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  • 公開日:2020.09.25

患者さまから「医師には相談しにくい...」そんな悩みを相談されたら?

患者さまから「医師には相談しにくい...」そんな悩みを相談されたら?

診察を終えて最後の対面相手となる薬剤師は、患者さまにとって「最後の砦」。処方された薬の内容や使用方法だけでなく、病気の症状などについて相談を受けることも多いはず。

ときには、「医師に直接確認しにくい...」そのような相談をされることもあるのではないでしょうか。そこで今回は、患者さまから相談を受けた薬剤師がどのように対処するべきかを、現役医師が解説します

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患者さまの話を聞かない医師も多い?

薬剤師のイメージ

医師であれば、「患者さまの些細な訴えにも耳を傾け、適切な対処を行う」。世間では医師に対してこのようなイメージを抱く患者さまも多くいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、実際の医療現場で医師は、日々外来での診療を行い、入院している患者さまの検査・手術など数多くの対応に追われます

そのため、患者さまの訴えすべてに耳を傾ける余裕がないのが現状です。とくに近年では、インターネットで簡単に医学情報が入手できるようになったため、さまざまな情報に翻弄され、恐怖心を抱く方も少なくありません。時間的にも、身体的にも余裕がない医師にとっては、どうしてもそのような訴えに対応しきれないこともあるでしょう。

また、これまでの医療現場では、医師が主導する医療が行われてきました。しかし、時代とともに患者さまが主体となる医療へと変わり、診察や検査などのあらゆる場面で患者さまへ綿密な説明をすることが必要とされています。しかし、一方でベテラン層を中心に、現在でも医師主導による医療を行っているところも少なくありません。こうした場合、患者さまの訴えを親身になって聴く習慣がなく、患者さまに「相談しにくい」というイメージを持たれてしまうのかもしれません。

「医師には相談しにくい...」患者さまから相談を受けたら?

体のことや病気のことに不安を抱いて受診したのに、医師が患者さまの訴えをうまく汲み取れなければ、患者さまはモヤモヤした気持ちを抱えて診察室を後にするでしょう。そして、処方薬の受け取り段階になって、モヤモヤした気持ちを薬剤師に相談するはずです。

「医師には相談しにくい...」そんな医師へのクレームにも近い相談を受けたとき、薬剤師はどのように対処をすればよいのでしょうか。患者さまへの対応の仕方は薬剤師の考え方によって異なり、とことん患者さまの相談にのることもあれば、再度医師へ相談するよう促すこともあるでしょう。

どのような対応も間違いではありませんが、医療は医師だけが携わるものではありません。ですから、薬剤師も積極的に患者さまの訴えに耳を傾け、不安を取り除く努力をしましょう。薬剤師は、患者さまが病院を受診した後に対面する医療従事者です。つまり、薬剤師は患者さまの訴えを聞き出す最後のチャンスを握っていると言えるのです。様々な業務があるなかでの対応はなかなか大変ですが、患者さまの声にしっかりと耳を傾け、「再度受診の必要があるのか」「とくに心配のない訴えなのか」を判断し、患者さまに対して適切な対応をするよう心がけましょう

薬剤師は患者さまにとって最後の砦!積極的に相談にのろう

薬剤師のイメージ

では、実際に患者さまから「医師には相談しにくい悩み」を相談された際には、どのような対応をすればよいでしょうか。ここでは、患者さまからの相談ごとを事例別に詳しく見てみましょう。

パターン①:「病気のことが心配...よくなるの?」

患者さまが病気のことを心配するのは当然のこと。身体の不調は心にも大きな影響を与え、些細なことで神経質になってしまう方も少なくありません。また、インターネットなどから得た過剰な情報に恐怖心を抱いて「何も手につかない...」という方もいるでしょう。

多くの場合、そういった患者さまは医師だけでなく、看護師、薬剤師など接する医療従事者すべてに不安を相談するもの。当然、最後に接する薬剤師にも相談するはずです。病気や治療のことに過剰な不安を抱く患者さんに対しては、まず悩みに傾聴することが大切。そして、過度な不安を抱かず、このまま治療を続けていくべきことを説明するとよいでしょう。そのためには、薬剤師も病気に関するある程度の医学的な知識は持ち合わせておくのが望ましいですね。

パターン②:「医師には言えなかったけど...実はこんな症状がある」

多忙な勤務を続ける医師は、ときに診察が流れ作業のようになってしまい、患者さんの重要な訴えを聞き出せないことも......。また、患者さまのなかには、医師の前だと緊張してしまい、自身の症状をうまく伝えることができない方も少なくありません。このような患者さまの悩みには注意が必要で、思いもよらない病気が背景にある可能性もあります。

とくに、普段から高血圧や糖尿病などで定期受診している患者さまは、何か気になる症状があったとしても「変わりありませんね」という医師の言葉に条件反射のようにうなずいてしまう方も多いもの。医師サイドも定期受診している患者さまの場合、医師から見て分かるような新たな症状や検査結果の異常がない限り、流れ作業的に診察をしてしまうことも......。薬剤師への相談は、患者さまの病気を発見できる最後のチャンス。しっかり症状を聞き取り、必要であれば、再度受診を促すようにしましょう

パターン③:「医師の態度がひどかった!信頼できない!」

薬剤師が患者さまから相談を受けるなかで、この手の相談を受けたことはありませんか?本来、患者さまに適切な医療を提供するには、医師と患者さまの間に信頼関係があることが望ましいでしょう。しかし、医師と患者さまはそれぞれひとりの人間であり、合う・合わないといった相性があるのは当然です。そのため、医師にとってまったく悪意がなくても、患者さまに不快な思いをさせてしまうことも意外と多いのです。

薬剤師として同じ医療従事者のクレームを受けるのは、心苦しくもあるでしょう。クレームに同調する必要はありませんが、患者さまからの相談はじっくりと聞くようにして欲しいと思います

医師にネガティブな感情を抱く患者さまのなかには、治療自体を自己判断で中断してしまう方もいます。医師へのクレームはその後真摯に対応することで解決の糸口が掴めますが、治療の中断は何としても避けなければなりません。そのために、最後の砦である薬剤師は患者さまの思いに傾聴したうえで、治療の必要性や正当性を説明するようにしましょう。

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医師へのフィードバックも忘れずに!

最後に、医師として薬剤師の方々へお願いしたいことがあります。それは、患者さまから「医師に相談しにくい...」そんな悩みを持ちかけられたら、医師へフィードバックしていただきたいということです。

医師は必ずしも万能ではありません。限られた診察時間のなか、患者さまの訴えや不安な気持ちをすべて聞きだすことができないことも多々あるでしょう。そんなとき、最後の砦として対面する薬剤師からの情報が、患者さまの病気を発見できるきっかけになることは珍しくありません。また、患者さまが抱える不満や不安を知ることは、その後の診療を進めていくためにも必要です。

フィードバックをするうえで、「医師に意見を言いにくい」と感じている薬剤師の方は多いかもしれません。しかし、患者さまに安心してもらい、満足のいく医療を提供するには、医師・薬剤師・看護師・検査技師、すべての医療従事者が一丸となる必要があります。もしも患者さまから悩みを相談されたら、「患者さまの話をよく聞いて医師にフィードバック」この流れを徹底していただければ幸いです。こうした「情報共有」が、患者さまによりよい医療を提供するための第一歩となるはずです。

成田亜希子先生の写真

成田 亜希子(医師ライター)

一般内科医として幅広い分野の診療を行っている。保健所勤務経験もあり、感染症や母子保健などにも精通している。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会、日本健康教育学会所属。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2020/09/25

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