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  • 公開日:2021.11.10

薬剤師が知っておきたい前立腺がん治療や服薬指導のポイント

薬剤師が知っておきたい前立腺がん治療や服薬指導のポイント

がん検診の普及や進む高齢化により、がんの罹患数は増加の一途を辿っています。なかでも前立腺がんの増加は顕著で、国立がん研究センターのデータによると、2018年時点の罹患数は92,021例にのぼり、男性の部位別でみると最も多くなっています。

このような状況のなか、近年ではがん治療の進歩・多様化により、入院せずに外来で治療を受ける患者さまが増えたことから、薬局薬剤師にも様々な役割が期待されるようになってきました。

この記事では、前立腺がんの概要や治療方法、がん患者さまに対する服薬指導のポイントについて解説していきます。

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前立腺がんとは

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより起きる病気です。発生には男性ホルモンが関与しており、加齢によるホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。2018年に国内で前立腺がんと診断されたのは92,021人と、前立腺肥大症とともに中高年の男性において注意すべき前立腺の病気といえるでしょう

前立腺がんの多くは進行がゆっくりで、寿命に影響しないと考えられています。しかし、一部の前立腺がんでは進行が早く、命に関わることもあるため注意が必要です。

初期の自覚症状はほとんどありませんが、進行すると、尿がでにくい、排尿時に痛みを伴う、尿や精液に血が混じるなどの症状があらわれやすくなります。さらに進行すると骨やほかの臓器に転移し、骨(骨盤)に転移した場合には、骨痛があらわれることもあります。

前立腺がんの治療方法は?

 前立腺がんの治療方法は?

前立腺がんの治療方法には、「監視療法」や「手術療法」、「ホルモン療法(内分泌療法)」などがあり、これらを単独あるいは組み合わせて治療します。

進行の程度や患者さまの状態、本人の希望などによって、治療方法の選択が可能です。ここでは、それぞれの治療方法について確認していきます。

監視療法

前立腺生検で見つかったがんが穏やかで、今すぐに治療を始めずとも命に影響がないと判断される場合に、経過観察を行いながら過剰な治療を防ぐ方法です。3~6ヶ月ごとにPSA検査と直腸診、1~3年ごとに前立腺生検で経過観察し、悪化がみられた場合は治療の開始を検討します。

患者さまの同意と理解、さらには経過観察中における患者さまの協力が重要となる治療方法です

フォーカルセラピー(Focal therapy)

正常な組織をできるだけ残しながら治療を行い、治療と身体機能維持の両立を目指す治療方法です

高密度焦点超音波療法(HIFU)や小線源療法、凍結療法などを用いることがあります。監視療法と手術療法の中間に位置する治療概念ですが、治療後の評価が難しく、十分な根拠がないのが現状です。

現状では、根治手術の適応にならない、あるいは手術を希望しない患者さまに対して、治療の限界を十分に理解したうえで、QOL(生活の質)を保つことを目的にフォーカルセラピーが行われる場合もあります

手術療法

前立腺がんの今次的手術療法では、前立腺と精のうを摘出したあと、膀胱と尿道をつなぐ「前立腺全摘除術」が行われます

がんが前立腺内にとどまっており、余命が10年以上期待できる場合に実施が推奨される治療方法です。手術方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術などがあります。

手術後の合併症など、身体への負担が大きいため、高齢や全身状態が良くない患者さまには適していません

放射線治療

前立腺に放射線(高エネルギーのX線や電子線)を照射して、がん細胞を小さくさせる治療方法です。手術療法に比べて身体への負担が少なく、手術を行うことができない高齢の患者さまにも実施可能です

体外から前立腺に放射線を照射する「外照射療法」と、前立腺のなかに放射線を出す物質を入れ、体内から照射する「組織内照射療法」があります。

ホルモン療法

前立腺がんの多くは、精巣および副腎から分泌される男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて増殖しています。ホルモン療法は、これらの男性ホルモンの分泌や働きを薬で抑えることによって、がん細胞の増殖を抑制する治療方法です。

前立腺がんに対して有効な治療方法ですが、長期的に行うと効果が弱くなってくるため、ホルモン療法のみで完治を目指すことは難しい点が問題としてあげられます。手術や放射線治療が難しい場合や、がんがほかの臓器に転移した場合などに実施されます

化学療法

いわゆる「抗がん剤」による治療のことで、治療薬の注射、点滴や内服により、がん細胞を消滅させたり小さくしたりする治療方法です

ホルモン療法の効果がなくなったがんに対して行いますが、抗がん剤特有の副作用のコントロールも重要と考えられています。

緩和的療法(緩和ケア)

患者さまのQOL(生活の質)を維持するために、がんに伴う身体と心の様々な苦痛に対する症状を和らげ、自分らしく過ごせることを目的とした治療方法です

骨転移巣の疼痛、脊椎転移による脊椎麻痺、排尿困難および血尿、尿管閉塞に伴う腎後性腎不全などが対象です。また、がんが進行してからだけではなく、がんと診断されたときから必要に応じて実施されます

がん患者さまへの服薬指導のポイント

がん患者さまへの服薬指導のポイント

近年では、がんの治療薬における開発がすすみ、内服で用いられる抗がん剤も増えています。前立腺がんの治療においても、外来で通院しながら治療を受けることが可能となり、薬局薬剤師の存在もますます重要になりつつあるといえるでしょう。

ここでは、がん患者さまへの服薬指導のポイントについて解説していきます。

医師からの説明内容について確認する

近年ではあまりみられなくなりましたが、がんの進行度や患者さまの性格によっては、医師ががんの告知をしていないケースもあります。まずは、医師から説明を受けている内容についてしっかりと確認するようにしましょう

次に、今後の治療方針を聞き取り、治療に対する患者さまの理解度について確認します。薬局薬剤師が得ることのできる情報は限られるため、後述の病院薬剤師との連携も重要です。

服薬アドヒアランス向上を意識する

経口抗がん剤によるがん治療では、服薬管理を患者さま本人やその家族が行います。そのため、患者さまが治療について十分に理解し、積極的に服薬を継続しようとする姿勢をあらわす「服薬アドヒアランス」が重要です

服薬アドヒアランスが低下すると、患者さまの全身状態や予後の悪化につながりかねません。患者さまは診察時に主治医と話す時間を十分に確保できるとは限らないため、副作用の有無や服薬の問題点など、服薬アドヒアランスの低下につながる問題のヒアリングを行い、必要に応じて情報共有を行いましょう

必要に応じて病院薬剤師と連携する(薬薬連携)

がん治療の進歩・多様化により、従来のような入院を必要とせず、外来でがんの治療を受ける機会が増えつつあります。薬局で経口抗がん剤や支持療法薬を受け取るようになり、これまで以上に薬局薬剤師の役割は大きくなるでしょう。

そこで大切なのが、病院薬剤師と薬局薬剤師による「薬薬連携」です。抗がん剤の治療効果や副作用の有無など、患者さまの情報を共有することにより、外来でも患者さまが安心して治療を受けられるようになります

また、がんの知識はもちろん患者さまが何を望んでいるか、何に不安を感じているかをキャッチできるコミュニケーションスキルを身につける必要もあるでしょう

前立腺がんの基礎知識をもち、適切な対応を

この記事では、前立腺がんの概要や治療方法、薬剤師の服薬指導のポイントについて解説していきました。

前立腺がんの治療方法は、進行の程度や年齢、患者さま自身のライフスタイルに対する価値観などによって大きく異なります。近年では外来で治療を受けられるようになり、薬局薬剤師が治療に携わる機会も増えています。

がんの治療では薬剤師としての専門性を活かして対応することはもちろん、ほかの専門職の関わりが必要となる場合には、チームとして患者さまを支える意識が重要です。薬物療法の知識だけでなく、がん患者さまの不安や悩みを受け止め寄り添える、医療人としてのスキルを身につけることが求められています。

▼参考資料はコチラ
国立がん研究センター「前立腺がん
青島 周一さんの写真

監修者:青島 周一(あおしま・しゅういち)さん

2004 年城西大学薬学部卒業。保険薬局勤務を経て2012 年より医療法人社団徳仁会中野病院(栃木県栃木市)勤務。(特定非営利活動法人アヘッドマップ)共同代表。

主な著書に『OTC医薬品 どんなふうに販売したらイイですか?(金芳堂)』『医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル(金芳堂)』『医学論文を読んで活用するための10講義(中外医学社)』

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2021/11/10

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