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2022.05.10

薬局での服薬指導に対して非協力的な患者さまへの対応

薬局での服薬指導に対して非協力的な患者さまへの対応

薬局業務において、患者さまからの様々な苦情(クレーム)の対応に悩む薬剤師は多いでしょう。なかでも薬剤師が初回問診票の記入をお願いしたり、服薬状況や病状を確認する際に「同じ内容を病院で話しました」とおっしゃる患者さまに遭遇するケースも少なくありません。しかし、患者さまのアドヒアランス向上や服薬による健康被害を未然に防ぐためには初回問診票の記入や病状の確認などによる適切な服薬指導はとても大切です。

この記事では、服薬指導(初回問診票を含む)に焦点を当てて、患者さまの様々なクレーム事例や非協力的になる理由、またそうした患者さまへの対処方法について解説していきます。

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患者さまの様々なクレーム

患者さまの様々なクレーム

薬局は、様々な方が利用するため、個々の患者さまに合わせた対応が求められます。例えば、ケガや病気に悩む方や、体調不良を訴える方では、服薬指導自体に対して患者さまが不満や不安を感じてクレームつながるケースがあります。

その他、患者さまのクレームには「待ち時間が長すぎる」「順番を抜かされた」などの待ち時間に対するものや「薬袋に薬が入っていなかった」「薬の数が足りない」などの薬に対するもの、「調剤報酬の算定に不満がある」「値段が高すぎる」などの金銭面に対するものなど多岐にわたります。

そのなかでも「初回問診票を記入したくない」「受診理由(病状など)を話したくない」などのクレームがあった場合には、患者さまの情報収集が困難になり、適切な服薬指導が困難となってしまいます。

適切な服薬指導を行うことは薬剤師にとって必須の業務であるため、情報収集が困難な患者さまへの対応は極めて重要です。

なぜ服薬指導に非協力的な患者さまがいるのか?

なぜ服薬指導に非協力的な患者さまがいるのか?

調剤薬局では調剤するにあたって、病院と同様に患者さまの服薬状況や病状などの確認を行います。これは、患者さまのアドヒアランスの向上や服薬による健康被害を未然に防ぐために必要不可欠なものであり、薬剤師の服薬指導において重要な情報源の一つでもあります。

しかし、薬剤師による服薬状況や病状などの確認に非協力的な患者さまもみられます。その理由を確認していきましょう。

医薬分業の意義に対する理解が得られていない

「医薬分業」とは、診断を行う医師と薬の専門家である薬剤師がそれぞれの立場で処方内容を確認することで、薬をより適切で安全に使用するための制度です。「その話は病院で話しました」と、薬剤師による情報収集に非協力的な患者さまの多くは、医薬分業のメリットを実感しておらず、医師に説明した内容を、薬剤師に繰り返し説明する意義を理解していないと考えられます。

毎回同じ内容を聞かれうんざりしている

風邪などの急性期の疾患とは異なり、生活習慣病などの慢性期の疾患では急激な体調変化が少ないことから、長期間にわたりDo処方が続く場合も珍しくありません。薬局での服薬指導が毎回同じ内容になってしまうと「同じ説明の繰り返しだから必要ない」と感じる患者さまも少なくないでしょう。

他の患者さまに聞かれたくない

個室や専用の相談ブースなど、プライバシーに配慮した設備を有する薬局も増えていますが、一般的な投薬台は簡素なパーテーションに仕切られたものがほとんどです。病院の診察室のように完全な個室にはなっておらず、他の患者さまに服薬指導中の会話の内容を聞かれる可能性も考えられます。

薬局に非協力的な患者さまへの対処方法

薬局に非協力的な患者さまへの対処方法

患者さまに対し、病状や服薬状況などの必要事項を確認せずに調剤をしてしまうと、重大な健康被害につながる可能性もあります。服薬指導において情報収集に非協力的な患者さまへの対処方法をみていきましょう。

医薬分業の重要性を説明する

「その話は病院でしました」と薬局に対して非協力的な患者さまに対しては、「規則で決まっているから」と強制するのではなく、「病院と薬局でダブルチェックをすることで服薬による健康被害を未然に防ぐことを目的としている」といった医薬分業のメリットを伝えるようにしましょう。実際に薬局でのダブルチェックによって副作用や薬物相互作用の発現のリスクを回避できた事例を伝えることも効果的でしょう。

初回問診票の記入を断られた場合には、必要事項を口頭で確認する

初回問診票に関して「記入するのが面倒」「時間がない」という患者さまに対しては、処方内容を考慮した上で必要最低限の情報を口頭で素早く確認するなど、臨機応変に対応しましょう。

服薬指導の内容を充実させ、患者さまからの信頼を得る

毎回同じ内容の服薬指導を行えば患者さまが「同じ事の繰り返しだから必要ない」と感じるのは当然です。Do処方が続く場合であっても服薬指導により患者さまに伝えるべき内容は多種多様に存在します。薬剤師としての知識を深めて質の高い服薬指導を行うことができれば、患者さまとの信頼関係が生まれて、その患者さまにとって「なんでも相談できる薬剤師」となるでしょう。

プライバシーに配慮する

個室、相談ブースや周囲に会話の内容を聞かれないようにする情報マスキング音を発生させる装置、番号呼び出し装置などの設備のほか、以下のようなプライバシーにも配慮する取り組みが必要でしょう。

  • 待合室から見えないように厚手のカーテンやパーテーションで投薬カウンターを仕切る
  • 他の人の視線を逸らすため待合室の椅子やテレビを投薬カウンターと異なる向きにする
  • 初回問診票に「他の人に聞こえないように話して欲しいなど、薬局で配慮して欲しいことはありますか?」を設問する
  • 薬名、病名などを口に出さずに薬剤情報提供書を用いて指差しで服薬指導する
  • どうしても患者さまからの情報収集が難しい場合は必要に応じて処方元の医療機関へ情報提供を求めましょう。ただし、初回の来局時では非協力的な患者さまでも、最低限の服薬指導を行い、再来局時においても根気よく様々な角度からアプローチを行い信頼関係の構築を目指しましょう。

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    薬剤師にとってコミュニケーション能力も重要に

    この記事では、患者さまが薬局に対して非協力的な理由や、そういった患者さまへの対処方法について解説しました。

    薬剤師の業務は今後、対物業務から対人業務へとシフトしていくと考えられます。それに伴って患者さまの不満やクレームに直面する機会も増えていくため、それぞれの患者さまに柔軟に対応するコミュニケーション能力も薬剤師にとって重要なスキルとなるでしょう。

    また、薬剤師による服薬状況や病状の確認は服薬指導の情報源であり、患者さまのアドヒアランスの向上や服薬による健康被害を未然に防ぐために非常に重要な業務です。患者さまにはこれらの意義を理解してもらうように努めることが必須です。

    さらに、薬のスペシャリストである薬剤師として幅広い知識の上で質の高い服薬指導を続けることでも患者さまの不満は自然と減っていくことでしょう。

    松田宏則さんの写真

    監修者:松田宏則(まつだ・ひろのり)さん

    有限会社杉山薬局下関店(山口県下関市)勤務。主に薬物相互作用を専門とするが、服薬指導、健康運動指導などにも精通した新進気鋭の薬剤師である。書籍「薬の相互作用としくみ」「服薬指導のツボ 虎の巻」、また薬学雑誌「日経DI誌(プレミアム)」「調剤と報酬」などの執筆も行う。

    記事掲載日: 2022/05/10

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