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  • 公開日:2023.06.16

『日本褥瘡学会認定師』とは?在宅医療増加に備え、薬剤師が取っておきたい資格【薬剤師の資格入門】

『日本褥瘡学会認定師』とは?在宅医療増加に備え、薬剤師が取っておきたい資格【薬剤師の資格入門】

薬剤師が日本褥瘡学会認定師の資格を取得するメリットをわかりやすく解説します。また、今後需要が高まる褥瘡治療への薬剤師参加について、具体例をもとに説明します。

「日本褥瘡学会認定師」とはどんな資格?

日本褥瘡学会認定師とは

日本褥瘡学会認定師は、褥瘡の予防から治療まで幅広い問題の解決を目的に日本褥瘡学会が設立した資格です。

認定資格には、「褥瘡認定師」「在宅褥瘡予防・管理師」の2種類があり、申請時に有する資格に応じて名称が変わります。薬剤師の場合は、『認定褥瘡薬剤師』として分類されるのが特徴です。

褥瘡認定師は褥瘡の予防や医療を実施するための適切な知識・技能を持っていることを証明するもの、在宅褥瘡予防・管理師は各地域の褥瘡認定師と連携して在宅での褥瘡予防や治療の向上をはかる能力を証明するものとなっています。

認定制度の背景と目的

認定制度ができた背景には、褥瘡医療の水準を向上させる狙いがあります。 認定制度を設けることで、褥瘡医療にかかわる医師・薬剤師・看護師などが、褥瘡に対する適切な知識を持ち、技術を向上させることを目的としているのです。

薬剤師が日本褥瘡学会認定師になる意義とそのメリット

褥瘡治療への薬剤師参加の意義

褥瘡とは簡単にいうと、一定時間続けて外からの力が加わることで皮膚の血流が悪くなり、皮膚がもとに戻らない状態のこと。「床ずれ」とよばれていた時期もあり、以前は完治しにくい皮膚疾患でしたが、適切な処置と薬剤の投与を行えば治せる疾患です。

褥瘡を治すためには以下のような処置が必要となります。

創内の薬剤を安定的に滞留させる

創の保護や固定を行い、薬剤の効果安定化を計る

残存組織に対して、適切な薬剤を選択する

薬物療法に必要な病態評価と薬剤特性を理解して治療を行う

上記を適切に行うには、医師や看護師だけでなく、薬物療法に有用な評価指標や薬剤、創傷被覆材の特性に関する知識を持った薬剤師の協力が重要となります。

国立長寿医療研究センターのデータによると、従来の医師と看護師のチーム医療に対して、薬剤師が関わるチーム医療の褥瘡治癒期間は1/2~1/3に短縮されたという結果が得られています。

日本褥瘡学会認定師の資格を取得した薬剤師がチーム医療に参画すれば、適切な褥瘡治療と治療期間の短縮に貢献することが可能となるのです。

薬剤師が資格を取得するメリット

薬剤師が認定師を取得するメリットは、今後の褥瘡治療の発展に対して高い価値提供ができる証となり、未取得の薬剤師とは差別化が図れるという点です。

さらに、2022年7月に新設された、「褥瘡・創傷専門薬剤師認定制度」の認定条件の1つにもなっています。

褥瘡・創傷専門薬剤師は、薬剤師による予防と治療による薬学的な介入によって、褥瘡医療の水準を向上させて国民の福祉に貢献することを目的とし、その知識および経験を持つ薬剤師を認定するために制定されました。

この制度の新設は、自宅介護などで褥瘡に苦しむ多くの患者さまを治癒へと導くため、また、寝たきりになり褥瘡を発症してしまう前に予防を徹底するため、褥瘡治療の専門的な知識や技能を習得した薬剤師の需要が高まっていることの表れといえるでしょう。

褥瘡認定師になるには

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申請資格

褥瘡認定師の申請には、以下の資格をすべて満たしている必要があります。

(1)薬剤師の免許を取得後、4年以上経過している(※)

(2)4年以上引き続いて日本褥瘡学会正会員である

(3)4年以上褥瘡の予防、医療に従事している

(4)申請までの褥瘡の予防や医療に直接関与した症例について、病歴要約を有する

(5)日本褥瘡学会地方会主催の教育セミナーの受講証明書を有する

(※)薬剤師以外に、医師、看護師(准看護師を除く)、管理栄養士、理学療法士、作業療法士を取得後4年以上を経過していれば認定師申請資格を有します。

申請に必要な書類

褥瘡認定師の申請に必要な書類は以下のとおりです。

(1)認定師認定申請書

(2)薬剤師免許証の写し

(3)履歴書

(4)医療歴証明書ⅠまたはⅡ

(5)症例の記録※写真はカラー

(6)業績目録

※以下の発表、論文を上記申請症例に代えることができる

●日本褥瘡学会、日本褥瘡学会地方会の発表(筆頭)1編を1症例
●褥瘡に関する論文(筆頭)1編を2症例

(7)日本褥瘡学会公認教育セミナーの受講証明書

(8)業績年次報告

※当該年1月1日から12月31日までを通年とする

(9)褥瘡を有する患者における褥瘡治療薬・創傷被覆材の選定記録、薬効などの評価録、副作用の抽出録、薬剤管理指導録、などを記載した医療記録(10症例)

審査料・登録料

認定師の認定や更新に必要な審査料・登録料は以下のとおりです。

  • 審査料
  • 認定審査料:10,000円(更新審査料:10,000円)

  • 登録料
  • 認定登録料:10,000円(更新登録料:10,000円)

    認定までの流れ

    褥瘡認定師に認定されるまでの流れは以下のとおりです。

    (1)申請に必要な書類と認定審査料を決められた期日までに認定師認定委員会に提出する

    (2)認定師認定委員会から認定審査の日時が公示される

    (3)申請者に対して認定審査が行われる

    ※委員会が必要と認めた申請者に対しては、筆記または口頭の試験が行われる

    (4)認定審査の結果が申請者に通知される

    (5)認定審査合格者は、登録料を学会事務局に納付する

    (6)認定証が交付される

    資格を更新するには

    認褥瘡認定師の継続には、資格取得から5年ごとに更新が必要です。資格更新の流れは以下のようになっています。

    (1)更新に必要な申請書類を認定師認定委員会に提出し、更新審査料を納付する

    申請書類(認定師更新申請書/履歴書/業績目録/業績年次報告)

    (2)申請者に対して更新審査が行われる

    (3)更新審査の結果が申請者に通知される

    (4)認定審査合格者は、登録料を学会事務局に納付する

    (5)認定証が交付される

    在宅褥瘡予防・管理師になるには

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    申請資格

    在宅褥瘡予防・管理師の申請には、以下の資格をすべて満たしている必要があります。

    (1)薬剤師の免許を取得後、4年以上経過している(※)

    (2)資格申請時に日本褥瘡学会正会員である

    (3)2年以上在宅療養に従事し、褥瘡の予防および医療に関与している

    (4)以下のどちらかを有している

    ●日本褥瘡学会在宅医療委員会主催の在宅褥瘡セミナーの受講証明書

    ●日本褥瘡学会在宅褥瘡e-ラーニングをすべて受講した証明

    (※)薬剤師以外に、医師、看護師(准看護師を除く)、管理栄養士、理学療法士、作業療法士を取得後4年以上を経過していれば認定師申請資格を有します。

    申請に必要な書類

    在宅褥瘡予防・管理師の申請に必要な書類は以下のとおりです。

    (1)認定申請書

    (2)薬剤師免許証の写し

    (3)履歴書

    (4)医療・介護歴証明書ⅠまたはⅡ

    (5)療養録

    ※褥瘡の予防や医療に関与した5名の在宅患者記録(関与した年月、基礎疾患、年齢、性別、関与した内容)を記載

    (新規申請時は2年以内の記録とする)

    (6)日本褥瘡学会在宅医療委員会主催の在宅褥瘡セミナーの受講証明書

    (7)業績年次報告

    ※当該年1月1日から12月31日までを通年とする

    審査料・登録料

    在宅褥瘡予防・管理師の認定や更新に必要な審査料・登録料は以下のとおりです。

  • 審査料
  • 認定審査料:3,000円(更新審査料:3,000円)

  • 登録料
  • 認定登録料:3,000円(更新登録料:3,000円)

    認定までの流れ

    在宅褥瘡予防・管理師に認定されるまでの流れは以下のとおりです。

    (1)申請に必要な書類と認定審査料を決められた期日までに認定師認定委員会に提出する

    (2)認定師認定委員会から認定審査の日時が公示される

    (3)申請者に対して認定審査が行われる

    ※委員会が必要と認めた申請者に対しては、筆記または口頭の試験が行われる

    (4)認定審査の結果が申請者に通知される

    (5)認定審査合格者は、登録料を学会事務局に納付する

    (6)認定証が交付される

    資格を更新するには

    在宅褥瘡予防・管理師の継続には、資格取得から5年ごとに更新が必要です。資格更新の流れは以下のようになっています。

    (1)一般社団法人日本褥瘡学会正会員の登録がされていること

    (2)学術集会、地方会、教育セミナー、在宅褥瘡セミナーのいずれかに5年間で2回の参加を証明する受講証を計2枚(申請者は同一年度の複数回受講は不可)

    (3)症例記録は5年間で2例(様式11)

    (4)業績年次報告は当該年1月1日から12月31日までを通年とする

    第19条 資格終了日に満65歳以上の資格更新者については第15 条3)履歴書と6) セミナー受講証明書の提出および第20条の更新審査料を免除する。

    ファルマラボ編集部

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    記事掲載日: 2023/06/16

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