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2020.09.16

薬局の感染対策を考える。人々の健康を守り続けるために必要なこと

薬局の感染対策を考える。人々の健康を守り続けるために必要なこと

2019年12⽉、中国武漢に端を発したとされる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の急速な世界的拡大を背景に、感染症への対策について大きく見直されるようになりました。病院や薬局などの医療提供施設においては、感染拡大のリスクが高いことから、とくに注意喚起が行われています。

また、医療の専門家である薬剤師は国民の健康を守るために、感染症に関する深い知識が求められています。この記事では、患者さまや自分を守るために感染症の知識を深めたい薬剤師向けに、薬局の感染症対策について紹介していきます。

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感染対策の基礎知識についておさらい

感染症とは、細菌やウイルスなどの病原体が体内に入り、多岐にわたる症状を起こす病気のことをあらわします。原因となる病原体には様々な種類があり、黄色ブドウ球菌やA群溶血性レンサ球菌などの細菌だけでなく、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどのウイルスが原因となる場合もあります。

感染対策の基礎知識として、まずは「感染の3要素」を理解しなくてはなりません。感染の3要素には、1.感染源、2.感染経路、3.感染を受けやすい人(感受性のある宿主)が挙げられ、これらの3つが揃うことで感染がおこると考えられています。これらの「感染の連鎖」を断ち切ることが、感染対策において重要となるのです。

感染源には、感染症を発症している患者だけでなく、感染しても症状が現れない患者(不顕性感染者)がいることにも注意が必要です。このような方は保菌者(キャリアー)とも呼ばれ、風邪などで抵抗力が低下した際に、日和見感染を引き起こす場合もあります。感染経路には、接触感染や飛沫感染、空気感染、物質媒介型感染などがあるほか、動物や昆虫を介して感染する場合もあります。

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「スタンダードプリコーション」とは?重要な日頃の感染予防

感染予防のイメージ

感染症について考えるうえで最も重要なのは、「スタンダードプリコーション(標準予防策)」という考え方。「すべての患者の血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等は、感染する危険性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方が基本とされており、感染の有無にかかわらず、予防策を講じることが必要とされています。

1985年に米国CDC(国立疾病予防センター)から提唱された病院感染対策のガイドライン「ユニバーサルプリコーション(一般予防策)」では、既知の感染症に対する予防策が中心として考えられていました。これを拡大し整理したスタンダードプリコーションでは、未知の病原体に対しても、疾患非特異的な共通の対策を行うことが特徴です。今日では、院内における感染予防策を考えるうえで、非常に重要な考え方として注目されています。

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<感染対策の基礎知識①>具体的な感染対策とは?

ここでは、薬剤師を含む医療従事者が実施すべき対策を具体例を交えて解説していきます。

手洗い/うがい

手洗いは、最も基本的な感染対策のひとつであり、石けんと流水による手洗いが原則とされています。目に見える汚染がある場合には、流水による手洗い(スクラブ法)が推奨されていますが、手の除菌という観点では、エタノール含有消毒薬を用いた手指消毒(ラビング法)で代替できます。また、のども手指と同じように、病原体に直接さらされる部分であるため、手洗いと同様にうがいも推奨されています。

マスク/ゴーグル/フェイスシールド/手袋

感染対策のためには、マスクやゴーグル、フェイスシールド、手袋などの衛生用具を使用することも重要です。とくにマスクは医療従事者の鼻腔・口腔の粘膜を守るためにも大切な役割を果たします。感染リスクの高い患者さまと接する場合には、ゴーグルやフェイスシールドの着用も検討すべきでしょう。

また、患者さまの体液や傷のある皮膚、粘膜に触れる可能性がある場合には、手袋の着用が推奨されています。手袋を外した後の手洗いも感染予防のためには欠かせません。

咳エチケット

インフルエンザなどの呼吸器感染症の多くは、咳やくしゃみに含まれる病原体を吸い込むことによって起こります。咳をする際の「咳エチケット」は、他人に感染症をうつさないためにも非常に重要です。咳やくしゃみをする際は、ティッシュやハンカチで口や鼻をおさえて、周囲の人から離れてするようにしましょう。鼻汁や痰がついたティッシュペーパーやマスクは、ビニール袋を用いて密閉し、蓋つきのゴミ箱に捨てなくてはなりません。

こまめな換気や清掃

薬局の待合室のように密閉された空間では、感染症のリスクが高まることが懸念されています。そのため、こまめな換気(1時間あたり6回以上)を行い、定期的に外気を取り入れるようにしましょう。複数の窓がある場合は、空気の流れをつくるため、二方向の壁の窓を開放することが推奨されています。

また、患者さまが触れることの多いドアノブや椅子、投薬台などは、アルコールや抗ウイルス作用のある消毒剤含有のクロスでの清拭消毒を行うことが必要とされています。保険証やお薬手帳など、患者さまから預かる必要があるものについてはひとつのトレーを用いて、その都度トレーをアルコール消毒するなど接触感染防止策を講じるようにしましょう。

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<感染対策の基礎知識②>薬局ができる感染予防策

感染予防のイメージ

ここでは、薬局ができる感染対策について、具体例を挙げながら解説していきます。

待合室の環境改善

薬局の待合室は人が密集しやすく、換気が悪い環境になりやすいため感染リスクが高いことが知られています。薬局内の人数制限を設けたり、椅子の数を減らして患者さま同士の間隔を保ったり、人の密集を避けるための工夫が必要です。

プラスチック板・ビニールカーテン越しに受付や服薬指導を行う

薬を安全に使用には、薬剤師による充実した服薬指導が欠かせません。しかし、近距離となりがちなので、接触感染や飛沫感染のリスクが高いので注意が必要です。病原体の直接的な飛沫を防ぐため、プラスチック板やビニール製のカーテンを設置する薬局も増えています。ただし、完全に感染を防ぐ効果はないため、マスクやフェイスシールドを併用することも感染対策には重要です。

オンライン服薬指導を活用

かねてから注目されてきたオンライン服薬指導も、患者さまと医療従事者の双方を守り、感染対策に高い有効性を示すことが期待されています。2019年12月に改正薬機法が成立するまでは、服薬指導は対面で行うことが義務づけられていました(特区でのみ限定解禁あり)。

そうした中で、改正薬機法により2020年9⽉1⽇から、「オンライン服薬指導」が全国で解禁となりました。これは、対面服薬指導を行ったことのある患者を対象に、当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤を調剤する場合に限ります。

その他の取り組み

薬局ごとに様々な感染症対策が進められています。調剤薬局の予約システムや、LINEを利用した処方箋の送信サービスにより、患者さまの密集を防ぐための工夫を行う薬局もみられます。自動車で来局する患者さまの多いエリアにある薬局では、ドライブスルーによる受付・投薬システムを導入することで、患者さまの感染リスクを軽減することに成功しています。

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公立大学附属病院 感染対策協議会

<感染対策の基礎知識③>感染症が疑われる患者さまが来局した場合の対応

不特定多数の患者さまが訪れる薬局では、感染症が疑われる患者さまが来局することも珍しくありません。とくに冬期などの感染症が流行しやすいシーズンでは、風邪やインフルエンザをはじめとする様々な感染症のリスクが高まります。

感染症が疑われる患者さまが来局した場合には、標準予防策であるサージカルマスクの着用と手指衛生の励行を徹底して、可能であれば個室での対応を行うようにしましょう。新型コロナウイルス感染症のように感染力が強い場合には、標準予防策に加えて、飛沫予防策および接触予防策を実施しなければなりません。個人防護具を着用中また脱衣時には、眼・鼻・口の粘膜に触れないように注意して、着脱の前後で手指消毒を実施することも重要です。

また、来局した患者さまが発熱や上気道症状を有していることのみを理由に調剤の求めを拒否するのは、薬剤師法や「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」における「正当な理由」に該当しないので注意が必要です。場合によってはオンライン服薬指導などを活用して、適切な対応を心がけましょう。

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新型コロナウイルス感染症が疑われる者が薬局に来局した際の留意点について
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今こそ見直すべき薬局の感染症対策

病院では、ICT(感染対策チーム)などに代表される様々な感染症対策が実施されています。そして、それは不特定多数の患者さまが訪れる薬局においても例外ではありません。

新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、感染症対策に取り組む薬局も増えつつあります。地域医療において大きな役割を果たす薬剤師には、感染症についての専門知識も求められています。この記事を参考にして、感染症における正しい知識を習得するとともに、勤務先の感染症対策について話し合ってみてはいかがでしょうか。

記事掲載日: 2020/09/16

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