアクセスが容易な環境もポリファーマシーの要因と言えるでしょう。

ポリファーマシーの問題点

残薬の薬のイメージ

ポリファーマシーの最大の問題点は、「有害事象の発生」です。有害事象とは、薬剤との因果関係がはっきりしないものを含め、患者さまに生じたあらゆる症状・兆候・疾病・副作用のこと。意識障害や低血糖、肝機能障害など、重篤なものも少なくありません。ふらつきや転倒が骨折の原因となり、QOL(生活の質)を大きく低下させることもありえます。

また、複数の薬剤が処方されることは、国民医療費の高騰にも繋がると言った問題もあります。2018年度に医療機関に支払われた概算医療費は、前年度より3000億円増えて42兆6000億円となりました。国民医療費のうち大きな割合を占めている調剤医療費は、ポリファーマシーと密接な関係があると考えられています。

ポリファーマシーの解決に向けた<5つの対策>

おくすり手帳のイメージ

<対策1>おくすり手帳の活用

現場におけるポリファーマシーの解決策は、「おくすり手帳」の活用です。おくすり手帳とは、患者さまごとに作成される服用薬剤の記録帳で、薬剤師が服薬状況を確認するためのツール。おくすり手帳があれば、他の医療機関で処方された医薬品を確認できますし、多剤併用による重複投与や薬物相互作用を未然に防ぐことができると期待されています

かかりつけ薬剤師による一元的管理が進められていますが、いまだに複数の薬局を利用する患者さまも少なくありません。だからこそ、おくすり手帳の活用が推進されているのです。

<対策2>高齢者への対策

過去に例のない超高齢社会を迎えた日本では、高齢者に対する薬物療法の需要が高まり続けているのが実情です。高齢者は、加齢に伴う生理的な変化によって、薬物の動態や反応性が一般成人とは異なります。結果として、薬剤同士の相互作用が起こりやすいため、ポリファーマシーの改善が強く求められています。

そのような高齢者に対する薬物療法の指針として、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」が日本老年医学会より提唱されています。高齢者に処方されやすい医薬品について、推奨される医薬品と中止を考慮すべき医薬品の使用方法をまとめたもので、推奨や中止の根拠をはじめ、代替薬の例などが記載されています。薬剤師はこれらの薬物によって引き起こされるリスクを把握し、アドバイスや処方提案をすることが求められています。

<対策3>減薬

現代の医療では、症状の抑制を優先して薬剤を処方することが多く、症状が悪化した場合は薬剤の種類や量が増える傾向にあります。しかし、服用する薬剤の種類や量に比例して副作用のリスクが高まることがわかり、「減薬」の必要性が認識されるようになりました

2016年の診療報酬改定にて、「薬剤総合評価調整管理料」や「薬剤総合評価調整加算」が新設。減薬に対する取り組みが評価されるようになりました。6種類以上の薬剤が処方された患者さまに対し、当該処方の内容を総合的に評価および調整し、2種類以上減薬した場合に算定が認められています。2018年には、「服用薬剤調整支援料」が新設。薬剤師が文書を用いて提案し、少なくとも1種類が減薬された場合に、評価が行われるようになりました。

<対策4>残薬管理

ポリファーマシーと同時に、処方された薬剤の飲み残しである「残薬」も大きな問題となっています。2007年に実施された日本薬剤師会の調査では、薬剤師がケアを続ける在宅患者 812人のうち、4割以上に薬剤の飲み残しや飲み忘れがあったことが報告されています。

残薬の発生を防ぐためには、薬剤師による服薬情報の管理が不可欠です。患者さまが服用している薬剤や併用薬、嗜好品、アレルギー歴だけでなく、実際にどのように服用しているのか、コンプライアンスやアドヒアランスについても、患者さまやほかの医療従事者と情報共有することが求められています。

<対策5>患者さまとのコミュニケーション

リファーマシーの問題を解消するためには、「患者さまとのコミュニケーション」も欠かせません。薬剤師と患者さまとの間に信頼関係を築けなければ、これらの問題を解決するのは困難です。日ごろから患者さまとしっかり向き合い、病態だけでなく治療状況や生活環境まで把握することが求められています。

また、「薬をたくさん処方されないと不安」と感じる患者さまが多いことも多剤併用の一因です。副作用のリスクや減薬の必要性を理解していただくのも薬剤師にとって重要な責務。良好なコミュニケーションにより、服薬の問題点を見つけ出すことが期待されています。

在宅医療でポリファーマシーは解決できるのか

患者と向き合う薬剤師のイメージ

高齢な患者さまの多くは、病気になっても自宅などの住み慣れた環境で療養を望んでいます。同時に、医療機関や介護保険施設などの受け入れにも限界が生じつつあり、医療提供体制の基盤の一つとして在宅医療には大きな期待が寄せられています。

実際に、在宅医療を基盤とした地域包括ケアシステムの実現を目指す中で、日常的な訪問診療に対応する医療機関の数は増加しつつあります。その中には、無菌調剤室を備えた薬局や、健康サポート機能を備えた薬局もあり、薬局の機能はますます多様化しています。

在宅医療では、薬剤師が患者さまの自宅や施設を訪問し、服薬の状況を把握することで安心・安全な薬物治療の確保が期待されています。また、服薬状況や保管状況を確認することにより、ポリファーマシーの解決にも繋がります。さらに、1週間分の薬剤を服用タイミングごとに小分けしポケットに入れる吊り下げ型・ケース型の「お薬カレンダー」や、服用時間ごとに小分けしケースにセットしておいた薬剤が自動で出てくる「服薬ロボット」などを活用した取り組みも増えており、これまで以上に充実した服薬ケアが進められています。

患者さまの健康を守るためにも、適切な投薬設計を

複数の診療科を受診して、複数の薬剤を処方されることの多い高齢者は、ポリファーマシーの問題が課題とされています。薬剤の重複投与や相互作用が起こると、医療費の増大のみならず、副作用の発現により健康被害が起きる可能性があります。

安心・安全な薬物療法をするためには、医薬品の専門家である薬剤師が患者さまごとの服用薬剤を把握し、適切な投与設計を行うことが求められています。医師や病院薬剤師と連携するのはもちろん、患者さまとの良好なコミュニケーションを心がけましょう。患者さまから信頼される薬剤師になることが、ポリファーマシー解決への近道となるはずです。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2019/04/20

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