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2019.08.02

「アレルギー疾患医療提供体制」って?日本の現状や薬剤師に求められる役割を解説

「アレルギー疾患医療提供体制」って?日本の現状や薬剤師に求められる役割を解説

アレルギー疾患を抱える日本人は多く、さらに年々増加しています。特に、"国民病"と言われる花粉症は、二人に一人が症状に悩まされている現状があるほどです。

増加の一途をたどるアレルギー疾患医療のために。2017年7月、厚生労働省によって、国や都道府県が取り組むべき事柄をまとめた【アレルギー疾患医療提供体制】が発表。そこには、適切な治療の提供などを目指すための基本方針が記されています。

そこで今回は、【アレルギー疾患医療提供体制の概要/薬剤師の関与の仕方/求められるスキル】について解説していきます。

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アレルギー疾患に悩む日本人の現状

アレルギーの患者さまのイメージ

前提として、どんなアレルギー疾患があるのでしょうか?どれだけの人数が悩みを抱えているのでしょうか? 厚生労働省が発表した資料を参考にご説明します。

花粉によるアレルギー性鼻炎(花粉症)

アレルギー疾患の代表とされている、アレルギー性鼻炎。鼻水、鼻づまり、くしゃみといった鼻炎症状が続く疾患です。中でも、花粉が原因となる花粉症は、 "国民病"とも言われるほど有病率が高いと言います。2006年の調査によると、国民の47.2%がアレルギー性鼻炎に悩んでいるといった結果が出ているほどです。

喘息

咳や痰、息苦しさ、喘鳴(ぜんめい)など、様々な症状が見られる喘息。悪化すると、「喘息死」といって死に至ることもある怖い疾患です。2008年においては、ぜんそく患者の数は約800万人まで増加。その内、19.9%が5歳前後、8.3%が13-14歳であることから、子どもに多い疾患と言えるでしょう。

アトピー性皮膚炎

かゆみのある湿疹が良くなったり悪くなったりする、アトピー性皮膚炎。一般的に、6か月以上続くと慢性と判断されます。小児から大人まで罹患する上に、何度も繰り返すため厄介な疾患と言えるでしょう。2014年においては、患者数が約46万人いるとされており、以降ここ数年間の有病率は横ばいになっています。

食物アレルギー

特定の食べ物に含まれるアレルゲンが、免疫機能の過剰反応を引き起こすことで様々な症状が表れるのが食物アレルギーです。2010年の有病率は、乳児期が5〜10%、学童期1〜2%、成人は不明となっています。アレルギー疾患の患者さまは年々増加しており、特に免疫機能が未完成である若年期に多い傾向があるとされています。

▼詳細はコチラ>『アレルギー疾患の現状等』

アレルギー疾患医療提供体制とは?

アレルギー疾患医療提供体制のイメージ

アレルギー疾患医療提供体制は、生活する地域に関わらず、等しくアレルギー疾患の適切な治療が受けられるよう、アレルギー疾患全体の質の向上を進める目的で制定されました。

発端は、2015年12月施行のアレルギー疾患対策基本法。この法律をもとに、アレルギー疾患対策に関する基本方針が制定され、2016年2月にアレルギー疾患対策推進協議会で議論が。2019年3月には厚生労働大臣により「アレルギー疾患医療提供体制」が告示されました。

「アレルギー疾患医療提供体制」で取り決められた政策は、大きく2つあります。

【1】国による政策

  • 国は、アレルギー疾患を有する者が居住する地域に関わらず、適切なアレルギー疾患医療や相談支援を受けられるよう、アレルギー疾患医療の提供体制の在り方に関する検討を行い、その検討結果に基づいた体制を整備する。
  • (基本指針 第3条(2)オ)

  • 国は、アレルギー疾患医療の提供体制の更なる充実を図るため、国立研究開発法人国立成育医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構相模原病院等アレルギー疾患医療の全国的な拠点となる医療機関及び地域の拠点となる医療機関のそれぞれの役割や機能並びにこれらの医療機関とかかりつけ医との間の連携協力体制に関する検討を行い、その検討結果に基づいた体制を整備する。
  • (基本指針 第3条(2)カ)

  • 国は、国立研究開発法人国立成育医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構相模原病院を中心とする医療機関の協力のもと、最新の科学的知見に基づく適切な医療に関する情報の提供、アレルギー疾患医療に関する研究及び専門的な知識と技術を有する医療従事者の育成等を推進する。
  • (基本指針 第3条(2)キ)

    【2】都道府県による政策

  • 人口分布、交通の利便性等地域の実情を総合的に考慮し、都道府県の中でアレルギー疾患の診療ネットワークの中心的な役割を果たしている、または将来果たすことが期待される医療機関を都道府県拠点病院として選定する。
  • 都道府県は、アレルギー疾患対策を推進するため、都道府県連絡協議会を設置する。都道府県連絡協議会は、都道府県拠点病院で実施する調査、分析を参考に、地域におけるアレルギー疾患の実情を継続的に把握し、都道府県拠点病院を中心とした診療連携体制、情報提供、人材育成等の施策の企画、立案や実施等、地域の実情に応じたアレルギー疾患対策の推進を図る。
  • ※引用元:アレルギー疾患医療提供体制の在り方 について

    アレルギー疾患の治療で活躍するのは「かかりつけ薬剤師」

    薬を説明しているイメージ

    それでは、アレルギー疾患医療体制の中で、薬剤師はどのような活躍が求められているのでしょうか?

    薬剤師の最も大切な役割は、アレルギー疾患の治療に有効かつ安全な医薬品を、医師の処方に基づいて正しく提供することです。具体的には、【①医療機関と連携して行う情報提供や服薬指導】【②患者さまからの報告に基づいた、服薬状況や副作用等に関する処方医へのフィードバック】が求められます。

    また、薬物治療を全面的にサポートするには、長期で患者さまの状態を見守り管理できる体制を整える必要があります。だからこそ、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」が大切な役割を担うと考えられているのです。長くお付き合いが信頼関係を築き、体調の小さな変化やなども細かに相談していただけるようになるでしょう。

    薬剤師に求められる知識・スキルや資格は?

    医療機関との連携のイメージ

    上記の項目で述べたように、「アレルギー疾患の治療に有効かつ安全な医薬品を、医師の処方に基づいて正しく提供すること」が薬剤師の大切な役割です。では、どのような知識やスキル、さらには資格が求められるのでしょうか?

    求められる知識やスキル

  • 患者さまから、服薬状況や副作用等を引き出すヒアリングスキル
  • 医療機関への情報提供時に欠かせないコミュニケーションスキル
  • アレルギーを始め、食生活や生活改善などに関する幅広い知識
  • アナフィラキシーショック対応の知識(エピペン注射の指導など)
  • 抗アレルギー薬、ステロイド内服、外用ステロイドなど、アレルギー疾患の患者さまに処方される薬は様々です。中でも、緊急性が高いアナフィラキシーショック時に使用するエピペン注射や内服剤などが処方された場合は、適切なタイミングや使用方法などについて指導する必要があります

    また、アレルギー疾患の治療は長期にわたるケースが多いです。患者さまと信頼関係を築き、些細な体調の変化を伺うことで、副作用をモニタリングする必要もあるでしょう。

    アレルギー疾患関連の資格

    現在、アレルギー疾患を専門に扱う薬剤師の認定制度はありません。代わりに、日本小児臨床アレルギー学会認定『小児アレルギーエデュケーター』があります。この資格は、アレルギーに関する専門技術と指導技術を持ち、小児のアレルギー疾患患者さまやご家族への啓発指導などを行うことができるものです。

    薬剤師や看護師などの国家資格を持ち、アレルギー専門医(小児科)指導の下で臨床経験がある人が対象となります。 医薬品のエキスパートとしてアレルギー疾患の治療に積極的に参加したいという方は、取得を検討してみると良いでしょう。

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    アレルギー疾患に悩む大勢の患者さまのために

    今回は、【アレルギー疾患医療提供体制の概要/薬剤師の関与の仕方/求められるスキル】などについて解説しました。

    花粉症をはじめ、アレルギー疾患は非常に身近な病気です。しかし、なかなか完治しにくく治療が長引きやすい傾向にあるため、薬剤師による指導やサポートが必要となっています。

    想像以上に、アレルギー疾患に悩む患者さまは多くいらっしゃいます。そうした方々のために、薬剤師として出来ることを改めて考えてみてはいかがでしょうか。そして、興味があるのであれば、専門知識や指導技術を学んだり、資格を取得するなどして活躍していって欲しいと願います。

    記事掲載日: 2019/08/02

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