特に自衛隊は、集団で活動することから、集団感染が起きた際の医薬品管理も大切です。たとえば、下痢が集団的に発生した場合に、同じ薬を処方し続けて底をつくことがないように処方計画に助言したり。医薬品の在庫が不足しないように在庫調整などを行ったりすることが求められています。

自衛隊病院での業務

自衛隊病院での調剤・投薬業務も薬剤官の仕事です。一般の病院薬剤師と同じように、調剤業務以外に病棟業務にあたることもあるでしょう。各自衛隊の部隊に帯同するより、同じ環境で仕事に取り組むことができるため、比較的落ち着いて働きやすい職場と言えるでしょう。また、自衛隊病院はいまや一般の患者さまも受け入れており、自衛隊員以外と接することが出来る点は特徴です。

薬剤官になるには？受験資格や試験内容を解説

一般的な就職活動や転職活動では薬剤官にはなれません。"2つの試験"に合格し、訓練を乗り越えれば、晴れて薬剤官として働くことができます。具体的には、以下のような流れです。

▼STEP1 薬剤師国家試験に合格する

▼STEP2 自衛隊幹部候補生採用試験に合格する

【1次試験】筆記試験

【2次試験】小論文試験、口述試験、身体検査

ちなみに、自衛隊幹部候補生採用試験・薬剤科を受けるには、次のような条件をクリアしている必要があります。【日本国籍を有していること】【20歳以上28歳未満であること】【6年生の薬学課程を修めて卒業していること】など。薬学部は6年生であるため、24歳から28歳の5年間しか受験できるチャンスがないのが特徴です。

自衛隊幹部候補生採用試験・薬剤科とは？

1次試験は一般教養と専門分野に分かれています。一般教養の試験では、人文科学・社会科学・自然科学をはじめ、英語・文章理解・判断推理などの問題が出題。専門分野の試験では、大学専門課程修了程度の知識を問われる"薬学に関する問題"が出題されます。1次試験は択一式、2次試験は択一式と記述式となっています。

2次試験では、小論文試験と口述試験に加えて、自衛官として役割を全うできる身体機能を有しているかどうか調べる身体検査も行われます。どんなに試験結果が優秀であっても、身体機能が基準に達していないと薬剤官になることはできません。身長、肺活量、視力、色覚、聴覚などの項目が定められています。

募集は毎年3月から5月。1次試験は5月頃、2次試験は6月頃に実施されます。

▼詳細は『自衛隊幹部候補生について』

女性でも応募できます

自衛隊幹部候補生採用試験は女性も受験できます。実際に女性薬剤官として活躍している方もいらっしゃいます。

男女問わず注意しなければいけないのは、薬剤官にも厳しい訓練が待っているということです。薬剤官は自衛隊の一員であり、他の自衛隊員と同様に自衛隊幹部候補生として訓練を受けなければなりません。防衛基礎学／戦技訓練／戦術などの訓練。さらに、寮生活であることから、「家庭と両立したい」「子育てをしたい」という希望は叶いづらくなります。

しかし、必ずしも家庭との両立が難しいという訳ではありません。自衛隊幹部候補生として訓練や薬剤官としての訓練を受けた後に、自衛隊病院に配属された場合。一般的な病院薬剤師として働くこともできます。最初から無理だと諦めるのではなく、様々な可能性を視野に入れて人生設計を考えておくと良いでしょう。

薬剤官の年収はいくら？

薬剤官は自衛隊幹部候補生として入隊した、"幹部候補"がなれる仕事です。そのため、以外にも高収入を得ることができます。初任給は以下の通りです（2019年1月1日現在）。

▼歯科・薬剤科

・大卒（歯科・薬剤科）　246,100円

・大学院卒　　　　　　　246,100円

ちなみに、平均年収は公表されていませんが、自衛官の平均年収は一般的に高めの設定です（防衛省・自衛隊帯広地方協力本部HP『自衛官募集』より）。また、年に2回、6月・12月にはボーナスも支給されます。

さらに、階級に応じて昇給もします。曹長として入隊した後は、大卒程度試験合格者か院卒者試験合格者かによって流れが変わります。具体的には、大卒程度試験合格者は【3等陸・海・空尉】、院卒者試験合格者【2等陸・海・空尉】です。

福利厚生が充実している

自衛隊幹部候補生である薬剤官は福利厚生が充実していることもポイントです。福利厚生としては次のように募集要項に記載されています。

・貯金事業　　　普通、定額積立、定期預金

・貸付事業　　　普通・特別・住宅・財形など

・物資販売事業　売店・展示即売会など

※他：防衛省共済組合施設（宿泊、野球場、テニスコートなど）、その他提携している保養施設、会員制リゾートや会員制スポーツクラブなどを利用可

収入面や福利厚生を重視したい方には、魅力的ではないでしょうか。もちろん、待遇面だけでなく仕事のやりがいも十分です。国の安全と平和を守る自衛隊の仕事についているため、社会への貢献度も信用度も高く、誇りを持って働けるでしょう。

＜検討する前にチェック！＞薬剤官として働くデメリットとは

待遇面が充実し、仕事のやりがいも十分に働くことができる薬剤官。将来性も高いため前向きに検討される方もいらっしゃるのではないでしょうか。一方で、薬剤官だからこそのデメリットもあります。しっかりと確認しておきましょう。

「必ず採用されるとは限らない」

薬剤官として採用されるのは毎年わずか。24歳から毎年試験を受けたとしても、必ずしも薬剤官になれるとは限らない狭き門であると言います。しかも、薬局や企業で働きつつ...となれば、勉強時間は十分に確保することができません。万が一、薬剤官になれなかった場合の代替プランも準備しておくと良いでしょう。

「プライベートとの両立が難しい」

比較的に仕事は忙しく、土日であっても出勤しなければならないこともあります。自衛隊病院で勤務する場合、調剤業務や投薬業務はもちろんのこと、当直や夜勤が求められることもあるでしょう。「プライベートを充実させたい」「家族との時間を大切にしたい」と思う方には両立が難しいかもしれません。

「転勤で生活が落ち着きにくい」

部隊に帯同する場合、国内の被災地や海外の治安が悪い地域などに派遣されることもあるようです。特に、自然災害に対応する場合、一刻を争うため急な派遣が決まることもあるのだとか。そのため、生活が安定しにくいそうです。また、定期的に転勤もあるため、ひとつの場所で落ち着いて生活をしたい人には向いていないでしょう。

薬剤官は「やりがいのある仕事」

【薬剤官の仕事内容／受験資格や試験内容／初任給や平均年収】などを解説しました。薬剤官は国の安全と平和を守るという自衛隊の大きな役目を担っている非常にやりがいのある仕事です。自衛隊の幹部候補でもあることから、高収入で充実した福利厚生も整っているので安定性も非常に高いことが魅力でしょう。

一方で、体力的な負担や不規則な生活になりやすいなど、薬局や企業で働く薬剤師とは違った側面もあります。プライベートも充実させたい人には自分の時間が減ることを考慮する必要があるでしょう。待遇面や生活面のバランスを考えた上で、「社会に貢献する薬剤官を目指したいと思う方」はぜひ前向きに検討してくださいね。