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  • 公開日:2020.06.03

『感染制御認定薬剤師』とは?概要や資格取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

『感染制御認定薬剤師』とは?概要や資格取得方法を解説【薬剤師の資格入門】

病院内でおこる様々な感染症は、入院されている患者さまやそのご家族はもちろん 、時には職員の健康に影響をおよぼすこともあります。

2020年1月16日に国内初の感染者が確認された「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 」も感染症のひとつ。クラスターと呼ばれる集団感染が確認された病院もある程に猛威を振るっています。

安全で快適な医療環境を提供するためには、感染防止および感染制御の対策が非常に重要です。 そうした中で、これらの感染対策の役割を担う職種として注目されているのが、『感染制御認定薬剤師』です。

この記事では、【『感染制御認定薬剤師』について/役割や活躍できる場所/資格取得の条件】などについて解説していきます。

『感染制御認定薬剤師』とは?

「感染制御認定薬剤師「とは、日本病院薬剤師会が認定を行う認定薬剤師資格の一つで、 感染制御に関する専門知識と技術を有する薬剤師を評価する資格制度です。患者さまの感染症治療を支援し、薬学的管理ができることはもちろん、感染制御に必要な消毒薬、微生物、耐性菌などに関する基礎知識を十分に理解していることが求められます。個々の症状や状況に合った薬物療法や感染対策を、医師や看護師などの他職種に提案することもあります。

平成20年度より資格制度が施行され、令和4年度10月1日時点での 『感染制御認定薬剤師』の認定者は、合計1,071名(うち更新者548名) の薬剤師が資格を取得しています。さらに上位資格として『感染制御専門薬剤師』も設けられており、学会発表や学術論文などの実績を重ね、認定試験に合格することでステップアップが可能です

▼参考記事はコチラ>日本病院薬剤師会 感染制御専門薬剤師部門

『感染制御認定薬剤師』の役割

感染制御認定薬剤師イメージ

『感染制御認定薬剤師』は、主に病院内の感染対策チーム(ICT:Infection Control Team)の一員として、院内感染防止対策に取り組みます。感染対策チームとは、院内で発生する様々な感染症から患者さまや職員の安全を守るために活動を行う組織です。薬剤師以外にも、医師や看護師、臨床検査技師、栄養士などの職種が集まり、病院全体の感染対策活動に従事します。

具体的な業務内容としては、抗菌薬や消毒薬などの適正使用の推進をはかるため、薬剤の管理や他職種に対する助言を行います。院内環境衛生の管理のため、ICT会議で感染対策に関する報告や協議をすることや、ICTメンバーによる院内ラウンドに参加することもあります。地域医療施設との連携により、感染に関する合同カンファレンスの開催や、感染対策マニュアルの作成と改訂に携わることも、重要な業務の一つです

『感染制御認定薬剤師』が活躍できる場所

『感染制御認定薬剤師』の資格を有する薬剤師の多くは、病院における感染対策チームの一員として活動を行うことが一般的です。感染症は、対応や対策を誤ってしまうと、広範囲の人々に被害を与える恐れのある疾患です。感染制御の重要性が注目される中、病院の規模を問わず、多くの施設で 感染対策チームが設置されるようになりました。資格を有する薬剤師はまだまだ不足しているため、活躍の場面は広がっています。

また、近年では高齢者介護施設でも、感染制御の必要性が訴えられています。高齢者介護施設は、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者の方が集団生活を行う場であるため、感染症が蔓延しやすい環境にあります。感染のリスクをおさえ、被害を最小限にとどめることが求められていますが、専門知識を持つスタッフが少ないことから、『感染制御認定薬剤師』の資格を持つ薬剤師がアドバイスを行うことも期待されています。

『感染制御認定薬剤師』になるためには?

感染制御認定薬剤師イメージ

『感染制御認定薬剤師』になるためには、以下のすべての要件を満たしたうえで、認定申請を行います。認定期間は5年間であり、所定の要件を満たすことで更新が可能です。

(1)日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。
(2)薬剤師としての実務経験を5年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす。
(3)別に定める学会のいずれかの会員であること。
(4)日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会認定薬剤師であればこれを満たす。
(5)申請時において、引き続いて3年以上、施設内の感染対策委員会または院内感染対策チームの一員(院内感染対策チームと連携しての活動を含む)として感染制御活動に従事していること(所属長の証明が必要)。
(6)施設内において、感染制御に貢献した業務内容及び薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を20例以上報告できること。
(7)日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会、及び別に定める学会が主催する感染制御領域の講習会などを所定の単位(20時間、10単位)以上履修していること。ただし、日本病院薬剤師会主催の感染制御に関する講習会を1回以上受講していること。
(8)病院長あるいは施設長等の推薦があること。
(9)日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師認定試験に合格していること。

引用:一般社団法人日本病院薬剤師会「感染制御認定薬剤師認定申請資格」より


専門性を高めてスキルアップを目指そう

『感染制御認定薬剤師』は、感染制御において高いスキルを持つ薬剤師として、病院や施設などでの活躍が期待されています。資格取得のためには、様々な条件があるだけでなく、症例報告や講習会の参加などの要件を満たさなくてはなりません。

決してハードルは低くありませんが、薬剤師としての調剤や病棟業務に加え、感染対策チームの一員として力を発揮することができるため、やりがいもあり自身のキャリアアップにもつながります。興味のある方は、本資格の取得をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

ファルマラボ編集部

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記事掲載日: 2020/06/03

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