業界動向
2019.07.29

<薬局紹介>患者さま一人ひとりとの対話を大切にする【田原町薬局】

<薬局紹介>患者さま一人ひとりとの対話を大切にする【田原町薬局】

田原町駅から1分の場所にある【田原町薬局】。30年以上前に開局され、浅草にお住まいの方や観光・旅行のために訪れた方など様々な患者さまが利用されています。

歴史ある田原町薬局を、薬剤師2年目にして引き継いだのが、経営者を務める小嶋夕希子さん。経験が少ない中で、どのような工夫で地域との深い繋がりを築いたのでしょうか。

そこで、小嶋さんを取材し、ご自身の考え方や田原町薬局について伺いました。

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「太陽系薬剤師」として田原町薬局を経営する小嶋さん

小嶋さんがお話している写真

薬剤師2年目の時に田原町薬局を開業されていますよね。薬剤師としての経験も少なく不安もあったと思いますが、踏み切れた原動力は何なのでしょうか?

母親の介護と看取りをした経験が原動力になっています。約3年の闘病生活の間、治療、生活、お金などの悩みを抱えながら母を支えていました。薬に関する悩みも抱きましたが、それを解決してくれるような記憶に残る薬剤師さんとの出逢いは一度もありませんでしたね。

しかし、自分が薬剤師になってみると、当時抱えていた悩みの多くは薬剤師が解決できることに気づきました。薬の悩みだけではありません。介護や看取りに関わる悩みの中にも薬剤師が解決できるものがありました。

また、開業を視野に入れた頃から、様々な工夫や努力する素敵な薬剤師と出会うように。その度に、「当時なぜこのような薬剤師に出会えなかったんだろう」と悔しく思いましたね。

こうした経験から、「救える力があるのに、救うべき人に手を差し伸ばせていない」という状況を解決したいと考えるようになったんです。

ご自身の原体験によって一歩を踏み出したのですね。開業後、小嶋さん自身はどのような薬剤師として働かれているのでしょうか?

"お客様と薬剤師との出逢いを創る"をミッションに掲げ、薬局運営・開業支援・薬剤師起業家育成などを行っています。そうした中で、私自身を表す代名詞に、『太陽系薬剤師』という言葉を使っています。この言葉は、「枠にはまらず、高い視座で未来を考える」という私の行動指針を表すもの。最近は、このキャッチコピーで覚えられていることも多いですね。

薬剤師は普段調剤室の中にいるため、視野が狭くなりがちです。私自身もそうでした。だからこそ、「太陽系薬剤師」と名乗ることで、田原町薬局という小さい薬局で働いていても視座を高く保つようにしています。浅草だけに留まらず、台東区、東京、日本、さらには地球自体をより良くしようという視点を持っていようと心がけています。

患者さま一人ひとりを理解し、コミュニケーションを大切に

コミュニケーションツールである棚の写真

長い歴史を持つ田原町薬局ですが、小嶋さんが引き継いでからどうやって患者さまの信用を得たのでしょうか?

まずは、田原町薬局を長くご利用いただいている患者さまとの関係性づくりを心がけました。特に、店内の装飾や改装を決める際は、「この壁紙何色が良いと思いますか?」など、患者さまと積極的に会話をするように。そうすることで、一緒に作り上げた薬局として愛着が生まれ、信頼関係が構築できたように思います。

あとは、薬局内に猫の物を多く置いているのもちょっとした工夫です。これ、「猫好きなんですか?」と患者さまに声をかけてもらい、コミュニケーションを生むための工夫なんです。こういったさりげないコミュニケーション一つひとつを大切にしています。重度の猫好きであることは間違いないのですが...。

薬以外のコミュニケーションも大事にされているんですね。日常会話から患者さまの情報を得ているのでしょうか?

そうですね、日常会話から患者さまの健康状態を把握することが大切だと考えています。

と言うのも、患者さまの中には、医師のピンポイントな質問に対して、「大丈夫です」と答えてしまう方が多くいらっしゃいます。だからこそ、薬局でのたわいもない会話が重要ですし、得た情報は薬歴にしっかり記録しておきます。

たとえば、「血糖値が下がらなくて...」と落ち込む患者さまのお話をよく聞くと、体に良いと思ってみかんを毎日たくさん食べている事実が分かって。そういったライフスタイルによる原因は会話をしないと分からないですよね。

また、薬に関する会話の中でも、患者さまを知るためのコミュニケーションをするようにしています。「毎食後に薬を飲んでください」とお伝えするにしても、仕事上1日1回しかご飯が食べられない方や夜働いている方などもいます。そもそもどういう生活をされているのか、前提部分を聞き出すことが大切です。

一緒に働くメンバーは家族。幸せな人生を生きて欲しい

小嶋さんがお話している写真

「太陽系薬剤師」としての小嶋さんの考え方を踏まえ、田原町薬局においても自由で型にはまらない風土が根付いているのでしょうか?

患者さまのためにベストを尽くすなら、若干の損失が出ても良いと考えて、自由にチャレンジしてもらっています。メンバーそれぞれに特徴があるのも、自由な風土の要因です。

メンバーの中には、自分の会社を持っている人、クリニックで地域医療コーデイネーターをしながら薬局で働いている人、さらには薬剤師の傍ら歌手として活動をしている人もいます。個が立っていることで、様々な視点やアイデアが生まれているんだと思いますよ。

どのメンバーも、『人が喜ぶことをする』『自分がやられて嫌なことはしない』といった人としてのベースが備わっています。だから、特別な指導はしていません。

メンバーに対する信頼のもと、自由な風土が成り立っているんですね。小嶋さんにとって一緒に働くメンバーはどのような存在なのでしょうか?

一言で表わすと、「家族」ですね。メンバーには、自身や家族、大切な人が満たされている、幸せな人生を生きて欲しいという思いがあります。私たちは患者さまに元気を与える立場ですが、そもそも私たちが幸せでないと患者さまを元気づけることはできませんよね

メンバーの大切な人も大事にしたいと思っているので、イベントをする際はメンバーの家族を交えて絆を深めています。

メンバーの幸せを第一に考えることで、患者さまからの反応は良くなりましたか?

患者さまから、「ここの薬局はいつも楽しそうに働いているね」と言っていただくことが多く嬉しいです。メンバーのみんなが個性を活かして働いているため、それぞれにファンの患者さまが付いているんです

中には、店舗の前を通るたびに、窓の外から手を振ってくださる患者さまもいらっしゃいます。楽しく働く薬剤師の姿は患者さまに伝わるものなのだと実感しましたね。

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インフラの役割を果たす薬局。地域のハブのような存在に

地域における田原町薬局の存在はどのように変化していくのでしょうか?

地域にとってなくてはならない存在になること。そして、"ここにあり続けること"を目標としています。現在、田原町薬局は医療連携部を立ち上げ、色々な地域に活動を広げていこうとしています。たとえば、『フロム浅草」という地域医療に関わる人たちが集まるイベントなどを開催しているんです。

以前は、一人で薬局を回していてイベントなどはできませんでした。しかし、メンバーが集まり地盤が固まったので、今後は薬局外での活動をもっと増やす予定です。私たちが生きている間に留まらず、もっと先の地域医療を支えることを見据えて、今後の活動をしていきたいと考えています。

最後に今後のキャリアに悩む薬剤師に一言お願いします。

薬剤師は仕事ではなく、「職業」や「資格」と捉えて欲しいですね。薬局薬剤師や病院薬剤師はあくまで職業。どうにも、資格という枠に固執しすぎている方が多い印象があります。

資格ありきではなく、「何をしたいのか」「どうなりたいのか」「どう覚えられたいのか」など、自分自身について真剣に考えると良いかもしれません。その答えがあれば、"なりたい自分"や"やりたいこと"を実現するための選択ができるようになるのではないでしょうか。

小嶋さんの写真
  • 小嶋夕希子さん

19歳の時、唯一の肉親であった母親の病が発覚。闘病を支えるため大学を退学し社会へ出る。その後、介護と看取りを経験し、「医療の道を進んでほしい」という母の遺言がきっかけで薬剤師を志す。

薬学部在学中に起業し、スポーツ用品の輸入販売やアスリートプロモーションのコンサルティングなどの事業を経験。卒業後は、"まちの薬局"の魅力と可能性に魅せられ開業を志し、卒業後2年目の冬東京浅草にて30年続く田原町薬局を事業継承し独立。

現在は、「お客様と薬剤師との出逢いを創造する」をミッションに掲げ、薬局経営事業、人材育成事業、起業家育成事業の三本柱で事業展開している。

記事掲載日: 2019/07/29

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